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	<title>裁判例でわかる税務のポイント - 町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</title>
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	<description>無料相談 / 起業支援専門</description>
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	<title>裁判例でわかる税務のポイント - 町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</title>
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	<item>
		<title>決算賞与は未払計上すれば経費になる？通知日を偽った重加算税裁決を解説</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11898</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Fri, 24 Jul 2026 00:00:28 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>決算賞与は未払計上すれば経費になる？裁決例か [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11898">決算賞与は未払計上すれば経費になる？通知日を偽った重加算税裁決を解説</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h1>決算賞与は未払計上すれば経費になる？裁決例から見る通知日と重加算税の注意点</h1>
<p><strong>「今期は利益が出そうなので、従業員に決算賞与を出したいと考えています。期末に未払計上しておけば、今期の経費にできますか？」</strong></p>
<p>利益が大きく出た事業年度では、従業員への還元や節税対策として、決算賞与を検討する会社があります。</p>
<p>決算賞与は、一定の要件を満たせば、実際の支払日が翌期であっても、当期の損金、つまり法人税法上の経費に算入できる場合があります。</p>
<p>しかし、ここで重要なのは、単に</p>
<p><strong>「期末に未払金として経理処理した」</strong></p>
<p><strong>「翌月に実際に支払った」</strong></p>
<p>というだけでは足りないという点です。</p>
<p>特に問題になるのが、</p>
<p><strong>「いつ、誰に、いくら支給することを通知したのか」</strong></p>
<p>です。</p>
<p>今回取り上げる裁決例では、会社が令和3年9月期に決算賞与を未払計上しました。</p>
<p>会社側は、期末までに従業員へ通知していたと主張しましたが、国税不服審判所は、実際に各人別の支給額を通知した日は翌期である令和3年10月25日だったと判断しました。</p>
<p>さらに、通知書には「令和3年9月30日通知」と記載されており、調査時にもその書類が提示されていました。</p>
<p>審判所は、この行為について、実際には期末までに通知していないにもかかわらず、期末に通知したかのように装うものであり、重加算税の対象となる「仮装」に該当すると判断しました。</p>
<h2>結論：決算賞与は「未払計上」だけでは当期の経費になりません</h2>
<p>結論からいうと、決算賞与を当期の損金にするためには、法人税法施行令72条の3に定められた要件を満たす必要があります。</p>
<p>今回の裁決で問題となったのは、使用人賞与のうち、いわゆる未払賞与として損金算入する場合の要件です。</p>
<p>主な要件は、次の3つです。</p>
<ul>
<li>各人別の支給額を、同時期に支給を受ける全ての使用人に通知していること</li>
<li>通知した金額を、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること</li>
<li>通知した日の属する事業年度において損金経理していること</li>
</ul>
<p>このうち、今回特に問題になったのは、1つ目の</p>
<p><strong>「各人別の支給額を通知していること」</strong></p>
<p>です。</p>
<p>審判所は、この通知について、会社が個々の従業員ごとの具体的な賞与支給額を最終的・確定的に決定した上で、その金額を従業員に表示することが必要であると判断しました。</p>
<p>つまり、</p>
<ul>
<li>「0.5か月分を出す予定です」</li>
<li>「10月に決算賞与を支給する予定です」</li>
<li>「各自でだいたい計算できるはずです」</li>
</ul>
<p>という程度では足りません。</p>
<p>誰に、いくら支給するのかが確定しており、その金額が従業員本人に通知されている必要があります。</p>
<h2>なぜ決算賞与の通知日が問題になるのか</h2>
<p>法人税では、費用をどの事業年度の損金にするかが重要です。</p>
<p>原則として、賞与は実際に支払った日の属する事業年度の損金になります。</p>
<p>しかし、一定の未払賞与については、例外的に、支払前であっても当期の損金にできる場合があります。</p>
