パソコン、備品、機械、工具、ソフトウェアなどの事業用資産を購入した場合、金額によって税務上の処理が変わります。
代表的には、10万円未満の少額資産、20万円未満の一括償却資産、中小企業者等の少額減価償却資産特例、通常の固定資産計上・減価償却の4つです。
さらに、令和8年4月1日以後に取得する資産については、中小企業者等の少額減価償却資産特例の金額基準が、従来の30万円未満から40万円未満へ拡大されています。
ただし、全額経費にできるからといって、常にそれが最も有利とは限りません。税金、利益、金融機関からの見え方、固定資産税の償却資産申告まで含めて判断する必要があります。
経営者
資産を買った時、金額によって会計処理方法がいくつかありますよね?
それぞれの方法の違いと有利不利を教えてください。
本年4月1日前後での扱いの違いも知りたいです。
税理士
はい。事業用の減価償却資産を購入した場合、主に4つの処理があります。
1つ目は、10万円未満の資産を購入年度に全額経費にする処理です。
2つ目は、10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等に費用化する一括償却資産です。
3つ目は、一定の中小企業者等が使える少額減価償却資産の特例です。
4つ目は、通常どおり固定資産に計上し、法定耐用年数で減価償却する方法です。
経営者
まず、10万円未満の資産はどうなりますか?
税理士
取得価額が10万円未満の減価償却資産や、使用可能期間が1年未満の資産は、原則として使用を開始した年度や年に全額を経費にできます。
メリットは、処理が簡単で、購入年度に全額費用化できることです。
また、税務上この処理をした資産は、原則として固定資産税の償却資産申告の対象外になります。
一方で、購入年度が赤字や低所得の場合には、すぐに税金を減らす効果が小さくなります。また、翌期以後の減価償却費は残りません。
経営者
10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産というものがあるのですよね?
税理士
はい。取得価額が20万円未満の一定の減価償却資産は、一括償却資産として3年間で均等に費用化できます。
法定耐用年数が5年や6年の資産でも、3年で費用化できるため、通常償却より早く経費化できる場合があります。
また、一括償却資産は中小企業特例の年300万円枠を使いません。さらに、固定資産税の償却資産申告の対象外になる点もメリットです。
ただし、途中で廃棄・売却した場合でも、原則として未償却残額をその時点で一括費用化できず、3年間の計算を続ける点には注意が必要です。
経営者
中小企業の少額減価償却資産特例とは何ですか?
税理士
青色申告を行う一定の中小企業者等が、一定金額未満の減価償却資産を取得した場合に、年300万円を限度として、取得年度に全額を経費にできる制度です。
令和8年3月31日以前に取得等をした資産については、対象は30万円未満でした。
これに対し、令和8年4月1日以後に取得等をする資産については、対象が40万円未満へ拡大されています。
たとえば、35万円のパソコンや備品を購入した場合、令和8年3月31日以前の取得であれば、原則として中小企業特例の対象外です。
一方、令和8年4月1日以後の取得で、青色申告や中小企業者等の要件を満たせば、年300万円の範囲内で全額経費にできる可能性があります。
経営者
4月1日前後の判定は、事業年度の開始日で見るのですか?
税理士
原則として、事業年度の開始日ではなく、各資産を取得等する日で判定します。
令和8年4月1日以後に取得等をする資産であれば、40万円未満基準の対象になります。
ただし、契約日、支払日、納品日、検収日、所有権移転日、事業供用日がずれる場合には、どの日を税務上の取得日と見るかを確認する必要があります。
特に、3月31日以前に契約や支払をして、4月1日以後に納品・検収・使用開始したようなケースは、個別確認が必要です。
経営者
「未満」とあるので、10万円ちょうどや40万円ちょうどはどうなりますか?
