開業したばかりでも、設備投資にかかった消費税の還付を受けられる場合があります。
ただし、免税事業者のままでは還付を受けることはできません。
消費税の還付を受けるには、原則として課税事業者となり、本則課税で計算した結果、売上に係る消費税額よりも、仕入れや設備投資に係る消費税額の方が大きくなる必要があります。
そして、この判断で最も危険なのは、初年度の還付額だけを見てしまうことです。
開業年度に大きな設備投資をして還付を受けられたとしても、その後、免税事業者に戻れない、簡易課税へ移行できない、本則課税で多額の納税が発生する、というケースがあります。
経営者
開業したばかりでも、設備投資の消費税還付を受けられますか?
税理士
はい。開業したばかりでも、課税事業者となり、本則課税で計算した結果、設備投資などに係る仕入税額が、売上に係る消費税額を上回れば、消費税の還付を受けられる可能性があります。
ただし、免税事業者のままでは還付を受けられません。
消費税の還付は、課税事業者が仕入税額控除を行い、その控除額が売上に係る消費税額を上回る場合に生じるものだからです。
経営者
開業したばかりだと、そもそも免税事業者になることが多いですよね?
税理士
そうです。
新規開業した個人事業者や新設法人は、基準期間がないため、原則として免税事業者になることがあります。
ただし、例外もあります。たとえば、新設法人でも資本金が1,000万円以上の場合や、特定新規設立法人に該当する場合などは、最初から免税にならないことがあります。
また、インボイス登録をしている場合も、課税事業者として扱われます。
そのため、まず確認すべきなのは、自分が本当に免税事業者なのか、それとも最初から課税事業者なのかです。
経営者
本来は免税事業者だけれど、還付を受けたい場合はどうするのですか?
税理士
その場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出して、課税事業者を選択する方法があります。
通常、課税事業者を選択する場合は、適用を受けようとする課税期間の開始前に届出書を提出します。
ただし、事業を開始した日の属する最初の課税期間については、その課税期間中に提出すれば、その課税期間から課税事業者を選択できます。
開業初年度の設備投資還付を検討する場合、この届出期限を逃さないことが重要です。
経営者
課税事業者になれば、それだけで還付になりますか?
税理士
いいえ。課税事業者になれば必ず還付になるわけではありません。
還付になるかどうかは、本則課税で計算した結果、売上に係る消費税額より、仕入れや設備投資に係る消費税額の方が大きいかどうかで決まります。
たとえば、開業年度に大きな機械、車両、店舗設備、器具備品などを購入し、まだ売上が少ない場合には、支払った消費税の方が大きくなり、還付になることがあります。
一方で、売上が大きい場合や、課税売上割合が低い場合、インボイス等の保存要件を満たしていない場合には、想定どおりの還付にならないことがあります。
経営者
簡易課税でも還付を受けられますか?
税理士
基本的に、設備投資による還付を狙う場合は本則課税が前提です。
簡易課税は、実際に支払った仕入れや設備投資の消費税額をそのまま控除する制度ではありません。売上に係る消費税額に、事業区分ごとのみなし仕入率を使って控除額を計算します。
そのため、大きな設備投資をしたからといって、その設備に係る消費税を直接控除して還付を受ける、という仕組みではありません。
設備投資還付を検討する場合は、本則課税で計算することを前提に、複数年で有利不利を確認します。
経営者
注意点は何ですか?
税理士
最も重要なのは、調整対象固定資産です。
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の固定資産で、建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、一定の無形固定資産などのうち、一の取引単位の税抜価額が100万円以上のものをいいます。
たとえば、税抜500万円の事業用機械を購入する場合、基本的には調整対象固定資産に該当します。
課税事業者選択届出書を提出した事業者が、一定の初期期間中に調整対象固定資産を取得し、本則課税で申告すると、原則として取得年度を含む3年間、免税事業者に戻れないことがあります。
さらに、一定期間、簡易課税へ移行することも制限される場合があります。
経営者
つまり、今年還付を受けると、来年や再来年に消費税を払う可能性があるということですか?
税理士
そのとおりです。
ここを見落とすと危険です。
たとえば、開業年度に税抜500万円の機械を購入したとします。
開業年度の概算が、課税売上300万円、機械購入500万円だったとします。
単純化すると、売上に係る消費税が約30万円、機械購入に係る消費税が約50万円なので、差額約20万円の還付というイメージになります。
しかし、その機械が税抜100万円以上の調整対象固定資産に該当し、3年間免税に戻れない場合、翌年や翌々年の納税まで考える必要があります。
経営者
具体的には、どのくらい不利になることがありますか?
