個人事業主・中小法人が使える
節税対策 40選
町田・相模原の税理士が、所得税・法人税・消費税・住民税を横断して整理しました。単に「税金が減る」だけでなく、手元資金・将来課税・届出期限まで含めて、起業直後から使いやすい制度を解説します。
「今年は利益が出そうなので、何か節税できませんか?」
節税というと、「決算前に何か買う」「保険に入る」「車を買う」といった方法を思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、税金そのものが減る制度と、税金を将来へ先送りするだけの制度は、まったく別のものです。
この記事では、起業直後の個人事業主や中小企業が実際に検討しやすい節税策を40項目に絞り、制度名からすぐに探せるようまとめました。各項目は、関連記事を開かなくても「何が節税になるのか・主な要件・具体的な効果・最大の注意点」まで一度判断できることを基準にしています。関連記事は、実際に制度を使う段階で細かな要件や判例・裁決まで確認したい方向けの深掘りです。所得税・法人税・消費税の基本制度は全国共通のため、町田・相模原以外の事業者の方にもそのまま参考にしていただけます。
不要な支出で節税するより、必要な支出・所得控除・税額控除・制度選択を使って、手元資金を残すことが本来の目的です。
まず知っておきたい「節税」の6分類
40選はすべて同じ性質ではありません。「税負担が永久に減るのか」、それとも「将来の税負担へ先送りされるだけなのか」を区別しながら見てください。
恒久節税
税負担そのものが減り、原則として将来同額が課税されるわけではないもの。
所得控除・税額控除
所得または税額から直接差し引く制度。税額控除は特に効果が明確です。
課税繰延べ
今年の税負担を軽くする代わりに、将来の利益・税負担が増える可能性があるもの。
所得分散
本人・法人・家族などへ、勤務実態や制度要件に沿って適正に所得を配分するもの。
適正な経費・損金計上
本来認められる経費を漏れなく計上し、余計な税負担を生じさせないもの。
消費税の制度選択
免税・本則・簡易課税・インボイス経過措置・還付を事業構造に合わせて比較するもの。
節税対策40選|制度名から探す
気になる制度だけ読んでも、概要・節税効果・主要要件・注意点までいったん理解できるよう、各項目を独立したQ&A形式にしています。
状況から探す
40項目をすべて最初から読む必要はありません。ご自身の状況に近いものから確認してみてください。
起業・個人事業の基本
まず押さえたい、創業初期と個人事業の節税
青色申告特別控除
経営者
青色申告にすると、本当に節税になりますか?
税理士
はい。個人事業主が最初に確認したい制度の一つです。一定の要件を満たして青色申告を行うと、事業所得等から55万円、さらにe-Taxによる期限内申告または一定の電子帳簿保存要件を満たすことで最高65万円の青色申告特別控除を受けられます。65万円を支出する制度ではなく、現金を使わず所得を圧縮できるため、典型的な恒久節税です。
ただし、65万円控除には複式簿記、貸借対照表・損益計算書、期限内申告等の要件があります。帳簿保存も重要で、形式だけ整えて実際に保存・提示できない状態では青色申告そのものに影響するリスクがあります。
具体的には:65万円控除を使える人は、10万円控除の場合と比べて課税所得を55万円多く減らせます。所得税率10%なら所得税だけでも5.5万円分の差が生じ、さらに住民税にも影響します。青色申告承認申請書の提出だけで65万円控除になるわけではなく、複式簿記・期限内申告・e-Tax等まで含めて要件を満たす必要があります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.2072 青色申告特別控除
- 最高裁平成17年3月10日判決(青色申告承認取消しと帳簿書類の保存・提示)
純損失・欠損金の繰越控除
経営者
開業して赤字になった場合、その赤字は翌年以降の節税に使えますか?
税理士
使える場合があります。青色申告法人の欠損金は原則10年間、個人事業主の青色申告で生じた純損失は原則3年間、翌年以後の黒字と相殺できます。
たとえば法人の第1期が500万円の赤字、第2期が400万円の黒字で、要件を満たす場合、第2期の所得を繰越欠損金で圧縮できます。重要なのは、赤字だからといって申告を省略しないことです。青色申告や連続申告などの要件を外すと、将来使えるはずだった赤字を失う可能性があります。
具体例:中小法人で、第1期が500万円の欠損、第2期が400万円の所得なら、要件を満たす限り第2期の400万円を繰越欠損金と相殺し、法人税の課税所得を0円にできる可能性があります。個人は原則3年、法人は原則10年と期間が異なるため、赤字年度から申告を途切れさせないことが重要です。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 法人税法
- 国税庁 No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
- 直接この制度の一般的適用を争った代表的公表判例は本稿では掲げません。
純損失・欠損金の繰戻し還付
経営者
今年赤字になった場合、前年に払った税金を返してもらえますか?
税理士
一定の要件を満たせば可能です。個人の青色申告では純損失を前年所得へ繰り戻して所得税の還付を請求できます。中小法人等についても、欠損金を前事業年度へ繰り戻して法人税の還付を受けられる制度があります。
将来黒字になるまで待って繰越控除を使うより、今すぐ還付を受けた方が資金繰り上有利な会社もあります。一方、創業第1期の赤字には繰り戻す前年がありません。今後の利益予測と手元資金を見ながら、繰越と繰戻しを比較します。
判断ポイント:繰戻し還付は「赤字を経費にする制度」ではなく、前年に納めた税金を今取り戻す制度です。前年が黒字で納税しており、今年赤字になった中小法人等では資金繰り改善効果があります。逆に、前年に十分な所得・税額がなければ還付余地は小さく、将来の黒字と相殺する繰越控除の方が使いやすいこともあります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 法人税法
- 国税庁 No.5763 欠損金の繰戻しによる還付
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
2026年分の基礎控除104万円と所得489万円の判定
経営者
2026年は、所得489万円を下回るようにすると節税になる場合がありますか?
