決算が近づくと、まだ支払っていない請求書や、決算後に届く請求書について、「これは今期の経費にできるのか」という質問を受けることがあります。
結論からいうと、決算日までに支払っていなくても、一定の要件を満たせば今期の損金、つまり法人税上の経費にできる場合があります。
ただし、単に「契約した」「見積書がある」「いずれ払う予定である」というだけでは足りません。
法人税では、販売費・一般管理費その他の費用について、事業年度終了日までに債務が確定していないものは損金から除かれます。したがって、判断の中心は「支払ったかどうか」ではなく、「決算日までに債務が確定しているか」です。
経営者
決算までにまだ払っていない経費も、今期の経費にできますか?
税理士
はい。決算日までにまだ支払っていなくても、一定の要件を満たしていれば今期の経費として計上できます。
ポイントは、支払った日ではありません。
決算日までに、その経費について債務が確定しているかどうかです。
経営者
債務が確定している、とはどういう意味ですか?
税理士
法人税基本通達2-2-12では、債務が確定しているかどうかについて、原則として3つの要件を示しています。
1つ目は、決算日までにその費用に係る債務が成立していることです。
2つ目は、決算日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していることです。
3つ目は、決算日までに、その金額を合理的に算定できることです。
この3つを満たしているかを確認します。
経営者
少し難しいですね。実務では何を見ればよいですか?
税理士
実務では、次の3点で考えると分かりやすいです。
まず、決算日までに会社に支払義務が発生しているか。
次に、決算日までに商品やサービスの提供を受けているか。
そして、金額を合理的に計算できる資料があるか。
つまり、「払ったかどうか」ではなく、「決算日までにサービス等を受け、金額も説明できる状態か」が重要です。
経営者
たとえば、3月決算で、3月中に修理が終わり、請求書と支払いが4月になる場合はどうですか?
税理士
その場合は、3月期の経費にできる可能性が高いです。
たとえば、3月25日にエアコン修理が完了し、修理代が11万円で、請求書が4月5日に届き、支払いが4月末になるケースを考えます。
修理という役務提供は3月中に完了しています。
会社の支払義務も発生しており、金額も請求書、見積書、作業完了報告書などから合理的に確認できるのであれば、3月期に「修繕費/未払金」などとして計上できる可能性があります。
経営者
請求書が決算日までに届いていなくても大丈夫ですか?
税理士
請求書が決算日までに届いていないことだけを理由に、直ちに翌期の経費になるわけではありません。
法人税基本通達2-2-12の3要件には、「決算日までに請求書を受け取っていること」は入っていません。
ただし、請求書がない場合には、契約書、発注書、見積書、納品書、作業完了報告書、メールなどから、決算日までに何が提供され、なぜその金額を計上したのかを説明できる状態にしておく必要があります。
経営者
逆に、今期の経費にするのが難しいのはどんなケースですか?
税理士
たとえば、3月20日にコンサルティング契約を結び、料金120万円が決まっていたとしても、実際のコンサルティング業務がすべて4月以降であれば、3月期の経費として計上するのは基本的に難しくなります。
契約があるだけでは、決算日までに具体的な給付を受けたとはいえないためです。
法人税上は、単に「払う予定がある」だけでなく、決算日までにその費用に対応する役務提供や給付が行われているかが重要です。
経営者
継続的な保守契約や顧問契約の場合はどうなりますか?
税理士
1年間継続する保守契約、顧問契約、システム利用契約などは、契約内容に応じて、決算日までに提供を受けた期間対応部分を確認します。
たとえば、毎月サービス提供を受ける契約で、決算日までに当期分のサービス提供を受けている部分については、未払いでも当期費用として計上できる場合があります。
一方、翌期以降の期間に対応する部分をまとめて今期の経費にすることは、原則としてできません。
継続的なサービスでは、「どの期間に対応する費用か」を確認することが重要です。
経営者
未払費用と未払金は、どちらで処理すればよいですか?
税理士
会計上は、継続的な役務提供に係るものを未払費用、単発の取引や物品購入、修繕などに係るものを未払金として処理することが多いです。
ただし、法人税上は、科目名よりも実態が重要です。
「未払費用」として処理していても、「未払金」として処理していても、決算日までに債務が確定しているかどうかを確認します。
科目名だけを整えても、債務確定の実態がなければ、今期の損金として認められない可能性があります。
経営者
決算対策として、期末に見積額を多めに未払計上するのはどうですか?
税理士
注意が必要です。
決算対策として、実際には役務提供を受けていない費用や、金額の根拠が乏しい費用を大量に未払計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。
未払計上する場合は、少なくとも、契約書、発注書、納品書、作業完了報告書、請求書、見積書、メールなどから、決算日までに何が完了し、なぜその金額を計上したのかを説明できる状態にしておく必要があります。
経営者
パソコンや機械を買った場合も、まだ払っていなければ未払経費にできますか?
税理士
そこは別の注意点があります。
パソコン、機械、設備工事などは、支払義務が確定していても、その全額をそのまま経費にできるとは限りません。
固定資産に該当する場合は、資産計上して減価償却する必要があります。
つまり、「未払いでも債務が確定しているか」という問題と、「そもそも一括で経費にできる支出か」という問題は別です。
経営者
役員賞与や役員報酬も、未払いなら同じように処理できますか?
税理士
役員給与、役員賞与、退職金などは、別個の損金算入要件があるため、単純に通常の未払経費と同じようには判断できません。
たとえば役員賞与は、事前確定届出給与などの要件を満たしているかが問題になります。
この記事で説明している債務確定基準は、主に一般的な販売費、一般管理費、外注費、修繕費、専門家報酬、通信費などを念頭に置いたものです。
役員給与、賞与、退職金、租税公課などは、別途確認が必要です。
経営者
結局、決算時には何を確認すればよいですか?
税理士
決算時には、次の順番で確認してください。
まず、その費用について契約や発注があるか。
次に、決算日までに商品やサービスの提供を受けているか。
さらに、決算日時点で支払義務が具体的に発生しているか。
最後に、金額を合理的に算定できる資料があるかです。
この確認ができるものは、未払いでも今期の未払費用・未払金として計上できる可能性があります。
反対に、契約しただけ、見積書があるだけ、翌期にサービスを受けるだけ、というものは、今期の経費にするのは難しいと考えてください。
町田・相模原で決算前の経費計上に不安がある方へ
決算前後の経費は、支払日だけで判断すると、今期に計上すべき費用を漏らしたり、逆に翌期の費用を前倒しで計上してしまったりすることがあります。
特に、外注費、修繕費、専門家報酬、システム利用料、保守料、広告費などは、請求書の到着日や支払日だけでなく、役務提供の完了時期、契約内容、金額の確定状況を確認する必要があります。
町田・相模原で、決算前の経費計上、未払費用・未払金の整理、法人決算に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、契約内容、役務提供の時期、証拠資料、金額の確定状況、資産計上の要否、別段の損金算入要件の有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




