ネットショップ・EC業の税務を税理士が解説|在庫・消費税・税務調査の注意点

ネットショップ・EC業の税務

ネットショップ・EC業は、市場としては拡大が続いている一方で、税務上は通常の店舗型小売業よりも管理すべきデータが多い業種です。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Shopify、自社EC、決済代行会社、広告会社、物流倉庫、銀行口座、会計帳簿など、複数のデータが絡みます。

そのため、税務調査では、単に帳簿だけを見るのではなく、モールの管理画面データ、決済代行会社の精算データ、銀行入金、会計帳簿が相互に突合されることを想定しておく必要があります。

特に注意すべきなのは、売上の計上時期、モールからの入金額と売上総額の違い、返品・キャンセル・ポイント・クーポン、期末在庫、インボイス、越境EC、海外サービスへの支払い、電子帳簿保存法です。

ネットショップ・EC業の最近の業況と動向

EC市場は、国内外ともに拡大が続いています。

経済産業省の「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によれば、2024年の国内BtoC-EC市場は26.1兆円、前年比5.1%増です。

物販系分野では、食品・飲料・酒類、衣類・服装雑貨、家電・AV・PC等、生活雑貨・家具・インテリアなどが大きな市場を形成しています。

また、BtoB-EC市場も514.4兆円、EC化率43.1%まで上昇しており、取引の電子化は事業者間取引にも広がっています。

越境ECも拡大しており、中国の消費者による日本事業者からの購入額は、2024年に2兆6,372億円、前年比8.5%増とされています。

このように、ネットショップ・EC業は成長分野です。

ただし、税務面では、売上、在庫、海外取引、電子データ保存の管理が不十分だと、あとから大きな修正が必要になる可能性があります。

EC売上はいつ計上するのか

ネットショップでは、注文日、決済日、発送日、配達完了日、モールからの入金日がずれることがあります。

たとえば、次のような取引です。

注文日:3月28日
カード決済日:3月28日
発送日:3月31日
顧客到着日:4月2日
モールからの入金日:4月15日

この場合、4月15日の入金日だけを基準に売上を計上するのは危険です。

法人税法上、資産の販売等に係る収益は、原則として目的物の引渡しの日の属する事業年度の益金となります。

また、法人税基本通達では、棚卸資産の引渡しの日について、出荷日、船積日、着荷日、検収日など、商品の種類や契約内容に応じて合理的な日を選び、継続して適用する考え方が示されています。

EC事業では、自社の販売規約、配送条件、システム仕様を確認したうえで、出荷基準など合理的な売上計上基準を決め、継続して適用することが重要です。

返品・キャンセル・ポイント・クーポンの処理

EC業では、返品、キャンセル、ポイント、クーポンが頻繁に発生します。

販売後に返品、値引き、割戻しをした場合、消費税では「売上げに係る対価の返還等」として税額調整が必要になります。

特に注意が必要なのは、注文時に売上計上したあと、後日キャンセルや返品が発生するケースです。

注文番号ごとに、売上、返品、返金まで追跡できる状態が望ましいです。

また、ポイントやクーポンは、自社負担なのか、モール負担なのか、共通ポイントなのか、自社ポイントなのかによって処理が変わることがあります。

商品本体価格の値引きなのか、代金の支払手段なのかによって、消費税の処理も変わる可能性があります。

期末在庫とAmazon FBA在庫

ネットショップ・EC業では、在庫管理も重要です。

商品在庫は、自社倉庫だけでなく、Amazon FBA、楽天等の物流倉庫、第三者物流会社、発送委託先、海外倉庫などに分散することがあります。

期末棚卸では、これらの外部倉庫にある在庫も含めて確認する必要があります。

よくあるミスは、Amazon FBA在庫を棚卸から漏らすこと、返品商品を在庫に戻していないこと、移動中在庫を漏らすこと、不良品を安易にゼロ評価することです。

法人税法上、期末に保有する商品は、選定した評価方法に基づいて棚卸資産として評価します。

また、商品在庫の評価損は、単に「売れ残っている」「古くなった」「売れそうにない」というだけで自由に損金にできるわけではありません。

著しい損傷、陳腐化、災害による損傷など、税法上認められる事実があるかを確認する必要があります。

インボイスと仕入税額控除

EC業では、商品の仕入れ、モール手数料、出店料、決済代行手数料、広告費、倉庫利用料、物流費、システム利用料など、さまざまな支払いが発生します。

消費税の仕入税額控除を受けるには、原則として帳簿と適格請求書等の保存が必要です。

クレジットカード明細や銀行引落記録だけでは、誰からどのような役務提供を受けたのか、その相手がインボイス発行事業者なのかが分からないことがあります。

モールや決済会社の管理画面から、請求書、精算書、インボイス関連資料をダウンロードして保存する体制が必要です。

また、EC事業者がBtoB販売を行う場合には、取引先からインボイスの交付を求められることがあります。

小売業では適格簡易請求書が認められる場合もありますが、自社の販売形態に応じて、発行する請求書・領収書・納品書の記載内容を確認しておく必要があります。

海外仕入れ・海外販売・越境EC

EC業では、海外から商品を仕入れたり、海外の顧客へ販売したりするケースもあります。

海外から商品を輸入する場合、商品代金のほか、国際送料、関税、輸入消費税、通関手数料などが発生します。

輸入消費税については、通常の国内仕入れのインボイスとは異なり、税関関係書類が重要になります。

一方、日本から海外へ商品を輸出する場合は、一定の要件を満たせば輸出免税の対象になる可能性があります。

ただし、輸出免税を適用するには、輸出許可書、EMS等の発送書類、国際宅配便の記録、注文記録、海外購入者情報など、輸出取引であることを証明する書類を保存する必要があります。