税理士
あります。2026年分では、合計所得金額489万円以下の一定の人は基礎控除が104万円、489万円超655万円以下では67万円となるため、489万円付近に控除額の段差があります。
たとえば合計所得500万円の個人事業主に、適法に任意償却できる開業費12万円が残っており、488万円まで下げられる場合、単なる12万円の所得減少に加え、基礎控除額が変わる可能性があります。これは架空経費を作る話ではなく、もともと計上時期を選べる費用がある場合の検討です。判定は売上高ではなく合計所得金額で行います。
ポイント:2026年・2027年分では、合計所得金額489万円以下なら基礎控除104万円、489万円超655万円以下なら67万円となるため、境目では控除額に37万円の差があります。開業費の任意償却など、もともと計上時期を選べる合法的な費用がある場合は、489万円判定まで含めて検討する価値があります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱
- 2026年度改正事項のため、制度そのものに関する直接公表判例は確認できません。
開業費・創立費の任意償却
経営者
開業費や会社設立費用は、利益が出た年まで残しておけますか?
税理士
一定の開業費・創立費は任意償却が認められるため、赤字の創業年度に無理に償却せず、利益が出た年度に償却することができます。
たとえば開業費120万円があり、第1年が赤字、第2年が黒字なら、第1年に赤字をさらに増やすより第2年に償却した方が税負担軽減につながりやすいケースがあります。ただし、固定資産、商品仕入れ、敷金、前払費用など、そもそも開業費・創立費に該当しない支出までまとめて任意償却できるわけではありません。
使い方:開業費・創立費の任意償却は、未償却残高の範囲で利益が出た年に償却できるため、創業赤字の年に急いで落とす必要はありません。たとえば120万円残っていれば、黒字年度に必要額だけ償却する設計も可能です。ただし、パソコン・車・商品・敷金など、本来は別の資産科目となる支出を開業費へまとめることはできません。
資本金1,000万円未満での法人設立
経営者
会社を作るなら、資本金は1,000万円未満にした方が節税になりますか?
税理士
税金だけを見れば有力な選択肢です。基準期間がない新設法人で、その事業年度開始の日の資本金または出資金が1,000万円以上の場合、原則として消費税免税になりません。
したがって、999万円と1,000万円では消費税上の扱いが大きく変わる可能性があります。ただし、インボイス登録、特定期間、特定新規設立法人、大法人との支配関係等の例外があります。また、資本金は融資・許認可・信用にも影響するため、節税だけで決めるべきではありません。
実務上の判断:資本金1,000万円未満は、創業時の消費税免税を検討するうえで重要な基準ですが、「999万円なら必ず2期免税」という意味ではありません。インボイス登録や特定期間判定などで課税になることがあります。資本金は金融機関・取引先・許認可にも影響するため、税金だけで999万円以下に寄せるのではなく必要資金とのバランスで決めます。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
法人成りによる税負担の最適化
経営者
個人事業主ですが、法人化すれば節税になりますか?
税理士
一定以上の利益が継続して出る場合、法人化により総税負担が下がることがあります。法人では役員報酬を損金にし、経営者個人側では給与所得控除を利用できます。また、社宅、役員退職金、旅費日当など法人特有の選択肢もあります。
ただし、法人化すれば必ず得になるわけではありません。法人住民税均等割、社会保険料、法人税申告コスト、役員給与規制などが増えます。所得税・住民税・法人税・法人事業税・法人住民税・社会保険料をまとめて比較する必要があります。
比較すべきもの:法人化の有利不利は、単に「所得税率が高くなったら法人化」では決まりません。役員報酬を支給した後の法人利益、給与所得控除、法人住民税均等割、社会保険料、消費税、税理士報酬などを合算して比較します。特に利益が毎年大きく変動する事業では、1年だけの利益ではなく今後2~3年程度の見込みで判断する方が安全です。
青色事業専従者給与
経営者
家族に給料を払って、その給与を経費にできますか?
税理士
青色事業専従者給与の要件を満たせば可能です。生計を一にする配偶者や親族への給与は原則として必要経費にできませんが、青色申告者が一定の要件を満たす専従者へ支払う適正な給与は必要経費にできます。
勤務実態がない、届出をしていない、仕事内容に比べ給与が高すぎる場合は認められません。原則としてその年3月15日まで、新規開業等では開業日等から2か月以内の届出が必要です。
要件の核心:青色事業専従者給与は、実際にその事業へ専ら従事している親族への相当額の給与を必要経費にする制度です。届出書に書いた金額は「そのまま経費にできる上限保証」ではなく、仕事内容・勤務時間・同業他社水準から高すぎれば否認され得ます。給与台帳、振込記録、勤務内容なども残しておきましょう。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
- 親族取引では勤務実態・生計同一・対価の相当性が個別事実として重要です。
家事按分
経営者
自宅兼事務所の家賃、光熱費、スマホ代、車両費の一部を経費にできますか?
