税務調査では、納税者本人だけでなく、取引先や金融機関に対して確認が行われることがあります。
これを一般に「反面調査」といいます。
反面調査という言葉だけを聞くと、「本人に黙って取引先や銀行に確認するのは違法ではないか」と感じるかもしれません。
しかし、一定の要件を満たす場合には、税務署が本人の承諾を得ず、本人にあらかじめ「これから○○銀行へ確認します」と通知せずに、取引先や金融機関へ確認することはあり得ます。
ただし、税務署が誰に対してでも、何でも自由に調べられるわけではありません。反面調査にも、法律上・裁判例上の限界があります。
経営者
税務調査で「反面調査」という言葉を聞きました。
これは何ですか?
税理士
反面調査とは、税務署が納税者本人だけでは事実関係を十分に確認できない場合などに、取引先、金融機関、その他の第三者に対して、取引内容や入出金、帳簿資料などを確認する調査をいいます。
たとえば、売上先に請求金額を確認する、仕入先に取引数量を確認する、銀行に預金口座の入出金を確認する、といった調査が考えられます。
経営者
取引先や銀行に、本人の承諾なく確認されることはあるのですか?
税理士
あり得ます。
反面調査について、納税者本人の承諾を常に必要とする法律上の要件はありません。
また、本人に対して「これから○○銀行に確認します」と事前に通知しなければならない、という一律の制度でもありません。
国税庁のFAQでも、反面調査には事前通知についての法令上の規定はないとされています。ただし、運用上は、原則として反面調査の対象者にはあらかじめ連絡すると説明されています。
経営者
「反面調査の対象者には連絡する」というのは、私に連絡するという意味ですか?
税理士
ここは混同しやすいところです。
反面調査に関する事前連絡という場合、通常は「これから訪問や連絡を受ける取引先や金融機関などへの連絡」を意味します。
一方で、調査を受けている本人に対して、「これからあなたの取引先を調べます」「これからあなたの銀行を調べます」と事前に通知する制度ではありません。
つまり、本人への事前通知と、反面調査先への事前連絡は別の話です。
経営者
では、税務署は誰にでも自由に確認できるのですか?
税理士
いいえ。そこは重要です。
税務署の調査権限は無制限ではありません。
国税通則法74条の2では、所得税、法人税、消費税などについて、納税者本人だけでなく、取引関係のある一定の者に対して質問や検査を行うことができるとされています。
たとえば、法人税であれば、その法人に対して金銭の支払や物品の譲渡をする義務があると認められる者、またはその法人から支払や譲渡を受ける権利があると認められる者などが対象になります。
つまり、取引先は、法律上も質問検査の相手方として予定されています。
経営者
銀行への確認も法律上できるのですか?
税理士
調査対象者との資金関係がある場合には、金融機関への確認が問題になることがあります。
たとえば、売上入金、仕入代金の支払、役員個人口座を経由した法人資金の流れ、相続税調査における被相続人や相続人の預金などです。
相続税や贈与税については、国税通則法74条の3で、納税義務者に債権・債務を有していた者、財産を譲渡した者・譲り受けた者、納税義務者の財産を保管したと認められる者などに対する質問検査権が定められています。
したがって、相続税調査では、被相続人や相続人に関係する金融機関への確認が法律上予定されている場面があります。
経営者
本人に対する調査を全部やり尽くしてからでないと、反面調査はできないのですか?
税理士
「必ず本人調査を完全にやり尽くした後でなければ反面調査できない」とまではいえません。
裁判例でも、他に調査方法があることだけで、質問検査権の行使が当然に禁止されるとは考えられていません。
ただし、国税庁は現在のFAQで、納税者本人以外を調査しなければ申告内容について正確な事実把握が困難と認められる場合に、取引先等への反面調査を行うことがあると説明しています。
そのため、必要性のない漫然とした反面調査まで認められるわけではありません。
経営者
反面調査には、どのような限界がありますか?
