「今期は利益が出そうだから、何か節税できないか」——顧問税理士にそう相談したことがある経営者の方は多いのではないでしょうか。
決算が近づくと急に慌てて対策を探し始め、結果として「節税のつもりが、かえって会社を苦しめていた」というケースは少なくありません。
節税という言葉は知っていても、その仕組みや注意点まで正しく理解している方は意外と少ないものです。
今回は、節税の基本的な考え方から、経営者・個人事業主がつまずきやすいポイントまで、順を追って整理していきます。
なぜ節税で失敗する人が多いのか
まず押さえておきたいのは、節税とはあくまで税法の範囲内で合法的に税負担を減らすことであり、税法から外れれば脱税になってしまうという点です。
「経費を増やせば税金が減る」という単純なイメージだけで動いてしまうと、この一線を越えかねません。
失敗の多くは、次の3つのどれかに当てはまります。
1つ目は、経費計上の範囲を誤解しているケースです。
「支出したものは何でも経費にできる」と考えてしまいがちですが、事業との関連性が明確でない支出は経費として認められません。
家事按分(自宅の家賃や光熱費のうち、事業で使った割合だけを経費にする考え方)についても、面積や使用時間など具体的な根拠がなければ、税務調査で指摘される対象になりやすいとされています。
2つ目は、節税と資金繰りを切り離して考えてしまうことです。
節税策の多くは「支出を増やして利益を圧縮する」タイプであり、実際にお金が出ていきます。
手元資金が減れば資金繰りは苦しくなりますし、決算書の利益が薄くなることで金融機関からの評価が下がり、融資審査に影響が出ることもあります。
節税に力を入れすぎた結果、いざという時の借り入れがしづらくなってしまっては本末転倒でしょう。
3つ目は、制度ごとの要件や期限を軽視してしまうことです。
届出のタイミングを逃しただけで、節税効果がゼロになってしまう制度も存在します。
節税を進める4つのステップ
では、どのような順番で考えていけば失敗を避けられるのでしょうか。
ステップ1: まず「節税の目的」を確認する
節税は目的ではなく手段です。
何のために税負担を減らしたいのか(設備投資の原資を残したい、将来の資金繰りに備えたい等)を先に整理しておくと、「支出を伴う節税」を選ぶべきか「支出を伴わない節税」を選ぶべきか、次のステップで判断しやすくなります。
ステップ2: 自分の立場に合う節税策を洗い出す
節税策は、法人か個人事業主かで大きく変わります。
法人であれば、役員報酬の水準の見直し、決算賞与の支給、社用車や社宅制度の活用、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入などが代表的です。
個人事業主であれば、青色申告特別控除(最大65万円)、青色事業専従者給与、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)の活用が中心になります。
なお、個人事業主として利益が800万〜900万円台に達してくると、所得税より法人税の方が税率で有利になりやすく、法人化(法人成り)を検討するタイミングとも言われています。
所得税の最高税率が45%であるのに対し、中小法人の法人税率は年800万円以下の所得に対して15%、超える部分でも23.2%にとどまるためです。
ステップ3: 「支出を伴うかどうか」で優先順位をつける
節税策には、実際にお金を使う「投資型」(社員教育費・福利厚生・設備投資など)と、お金を使わずに評価や計上方法を見直す「支出なし型」(役員報酬や在庫評価の見直しなど)があります。
資金繰りに余裕がない時期は、まず支出を伴わない見直しから着手し、投資型は本当に必要な支出かどうかを見極めてから実行するのが安全です。
ステップ4: 決算の直前ではなく、2カ月前から動く
決算を目前にして慌てて対策を探すと、判断が雑になりがちです。
多くの節税策は、事前の届出や準備期間を必要とします。
決算日の2カ月ほど前から利益の着地見込みを確認し、必要な対策を検討し始めるのが目安とされています。
つまずきやすいポイント・よくある誤解
具体的にどのような点で失敗しやすいのか、代表的な誤解を挙げておきます。
社宅制度の「50%ルール」
役員や従業員に社宅を貸与する節税策はよく知られていますが、国税庁が定める賃料相当額の50%を下回る家賃設定にしてしまうと、現物給与とみなされて給与課税や損金否認のリスクが生じるとされています。
「安ければ安いほど得」ではない点に注意が必要です。
交際費には上限がある
接待交際費は損金に算入できますが、資本金1億円以下の中小企業では「年800万円」または「接待飲食費の50%」のいずれかが上限です。
上限を超えた分は節税効果を持ちません。
家族への給与は「届出」と「実態」が必須
個人事業主が家族に給与を支払う場合(青色事業専従者給与)、単に「手伝ってもらっているから」という理由だけでは認められません。
所轄税務署への届出書を期限内(原則3月15日など)に提出していること、そして実際に業務を行っている実態があることが前提です。
届出のタイミングを逃すと、その年は制度を使えなくなってしまいます。
短期前払費用は「継続」が条件
家賃などを1年分前払いして経費計上する「短期前払費用」の特例は、翌年以降も同様に前払いを継続することが条件です。
単年だけ利用すると、実質的な節税効果は初年度のみで終わってしまいます。
共済への加入は長期目線で
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は掛金を全額損金・経費にできる制度ですが、加入から解約までの納付月数が20年に満たない場合、解約時に元本割れするリスクがあります。
目先の節税効果だけで判断せず、資金計画全体の中で検討することが大切ではないでしょうか。
まとめ
節税は、正しい知識と順序を踏めば経営を助ける手段になりますが、資金繰りや融資への影響を無視して急ぐと、かえって経営を圧迫しかねません。
まずは自分の立場に合う制度を洗い出し、支出の有無や届出期限を確認しながら、決算の2カ月ほど前から計画的に進めていくことをおすすめします。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