税理士
事業で使用している部分を合理的に区分できれば必要経費にできます。家賃なら床面積、共用部分なら使用時間、通信費なら利用記録など、費用の性質に合った按分基準を使います。
「自宅で仕事をしているから50%」のような根拠のない割合は危険です。間取り、仕事机や機材、利用時間、走行記録など、第三者が見ても再計算できる資料を残すことが重要です。
具体例:自宅家賃が月15万円で、専用仕事部屋の床面積等から事業使用割合30%を合理的に説明できるなら、家賃は月4万5,000円、年間54万円を必要経費とする考え方ができます。光熱費・通信費・車両費は同じ30%を機械的に使うのではなく、それぞれ使用時間・利用記録・走行距離など費目に合った基準を使います。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.2210 必要経費の知識
- 東京地裁平成25年10月17日判決、東京地裁平成26年9月25日判決(自宅費用の業務使用部分の立証)
経営者個人・共済
手元資金と将来設計を両立する制度
小規模企業共済
経営者
小規模企業共済は本当に節税になりますか?
税理士
掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。月7万円なら年間84万円を所得から控除できます。ただし、事業の必要経費ではなく、経営者個人の所得控除です。
将来の受取時には課税されるため、現在の節税額だけではなく、退職所得として受け取れるか、途中解約の可能性、加入期間、他の退職金やiDeCoとの関係まで見て判断します。
具体例:月7万円を12か月支払えば年間84万円が所得控除になります。事業所得そのものの必要経費ではありませんが、課税所得を84万円減らすため、所得税・住民税の負担軽減につながります。一方、解約・共済金受取時には課税関係があるため、「84万円全額が永久に非課税になる制度」ではありません。加入期間と出口まで見て使います。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除
- 制度自体に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
経営者
iDeCoも節税になりますか?
税理士
iDeCoの加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除の対象です。所得税率・住民税率が高いほど拠出時の効果は大きくなります。
一方、課税所得が少ない人、住宅ローン控除等で所得税がほぼ出ていない人では節税効果が小さい場合があります。また、資金拘束や受取時の退職所得控除との調整もあるため、「掛金全額控除だから最大額が正解」とは限りません。
判断ポイント:iDeCoは掛金の全額所得控除に加え、運用益が運用中非課税となる点も特徴ですが、原則として老齢給付の時期まで自由に引き出せません。所得が低く控除を使い切れない人では節税効果が小さい一方、課税所得が大きい人ほど現在の効果は大きくなります。退職金・小規模企業共済との受取時期も含めて出口を設計します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除
- 制度自体に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
国民年金基金
経営者
個人事業主なら国民年金基金も節税になりますか?
税理士
国民年金基金の掛金は全額が社会保険料控除の対象です。所得税・住民税の課税所得を減らしながら老後年金を準備できます。
ただし、老後資金制度なので資金拘束があります。iDeCoとの掛金上限の関係もあるため、現在の手元資金と将来受取額を見て配分します。
iDeCoとの違い:国民年金基金は将来受け取る年金額を設計する公的な上乗せ年金で、掛金は社会保険料控除です。iDeCoは自分で運用商品を選ぶ確定拠出型なので、性質が異なります。両制度は掛金上限が連動するため、どちらか一方だけを見るのではなく、老後資金の確実性・運用自由度・現在の資金繰りを比較して配分します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.1130 社会保険料控除
- 国民年金基金
- 制度自体に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)
経営者
決算直前に240万円を前納して、今期の経費にできますか?
税理士
一定の要件を満たせば可能です。掛金は月額最大20万円、年間240万円で、法人では損金、個人事業では必要経費となります。1年以内の前納について一定の取扱いがあります。
ただし、解約手当金を受け取ると法人では益金、個人では事業所得の収入になるため、典型的な課税繰延べです。2024年10月1日以後に解約し再加入した場合、解約日から2年間の掛金について損金・必要経費算入に制限があります。
具体例:月額20万円なら年間240万円まで掛金を積み立てられ、一定の1年以内前納も当期の損金・必要経費にできる場合があります。ただし解約手当金は受取時に収益となるため、本質は課税の先送りです。将来、設備投資・退職金・赤字など大きな費用が出る年度で解約する出口まで考えないと、単に税金を後ろへ送っただけになることがあります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 租税特別措置法
- 中小企業基盤整備機構 経営セーフティ共済
- 制度自体に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
法人・役員・従業員
法人だから使える給与・福利厚生・退職金の設計
役員報酬(定期同額給与)
経営者
役員報酬を高くすれば法人税を節税できますか?
税理士
役員報酬は法人の損金になりますが、原則として定期同額給与などの要件を満たす必要があります。利益が出たから期末だけ増額する、といった自由な調整はできません。
また、定期同額であっても不相当に高額な部分は損金になりません。役員報酬は、法人税だけでなく、経営者個人の所得税・住民税・社会保険料、法人に残す利益まで含めて設定します。
実務上のポイント:通常の定期同額給与の改定は、原則として事業年度開始から3か月以内に行うのが基本です。その後に「利益が出そうだから月額を上げる」「利益が少ないから下げる」といった調整をすると、損金にならない部分が生じる可能性があります。期首に法人利益・個人税・社会保険料まで試算して決めることが重要です。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与
- 東京地裁令和2年1月30日判決(役員給与の不相当に高額な部分)
事前確定届出給与
経営者
役員にもボーナスを出して経費にできますか?