税理士
非常に単純化した例で考えます。
初年度は、設備投資によって約20万円の還付を受けられたとします。
しかし、翌年と翌々年にそれぞれ課税売上800万円、通常仕入100万円があると仮定します。
この場合、本則課税では、売上に係る消費税約80万円から、仕入れに係る消費税約10万円を差し引き、概算で約70万円の納税になるイメージです。
仮に本来なら免税事業者でいられたとすると、初年度は20万円還付、翌年は70万円納付、翌々年も70万円納付となり、3年間では差引120万円のマイナスになる可能性があります。
もちろん実際には、地方消費税、他の経費、課税売上割合などを含めて計算しますが、「設備投資の消費税が戻るから得」と単純には判断できません。
経営者
税抜1,000万円以上の設備だと、さらに注意が必要ですか?
税理士
はい。税抜1,000万円以上になると、高額特定資産の論点があります。
高額特定資産とは、原則として一の取引単位について税抜1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいいます。
本則課税の課税期間中に高額特定資産を取得した場合、その後の免税事業者への移行や簡易課税の選択が制限されることがあります。
つまり、税抜100万円以上の調整対象固定資産だけでなく、税抜1,000万円以上の高額特定資産についても、取得年度だけでなく、その後の課税期間まで含めて判断する必要があります。
経営者
設備を買ったあとに、売却や廃棄をしたら、3年縛りは消えますか?
税理士
当然には消えません。
消費税基本通達では、調整対象固定資産を取得して一定の制限を受けた後、その資産を売却・廃棄したとしても、その制限が当然に解除されるわけではないことが示されています。
したがって、「一度買って還付を受け、すぐ売ればよい」という単純な話ではありません。
設備を取得する前に、取得後の利用見込み、売上見込み、免税・簡易課税への移行制限まで確認する必要があります。
経営者
購入先がインボイス登録をしているかも関係しますか?
税理士
関係します。
仕入税額控除を受けるには、原則として、一定事項を記載した帳簿とインボイス等の保存が必要です。
設備を購入した相手が適格請求書発行事業者であるか、請求書や領収書に登録番号など必要事項が記載されているかを確認してください。
適格請求書発行事業者以外から購入する場合は、取得時期に応じた経過措置の確認も必要です。
高額な設備投資では、請求書の保存不備が還付額に直結するため、購入前に確認するべきです。
経営者
どのような場合なら、課税事業者を選んで還付を受ける判断が有利になりやすいですか?
税理士
たとえば、初年度の設備投資額が非常に大きい場合、その後も設備投資や仕入れが多い場合、近いうちに売上が1,000万円を超えてどのみち課税事業者になる場合、インボイス登録の必要があり免税でい続けることが現実的ではない場合などです。
一方で、初年度の還付額が小さく、翌年以降の売上が増える見込みで、本来なら免税事業者でいられる期間がある場合は、課税事業者を選択することでかえって不利になることがあります。
結論として、設備投資還付は、初年度だけでなく、少なくとも取得年度を含む3年程度の消費税を試算して判断する必要があります。
経営者
不動産投資でも同じように消費税還付を受けられますか?
税理士
不動産については、特に慎重に判断してください。
居住用賃貸建物については、仕入税額控除に制限があります。そのため、「建物を買えば消費税が還付される」と単純に考えるのは危険です。
住宅賃貸事業、居住用建物、課税売上割合、用途変更が絡む場合には、通常の設備投資よりもさらに慎重な確認が必要です。
経営者
では、設備を買う前に何を確認すべきですか?
税理士
最低限、次の点を確認します。
個人事業主か法人か、開業日または法人設立日、決算日、資本金額、インボイス登録の有無、設備の内容、設備ごとの税抜取得価額、購入日、納品日、事業供用日、購入先が適格請求書発行事業者かどうかです。
さらに、開業年度、翌年度、翌々年度の売上見込み、通常の仕入れや経費の見込み、課税売上割合、簡易課税の選択状況、設備の用途変更予定も確認します。
そのうえで、還付を受ける場合と免税のままでいる場合を比較します。
設備投資還付は、届出を出してから考えるのではなく、届出を出す前に複数年シミュレーションをする案件です。
町田・相模原で開業時の設備投資と消費税還付に不安がある方へ
開業初年度の設備投資は、資金繰りに大きな影響を与えます。
消費税還付を受けられれば資金繰りが楽になる場合がありますが、課税事業者選択、本則課税、調整対象固定資産、高額特定資産、簡易課税への移行制限まで含めて判断しないと、数年トータルで不利になることがあります。
町田・相模原で、開業時の設備投資、消費税還付、課税事業者選択、インボイス登録の判断に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、開業日、課税期間、資本金、インボイス登録の有無、設備の内容・金額、課税売上割合、今後の売上見込み、届出書の提出状況などにより異なります。設備投資による消費税還付を検討する場合は、必ず購入前・届出前に複数年の試算を行ってください。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




