2026年10月から、いわゆる「106万円の壁」の賃金要件がなくなる予定とされています。
この話を聞くと、小規模な会社の経営者の方は、「従業員50人以下の会社でも、週20時間以上働くパートをすぐ社会保険に入れなければならないのか」と不安になるかもしれません。
結論からいうと、2026年10月に賃金要件が撤廃されても、従業員50人以下の会社が直ちに「週20時間以上のパート全員」を社会保険に加入させなければならなくなるわけではありません。
ポイントは、「賃金要件」と「企業規模要件」は別の要件だということです。
なお、本記事は2026年8月24日時点の厚生労働省等の公表情報を前提にした一般的な制度解説です。実際の加入手続きや個別の労務判断については、年金事務所または社会保険労務士等への確認が必要になる場合があります。
経営者
2026年10月から「106万円の壁」の賃金要件がなくなると聞きました。
従業員50人以下の小さい会社でも、パートを週20時間以上雇うと、すぐ社会保険に加入させなければならないのでしょうか?
税理士
いいえ。
2026年10月に「106万円の壁」の賃金要件が撤廃される予定であっても、それだけで従業員50人以下の会社が直ちに週20時間以上のパート全員を社会保険に加入させるわけではありません。
賃金要件と企業規模要件は別々の要件です。
2026年10月に撤廃予定なのは、月額8.8万円以上、年収換算で約106万円以上という賃金要件です。
一方で、企業規模要件はすぐにはなくならず、段階的に対象企業が広がっていきます。
経営者
「106万円の壁」がなくなるというのは、具体的には何がなくなるという意味ですか?
税理士
短時間労働者の社会保険加入要件のうち、月額賃金8.8万円以上という要件が撤廃されるという意味です。
年収に換算すると、おおむね106万円程度になるため、「106万円の壁」と呼ばれています。
ただし、これはあくまで賃金要件の話です。
社会保険の適用拡大では、週所定労働時間、雇用見込み、学生かどうか、企業規模なども関係します。
そのため、「106万円の壁がなくなる」という話だけを見て、「50人以下の会社も2026年10月から全員加入」と理解すると、少し話が飛びすぎです。
経営者
では、50人以下の会社はいつから対象になるのでしょうか?
税理士
厚生労働省の公表内容では、企業規模要件は段階的に縮小されます。
現時点で示されているスケジュールは、次のとおりです。
| 時期 | 対象となる企業規模 |
|---|---|
| 2027年9月まで | 51人以上 |
| 2027年10月から | 36人以上 |
| 2029年10月から | 21人以上 |
| 2032年10月から | 11人以上 |
| 2035年10月から | 企業規模要件を撤廃 |
したがって、たとえば厚生年金の被保険者数が30人の会社であれば、2026年10月に賃金要件が撤廃されたとしても、そのことだけで週20時間のパートが強制加入になるわけではありません。
一方、36人から50人規模の会社は、2027年10月から適用拡大の対象になります。
経営者
ここでいう従業員数は、パートやアルバイトも含めた人数ですか?
税理士
単純な在籍人数ではありません。
企業規模要件の判定では、原則として厚生年金保険の被保険者数で判断します。
つまり、会社に在籍している人数が50人以下かどうかではなく、厚生年金保険に加入している被保険者数が何人かを確認する必要があります。
また、法人に複数の事業所がある場合には、原則として同一法人全体で判定します。
「うちは小さい会社だから大丈夫」と感覚で判断するのではなく、まず厚生年金の被保険者数を確認することが重要です。
経営者
週20時間以上働くパートは、企業規模要件に該当したら全員加入ですか?
税理士
企業規模要件に該当する会社では、短時間労働者について加入判定が必要になります。
その場合、主に次のような要件を確認します。
週所定労働時間が20時間以上であること、2か月を超えて雇用される見込みがあること、学生でないことなどです。
2026年10月に賃金要件が撤廃される予定なので、今後は月額8.8万円以上かどうかだけで対象外とする整理はできなくなっていきます。
ただし、企業規模要件にまだ該当しない会社については、賃金要件の撤廃だけで短時間労働者の強制適用対象になるわけではありません。
経営者
では、50人以下の会社なら、当面は何も気にしなくてよいのでしょうか?
税理士
そこは注意が必要です。
今回の話は、正社員の所定労働時間・所定労働日数の4分の3未満で働く短時間労働者を前提にしています。
そもそも、パートやアルバイトであっても、通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数の4分の3以上働く場合は、企業規模要件とは別に、従来から社会保険の加入対象になる可能性があります。
つまり、50人以下の会社だからといって、すべてのパートが社会保険の対象外というわけではありません。
まずは、4分の3基準に該当する人がいないかを確認してください。
経営者
36人から50人の会社は、2027年10月から注意が必要ということですね?
税理士
そのとおりです。
36人から50人の会社は、2027年10月から短時間労働者の社会保険適用拡大の対象になる予定です。
その時点では、週20時間以上、2か月を超える雇用見込み、学生でないことなどを満たすパート・アルバイトについて、加入判定が必要になります。
特に、飲食業、美容業、小売業、サービス業など、パート・アルバイトを多く雇用している会社では、社会保険料の会社負担が増える可能性があります。
採用計画、シフト設計、人件費予測を早めに見直しておくことが重要です。
経営者
2026年10月から、すでに決まった制度として考えてよいのでしょうか?
税理士
2026年8月24日時点では、厚生労働省や日本年金機構は、賃金要件について2026年10月撤廃予定と案内しています。
ただし、法律上は施行日を政令で定める仕組みになっているため、実際に適用する段階では、施行日の最終確認が必要です。
制度改正の話は、見出しだけが先に広がりやすいです。
「106万円の壁がなくなる」という言葉だけで判断せず、自社の被保険者数、パートの勤務時間、4分の3基準、雇用見込み、学生該当性を整理して判断する必要があります。
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要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月24日時点の公表情報に基づく一般的な制度解説です。実際の社会保険加入手続き、個別の労務判断、適用事業所の届出等については、年金事務所または社会保険労務士等へ確認してください。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
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上智大学法学部法律学科卒。
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