税理士
あらかじめ支給日・支給額を確定し、期限内に届出を行い、届出どおり支給すれば損金算入できる場合があります。
この制度は「届出を出しておけば上限まで自由に支給できる制度」ではありません。支給額や支給日が届出と異なると、実際支給額全額が損金不算入となる可能性があります。設立初年度は通常とは異なる届出期限がある点にも注意が必要です。
期限と実行が重要:通常は、株主総会等の決議日から1か月以内と事業年度開始から4か月以内のいずれか早い日までなど、届出期限があります。新設法人には設立日から2か月以内という別ルールがあります。さらに、届出額・支給日と実際の支給がずれると損金算入できないことがあるため、届出だけでなく資金繰りまで確定してから設定します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与
- 届出額と異なる支給額の損金算入が否認された裁判例あり。
配偶者・親族への給与・役員報酬
経営者
妻や夫を役員にして報酬を払えば節税になりますか?
税理士
実際に会社業務を行っており、職務内容に見合う報酬であれば検討できます。代表者一人に所得を集中させず、実際に働く配偶者・親族へ適正な報酬を支給することで、世帯全体の税負担が下がる場合があります。
ただし、名義だけの役員、勤務実態がない人、仕事内容に対して高額すぎる報酬は危険です。法人税法上、不相当に高額な役員給与は損金不算入となります。
具体的な考え方:たとえば配偶者が請求、経理、顧客対応を継続的に担当しているなら、その職務量に見合う報酬を設定する余地があります。一方、月に数時間しか働かないのに高額な役員報酬を設定するのは危険です。所得税だけでなく、社会保険加入や扶養から外れる影響もあるため、世帯全体の手取りで比較します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与
- 役員給与の相当性は同業類似法人、職務内容、会社規模等を含めて事実認定されます。
従業員への決算賞与
経営者
決算前に従業員へ賞与を出せば、今期の損金にできますか?
税理士
実際に支給すれば原則として損金になります。さらに、決算日時点で未払いでも、各人別に支給額を通知し、通知した全員へ決算日の翌日から1か月以内に通知額どおり支給し、その事業年度で損金経理するなどの要件を満たせば、当期の損金にできる場合があります。
単に決算日に「未払賞与300万円」と仕訳するだけでは足りません。従業員への通知と実際の支払いまで管理する必要があります。役員賞与は別制度です。
未払計上するなら:当期の決算賞与として損金にするには、各従業員ごとの支給額を決算日までに通知し、通知した全員に決算日の翌日から1か月以内に通知額どおり支払い、その事業年度で損金経理する、という要件をセットで満たす必要があります。「賞与総額300万円」とだけ決めて未払計上する処理では足りません。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 法人税関係教材・賞与の損金算入時期
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
借り上げ社宅・役員社宅
経営者
役員社宅にすると本当に節税になりますか?
税理士
法人が住宅を借りて役員へ貸与し、役員から税務上必要な賃貸料相当額を徴収すれば、会社負担部分について役員給与として課税されない場合があります。
ただし、役員本人が直接契約している住宅の家賃を会社が負担する場合、豪華社宅、必要な賃貸料相当額を徴収していない場合などは給与課税の問題が生じます。会社名義にすれば自動的に節税になる制度ではありません。
借上げ社宅の重要点:役員から徴収すべき賃貸料相当額は、住宅の規模や会社所有・借上げなどで計算方法が変わります。借上げの小規模住宅以外では、会社が家主へ払う家賃の50%相当額との比較が必要になるケースもあります。役員本人名義の契約を会社が肩代わりするだけでは原則として社宅扱いにならないため、契約段階から設計します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき
- 豪華社宅・経済的利益・役員給与の問題は個別事実により判断されます。
出張旅費・宿泊費・日当
経営者
社長一人会社でも出張日当を支給できますか?
税理士
実際の業務上の出張について、通常必要と認められる金額であれば可能です。通常必要な旅費・宿泊費・日当は、受け取る役員・従業員側で所得税非課税となる場合があり、会社側では費用となります。国内出張の一定額は消費税上の課税仕入れとして扱われます。
旅費規程を作れば何円でもよいわけではありません。出張目的、場所、期間、役職、社内バランス、同業他社水準などから相当性を説明できる必要があります。
必要なのは「規程+実態」です:旅費規程には、役職別の日当、宿泊費、交通費の扱いを定め、実際の出張について日付・場所・目的を残します。日当は領収書がないから自由額という制度ではなく、同業・同規模企業の水準や社内バランスから通常必要と説明できる額が前提です。社長だけ極端に高額な日当を設定するのは避けます。
根拠法令・通達・判例を見る
- 所得税法
- 国税庁 消費税基本通達 11-2-1
- 直接統一的な代表判例ではなく、通常必要な旅費かどうかを具体的事実から判断します。
社員旅行・福利厚生費
経営者
社員旅行や福利厚生費は節税になりますか?
