YouTubeチャンネルの運営やセミナー登壇では、出演者自身の見た目が動画や集客に影響することがあります。
それでは、画面映えを良くするための美容整形代やメンズメイク代、動画で着るブランドスーツ代は、広告宣伝費や衣装費として経費にできるのでしょうか。
結論からいうと、勘定科目の名前ではなく、支出の実質で判断します。業務との直接的な関係、業務上の必要性、私的利用との区分可能性が重要です。
経営者
YouTubeチャンネルの運営やセミナー登壇をしています。
画面映えを良くするための美容整形代やメンズメイク代、動画で着るブランド物のスーツ代は、広告宣伝費や衣装費にできますか?
税理士
「広告宣伝費」や「衣装費」という勘定科目で処理しただけでは、経費にはなりません。
税務上は、その支出が収入を得るために直接必要だったのか、業務上必要な部分と私生活上の利益を明確に分けられるのかを、支出ごとに判断します。
経営者
美容整形は、動画の見栄えを良くして再生数や売上を伸ばすためでも、難しいのでしょうか?
税理士
原則として、必要経費や法人の損金として処理するのは難しいと考えられます。
美容整形の効果は撮影中だけに限定されず、日常生活でも継続します。施術の効果は本人の身体に帰属するため、業務上の利益と私生活上の利益を客観的に分けることが困難です。
「画面映えを良くしたい」「売上を増やしたい」という動機だけでは、業務との直接的な関係を証明するには弱いでしょう。
経営者
仕事を始めてから整形したのであれば、事業目的と説明できませんか?
税理士
施術の時期や本人の目的は判断材料にはなりますが、それだけで経費になるわけではありません。
税務では、本人の主観的な目的だけでなく、その支出の性質、効果の持続期間、私生活上の利益、業務専用部分を区分できるかなどを客観的に確認します。
なお、治療を目的とする施術であれば、事業経費とは別に医療費控除の問題を検討することがありますが、美容目的の施術とは分けて考える必要があります。
経営者
メンズメイク代はどうですか?動画撮影の前に使う化粧品です。
税理士
市販の化粧品や基礎化粧品など、撮影以外の日常生活でも使用できるものは、原則として家事費と判断される可能性が高いです。
一方、撮影現場でメイク担当者に支払う施術料や、舞台・撮影専用の特殊なメイク用品で、撮影時だけに使用していることを記録から確認できるものは、「撮影費」「外注費」「消耗品費」などとして認められる余地があります。
経営者
似たような裁決例はありますか?
税理士
類似性の高いものとして、国税不服審判所の平成26年5月22日裁決があります。
ライブチャット業務を行っていた納税者が、衣服、ブランド衣料、化粧品、健康用品などを必要経費として主張しました。
しかし、一般に販売され、日常生活でも使用できる衣服等については、業務使用と私的使用を合理的に区分できず、業務との直接的な関係や必要性も明らかでないとして、必要経費算入が否定されました。
化粧品等についても、「画面上で本人をきれいに見せるため」という説明は主観的な事情にすぎず、本人の身体に関する私的費用と判断されています。
経営者
YouTubeとライブチャットは同じではありませんよね。それでも、この裁決は重要ですか?
税理士
事業内容は完全には同じではなく、裁決にも一般的な先例拘束性はありません。
ただし、「画面に出演する仕事だから衣服や化粧品が必要だった」という主張に対して、業務との直接性、私的使用との区分、客観的な証拠を厳しく確認した点は、YouTube運営やオンライン講師にも共通します。
今回の相談では、税務調査時に強く意識すべき裁決です。
経営者
動画やセミナーで着るブランド物のスーツは、衣装費にできませんか?
税理士
一般的なスーツとして、私生活、ほかの仕事、冠婚葬祭などでも着用できるものは、必要経費性が弱く、全額計上は否認リスクが高いです。
ブランド品であることや、実際に動画へ映ったこと自体は、経費性を強める事情にはなりません。
国税庁も、会社が従業員等へ背広を支給した場合、私服として着用できるものは制服扱いせず、原則として給与課税が必要としています。
経営者
衣装費として認められやすいのは、どのようなものですか?
税理士
番組固有の衣装、会社名や番組名のロゴが大きく入った服、特殊なデザインで日常着として使えないものなどは、業務専用性を説明しやすくなります。
また、購入するよりも撮影ごとに衣装をレンタルする方が、撮影との直接的な対応関係を立証しやすいでしょう。
購入する場合は、事務所やスタジオで保管し、私的利用を禁止し、衣装管理台帳、使用した動画や登壇記録、企画書などを残します。
ただし、通常のブランドスーツでは、こうした管理をしても否認リスクは残ります。
経営者
法人が代表者の美容代やスーツ代を支払った場合はどうなりますか?
税理士
業務専用の衣装費や撮影費と認められなければ、法人が代表者個人へ与えた経済的利益、つまり役員給与と判断される可能性があります。
その場合、代表者側では給与課税と源泉徴収の問題が生じます。
さらに法人側では、法人税法第34条の要件を満たさない役員給与として、損金不算入となる可能性があります。法人が支払えば安全になるわけではありません。
経営者
実務上は、どのように処理するのが安全ですか?
税理士
美容整形代は、原則として個人負担とするのが安全です。
メンズメイクは、日常用の化粧品を購入するよりも、撮影日ごとに外部のメイク担当者へ依頼し、撮影日、対象動画、施術内容、請求書を残す方が業務との直接性を説明しやすくなります。
スーツは、通常のブランドスーツを購入するより、撮影用衣装をレンタルする方が安全です。
購入する場合でも、事務所保管、私的利用禁止、使用記録、撮影企画書、動画や写真、領収書などを保存してください。
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、施術内容、商品の性質、私的利用の有無、保管方法、使用記録、法人・個人の別などによって異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
Latest entries
税金あれこれ2026年7月15日親への仕送りは節税になる?扶養控除の条件とよくある勘違い
所得税2026年7月15日美容整形代・メンズメイク代・ブランドスーツ代は経費になる?裁決例から見る判断ポイント
裁判例でわかる税務のポイント2026年7月15日土地建物の購入価額は契約書どおりでよい?建物価額の過大配分が否認された裁決例
税金あれこれ2026年7月14日iDeCoの節税、結局いくら得なの?仕組みと落とし穴をやさしく解説