税理士
大きくは、必要性、関連性、相当性が重要です。
まず、その税務調査の目的から見て、反面調査を行う必要性があること。
次に、確認しようとしている情報が、調査対象の税目や期間、申告内容と関連していること。
さらに、調査の方法や範囲が、納税者本人や反面調査先のプライバシー、信用関係などの私的利益との関係で、社会通念上相当な範囲にとどまっていることが必要です。
最高裁昭和48年7月10日決定も、質問検査権について、客観的必要性があり、相手方の私的利益との衡量上、社会通念上相当な限度にとどまる限り、税務職員の合理的選択に委ねられるという考え方を示しています。
経営者
反面調査そのものが争われた裁判例はありますか?
税理士
あります。
たとえば、山口地方裁判所周南支部平成20年10月1日判決では、法人税調査に伴い、法人役員らの金融機関や取引先に反面調査が行われ、その必要性や相当性が争われました。
裁判所は、反面調査が違法となり得る場合として、具体的事情から見て反面調査の必要性に欠ける場合、または本人や反面調査先の私的利益との衡量上、社会通念上相当な限度を逸脱した場合を示しました。
この事件では、海外支店への多額の送金が役員個人名義口座を経由していたことや、法人に対する多額の役員貸付金の原資確認が必要であったことなどから、金融機関への反面調査の必要性が認められています。
経営者
本人に知らせず、承諾も取らずに銀行へ確認した点は問題にならなかったのですか?
税理士
その裁判例では、本人らに事前に通知せず、承諾も得なかったことだけで違法とはされていません。
事前に知らせれば資料改ざん等の余地が生じ得ることなども踏まえ、当該事案では、社会通念上相当な限度を超えていないと判断されています。
ただし、これは「どのような反面調査でも無断で自由にできる」という意味ではありません。
必要性、関連性、対象範囲、調査方法、信用失墜のおそれ、プライバシーへの影響などを個別に見て判断されます。
経営者
取引先に連絡されると、信用問題になりませんか?
税理士
信用問題になり得ることはあります。
だからこそ、反面調査には相当性の限界があります。
売上先に売上額や請求内容を確認する、仕入先に仕入数量や支払額を確認する、帳簿上の振込と銀行入出金を照合する、といった調査は、必要性や関連性が認められやすい場面です。
一方で、調査対象事項と関係の薄い多数の第三者にまで広げる、必要以上に長期間の資料を求める、事業と明らかに関係しない個人口座や家族口座まで漫然と確認する、といった場合には、必要性や相当性を検討する余地があります。
経営者
取引先や銀行から「税務署から照会があった」と連絡が来た場合、どうすればよいですか?
税理士
まず、事実関係を整理してください。
どの相手先に照会があったのか、どの税目の調査なのか、どの期間について聞かれているのか、どのような資料を求められているのかを確認します。
そのうえで、調査官に対しては、いきなり「反面調査をやめてください」と主張するよりも、「反面調査の必要性について確認したい」「当該口座は事業とどのような関連性を前提に調査されていますか」「対象期間や対象資料の範囲を確認したい」という形で、必要性、関連性、範囲を確認する方が実務上は適切です。
経営者
反面調査に問題があれば、その後の課税処分は必ず取り消されますか?
税理士
必ず取り消されるとは限りません。
反面調査の態様に問題があるとしても、そのことだけで更正処分や決定処分が当然に無効・取消しになるわけではありません。
調査手続の違法性の程度と、その後の課税処分への影響は別途検討が必要です。
そのため、反面調査に問題があると感じる場合には、照会先、照会内容、対象期間、調査との関連性、実際に生じた不利益を整理したうえで、税理士に相談することが重要です。
町田・相模原で税務調査に不安がある方へ
反面調査は、取引先や金融機関との関係にも影響するため、税務調査の中でも特に慎重な対応が必要な場面です。
ただし、「本人に無断で銀行へ確認された」という一点だけで、直ちに違法と判断できるわけではありません。
重要なのは、なぜその相手先を調べる必要があったのか、確認された情報が調査対象と関連しているのか、調査の方法や範囲が相当といえるのか、という点です。
町田・相模原で税務調査、反面調査、銀行照会への対応に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の対応は、税目、調査対象期間、照会先、照会内容、本人から既に提示した資料、取引先や金融機関との関係、実際に生じた不利益などにより異なります。反面調査が問題となっている場合は、個別事情を整理したうえで税理士へご相談ください。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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