設備投資を検討している会社から、「中小企業経営強化税制を使えば、設備を買った年に全額経費にできますか?」というご相談を受けることがあります。
結論からいうと、中小企業経営強化税制の要件を満たす対象設備であれば、一定の設備について即時償却を選択し、取得価額の全額を事業供用した年度の損金にできる場合があります。
ただし、単に「中小企業が設備を買った」というだけでは適用できません。
経営力向上計画の認定、対象設備、対象事業、取得価額、新品要件、事業供用時期などの要件を満たす必要があります。
また、「買った年」というより、正確にはその設備を実際に事業の用に供した事業年度が基準です。決算日までに購入していても、設置や稼働が翌期であれば、原則として当期の即時償却にはなりません。
経営者
中小企業経営強化税制を使えば、設備を買った年に全額経費にできますか?
税理士
要件を満たす設備であれば、即時償却により、取得価額の全額をその年度の損金にできる場合があります。
ただし、中小企業が設備を買えば何でも全額経費にできる、という制度ではありません。
対象設備であること、経営力向上計画の認定を受けていること、指定事業の用に供していることなど、いくつもの要件があります。
経営者
「買った年」に全額経費になる、という理解でよいですか?
税理士
正確には、「買った年」ではなく、その設備を実際に事業の用に供した事業年度です。
たとえば、12月決算の会社が12月に機械を購入しても、設置や試運転が終わらず、実際の稼働が翌年1月になった場合、原則として12月期の即時償却にはなりません。
中小企業経営強化税制では、取得しただけでなく、対象期間内に国内の指定事業の用に供していることが重要です。
経営者
どんな設備でも対象になりますか?
税理士
いいえ。対象設備は限定されています。
現行制度では、A類型、生産性向上設備、B類型、収益力強化設備、D類型、経営資源集約化設備、E類型、経営規模拡大設備などがあります。
以前存在したC類型は、2025年4月1日に廃止されています。
また、設備の種類ごとに取得価額の基準があります。たとえば、国税庁の案内では、機械装置は1台または1基160万円以上、工具・器具備品は30万円以上、建物附属設備は60万円以上、一定のソフトウェアは70万円以上などとされています。
中古資産は原則として対象にならず、新品であることも重要です。
経営者
機械なら全額経費にできるということですか?
税理士
対象になる機械装置等で、要件を満たす場合は、普通償却と特別償却を合わせて、取得価額100%まで償却できることがあります。
たとえば、対象となる機械を500万円で取得して、その年度中に事業の用に供した場合、通常の減価償却なら数年に分けて経費にするところを、その年度に500万円全額を償却できるイメージです。
ただし、これは500万円を余分に経費にできる制度ではありません。
本来は数年かけて減価償却するものを、最初の年度に前倒しで損金算入する制度です。
経営者
では、とにかく即時償却を選べば節税になるということですか?
税理士
そこは慎重に判断する必要があります。
中小企業経営強化税制では、即時償却ではなく、税額控除を選択できる場合もあります。
一般的な対象設備については、原則として取得価額の7%、一定の中小企業者等では10%の税額控除を選べます。
ただし、税額控除には、その年度の調整前法人税額の20%という控除限度があり、控除しきれない一定額については1年間の繰越制度があります。
つまり、同じ設備について、即時償却と税額控除を両方同時に使うことはできません。どちらが有利かを事前に試算する必要があります。
経営者
利益が出ているなら即時償却の方がよいのではないですか?
税理士
利益が大きく、今期の税負担を強く下げたい場合は、即時償却が有利になることがあります。
一方で、即時償却は減価償却を前倒しする制度なので、翌期以降の減価償却費は少なくなります。
また、法人税額が発生している会社では、7%または10%の税額控除を選んだ方が、トータルで有利になることもあります。
特に、今期だけでなく翌期以降の利益見込み、法人税、地方税、資金繰りまで含めて比較する必要があります。
経営者
経営力向上計画は、設備を買った後に出せばよいですか?
税理士
原則として、設備取得前に経営力向上計画の認定を受ける必要があります。
A類型、B類型、D類型については、例外的に設備取得後の申請が認められる場合がありますが、その場合でも設備取得後60日以内に申請する必要があります。
そのため、「決算直前に設備を買って、申告のときに慌てて手続すればよい」という制度ではありません。
設備投資を決める前、少なくとも発注前の段階で、税制適用の可否と手続スケジュールを確認しておくべきです。
経営者
建物や建物附属設備も全額経費になりますか?
税理士
そこは誤解しやすい点です。
現行制度では、E類型に該当する建物およびその附属設備については、機械装置等と異なり、100%即時償却ではありません。
原則として基準取得価額の15%、一定の賃上げ要件等を満たす特定建物等については25%の特別償却とされています。
したがって、「中小企業経営強化税制なら、どんな設備でも全額経費」という理解は誤りです。
経営者
リースでも使えますか?
税理士
リースの場合は契約内容の確認が必要です。
特に、所有権移転外リース取引については、即時償却の適用がないと整理されています。
設備を購入するのか、リースにするのか、リースの場合にどのような契約形態なのかによって、適用できる制度や選択肢が変わります。
リース契約を結ぶ前に、税制適用の可否を確認してください。
経営者
実務上、最初に何を確認すればよいですか?
税理士
まず、購入予定設備の内容、金額、新品か中古か、納品予定日、設置予定日、使用開始予定日を確認します。
次に、自社が中小企業者等に該当するか、適用除外事業者に該当しないか、営んでいる事業が指定事業に該当するかを確認します。
そのうえで、A類型、B類型、D類型、E類型のどれで申請するか、工業会証明書または経済産業局の確認書が必要か、経営力向上計画の申請・認定がいつまでに必要かを確認します。
最後に、即時償却と税額控除のどちらが有利かを、法人税額の見込みと合わせて試算します。
経営者
中小企業経営強化税制を使うときの一番の注意点は何ですか?
税理士
設備取得前に確認することです。
中小企業経営強化税制は、設備を買った後に領収書だけ見て判断する制度ではありません。
設備の種類、金額、証明書、確認書、経営力向上計画、認定時期、事業供用日がそろって初めて検討できます。
決算対策として使える制度ではありますが、決算直前に慌てて使う制度ではありません。
設備投資を検討し始めた段階で、税理士に相談するのが安全です。
町田・相模原で設備投資の節税を検討している方へ
中小企業経営強化税制は、要件を満たせば大きな節税効果が期待できる制度です。
しかし、対象設備、取得価額、経営力向上計画、証明書、事業供用時期、即時償却と税額控除の有利不利を誤ると、想定していた節税効果が得られないことがあります。
特に、決算直前の設備投資では、「買ったが今期の事業供用になっていない」「経営力向上計画の認定が間に合わない」「税額控除の方が有利だった」といった失敗が起こりやすくなります。
町田・相模原で、設備投資、中小企業経営強化税制、即時償却、税額控除の活用を検討している方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の適用可否は、会社の規模、事業内容、設備の種類、取得価額、取得時期、事業供用日、経営力向上計画の認定状況、証明書・確認書の取得状況などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




