配偶者を非常勤役員にして毎月同じ金額を払えば、すべて会社の経費にできるのでしょうか。
結論からいうと、実際の業務が「たまに書類整理を手伝う程度」でありながら、月額20万円、年間240万円を支払う場合、税務調査で全部または一部を否認されるリスクは高いと考えられます。
経営者
妻を名前だけ非常勤役員にして、毎月20万円の役員報酬を払おうと思っています。
たまに書類の整理を手伝ってもらう程度ですが、会社の経費で落とせますか?
税理士
その実態のままでは、月額20万円を全額経費にするのはかなりリスクが高いです。
「非常勤役員として登記した」「毎月同じ金額を支払った」という形式だけでは足りません。実際にどのような職務を行い、どの程度の責任を負っているかに対して、報酬額が相当である必要があります。
経営者
毎月20万円を同じ日に払えば、定期同額給与になるのではないですか?
税理士
毎月同額で規則的に支払えば、定期同額給与の形式を満たす余地はあります。
ただし、定期同額給与であることと、報酬額が適正であることは別の判定です。
毎月同じ金額を支払っていても、実際の職務内容に比べて不相当に高額であれば、その高額な部分は会社の損金として認められません。
経営者
どのような基準で「高すぎる」と判断されるのでしょうか?
税理士
法人税法施行令では、主に次の事情から報酬額の相当性を判断するとされています。
その役員の職務内容、会社の収益状況、従業員の給与水準、同業・同規模法人の役員給与の状況などです。
今回のように、実際の業務がたまの書類整理だけであれば、月額20万円の対価として合理的だと説明するのは通常かなり難しいです。
経営者
税務調査では、妻が役員として働いていたかをどのように確認されますか?
税理士
税務調査では、肩書きではなく実態が確認されます。
例えば、具体的な担当業務、月に何日・何時間程度働いているか、経営判断に関与しているか、資金管理や採用、営業、顧客対応などの責任を負っているか、役員会や経営会議に参加しているか、通常の業務過程で記録が残っているか、といった点です。
メール、チャット、作成資料、会議記録、業務日報なども確認資料になります。
経営者
では、職務分掌書や業務日報を作っておけばよいですか?
税理士
書類があるだけでは足りません。実際にその業務を行っていることが必要です。
また、税務調査を意識して、後から形式的な議事録や架空の業務日報を作るのは避けるべきです。
実態のない職務を行ったように装った場合には、単なる過大役員給与の問題にとどまらず、事実の隠蔽や仮装として、より重い問題になる可能性があります。
経営者
本当に月20万円を経費にしたい場合は、どうすればよいですか?
税理士
月20万円に見合う役員職務を、実際に担当してもらう必要があります。
例えば、資金繰り管理、経営数値の確認、採用、営業管理、顧客対応、業務改善、社内管理などについて、具体的な権限と責任を持たせ、継続的に職務を行うことが必要です。
そのうえで、担当業務、責任、勤務頻度、会社の規模や利益、他の役員や従業員の給与水準などを踏まえて、報酬額を決めます。
経営者
たまに書類整理を手伝ってもらう程度のままなら、どうするのが安全ですか?
税理士
その実態であれば、そもそも役員にする必要があるのかを見直すべきです。
実際の作業内容や勤務時間に応じて、パート従業員として妥当な給与を支払う方が、実態に合う可能性があります。
役員にするか、従業員として雇用するかは、節税目的ではなく、実際の権限、責任、職務内容に合わせて決める必要があります。
経営者
会社側で経費として否認されたら、妻が受け取った給与もなかったことになりますか?
税理士
いいえ。会社側で損金不算入となっても、妻が実際に受け取った役員報酬が、当然になかったことになるわけではありません。
会社には原則として源泉所得税の徴収・納付義務があり、妻側でも給与所得として課税関係が生じます。
つまり、会社では経費にならない一方、妻側では所得税等の対象になるという、二重に不利な結果になる可能性があります。
要点
主な根拠
※なお、毎月の報酬だけでなく『役員退職金』が不相当に高額として国と揉めた最新の裁判例は、こちらの『裁判例でわかる税務のポイント』で詳しく解説しています。
※上記の裁決はいずれも、配偶者を名前だけ非常勤役員とし、書類整理のみを行わせた事案に直接一致するものではありません。過大役員給与の相当性判断に関する参考事例として掲載しています。
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、役員就任時期、会社の事業年度、選任・報酬決議、担当職務、勤務実態、会社規模、収益状況、他の役員・従業員の給与水準などによって異なります。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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