税理士
会社が従業員の福利厚生として通常必要な範囲で負担する費用は損金になります。社員旅行については、旅行期間、参加対象、参加率、会社負担額、豪華さなどを総合して給与課税の有無を判断します。
「1人10万円までなら絶対安全」という法律上の上限はありません。役員だけの旅行、実質的な私的旅行、不参加者に現金を支給する場合などは注意が必要です。
社員旅行の目安:国税庁は旅行期間や参加割合などを含め総合判断しており、一般に4泊5日以内、全従業員等の50%以上参加といった基準が重要な目安になります。ただし、これを満たせば金額がいくらでも非課税になるわけではありません。役員だけの豪華旅行や、不参加者への現金支給などは給与課税の問題が生じます。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 従業員レクリエーション旅行や研修旅行
- 旅行の目的・対象者・内容から給与性が争われるケースがあります。
企業型確定拠出年金(企業型DC)
経営者
企業型DCを導入すると会社の節税になりますか?
税理士
一定の制度要件を満たす企業型確定拠出年金の事業主掛金は法人側で損金となり、従業員側では拠出時点で給与課税されません。
ただし、決算前に掛金を払って税金だけ減らす商品ではありません。制度導入・管理コスト、従業員の福利厚生、採用・定着まで含めて検討します。
何が節税になるか:会社が制度に基づいて拠出する事業主掛金は会社の損金となり、従業員には拠出時点で給与課税されません。そのため、同額を現金給与で上乗せする場合とは税務上の扱いが異なります。ただし、原則として従業員の老後資金となり自由に引き出せないため、会社の節税だけでなく福利厚生・採用定着策として導入する制度です。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 No.5231 確定拠出年金等の掛金
- 制度自体に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
中小企業退職金共済(中退共)
経営者
中退共の掛金は経費になりますか?
税理士
中退共の掛金は、法人では損金、個人企業では必要経費となり、従業員側では掛金拠出時に給与課税されません。従業員の将来の退職金を準備しながら当期の所得を減らせます。
ただし掛金という現金支出があります。節税のためだけに導入するのではなく、退職金制度・人材定着制度として必要かどうかを判断します。
実務上の注意:中退共は会社が掛金を積み立て、退職時には原則として中退共から従業員へ退職金が直接支給される仕組みです。税務上は実際に支払った掛金が法人の損金・個人事業の必要経費になります。決算日に未払計上しただけで掛金を経費にするものではないため、支払時期を確認してください。
根拠法令・通達・判例を見る
- 中小企業退職金共済事業本部
- 中退共 税法上の取扱い
- 制度自体に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
役員退職金
経営者
役員退職金は大きな節税になりますか?
税理士
適正額の役員退職金は法人では損金となり、役員個人側では原則として退職所得として課税されます。退職所得控除や一定の場合の2分の1課税があるため、長期的な法人税・所得税設計の重要項目です。
ただし、不相当に高額な部分は損金不算入です。「功績倍率3倍なら絶対安全」といった法律上の保証はありません。在任期間、最終報酬、会社規模、功績、同業類似法人の水準等から判断されます。
出口の税務:役員個人側では原則として退職所得として他の所得と分離して計算されますが、勤続年数等によって退職所得控除や2分の1課税の扱いが変わります。特に役員等としての勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等は、控除後残額の2分の1課税が使えません。法人側でも金額の相当性と退職の事実が重要です。
交際費の1人1万円基準・中小法人800万円枠
経営者
取引先との飲食代はいくらまで全額経費にできますか?
税理士
2024年4月1日以後の一定の社外飲食費について、1人当たり1万円以下で必要事項を保存している場合は交際費等の範囲から除外できます。また、一定の中小法人には年800万円までの定額控除限度額があります。
1人1万円以下なら何でも会議費になるわけではありません。会議費・交際費・福利厚生費は目的と実態で判定します。
使い分け:1人1万円以下の社外飲食費が所定の記録を保存して交際費等から除外できる場合、その飲食費は800万円枠を消費しません。一方、1人1万円を超える飲食費など交際費等に該当する支出は、一定の中小法人なら年800万円まで損金算入できる制度があります。参加者名、人数、店名、目的などを記録しておくことが前提です。
根拠法令・通達・判例を見る
- 租税特別措置法
- 国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
- 国税不服審判所昭和52年3月31日裁決(観光バス運転手等への心付けと交際費等)
設備投資・決算対策
設備・費用・税額控除を決算前に確認
10万円未満・一括償却資産・40万円未満特例
経営者
パソコンや設備は、40万円未満なら全部経費にできますか?
税理士
2026年度税制改正により、一定の中小企業者等が使える少額減価償却資産特例は、2026年4月1日以後の一定の取得等について40万円未満まで拡大されました。年間300万円限度などの要件があります。
資産購入時には、10万円未満の即時費用化、20万円未満の一括償却資産、40万円未満特例、通常償却を比較します。全額経費にできるから常に最有利とは限らず、赤字年度や融資を意識する場合は通常償却の方が適することもあります。
40万円だけ覚えるのは危険です:10万円未満は原則即時費用化、10万円以上20万円未満は3年均等の一括償却資産を選べる場合があり、一定の中小企業者等は40万円未満を年間合計300万円まで即時費用化できます。2026年4月1日以後は30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。どの方法が有利かは利益状況や償却資産税も含めて比較します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 租税特別措置法
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱
- 資産単位・取得価額・事業供用時期などは個別事実により争点となります。
中古車・中古設備の短縮耐用年数
経営者
4年落ちの中古車を買うと節税になるのはなぜですか?