税理士
ここは非常に重要です。
10万円未満、20万円未満、30万円未満、40万円未満という基準は、いずれも「未満」です。
したがって、10万円ちょうどは10万円未満に入りません。
20万円ちょうどは20万円未満に入りません。
改正前の30万円ちょうどは30万円未満に入りません。
改正後の40万円ちょうども40万円未満に入りません。
金額が基準額ちょうどの場合は、下の区分には入らないため、通常償却など別の処理を検討します。
経営者
通常の固定資産計上・減価償却は、どのような処理ですか?
税理士
取得価額を固定資産として計上し、資産ごとの法定耐用年数に応じて、複数年度にわたって減価償却費を計上する方法です。
メリットは、費用が複数年度に分かれるため、購入年度の利益を大きく減らしすぎず、将来年度にも減価償却費を残せることです。
今年が赤字で、来年以後に利益が見込まれる場合や、金融機関向けに利益・純資産をできるだけ確保したい場合には、即時費用化より通常償却の方が適することもあります。
デメリットは、税金を減らす効果が後年度に分かれること、資産台帳の管理や償却計算が必要になることです。
また、有形資産については、原則として固定資産税の償却資産申告の対象になります。
経営者
中小企業特例で全額経費にすれば、固定資産税の償却資産申告もしなくてよいのですか?
税理士
そこは誤解しやすいところです。
10万円未満の少額資産として全額費用化した資産や、20万円未満の一括償却資産は、固定資産税の償却資産申告の対象外とされています。
一方、中小企業者等の少額減価償却資産特例は、法人税・所得税上の特例です。
この特例で全額経費にした場合でも、有形資産については、原則として固定資産税の償却資産申告が必要です。
つまり、税務上全額経費にしたからといって、償却資産税の管理まで不要になるわけではありません。
経営者
金額ごとの整理をすると、どうなりますか?
税理士
大きく整理すると、次のようになります。
10万円未満は、原則として全額経費です。
10万円以上20万円未満は、一括償却資産、通常償却、中小企業特例のいずれかを検討します。
20万円以上30万円未満は、通常償却または中小企業特例を検討します。
30万円以上40万円未満は、令和8年3月31日以前の取得では原則として通常償却ですが、令和8年4月1日以後の取得であれば、要件を満たす場合に中小企業特例を検討できます。
40万円以上は、原則として通常償却です。
経営者
では、全額経費にできるものは、全部全額経費にした方が得ですか?
税理士
必ずしもそうではありません。
多くの場合、違いは「いつ経費にするか」というタイミングの差です。
全額経費にすれば当期の税負担を早く減らせますが、翌期以後の減価償却費は残りません。
当期が黒字で、納税を抑えたい場合には即時費用化が有利になりやすいです。
一方、当期が赤字で将来黒字が見込まれる場合や、金融機関に見せる利益を確保したい場合は、通常償却の方がよいこともあります。
また、中小企業特例には年300万円の上限があるため、どの資産に枠を使うかも検討が必要です。
経営者
判断するときに、ほかに注意すべきことはありますか?
税理士
取得価額の判定に注意してください。
取得価額は本体代だけではありません。運賃、購入手数料、据付費、設定費など、事業で使える状態にするために直接かかった費用を含めて判定することがあります。
また、パソコン本体とディスプレイ、応接セット、ネットワーク設備などは、請求書の行単位ではなく、通常1単位として取引される単位で判定します。
さらに、税抜経理をしている場合は原則として税抜価額で判定し、税込経理や免税事業者の場合は税込価額で判定します。
町田・相模原で設備投資や節税判断に不安がある方へ
資産購入時の処理は、単に「金額がいくらか」だけで決まるものではありません。
取得日、事業供用日、青色申告の有無、中小企業者等の該当性、従業員数、消費税の経理方式、償却資産税、当期と翌期以後の利益見込みまで確認する必要があります。
町田・相模原で、設備投資、少額資産、減価償却、中小企業特例の判断に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、法人・個人の別、青色申告の有無、取得日、供用日、資産の種類、消費税の経理方式、当期利益、償却資産税の申告状況などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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