SuicaやPASMOを仕事の移動に使っている方の中には、券売機でチャージしたときの領収書を保存し、その金額をそのまま旅費交通費にしている方もいるかもしれません。
しかし、チャージした時点では、まだ電車やバスを利用していません。税務上は、チャージ額と実際に業務で使った交通費を分けて考える必要があります。
経営者
仕事の移動でSuicaを使っています。
券売機でチャージしたときの領収書を保管し、その金額をそのまま全額経費にしていますが、税務調査で何か言われますか?
税理士
指摘される可能性があります。
SuicaやPASMOへのチャージは、現金を交通系ICカードの残高へ移した段階です。チャージした時点では、まだ鉄道会社やバス会社から具体的な旅客運送サービスを受けていません。
そのため、原則としてチャージ時は「仮払金」「預け金」などの資産として処理し、実際に業務で乗車した時点で旅費交通費へ振り替えます。
経営者
チャージしたときの領収書があれば、支払ったことは証明できますよね?
税理士
チャージした事実は証明できます。
ただし、チャージ時の領収書だけでは、実際にいつ、どの区間を、いくらで利用したのか、その移動が仕事だったのか、私用だったのかまでは分かりません。
税務調査では、特に次の部分が問題になります。
・決算日や12月31日時点で残っている未使用残高
・私用の乗車や買物に使った金額
・利用履歴がなく、仕事との関係を説明できない金額
・チャージ額をそのまま消費税の課税仕入れにした金額
経営者
Suicaは仕事の移動だけでなく、コンビニでの買物にも使うことがあります。
税理士
その場合、チャージ額を全額旅費交通費にすることはできません。
交通系ICカードは、鉄道やバスだけでなく、コンビニ、自動販売機、飲食店などでも利用できます。仕事と私用、交通費と物品購入が混在するため、利用履歴などから取引ごとに分ける必要があります。
可能であれば、事業専用の交通系ICカードを用意してください。
経営者
利用履歴は、どこまで残せばよいですか?
税理士
定期的に利用履歴を取得し、利用日、区間、金額に加えて、訪問先や移動目的を記録します。
たとえば、「○○社訪問」「現場移動」「銀行手続」など、業務との関係が分かる補足を残します。
帳簿上は、
期首残高+当期チャージ額-当期利用額=期末残高
となることを確認し、決算日や年末時点の未使用残高は翌期へ繰り越します。
経営者
旅費交通費について、支払った事実だけでは足りないという裁決はありますか?
税理士
SuicaやPASMOのチャージを直接扱った公表裁決は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。
ただし、平成25年7月9日裁決では、旅費交通費等について、単に支出した事実があるだけでなく、業務遂行上必要な支出であることを説明できない部分は、必要経費に算入できないと判断されています。
交通系ICカードについても、チャージ領収書だけでなく、実際の利用内容と業務との関係を説明できる記録が重要です。
経営者
消費税は、チャージしたときに仕入税額控除をしてもよいですか?
税理士
原則として、チャージ時点で仕入税額控除をする処理は適切ではありません。
チャージしただけでは、具体的な旅客運送や物品購入が行われていないためです。消費税も、実際に電車やバスを利用した時点、または商品等を購入した時点で取引内容に応じて判断します。
経営者
電車やバスの利用は、インボイスを毎回保存しなければならないのでしょうか?
税理士
1回の取引につき税込3万円未満の鉄道、路線バスなどの旅客運送であれば、公共交通機関特例により、一定事項を記載した帳簿だけで仕入税額控除を受けられます。
ただし、この特例の対象は、チャージではなく実際の旅客運送です。
帳簿には、利用日、交通事業者、交通費の内容、金額に加え、「3万円未満の鉄道料金」など、帳簿のみの保存が認められる取引であることも記載します。
コンビニや自動販売機での物品購入などには、公共交通機関特例をそのまま適用することはできません。
経営者
これまでチャージ時に全額経費にしていた場合は、どうすればよいですか?
税理士
まず、取得できる利用履歴、スケジュール、訪問記録などから、業務利用額と期末残高を確認します。
そのうえで、未使用残高、私用の乗車、買物利用などを経費から除外します。
金額が多額の場合や、チャージ時に消費税の仕入税額控除まで行っている場合は、過年度の修正が必要か個別に確認してください。
実務上の対応
主な根拠
※本記事は一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、カードの利用状況、金額、記録の有無、消費税の計算方法などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