税理士
中古資産は、一定の場合、法定耐用年数より短い中古資産の耐用年数を用いることができます。たとえば一般的な普通乗用車で4年を経過したものは、簡便法で耐用年数2年となることがあります。
ただし、法人が定率法を採用しているか、個人事業主が定額法か、いつ事業供用したか、私用割合があるかで初年度の経費額は変わります。決算直前に買っただけで1年分全額経費になるわけではありません。
具体例:法定耐用年数6年の普通乗用車を4年経過後に取得した場合、簡便法では「残存年数2年+経過年数4年×20%」=2.8年となり、1年未満を切り捨てて耐用年数2年となることがあります。ただし最低2年です。取得しても事業に使い始めていなければ償却できず、初年度は原則として事業供用月から月割りになります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 所得税法
- 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数
- 直接対応する代表的公表判例・裁決例は確認できないため、法令・耐用年数省令・通達を主な根拠とします。
中小企業投資促進税制
経営者
設備投資をする会社は中小企業投資促進税制を使えますか?
税理士
一定の中小企業者等が対象設備を指定事業の用に供した場合、30%特別償却または一定の場合7%税額控除を選択できます。
特別償却は費用の前倒しですが、税額控除は税金そのものを直接減らします。対象業種、対象設備、取得価額などの要件があるため、設備購入後ではなく購入前に確認するのが安全です。
具体例:500万円の対象設備なら、30%特別償却を選べば通常の減価償却とは別に150万円を前倒しで償却できるイメージです。一方、7%税額控除の対象者なら最大35万円を法人税・所得税から直接控除する計算になります。税額控除は主に資本金3,000万円以下の法人や個人が対象で、対象設備・業種・最低取得価額にも細かな要件があります。
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- 租税特別措置法
- 中小企業庁 税制支援
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
中小企業経営強化税制
経営者
中小企業経営強化税制なら、設備を全額経費にできますか?
税理士
要件を満たす対象設備であれば、即時償却により取得価額全額を事業供用年度に費用化できる場合があります。また、一定の場合は税額控除を選択できます。
単に中小企業が設備を買えば使える制度ではありません。経営力向上計画、対象設備、対象事業、新品要件、取得・事業供用時期等を確認します。手続きのタイミングが重要で、購入後に気付いても間に合わないケースがあります。
具体例:500万円の対象設備について即時償却を選べるなら、取得年度に500万円全額を償却できます。税額控除を選ぶ場合は、一定の特定中小企業者等なら10%、それ以外の対象中小企業者等では7%となるケースがあります。即時償却は主に課税繰延べ、税額控除は税金自体を減らす制度なので、当期利益と将来利益を見て選択します。計画認定など事前手続も重要です。
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- 租税特別措置法
- 中小企業庁 経営強化税制
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
中小企業向け賃上げ促進税制
経営者
従業員の給料を上げると、法人税・所得税が安くなりますか?
税理士
一定の要件を満たせば、給与を通常の人件費として経費にしたうえで、さらに給与増加額の一定割合を税額から直接控除できます。
2026年4月1日以後開始事業年度の中小企業向け制度では、対象給与総額の増加率等に応じた控除率が設けられています。役員給与は原則として対象ではありません。賃上げ額そのものより税額控除額は小さいため、節税目的だけで無理な賃上げを行う制度ではありません。
具体例:中小企業向け制度では、雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増なら15%、2.5%以上増なら30%の基本控除率が目安です。たとえば対象給与が前年1,000万円から1,025万円へ増えた場合、増加額25万円×30%=7万5,000円が基本の税額控除イメージです。実際には法人税額等の控除上限があり、2026年度改正後の上乗せ要件も確認します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 租税特別措置法
- 中小企業庁 賃上げ促進税制
- 現行制度の一般適用に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
研究開発税制
経営者
商品開発や研究費が多い会社には節税制度がありますか?
税理士
一定の試験研究費を支出している事業者では、適格な試験研究費の一定割合を法人税・所得税から控除できる場合があります。製造業や技術系スタートアップでは重要な制度です。
ただし、新商品を作ったからすべて試験研究費になるわけではありません。通常の生産、品質管理、単なるデザイン変更などとの区分が必要です。
対象判定が最重要です:税法上の「試験研究費」は、会社が会計上「研究開発費」と呼んでいる費用と完全には一致しません。新製品・新技術のための試験研究に直接要した人件費・原材料費等が中心で、通常の製造、日常的な品質管理、単なるデザイン変更などは対象外となり得ます。まず活動自体が試験研究か、その次に費用が直接対応しているかを二段階で確認します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 租税特別措置法
- 国税庁 No.5441 試験研究費の税額控除
- 現行2026年度改正部分に関する直接公表判例は確認できません。
短期前払費用
経営者
決算前に1年分の家賃や保険料、SaaS代を前払いすれば全額経費にできますか?
税理士
一定の短期前払費用については可能です。支払日から1年以内に提供を受ける継続的な役務について、毎期継続して同じ処理をするなどの要件を満たす場合、支払年度の損金・必要経費にできる取扱いがあります。
利益が出た年だけ前払いする、1年を超える契約、物品購入、成果物型コンサルなどは安易に適用できません。生命保険は保険固有の資産計上ルールも確認します。
具体例:3月決算法人が3月中に、翌4月から翌年3月までの事務所家賃1年分を実際に前払いし、毎期継続して同じ処理をする場合などが典型例です。ポイントは「支払日から1年以内に受ける継続的役務」であることです。2年分の前払いや、物品購入、成果物の引渡しが中心の契約までこの特例で落とすことはできません。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税基本通達 2-2-14
- 国税庁 No.5380 短期前払費用
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
未払費用・未払金の債務確定
経営者
決算までに支払っていない費用も、今期の経費にできますか?