<p>ただし、未払のまま損金算入を認めると、会社が利益調整のために賞与を自由に見積計上できてしまうおそれがあります。</p>
<p>そのため、法人税法施行令72条の3は、未払賞与を当期損金にするための要件を厳格に定めています。</p>
<p>この制度の趣旨は、単なる見込みではなく、債務として確定しているといえる状態にある賞与だけを、例外的に当期の損金として認めることにあります。</p>
<p>したがって、決算賞与を当期の経費にしたい場合には、</p>
<ul>
<li>期末までに支給額が確定しているか</li>
<li>各人別に支給額を通知しているか</li>
<li>通知した全員に、期末後1か月以内に実際に支払っているか</li>
<li>当期中に損金経理しているか</li>
</ul>
<p>を確認する必要があります。</p>
<h2>今回の会社では何が起きたのか</h2>
<p>今回の事案では、請求人である会社は、総合建設業等を営む法人でした。</p>
<p>会社は、令和3年9月期において、従業員に対する決算賞与を令和3年9月30日付で未払計上し、同事業年度の損金の額に算入しました。</p>
<p>その後、会社は令和3年10月25日に、各従業員へ決算賞与を振込みで支払いました。</p>
<p>また、同じ令和3年10月25日に、各従業員へ賞与支給通知書を交付しました。</p>
<p>この賞与支給通知書には、次のような事項が記載されていました。</p>
<ul>
<li>通知日：令和3年9月30日</li>
<li>支給対象者名</li>
<li>決算賞与を支給する旨</li>
<li>支給日：令和3年10月25日</li>
<li>支給額</li>
</ul>
<p>形式だけを見ると、令和3年9月30日に各人別の支給額を通知したように見えます。</p>
<p>しかし、審判所は、実際に賞与支給通知書を従業員に交付した日は令和3年10月25日であり、令和3年9月期中に各人別の支給額を通知したとは認められないと判断しました。</p>
<h2>「0.5か月分を支給する」と伝えれば足りるのか</h2>
<p>会社側は、令和3年8月の経営会議で、社長から、決算賞与として給与等の0.5か月分を支給することを全社員に通知するよう指示があったと主張しました。</p>
<p>また、会社では、通常の賞与や決算賞与について、給与等の何か月分と説明すれば、従業員自身が自分の支給額を計算できる慣習があったとも主張しました。</p>
<p>しかし、審判所はこの主張を認めませんでした。</p>
<p>理由は、法人税法施行令72条の3第2号イの通知といえるためには、個々の従業員ごとの具体的な賞与支給額を、会社が最終的・確定的に決定した上で、従業員に表示する必要があるからです。</p>
<p>今回の事案では、口頭で通知したとされる後の令和3年9月27日になってから、決算賞与の金額が変更された従業員が存在しました。</p>
<p>この事実から、審判所は、令和3年8月末頃までに各従業員ごとの具体的かつ正確な支給額が最終的・確定的に決定されていたとは認められないと判断しました。</p>
<p>つまり、</p>
<p><strong>「0.5か月分を出します」</strong></p>
<p>という通知では、概算を伝えたにすぎません。</p>
<p>未払賞与の損金算入要件で求められるのは、概算ではなく、各人別の確定額の通知です。</p>
<h2>通知書の日付を「令和3年9月30日」としたことが問題になった</h2>
<p>今回の裁決で特に重いのは、単に決算賞与の損金算入が否認されたことだけではありません。</p>
<p>会社は、実際には令和3年10月25日に賞与支給通知書を交付していました。</p>
<p>それにもかかわらず、その通知書には「通知日」として「令和3年9月30日」と記載されていました。</p>
<p>また、各人別の通知書の控えは、</p>
<p><strong>「第○期決算賞与支給通知書綴　令和3年9月30日通知　令和3年10月25日支給日」</strong></p>
<p>と記載されたフラットファイルに綴じられていました。</p>
<p>このフラットファイルは、税務調査において調査担当職員に提示されました。</p>
<p>審判所は、これらの行為について、実際には令和3年9月30日までに通知していないにもかかわらず、同日に通知したことが真実であるかのように装うものだと判断しました。</p>
<p>その結果、会社の行為は、国税通則法68条1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当するとされ、重加算税の対象になりました。</p>
<h2>なぜ重加算税まで課されたのか</h2>
<p>重加算税は、単なる計算ミスや法令解釈の誤りに対して課されるものではありません。</p>
<p>国税通則法68条1項は、納税者が課税標準や税額計算の基礎となる事実を隠蔽し、または仮装し、その隠蔽・仮装に基づいて申告した場合に、重加算税を課すと定めています。</p>
<p>今回の裁決では、会社側が未払決算賞与の損金算入要件を調べていた事情も重視されています。</p>
<p>会社の取締役統括部長は、未払決算賞与が損金算入要件に該当することをどのように明らかにするかについて、書籍やインターネット情報を基に調査していました。</p>
<p>その資料には、決算賞与の通知書を決算月末までに全従業員に渡す必要があることや、税務調査では決算賞与の通知日が確認されることが記載されていました。</p>
<p>さらに、担当会計士からも、単に給与等の0.5か月分を口頭で伝えるだけでは、各人別に支給額を通知するという税務上の要件を満たさない旨の助言を受けていました。</p>
<p>つまり、会社側は、通知日や通知書が重要であることを認識していたと評価されました。</p>
