自宅の一部を事務所や作業場として使っている場合、家賃や電気代などのすべてを経費にできるわけではありません。
一方で、事業に使っている部分を合理的に区分できれば、その部分は必要経費にできます。
重要なのは、「何%なら認められるか」ではなく、その割合をどのような事実と資料から計算したのかを説明できることです。
個人事業主
自宅で仕事をしています。家賃や電気代の一部を経費にできますか?
税理士
事業で使っている部分を、生活用の部分と合理的に区分できれば、その部分は必要経費にできます。
対象になり得るのは、家賃、電気代、ガス代、水道代、インターネット料金、携帯電話料金のほか、持ち家であれば固定資産税、建物の減価償却費、住宅ローン利息などです。
ただし、自宅には私生活のための利用も含まれるため、全額を経費にするのではなく、費用ごとに合理的な基準で家事按分します。
個人事業主
家賃は、どのように按分すればよいですか?
税理士
事業専用の仕事部屋がある場合は、床面積の割合が最も分かりやすい基準です。
例えば、自宅全体が50㎡で、そのうち10㎡の部屋を私生活には使わず仕事専用にしている場合、家賃の20%を出発点として検討できます。
一方、リビングなどを仕事と生活の両方に使っている場合は、床面積だけでは足りません。実際に仕事で使った範囲と使用時間を組み合わせて考える必要があります。
個人事業主
専用の仕事部屋がなく、リビングで仕事をしている場合でも経費にできますか?
税理士
専用室がないという理由だけで、直ちに経費にできなくなるわけではありません。
ただし、仕事に使った場所と時間を明確に区分する必要があるため、専用室がある場合よりも説明は難しくなります。
間取り図、仕事机や機材の配置が分かる写真、業務日報、カレンダー、オンライン会議の履歴などを残し、家族が同じ場所を生活に使う時間と区別できるようにします。
個人事業主
電気代や水道代も、家賃と同じ床面積割合でよいのでしょうか?
税理士
すべての費用に同じ割合を使うのは適切ではありません。
家賃は空間の使用対価なので床面積が中心になりますが、電気代は機器の消費電力や使用時間、水道代は業務上の使用量や使用回数など、費用が発生する原因に合った基準を使います。
例えば、パソコンや複合機の消費電力と稼働時間、空調や照明を使用した時間、スマートプラグや子メーターの記録などは有力な資料になります。
個人事業主
ガス代や水道代も、少しは経費にしてよいですか?
税理士
業務で実際に使っている場合に限って検討します。
飲食業、美容業、清掃業、製造業などで、調理、施術、洗浄、製造に水やガスを使う場合は、使用回数、施術件数、製造量などを基準にできます。
一方、一般的な在宅デスクワークで、ガスの用途が入浴や家庭調理だけであれば、事業との関連性は通常かなり弱くなります。
個人事業主
インターネット料金や携帯電話料金はどうですか?
税理士
事業専用の回線や端末で、私用がなければ、全額を必要経費にできる可能性があります。
家族と共用している回線や、私用にも使う携帯電話の場合は、勤務時間、端末別通信量、通話明細、業務先との発着信記録などを基に按分します。
根拠なく「仕事にも使うので50%」とするのではなく、実際の利用状況を確認できる資料を残すことが重要です。
個人事業主
持ち家の場合は、何を経費にできますか?
税理士
固定資産税、建物の減価償却費、住宅ローン利息などのうち、事業使用部分に対応する金額は必要経費になり得ます。
ただし、土地は減価償却できません。住宅ローンの元本返済額も必要経費にはなりません。
また、もともと自宅として使っていた建物を後から事業用に転用した場合は、事業転用時点の未償却残高を計算する必要があり、取得価額に単純に事業割合を掛けるだけでは処理できません。
個人事業主
床面積、使用時間、使用日数なら、どれを使ってもよいのですか?
税理士
費用の性質に合っていれば、いずれも使える可能性があります。
家賃、固定資産税、建物の減価償却費は床面積、共用室や空調・照明は使用時間、毎日の利用状況がほぼ同じなら使用日数、電気・水道・通信は実測使用量や利用記録が有力です。
大切なのは、第三者が資料を見ても同じ割合を再計算できることです。
個人事業主
コンセント数や部屋数、売上高の割合で按分してはいけませんか?
税理士
通常は、それだけでは根拠として弱いと考えられます。
コンセントの数は電力使用量を示しません。部屋数は各部屋の広さや用途が異なります。売上高は家賃や電気代の発生原因と直接対応しません。
「自宅で仕事をしているので50%」「売上の10%」など、実際の利用状況に基づかず任意に決めた割合も、税務調査で説明しにくい処理です。
個人事業主
裁判では、どのような点が問題になっていますか?
税理士
自宅の家賃や水道光熱費が争われた裁判例では、単に自宅で仕事をしていたことや、パソコンや書類を置いていたことだけでは足りないと判断されています。
仕事専用の場所が物理的に区分されているか、家族がどのように使っていたか、具体的な作業内容と時間を記録しているかなどが重視されています。
按分計算をしたという事実だけではなく、その計算の前提となる事実を客観的に示す必要があります。
個人事業主
税務調査に備えて、何を残しておけばよいですか?
税理士
最低限、次の資料を申告時点で作成・保存してください。
賃貸借契約書、間取り図、各部屋の実測面積、仕事場所の写真、業務日報、カレンダー、光熱費・通信費の明細、通話記録、通信量、按分計算書などです。
持ち家の場合は、固定資産税課税明細書、土地建物の取得資料、住宅ローン返済予定表、減価償却の計算資料も必要です。
割合だけを残すのではなく、面積の測定方法、時間の集計期間、家族の利用状況まで記録してください。
要点
裁判例から分かること
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の必要経費算入割合は、業種、間取り、家族構成、使用状況、保存資料などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