税理士
支払っていなくても、決算日までに債務が確定していれば今期の損金にできる場合があります。判断の中心は支払日ではなく、債務の成立、具体的な給付原因事実の発生、金額を合理的に算定できるかです。
請求書が翌月に届くというだけなら今期費用となる場合がありますが、契約しただけでサービス提供が翌期なら今期の費用にはできません。固定資産や役員給与等は別の損金算入要件も確認します。
3つの確認:一般の費用では、決算日までに①債務が成立している、②具体的な給付原因事実が発生している、③金額を合理的に算定できる、という債務確定の考え方が基本です。たとえば3月中に業務が完了し、請求書だけ4月に届く外注費なら3月期の費用となる余地があります。契約しただけで役務提供が翌期なら前倒しできません。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 法人税基本通達 2-2-12
- 債務確定の判断は契約内容・役務提供状況等の具体的事実により判断されます。
貸倒損失・貸倒引当金
経営者
回収できない売掛金は経費にできますか?
税理士
一定の要件を満たせば貸倒損失として損金・必要経費にできます。ただし、支払いが遅れている、連絡が取れないというだけで直ちに貸倒損失にはできません。法的な債権切捨て、全額回収不能が明らかな場合、一定期間取引停止後の一定債権など、それぞれ要件があります。
一定の中小法人等では貸倒引当金を利用できる場合もあります。債務者の財務状況、督促記録、法的整理資料等を保存します。
貸倒損失と引当金は別物です:貸倒損失は、法的に債権が切り捨てられた、全額回収不能が明らかになった、一定期間取引停止後の売掛債権であるなど、実際の貸倒れ要件を満たしたときの損失です。一方、貸倒引当金は一定の対象者が将来の貸倒れ見込みをあらかじめ費用化する制度で、単なる「回収が遅い売掛金」を好きな金額だけ引き当てる制度ではありません。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 No.5320 貸倒損失
- 貸倒損失は事実認定型の争いが多く、法的・事実上の回収不能性を個別に判断します。
法人生命保険
経営者
法人で生命保険に入れば節税できますか?
税理士
現在は「法人保険に入れば保険料を全額経費にできる」という単純な制度ではありません。一定の定期保険・第三分野保険で最高解約返戻率が50%を超える場合などには、保険料の一部を資産計上する取扱いがあります。
また、解約返戻金を受け取れば益金が発生します。保障、役員退職金準備、将来の資金需要、課税繰延べをまとめて検討し、「節税保険」という営業説明だけで判断しないことが重要です。
損金割合だけで判断しない:たとえば一定の定期保険等で最高解約返戻率が70%超85%以下の場合、資産計上期間中は保険料の60%を資産計上する取扱いがあります。つまり、100万円払っても100万円全額がその年の損金とは限りません。さらに解約時には返戻金が益金となるため、保障目的・退職金準備・解約予定時期を含めて出口まで設計します。
根拠法令・通達・判例を見る
- 法人税法
- 国税庁 No.5364-2 定期保険及び第三分野保険
- 2019年通達改正後の一般的処理について、本稿で代表的直接判例は掲げません。
消費税
免税・インボイス・簡易課税・還付を比較
創業期の消費税免税
経営者
起業したばかりなら、消費税は2年間払わなくてよいのでしょうか?
税理士
必ず2年間免税になるわけではありません。創業直後は基準期間がないため免税となるケースがありますが、新設法人で資本金等1,000万円以上、インボイス登録、特定期間、特定新規設立法人、課税事業者選択などに該当すると課税事業者になります。
「2年間」は必ず24か月という意味でもありません。設立1期目と2期目の2事業年度を指すため、初年度が短ければ実際の免税期間も短くなります。
「2年間免税」は決め打ちしない:新設法人・新規開業個人は基準期間がないことから免税になるケースがありますが、資本金1,000万円以上の新設法人、インボイス登録、特定期間判定などで創業早期から課税になることがあります。また「2年間」は必ず24か月という意味ではなく、法人の第1期が短ければ実際の免税期間も短くなります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
- 現行の一般免税判定に関する代表的直接公表判例は本稿では掲げません。
消費税の特定期間判定
経営者
年間売上1,000万円以下でも、2年目から消費税がかかることがありますか?
税理士
あります。基準期間だけでなく特定期間の課税売上高等による判定があります。法人では原則として前事業年度開始の日以後6か月間、個人では原則として前年1月から6月までが問題になります。一定の場合、課税売上高に代えて給与等支払額で判定できる制度があります。
創業直後に急成長した会社ほど、「まだ2期目だから免税」と思い込まないことが重要です。
具体的な見方:法人なら原則として前事業年度開始後6か月、個人なら前年1月~6月について判定します。特定期間の課税売上高が1,000万円を超えても、一定の場合は課税売上高に代えて給与等支払額で判定できます。創業直後に売上だけ急増した会社では結果が変わる可能性があるため、年間売上だけで免税判定をしないことが重要です。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 特定期間の判定に関する質疑応答
- 直接関連する代表的公表判例は本稿では掲げません。
インボイス登録をしない選択
経営者
免税事業者なら、あえてインボイス登録しない方が得ですか?
