会社が赤字になった場合、前年に納めた法人税が戻ってくることがあります。
これを「欠損金の繰戻しによる還付」といいます。
ただし、単に決算書上で赤字になっただけで、自動的に前年の法人税が返ってくるわけではありません。税務上の欠損金が生じていること、青色申告であること、原則として中小法人等に該当すること、期限内に申告と還付請求を行うことなど、いくつかの要件があります。
経営者
今年は会社が赤字になりそうです。
前年は黒字で法人税を払っているのですが、今年赤字になったら前年の法人税は返ってきますか?
税理士
一定の要件を満たせば、前年に納めた法人税の一部または全部が戻る可能性があります。
この制度を「欠損金の繰戻しによる還付」といいます。
簡単にいうと、前年は黒字で法人税を納めたけれど、今年は税務上の赤字になった場合に、今年の欠損金を前年の所得に繰り戻して、前年分の法人税の還付を受ける制度です。
経営者
赤字なら、必ず前年の法人税が戻るということですか?
税理士
いいえ。赤字なら必ず戻る、という制度ではありません。
まず重要なのは、会計上の赤字ではなく、法人税申告上の「欠損金額」が生じていることです。
決算書では赤字に見えても、法人税の申告書で加算調整などを行った結果、税務上は欠損金にならないことがあります。
反対に、会計上の損益だけを見て判断すると誤ることがありますので、最終的には法人税申告書上の所得金額または欠損金額で確認します。
経営者
どの会社でも使える制度ですか?
税理士
通常の欠損金の繰戻し還付は、現行法上、原則として中小法人等が中心です。
一般的には、資本金1億円以下の普通法人などが対象になります。
ただし、資本金が1億円以下でも、大法人による完全支配関係がある場合など、対象外になるケースがあります。
また、グループ通算制度を適用している場合などは、通常の会社とは取扱いが異なることがあります。
そのため、資本金だけでなく、株主構成やグループ関係も確認する必要があります。
経営者
青色申告であることも必要ですか?
税理士
はい。重要な要件です。
欠損金の繰戻し還付を受けるには、原則として、還付の対象となる前年と、欠損金が生じた今年について、連続して青色申告書を提出している必要があります。
また、欠損金が生じた事業年度の確定申告書を、原則として期限内に提出する必要があります。
赤字決算だから申告を後回しにしてよい、ということではありません。むしろ還付を受けたい場合は、期限内申告が非常に重要です。
経営者
還付される金額は、どう計算するのですか?
税理士
基本的なイメージは、次の計算です。
還付額 = 前年の法人税額 × 当期欠損金額 ÷ 前年の所得金額
たとえば、前年の所得金額が1,000万円、前年に納めた法人税が150万円、今年の税務上の欠損金が600万円だったとします。
この場合、単純計算では、
150万円 × 600万円 ÷ 1,000万円 = 90万円
となり、90万円程度が還付対象になるイメージです。
ただし、実際には法人税申告書の別表上の金額をもとに計算しますので、前年の所得金額、前年の法人税額、今年の欠損金額を正確に確認する必要があります。
経営者
今年の赤字が前年の黒字より大きい場合は、前年の法人税が全部戻りますか?
税理士
当期の税務上の欠損金が前年の所得金額以上であれば、概ね前年の法人税額が還付の上限になります。
つまり、前年に納めた法人税を超えて還付されるわけではありません。
また、欠損金のうち繰戻し還付に使った部分は、将来の黒字と相殺する欠損金の繰越控除には使えなくなります。
そのため、今すぐ還付を受けるか、将来の黒字と相殺するために繰り越すかは、今後の利益見込みや資金繰りも含めて判断する必要があります。
経営者
赤字なら、還付は自動的に振り込まれるのでしょうか?
税理士
自動的には戻りません。
欠損金の繰戻し還付を受けるには、欠損事業年度の法人税申告書とあわせて、原則として「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出する必要があります。
申告書だけを提出して、還付請求書を出していなければ、繰戻し還付の請求をしたことにはなりません。
そのため、前年が黒字で、今年が税務上赤字になる場合は、決算前から還付請求を行うかどうか検討しておくのが安全です。
経営者
法人税以外の税金も返ってきますか?
税理士
法人税の繰戻し還付が行われる場合、地方法人税についても一定額があわせて還付されます。
一方で、法人住民税や法人事業税については、法人税とまったく同じように前年分が自動的に戻るわけではありません。
法人住民税、法人事業税、均等割などは取扱いが異なりますので、地方税については別途確認が必要です。
特に、赤字でも法人住民税の均等割は発生することが多いため、「赤字だから税金がゼロになる」と単純に考えない方がよいです。
経営者
繰戻し還付と、欠損金の繰越控除は、どちらを選べばよいですか?
税理士
資金繰りを優先するなら、繰戻し還付が有利になることがあります。
前年に納めた法人税が早めに戻れば、赤字期の資金繰り改善に役立ちます。
一方で、翌期以降に大きな黒字が見込まれる場合は、欠損金を繰り越して将来の黒字と相殺した方がよいケースもあります。
どちらが有利かは、前年の法人税額、今年の欠損金額、翌期以降の利益見込み、資金繰り状況によって変わります。
単に「戻るなら戻した方が得」とは限りません。
経営者
実際に還付できるか確認するには、何が必要ですか?
税理士
まず、前年の法人税申告書が必要です。
特に、前年の別表一と別表四を確認します。前年の所得金額と法人税額を把握するためです。
次に、今年の決算見込み、税務上の欠損金額の見込みを確認します。
そのうえで、資本金、大法人による完全支配関係の有無、青色申告の連続性、期限内申告ができるか、グループ通算制度の有無などを確認します。
これらを確認して、繰戻し還付を受けるか、欠損金を繰り越すかを判断します。
町田・相模原で赤字決算や法人税還付に不安がある方へ
会社が赤字になった場合でも、前年に法人税を納めていれば、欠損金の繰戻し還付により税金が戻る可能性があります。
ただし、会計上の赤字ではなく税務上の欠損金額で判定すること、青色申告の連続性、期限内申告、還付請求書の提出、中小法人等の要件など、確認すべき点は少なくありません。
また、繰戻し還付を使うか、翌期以降の欠損金繰越に回すかは、今後の黒字見込みや資金繰りによって判断が分かれます。
町田・相模原で、赤字決算、法人税の還付、資金繰り、決算申告に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所へご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の還付可否や還付額は、前年の所得金額、前年の法人税額、今年の税務上の欠損金額、資本金、株主構成、青色申告の状況、申告期限、グループ通算制度の有無などにより異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
Latest entries
税金あれこれ2026年8月26日フリーランスの節税、何から始める?経費・控除・共済で手取りを守る具体策
法人税2026年8月26日研究開発税制とは?試験研究費の範囲・人件費・ソフトウェア開発の注意点を解説
所得税2026年8月26日中退共の掛金は経費になる?損金・必要経費・消費税・仕訳を税理士が解説
所得税2026年8月26日国民年金基金は節税になる?個人事業主向けにiDeCoとの違い・併用を税理士が解説




