個人事業主になると、売上や経費を帳簿に記録する必要があります。
以前は「白色申告なら帳簿はいらない」と考えている方もいましたが、現在はその理解は誤りです。事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行う方は、青色申告でも白色申告でも、原則として記帳と帳簿保存が必要です。
したがって、実務上のポイントは、
「帳簿を付けるかどうか」
ではなく、
「どのレベルの帳簿を付けるか」
です。
2026年分を前提にすると、個人事業主の帳簿は、青色申告65万円控除、青色申告55万円控除、青色申告10万円控除、白色申告で大きく異なります。
個人事業主
個人事業主は、どんな帳簿を付ければいいのでしょうか?
青色申告と白色申告でも違いますか?
税理士
はい、違います。
ただし、まず大前提として、白色申告であっても帳簿は必要です。
個人事業主の場合、「帳簿を付けるか付けないか」ではなく、「青色申告65万円控除を目指すのか、55万円控除なのか、10万円控除なのか、白色申告なのか」によって、必要な帳簿のレベルが変わると考えてください。
個人事業主
白色申告でも帳簿が必要なのですか?
白色なら、通帳と領収書だけ残しておけばよいと思っていました。
税理士
現在は、白色申告でも帳簿が必要です。
所得税法では、青色申告でない事業所得者などについても、帳簿を備え付け、収入金額や必要経費に関する事項を簡易な方法で記録し、保存することが求められています。
国税庁も、白色申告者について、売上、仕入、経費などを帳簿に記載する必要があると案内しています。
つまり、白色申告だからといって、通帳と領収書を袋に入れておくだけでは足りません。
個人事業主の帳簿は、申告方法によって変わります
2026年分を前提にすると、個人事業主の帳簿と青色申告特別控除は、大きく次のように整理できます。
| 申告方法 | 記帳方法 | 貸借対照表 | 青色申告特別控除 |
|---|---|---|---|
| 青色申告・複式簿記 | 正規の簿記 | 必要 | 55万円 |
| 青色申告・複式簿記+e-Tax等 | 正規の簿記 | 必要 | 65万円 |
| 青色申告・簡易帳簿 | 簡易簿記 | 55万円・65万円控除の要件としては不要 | 10万円 |
| 青色申告・現金主義特例 | 現金式簡易簿記 | 55万円・65万円控除の要件としては不要 | 10万円 |
| 白色申告 | 簡易な記帳で可 | 原則として添付要件なし | なし |
個人事業主
青色申告で65万円控除を受けたい場合は、どんな帳簿が必要ですか?
税理士
65万円控除を目指すなら、基本は複式簿記です。
正規の簿記で記帳し、その帳簿をもとに貸借対照表と損益計算書を作成し、期限内に申告する必要があります。
さらに、e-Taxで申告するか、一定の優良な電子帳簿保存の要件を満たすことで、65万円控除の対象になります。
会計ソフトを使えば、取引を入力することで仕訳帳や総勘定元帳が自動で作成されるため、手書きで帳簿を一冊ずつ作る必要は通常ありません。
個人事業主
55万円控除と65万円控除の違いは何ですか?
税理士
55万円控除は、正規の簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内申告することが基本要件です。
65万円控除は、その55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存の要件を満たす場合に認められます。
つまり、65万円控除は、55万円控除の上乗せ制度と考えると分かりやすいです。
貸借対照表とは何か
個人事業主
貸借対照表とは何ですか?
損益計算書とは違うのですか?
税理士
損益計算書は、その年にいくら儲かったかを示す表です。
たとえば、売上500万円、経費300万円、利益200万円というように、1年間の売上、経費、利益を整理します。
一方、貸借対照表は、12月31日時点で何を持っていて、何を支払う義務があるかを示す表です。
たとえば、現金、普通預金、売掛金、車両、買掛金、借入金などを整理します。
65万円控除や55万円控除を受ける場合は、この貸借対照表を作成して申告書に添付することが重要な要件になります。
複式簿記では、売掛金や買掛金も記録します
個人事業主
複式簿記だと、具体的にどのような記帳になりますか?
税理士
たとえば、12月20日に仕事が完了して10万円の請求書を発行し、翌年1月31日に入金されたとします。
通常は、12月20日の時点で次のように記帳します。
売掛金 100,000円 / 売上 100,000円
そして、翌年1月31日に入金されたときに、次のように記帳します。
普通預金 100,000円 / 売掛金 100,000円
このように、まだ入金されていない売上も売掛金として帳簿に残すことで、年末時点の資産や負債を把握でき、貸借対照表を作成できるようになります。
青色申告10万円控除なら簡易帳簿も可能です
個人事業主
青色申告にしたら、必ず複式簿記にしないといけませんか?
