個人で以前から使っていた車を、開業後に事業用へ変えた場合でも、減価償却費を必要経費にできる可能性があります。
ただし、ここでよく誤解されるのが、開業時点の中古車相場をそのまま取得価額にするわけではない、という点です。
基本的には、最初にその車を取得した金額を出発点にして、自家用として使っていた期間に対応する税務上の減価額を差し引き、事業用へ転用した時点の未償却残高を計算します。
個人事業主
個人で使っていた車を、開業後に事業用へ変えました。
この場合、減価償却はできますか?
税理士
はい。個人で使っていた車を開業後に事業用へ変えた場合でも、事業に使っている部分については減価償却費を必要経費にできる可能性があります。
ただし、開業時点の中古車価格をそのまま取得価額にするわけではありません。
まず、車を最初に購入したときの取得価額を確認し、自家用として使っていた期間に対応する減価額を差し引いて、事業用へ変えた時点の未償却残高を計算します。
個人事業主
開業した時点の中古車査定額で計上するのではないのですか?
税理士
原則として、開業時点の中古車査定額をそのまま固定資産の取得価額にするわけではありません。
自家用として使っていた車を事業用へ転用した場合は、
当初の取得価額 - 自家用期間に対応する減価の額 = 事業転用時の未償却残高
という流れで考えます。
つまり、今いくらで売れるかではなく、最初にいくらで取得し、自家用として使っていた期間に税法上どれだけ価値が減ったものと扱うかが出発点になります。
個人事業主
自家用として使っていた期間の減価は、普通の減価償却と同じですか?
税理士
少し違います。
自家用として使っていた期間は、事業用資産として減価償却していたわけではありません。
そのため、非業務用期間の減価額は、通常の事業用の減価償却費を過去にさかのぼって計算するのではなく、所得税法施行令85条のルールに従って計算します。
具体的には、同種の減価償却資産の法定耐用年数を1.5倍した年数を使い、旧定額法に準じて減価額を計算します。
個人事業主
法定耐用年数を1.5倍する、というのはどういう意味ですか?
税理士
たとえば、普通乗用車の法定耐用年数が6年である場合、自家用として使っていた期間の減価額を計算するときは、その1.5倍である9年を使います。
そして、9年に対応する旧定額法の償却率を使って、自家用期間の減価額を計算します。
この非業務用期間の計算では、期間の端数についてもルールがあります。
6か月以上は1年とし、6か月未満は切り捨てます。
個人事業主
具体的な計算例を教えてください。
税理士
たとえば、普通乗用車を新車で300万円で購入し、3年間自家用として使った後、個人事業で100%事業用に転用したとします。
普通乗用車の法定耐用年数を6年とすると、非業務用期間の計算では、その1.5倍である9年を使います。
9年の旧定額法償却率を0.111とすると、自家用期間の減価額は次のように計算します。
300万円 × 0.9 × 0.111 × 3年 = 899,100円
したがって、事業用へ転用した時点の未償却残高は、
3,000,000円 - 899,100円 = 2,100,900円
となります。
この2,100,900円が、事業用へ変えた時点で残っている税務上の価額です。
個人事業主
では、開業時に中古車価格が150万円だったとしても、150万円で計上するわけではないのですね。
税理士
そのとおりです。
開業時の中古車相場が150万円だったとしても、税務上は、原則として当初取得価額から非業務用期間の減価額を差し引いて計算します。
もちろん、実際の資料が不足している場合や、特殊な事情がある場合には個別確認が必要ですが、基本形は開業時の中古車査定額ではなく、当初取得価額と非業務用期間の減価額から計算する方法です。
個人事業主
転用後の減価償却は、そこから普通に計算すればよいですか?
税理士
事業用へ転用した後は、転用時の未償却残高を踏まえて、通常の減価償却のルールに従って計算します。
ただし、償却方法を判定するときの取得日は、事業用へ転用した日ではなく、その車を実際に取得した日です。
この点を間違えると、償却方法や計算期間を誤る可能性があります。
また、その年の途中から事業用に使い始めた場合は、事業に使った月数に応じて月割計算を行います。
個人事業主
もともと中古車として買っていた場合はどうなりますか?
税理士
もともと本人が中古車として購入していた車を、その後に事業用へ転用する場合は、中古資産の耐用年数を使えるかどうかも確認します。
国税庁のタックスアンサーでも、中古資産を非業務用から業務用へ転用した場合の減価償却について、一定の場合には中古資産の耐用年数を使用できることが示されています。
そのため、中古車の場合は、購入日、購入価額、新車登録年月、車種、取得時点での経過年数を確認する必要があります。
個人事業主
平日は仕事で使いますが、休日は家族でも使います。この場合、全額を経費にできますか?
税理士
全額を必要経費にできるとは限りません。
転用後も私用が残る場合は、減価償却費、自動車保険、車検代、修理代、ガソリン代などについて、事業使用割合に応じて家事按分する必要があります。
たとえば、走行距離、使用日数、業務利用の記録などから、合理的に事業使用割合を説明できるようにしておくことが重要です。
事業に使っている実態があることと、その割合を説明できること。この2つがないと、税務調査で否認リスクが高くなります。
個人事業主
実際に計算するためには、何を準備すればよいですか?
税理士
まず、車を購入したときの売買契約書、注文書、領収書、ローン契約書などを確認します。
次に、購入年月日、購入価額、新車か中古車か、車種、事業用へ転用した年月日を確認します。
中古車の場合は、新車登録年月や取得時点での経過年数も必要です。
さらに、転用後も私用がある場合は、走行距離や使用状況から事業使用割合を決める資料を用意してください。
これらが分かれば、事業転用時の未償却残高と、その年の減価償却費を計算できます。
町田・相模原で開業後の経費処理に不安がある方へ
開業後は、自家用車、パソコン、スマートフォンなど、もともと個人で使っていたものを事業用に変えることがあります。
しかし、これらを経費にするときは、開業時点の時価をそのまま使えばよいとは限りません。
自家用として使っていた期間の減価、事業転用時の未償却残高、転用後の家事按分などを整理する必要があります。
町田・相模原で、開業後の経費処理、減価償却、家事按分に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の計算は、購入年月日、購入価額、新車・中古車の別、車種、事業転用日、事業使用割合、償却方法の届出状況などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




