中退共、つまり中小企業退職金共済の掛金は、従業員の退職金準備として利用される制度です。
会社や個人事業主が従業員のために負担する中退共の掛金は、税務上、原則として経費にできます。
法人であれば損金、個人事業主であれば事業所得等の必要経費として処理できます。また、事業主が掛金を負担した時点で、従業員に給与課税されるわけでもありません。
ただし、中退共は「従業員のための制度」です。個人事業主本人や法人の代表取締役などが、自分の退職金積立として自由に使える制度ではありません。
また、法人では未払計上だけで損金にできない点、個人事業主が前納した場合の必要経費算入時期、消費税の処理にも注意が必要です。
経営者
中退共の掛金は経費になりますか?
従業員の退職金準備として加入を考えています。
税理士
従業員のために事業主が負担する中退共の掛金であれば、原則として経費になります。
法人の場合は、法人税上の損金に算入します。
個人事業主の場合は、事業所得、不動産所得、山林所得の必要経費に算入します。
また、事業主が掛金を負担した時点では、従業員側で給与として課税されることもありません。
経営者
法人の場合は、どういう根拠で損金になるのでしょうか?
税理士
法人については、法人税法施行令第135条第1号に、中退共などの退職金共済制度に基づいて被共済者のために掛金を支出した場合、その支出額を損金に算入する旨の規定があります。
つまり、一般的な福利厚生費のように「実務上そう処理している」というだけではなく、法令上も根拠がある処理です。
ただし、損金にできるのは、あくまで被共済者である従業員のために支出した掛金です。
経営者
個人事業主の場合も、経費になりますか?
税理士
はい。個人事業主が従業員のために支出する中退共掛金も、原則として必要経費になります。
所得税法施行令第64条第2項では、事業を営む個人が、中退共などの制度に基づいて被共済者のために支出した掛金について、不動産所得、事業所得、山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する旨が定められています。
なお、同じ所得税法施行令第64条では、従業員側についても、事業主が負担した掛金を給与所得の収入金額に含めない取扱いが定められています。
経営者
では、個人事業主本人の分も中退共で積み立てられますか?
税理士
そこは注意が必要です。
中退共は、基本的に「雇用されている従業員」のための退職金制度です。
個人事業主本人の退職金準備として、中退共掛金を経費にする制度ではありません。
個人事業主本人の将来の退職金や廃業後の資金準備を考えるのであれば、一般には小規模企業共済など、別の制度を検討することになります。
経営者
法人の代表取締役や役員は加入できますか?
税理士
法人役員は、原則として中退共の加入対象ではありません。
ただし、役員であっても、部長、支店長、工場長などとして使用人の職務を有し、実態として従業員性がある使用人兼務役員については、加入できる場合があります。
法人税基本通達9-3-1の注書きでも、部長、支店長、工場長その他使用人としての職務を有する法人役員が被共済者に含まれることが示されています。
したがって、代表取締役本人の退職金準備として中退共掛金を計上している場合は、加入資格を含めて慎重に確認する必要があります。
経営者
家族従業員はどうですか?
税理士
家族従業員については、実態として従業員性があるかどうかの確認が重要です。
単に家族だから加入できる、あるいは加入できない、という単純な話ではありません。
実際に事業に従事しているか、使用従属関係があるか、労働条件が明確か、賃金台帳や出勤記録などがあるかを確認する必要があります。
特に、個人事業主と生計を一にする親族の場合は、形式だけでなく、実際に従業員として勤務していることを説明できるようにしておくべきです。
経営者
会計処理はどうすればよいですか?
税理士
通常は、会社の勘定科目方針に応じて、福利厚生費、退職給付費、退職金共済掛金などの科目で処理します。
たとえば、掛金10万円が普通預金から引き落とされた場合は、次のような仕訳が考えられます。
福利厚生費 100,000円 / 普通預金 100,000円
または、
退職給付費 100,000円 / 普通預金 100,000円
という形です。
勘定科目名そのものよりも、あとで中退共掛金であることが分かるように、補助科目や摘要で管理しておくことが実務上は重要です。
経営者
決算時に、まだ引き落とされていない掛金を未払計上して経費にできますか?
税理士
法人の場合は注意が必要です。
法人税基本通達9-3-1では、中退共などの退職金共済掛金について、現実に納付または払込みをしていない場合、未払金として損金算入しない取扱いが示されています。
つまり、法人では、単に決算で
福利厚生費 / 未払金
と計上しただけでは、原則として損金にできません。
実際に納付・払込みがされたかどうかを確認する必要があります。
経営者
個人事業主の場合も、支払った年の経費ですか?
税理士
個人事業主の場合は、原則として実際に支払った日の属する年分の必要経費になります。
ただし、所得税基本通達37-29では、その年中に支払期限が到来し、未払計上したものを確定申告期限までに支払った場合には、その年分の必要経費とできる取扱いが示されています。
法人と個人事業主で、未払計上の考え方が異なる点に注意してください。
経営者
前納した場合は、全額その年の経費になりますか?
税理士
個人事業主の場合、翌年以後の期間に係る掛金を前納したときは、全額を無条件に支払った年の必要経費にできるわけではありません。
所得税基本通達37-30では、前納した掛金について、各年の支払期日の回数に応じて各年分の必要経費に配分する取扱いが示されています。
中退共では一定期間分の前納ができる場合がありますが、税務上の必要経費にする年分は別途確認が必要です。
決算対策としてまとめて前納する場合は、単純に全額を当年経費にできると思い込まない方が安全です。
経営者
消費税はどうなりますか?インボイスは必要ですか?
税理士
中退共の掛金は、消費税の課税取引ではありません。
そのため、仕入税額控除の対象にはなりません。
会計ソフトで入力する場合は、課税仕入れではなく、対象外、不課税などの区分で処理します。
また、中退共掛金はインボイス制度の対象にもならないため、適格請求書、いわゆるインボイスは発行されません。
経営者
実務上、何を確認しておけばよいですか?
税理士
まず、誰のための掛金かを確認してください。
一般従業員なのか、使用人兼務役員なのか、代表取締役などの役員本人なのか、個人事業主本人なのか、家族従業員なのかによって、注意点が変わります。
次に、通常の月払いなのか、前納なのか、実際の納付日がいつなのかを確認します。
法人では、未払計上だけで損金にしていないかを確認します。
個人事業では、前納した掛金の期間帰属を確認します。
最後に、消費税区分を課税仕入れにしていないかも確認してください。
中退共の掛金は、従業員分であれば経費性自体は明確ですが、加入対象者、納付時期、前納、消費税区分でミスが出やすい項目です。
町田・相模原で従業員の退職金制度や経理処理に迷ったら
中退共は、中小企業が従業員の退職金制度を整えるうえで使いやすい制度です。
一方で、代表者本人、役員、家族従業員、前納掛金、未払計上、消費税区分など、税務・会計上の確認点もあります。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、法人か個人事業主か、被共済者が誰か、通常払いか前納か、実際の納付日、同居親族や役員の従業員性などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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