税理士
青色申告だからといって、必ず65万円控除や55万円控除を選ばなければならないわけではありません。
青色申告でも、簡易な帳簿による記帳は可能です。
その場合、青色申告特別控除は原則として最高10万円になります。
国税庁が青色申告の簡易簿記で示している代表的な帳簿には、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などがあります。
個人事業主
白色申告にするくらいなら、青色10万円控除でもよいのでしょうか?
税理士
実務上は、その選択肢も十分あります。
青色申告には、青色申告特別控除だけでなく、青色事業専従者給与や純損失の繰越しなどの特典があります。
複式簿記が難しい場合でも、青色申告承認申請書を提出し、まずは青色10万円控除と簡易帳簿から始める方法があります。
ただし、青色申告をするには、原則として期限までに青色申告承認申請書を提出しておく必要があります。
白色申告でも帳簿保存は必要です
個人事業主
白色申告の場合は、どの程度の帳簿を作ればよいですか?
税理士
白色申告の場合も、収入金額や必要経費を記録する帳簿が必要です。
たとえば、売上、仕入、経費について、日付、相手先、金額、内容が分かるように記録します。
一定の場合には、1件ずつ細かく記帳するのではなく、日々の合計額をまとめて記載する簡易な方法も認められています。
ただし、白色申告には青色申告特別控除はありません。帳簿を簡単にできる一方で、青色申告の特典は受けられないという違いがあります。
簡易帳簿と現金主義は別です
個人事業主
簡易帳簿なら、入金した日を売上、支払った日を経費にしてよいのですか?
税理士
ここは誤解が多いところです。
簡易帳簿と現金主義は別です。
簡易帳簿を使っていても、原則として、売上はその年に収入すべき金額、経費はその年に生じ、債務が確定した費用を基準に考えます。
たとえば、12月に仕事が完了し、翌年1月に入金された場合、通常は12月の売上になります。
簡易帳簿だからといって、自由に入金日ベースで売上を翌年にずらせるわけではありません。
個人事業主
では、現金主義はどういう場合に使えるのですか?
税理士
現金主義は、一定の小規模な青色申告者が届出をした場合に使える特例です。
事業所得について現金主義の特例を使えるのは、前々年分の事業所得と不動産所得の金額が一定額以下であるなど、小規模事業者に該当する青色申告者です。
国税庁の案内では、小規模事業者は、前々年分の事業所得と不動産所得の金額の合計額が300万円以下などの要件を満たす方とされています。
また、現金主義を使うためには届出が必要です。
個人事業主
現金主義にすると、65万円控除は受けられますか?
税理士
現金主義特例を選択している場合、55万円の青色申告特別控除は受けられません。
したがって、65万円控除も受けられません。
基本的には10万円控除になります。
そのため、現在は会計ソフトを使える方であれば、現金主義特例を選ぶより、通常の複式簿記で記帳し、e-Taxで65万円控除を目指す方が有利になるケースが多いです。
帳簿は何年保存する必要があるか
個人事業主
帳簿や領収書は何年保存すればよいですか?
税理士
青色申告の場合、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿は、原則として7年間保存します。
請求書、領収書などの書類には、内容によって5年間保存でよいものもあります。
白色申告の場合も、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年間保存する必要があります。
また、メール添付のPDF、ECサイトからダウンロードした請求書、クラウドサービス上の領収書など、電子で受け取った取引情報は、電子データのまま保存する必要があります。
町田・相模原で個人事業主の経理に不安がある方へ
個人事業主の帳簿は、最初に選ぶ申告方法によって、その後の経理負担や節税効果が大きく変わります。
特に、65万円控除を受けたい場合は、複式簿記、貸借対照表、損益計算書、e-Taxなどを意識した運用が必要です。
一方で、白色申告や青色10万円控除であっても、帳簿が不要になるわけではありません。
町田・相模原で、個人事業主の帳簿作成、青色申告、会計ソフトの運用、確定申告に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際に必要な帳簿や申告方法は、青色申告承認申請書の提出状況、所得区分、取引内容、売掛金・買掛金の有無、消費税の課税事業者該当性、電子取引データの保存状況などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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