Shopify等で購入者住所が海外になっているだけでは十分とは限りません。

Google広告・Meta広告・海外SaaSの注意点

EC事業では、Google広告、Meta広告、海外マーケティングツール、Shopifyその他海外SaaS、クラウドサービスを利用することがあります。

国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受ける場合、一定の場合にリバースチャージ方式の検討が必要になります。

請求書に日本の消費税のような表示があるかどうかだけで判断するのは危険です。

契約先法人、所在地、サービス内容、請求書、インボイス登録状況を確認する必要があります。

デジタル商品を販売している場合

物販ECだけでなく、電子書籍、アプリ、動画コンテンツ、オンライン教材、会員制コンテンツなどを販売している場合は、さらに注意が必要です。

デジタル商品は、通常の商品発送型ECとは、消費税の内外判定や課税関係が異なることがあります。

また、2025年4月1日からは、一定の国外事業者による消費者向けデジタルサービスについて、プラットフォーム課税が導入されています。

通常の国内物販だけであれば直接関係しない場合もありますが、デジタルコンテンツ販売を併営している場合は、物販とは分けて確認する必要があります。

電子帳簿保存法とECデータ

EC事業者は、紙の領収書よりも電子データの方が重要になることがあります。

Amazon等の月次売上レポート、決済会社の精算データ、各種PDF請求書、広告会社の請求データ、物流会社の請求データ、注文データ、メールで受け取った請求書などは、電子取引データに該当しやすい資料です。

電子帳簿保存法上、電子取引に関するデータは、一定の要件に従って電子データのまま保存する必要があります。

税務調査時に、対象取引を検索できる状態、内容を確認できる状態、必要に応じて提示・提出できる状態にしておくことが重要です。

税務調査でよく聞かれること

EC事業者の税務調査では、次のような質問を受けることがあります。

どのサイトで販売していますか。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Shopify、自社ECなど、利用しているアカウントをすべて教えてください。

売上は何を基準に計上していますか。

注文日、決済日、発送日、到着日のどれを売上日にしていますか。

モールの売上データと会計帳簿の売上は一致しますか。

モールからの入金額との差額は何ですか。

返品・キャンセルはどのように処理していますか。

ポイント・クーポンは誰が負担していますか。

決済代行会社はどこですか。

銀行口座、PayPalなどの決済口座をすべて教えてください。

在庫はどこにありますか。

Amazon FBAの在庫も期末棚卸に入っていますか。

廃棄した商品の証拠はありますか。

長期滞留品を値下げ評価している理由は何ですか。

海外から商品を仕入れていますか。

海外に販売していますか。

輸出免税の証明書類はありますか。

Google、Metaなどの海外事業者への支払いがありますか。

事業用カードと個人カードは分けていますか。

社長や家族が商品を私的に使用したことはありませんか。

SNSや別ブランド、別アカウントで販売していませんか。

電子請求書等をどのように保存していますか。

EC事業者が毎月作っておきたい資料

ネットショップ・EC業では、毎月、次の流れを確認できる資料を作っておくと有効です。

チャネル別売上
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、自社EC、その他

売上総額

返品・キャンセル

ポイント・クーポン

販売手数料

決済手数料

広告費等

最終入金額

銀行入金額との一致

この資料を「EC売上精算表」として残しておくと、モールの売上データと会計帳簿の関係を説明しやすくなります。

特に、町田・相模原でこれからネットショップやEC事業を始める方は、事業開始時点から、販売チャネル、銀行口座、クレジットカード、在庫管理、会計処理を整理しておくことが重要です。

タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原で起業する方に向けて、個人事業と法人のどちらが有利か、最適な役員報酬のシミュレーション、補助金・助成金・融資制度の検索、口座開設に使いやすい金融機関検索、開業時に税務署へ提出する税務書類の作成などができるページを公開しています。

町田・相模原で起業する方向けの情報は、まちさが起業ナビをご覧ください。

町田・相模原でネットショップ・EC業の税務に不安がある方へ

ネットショップ・EC業は、売上データ、決済データ、在庫データ、広告費、手数料、海外取引、電子証憑が複雑に絡む業種です。

開業直後や法人成り直後に、売上計上基準、モール精算、在庫管理、電子データ保存の仕組みを整えておかないと、あとから整理する負担が大きくなります。

町田・相模原でネットショップ・EC業を営んでいる方、これからEC事業を始める方、EC売上の会計処理や税務調査対応に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。

町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ

※本記事は、ネットショップ・EC業に関する一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、販売チャネル、契約内容、取扱商品、売上計上基準、在庫保管場所、消費税の課税方式、海外取引の有無、電子データ保存状況などにより異なります。個別の判断が必要な場合は、税理士等の専門家にご相談ください。

Author Profile

末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。