事前確定届出給与は、役員賞与などを損金算入するために使われる制度です。
ただし、税務署へ届出を出していれば、それだけで経費にできるわけではありません。
原則として、届け出た支給時期・支給額どおりに、実際に支給する必要があります。届出額と実際の支給額が異なる場合には、差額だけではなく、実際に支給した額の全額が原則として損金不算入になる点に注意が必要です。
経営者
事前確定届出給与を届け出たのですが、実際には払わないことになりそうです。
この場合、税務上はどうなりますか?
税理士
事前確定届出給与は、原則として、税務署へ届け出た支給日・支給額どおりに支給する必要があります。
届出どおりに支給されなかった場合、その給与は事前確定届出給与に該当しないものとして扱われます。
その結果、実際に支給した金額がある場合には、その実際支給額の全額が原則として損金不算入になります。
経営者
差額だけが経費にならないのではなく、実際に払った金額の全額が経費にならないのですか?
税理士
はい。そこが非常に重要です。
たとえば、300万円で届け出ていた事前確定届出給与を、実際には200万円だけ支給した場合、差額100万円だけが損金不算入になるのではありません。
原則として、実際に支給した200万円全額が損金不算入になります。
法人税基本通達9-2-14でも、届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、原則として事前確定届出給与に該当しないことが示されています。
経営者
では、300万円で届け出たものを全く払わなかった場合は、300万円を損金不算入として加算するのですか?
税理士
全く支給せず、未払計上もしていないのであれば、そもそも損金に計上する役員給与がありません。
そのため、届け出た300万円を別途「損金不算入」として加算するというより、経費にする給与が発生していない、という整理になります。
届出を出しただけで、300万円の損金が自動的に発生するわけではありません。
経営者
一部だけ払うより、全く払わない方が税務上は分かりやすいのですか?
税理士
会計処理としては、全く支給していない場合には損金計上額がないため、処理は単純に見えます。
ただし、実務上は注意が必要です。
会社が本当に支給しないことを決めたのか、未払債務として確定させるのか、資金繰りの都合で一時的に払っていないだけなのかによって、整理が変わります。
特に、「払わないが、とりあえず未払役員賞与として損金にしたい」という処理は高リスクです。
本当に債務として確定しているか、当初から支給する定めが実質的に存在していたかを確認する必要があります。
経営者
同じ役員について、年2回の事前確定届出給与を届け出ている場合はどうなりますか?
税理士
複数回支給の場合は、さらに注意が必要です。
国税庁は、事前確定届出給与について、原則として役員ごと、同一の職務執行期間を一つの単位として、届出どおりに支給されたかを判定する考え方を示しています。
そのため、同一職務執行期間について、12月に300万円、翌6月に300万円と届け出ていた場合に、12月だけ100万円しか支給しなかったとします。
この場合、翌6月に300万円を届出どおり支給したとしても、職務執行期間全体として届出どおりではないため、実際に支給した合計額全体が原則として損金不算入になる可能性があります。
経営者
一部の回だけ失敗したら、他の回まで影響することがあるのですね。
税理士
はい。
「その回だけ経費にならない」と単純に考えると危険です。
同じ職務執行期間に係る事前確定届出給与については、一部の支給が届出と異なることで、他の支給分にも影響する場合があります。
ただし、職務執行期間をまたいで支給が2事業年度に分かれている場合で、前事業年度分は完全に届出どおり支給済み、その後の翌事業年度分だけが不一致になったケースについては、国税庁は前事業年度分まで遡って否認しない取扱いを示しています。
このあたりは、支給日、事業年度、職務執行期間を正確に確認して判断する必要があります。
経営者
ある役員だけ届出と違う支給をした場合、他の役員の事前確定届出給与にも影響しますか?
税理士
原則として、事前確定届出給与は個々の役員ごとに判定します。
そのため、役員Aについて届出と異なる支給をしたからといって、届出どおり支給した役員Bの分まで、直ちに損金不算入になるわけではありません。
ただし、役員ごとの届出内容、支給額、支給日、職務執行期間を分けて確認する必要があります。
経営者
業績が悪くなったので、届出後に減額変更することはできますか?
税理士
一定の場合には、変更届を提出して内容を変更できる制度があります。
ただし、自由に変更できるわけではありません。
変更が認められるのは、法人税法施行令で定める臨時改定事由または業績悪化改定事由がある場合に限られます。
業績悪化改定事由による変更は、基本的には支給額の減額に限られます。また、単なる一時的な資金繰り不足や、予算未達だから払いたくないという程度では、通常は足りません。
経営者
業績悪化改定事由とは、どの程度の悪化をいうのですか?
税理士
法人税基本通達9-2-13では、経営の状況の著しい悪化その他これに類する理由により、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情が想定されています。
たとえば、単なる一時的な資金繰りの都合や、業績目標に届かなかったという程度では足りません。
売上や利益の大幅な悪化、金融機関との関係、従業員賞与の削減、取引先対応などから、役員だけ予定どおり賞与を取ることが困難だったと客観的に説明できる状態が必要です。
経営者
変更届には期限がありますか?
税理士
あります。
業績悪化改定事由による変更の場合、原則として、変更決議の日から1か月以内に変更届を提出する必要があります。
ただし、変更前の届出に係る次の支給日がそれより前に到来する場合には、その支給日の前日までが期限です。
すでに支給予定日を過ぎている場合、事後的な変更届で救済することは通常期待できません。
経営者
結局、払わないことになりそうな場合は、何を確認すればよいですか?
税理士
まず、対象役員ごとに、届出した支給日、届出額、実際の支給日、実際の支給額を確認します。
次に、同一の職務執行期間について何回の支給を届け出ているか、その支給が同一事業年度内なのか、翌事業年度にまたがるのかを確認します。
さらに、不支給や減額を決めた日、決議機関、議事録、業績悪化を示す資料、変更届の提出期限を確認します。
事前確定届出給与は、支給額が大きく、否認された場合の影響も大きいため、所長確認必須の論点です。
町田・相模原で役員報酬・役員賞与に不安がある方へ
事前確定届出給与は、届出を出せば終わりではありません。
届出どおりに支給できなかった場合、差額だけでなく実際支給額の全額が損金不算入になることがあります。
特に、複数回支給、年度またぎ、未払計上、業績悪化による変更届が絡む場合は、判断を誤ると法人税額に大きく影響します。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、届出内容、支給日、支給額、職務執行期間、事業年度、変更決議日、業績悪化の事実関係などにより異なります。事前確定届出給与を届出どおり支給できない場合は、必ず個別に確認してください。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