税理士
事業内容によっては合理的です。一般消費者向けの飲食・美容・小売など、顧客が仕入税額控除を必要としないB2C事業では、取引上インボイス登録が必須でない場合があります。その場合、他の課税要件に該当しなければ免税維持が有利なことがあります。
一方、法人顧客中心、元請から登録を求められる業種では、税金だけでなく売上・取引条件への影響を比較する必要があります。
判断軸は「税金」より取引先です:一般消費者が中心なら、顧客は通常インボイスによる仕入税額控除を必要としないため、免税を維持する選択がしやすい場合があります。一方、法人・事業者向け取引が中心なら、未登録によって価格交渉や取引継続に影響することがあります。登録による消費税負担と、未登録による売上への影響を比較して決めます。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 インボイス制度特設サイト
- インボイス制度開始後日が浅く、制度そのものに関する代表的直接公表判例は限定的です。
インボイス2割特例・個人事業者の3割特例
経営者
2割特例はいつまで使えますか?2027年以後の3割特例とは何ですか?
税理士
2割特例は、インボイス登録を機に免税から課税になった一定事業者について、納付税額を売上税額の2割とする経過措置です。対象期間終了後、2027年・2028年には一定の個人事業者向けに3割特例が設けられています。法人には同じ後継措置はありません。
個人事業主でも業種によっては簡易課税の方が有利な場合があります。法人は2割特例終了後に本則課税と簡易課税を比較する必要があります。
計算イメージ:2割特例なら売上に係る消費税額が100万円の場合、原則として納付税額は20万円という計算です。2027年・2028年分の一定の個人事業者に設けられた3割特例なら同じ売上税額100万円に対し30万円となります。3割特例は法人には使えず、個人でも基準期間の課税売上高1,000万円以下などの要件があります。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 インボイス制度の令和8年度税制改正
- 新しい経過措置のため、直接公表判例は確認できません。
簡易課税制度と本則課税の比較
経営者
消費税は本則課税と簡易課税のどちらが得ですか?
税理士
業種と実際の仕入構造によります。簡易課税では実際の仕入税額ではなく、事業区分ごとのみなし仕入率を用いて計算します。仕入れの少ないサービス業などでは本則課税より有利になることがあります。
逆に、大規模設備投資、大量仕入れ、高額外注がある会社では本則課税が有利な場合があります。基準期間の課税売上高、届出期限、原則2年間の継続適用、高額資産取得による制限なども確認します。
具体例:第5種事業のみなし仕入率50%なら、売上に係る消費税額が100万円の場合、簡易課税では概算50万円を仕入税額控除するイメージです。実際の課税仕入れが少ない事業では有利になりやすく、設備投資・仕入れが大きい事業では本則課税が有利になりやすいです。届出期限や原則2年間の継続適用もあるため、将来の投資予定まで見て選びます。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 No.6505 簡易課税制度
- 簡易課税の事業区分・届出をめぐる裁判例はありますが、個別業種・事実関係に左右されます。
大型設備投資時の消費税還付
経営者
創業初年度に高額な設備を買う場合、消費税免税を捨てた方が得なこともありますか?
税理士
あります。免税事業者のままでは設備投資に含まれる消費税を仕入税額控除して還付請求できません。一方、事前に課税事業者を選択し、本則課税で計算した結果、売上税額より仕入税額が大きければ還付を受けられる可能性があります。
ただし、高額特定資産を取得した場合、その後一定期間、免税に戻れない、簡易課税を選べない等の制限が生じます。初年度の還付額だけで判断せず、数年間の消費税負担まで試算します。
具体例:税抜2,000万円の設備を購入すれば、標準税率10%なら設備に含まれる消費税は200万円です。仮に同じ課税期間の売上に係る消費税が50万円で、他の調整を無視すれば、本則課税では差額150万円が還付方向になるイメージです。ただし、高額特定資産を取得すると、その後一定期間は免税へ戻ることや簡易課税の選択に制限が生じるため、還付額だけで判断しません。
根拠法令・通達・判例を見る
- 消費税法
- 国税庁 No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例
- 最高裁令和5年3月6日判決(課税仕入れの用途区分。課税・非課税売上双方に対応する仕入れの判断)
節税の目的は、税金をゼロにすることではありません
100万円の不要な設備を買って税金が30万円減っても、手元資金は70万円減ります。節税だけを目的に不要な支出を増やすのは本末転倒です。
一方、もともと必要な設備投資、必要な人材への賃上げ、将来必要な退職金の準備、使える所得控除・税額控除、本来認められる経費の適正計上、本則課税・簡易課税の比較などは、事業上必要な行動と節税を両立できます。
特に、青色申告、役員報酬、消費税の免税・課税選択、設備税制などは、決算直前では間に合わないことがあります。設立前・事業年度開始時・設備購入前に確認することが重要です。
町田・相模原で、
「自社に合う節税」を整理したい方へ
同じ売上規模でも、仕入れの少ないコンサル会社、多額の設備投資をする製造業、従業員を増やす飲食店、家族経営の会社では優先すべき制度が異なります。タクスリンク税理士事務所では、税金だけでなく資金繰り・将来の納税額まで見て判断します。
基準日:2026年8月26日
本ページは一般的な税務情報です。実際の適用可否・有利不利は、事業内容、所得金額、資本金・株主構成、青色申告、消費税の課税状況、過去の申告状況等によって異なります。制度実行前に最新の法令・通達・公表資料をご確認ください。