<p>そのうえで、実際の通知日と異なる「令和3年9月30日通知」と記載された通知書やファイルを作成し、調査で提示したため、審判所は、故意に事実をわい曲した仮装行為と判断したのです。</p>
<h2>決算賞与の実務でやってはいけないこと</h2>
<p>今回の裁決から、決算賞与について特に避けるべき行為が分かります。</p>
<h3>1．期末後に作成した通知書へ期末日を記載する</h3>
<p>実際には翌期に作成・交付した通知書に、期末日を通知日として記載することは非常に危険です。</p>
<p>これは単なる日付の誤りでは済まない可能性があります。</p>
<p>税務調査では、通知書の作成日、印刷日、データの保存日時、給与データの作成日時などが確認されることがあります。</p>
<p>今回の裁決でも、通知書データや支給データの作成日時、最終印刷日時が確認されています。</p>
<p>紙の通知書に期末日が記載されていても、電子データ上の作成日時や印刷日時と整合しなければ、実際の通知日を疑われます。</p>
<h3>2．「何か月分」とだけ伝えて各人別金額を通知しない</h3>
<p>「給与の0.5か月分を支給する」と伝えるだけでは、各人別の支給額を通知したことにはなりません。</p>
<p>控除前の金額、支給対象者、支給額、支給日を個別に明確にした通知が必要です。</p>
<p>特に、支給額が途中で変更される従業員がいる場合には、その変更後の確定額を、事業年度末までに通知しているかが問題になります。</p>
<h3>3．通知した証拠を残していない</h3>
<p>口頭通知は、後から証明することが困難です。</p>
<p>未払決算賞与を当期損金にしたいのであれば、書面または電子的記録により、通知日、通知対象者、通知金額、通知方法を客観的に残すべきです。</p>
<p>ただし、証拠を後から作ることは逆効果です。</p>
<p>実際に通知した時点で、正しい日付の証拠を残す必要があります。</p>
<h3>4．税務調査で事実と異なる資料を提示する</h3>
<p>税務調査で事実と異なる通知日が記載された資料を提示すると、単なる損金不算入だけでなく、重加算税の問題になります。</p>
<p>資料を整えることと、事実と異なる外観を作ることは全く違います。</p>
<p>税務上の要件を満たすために必要なのは、形式的な書類ではなく、実際にその時点で要件を満たしていたという事実です。</p>
<h2>実務上の対応：決算賞与を当期損金にするためのチェックリスト</h2>
<p>決算賞与を未払計上して当期の損金にする場合には、最低限、次の点を確認すべきです。</p>
<ul>
<li>決算日までに、支給対象者を確定しているか</li>
<li>決算日までに、各人別の具体的な支給額を確定しているか</li>
<li>決算日までに、各人別の支給額を本人へ通知しているか</li>
<li>通知した全員に、通知した金額どおり支払っているか</li>
<li>支払日は、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内か</li>
<li>通知した日の属する事業年度において損金経理しているか</li>
<li>通知書、メール、電子承認記録など、通知日を証明できる資料があるか</li>
<li>通知書の日付と、実際の作成日・交付日・データ保存日時が矛盾していないか</li>
<li>通知後に金額変更や支給対象者の変更が生じていないか</li>
</ul>
<p>このうち一つでも崩れると、未払賞与として当期損金に算入できない可能性があります。</p>
<h2>現場所長の横領行為も会社の重加算税につながった</h2>
<p>今回の裁決には、決算賞与とは別に、現場所長による横領行為の論点も含まれています。</p>
<p>現場所長は、工事現場に関する外注費の減額分や、自動販売機設置手数料を自己名義の口座に振り込ませていました。</p>
<p>会社側は、この横領行為について、税務調査で初めて知らされたものであり、会社の行為と同視することはできないと主張しました。</p>
<p>しかし、審判所は、現場所長の地位・権限、行為態様、会社の管理・監督体制を総合的に検討し、現場所長の横領行為を会社の行為と同視できると判断しました。</p>
<p>現場所長は、担当現場について工事の進捗、品質、原価管理、現場管理を行う広範な権限を有していました。</p>
<p>また、下請業者や自動販売機設置業者に対して、会社との取引関係を背景とした強い影響力を持っていました。</p>
<p>そのため、現場所長の権限逸脱や濫用の可能性を、会社として認識し、管理・監督すべきだったと判断されたのです。</p>
<h2>「優秀な現場所長に任せていた」は通用しなかった</h2>
<p>今回の現場所長は、勤続10年以上のベテラン社員であり、会社内で表彰されたこともある優秀な担当者でした。</p>
<p>会社側としては、信頼して任せていた面があったと考えられます。</p>
<p>しかし、審判所は、優秀な社員だからといって、会社の管理・監督義務が軽くなるとは判断しませんでした。</p>
<p>本件新築工事では、追加変更工事一覧表では増額工事とされていた一方、竣工時の図面では施工箇所が減少しているなど、不自然な点がありました。</p>
<p>部長職による現場巡回、打合せ議事録の確認、社内検査による図面確認などが適切に行われていれば、不自然な点を発見することは可能だったと判断されています。</p>
<p>また、自動販売機についても、現場事務所への設置台数や設置場所を把握することは可能であり、会社が把握していない自動販売機の設置や手数料の処理状況を確認することも可能だったとされました。</p>
<p>その結果、会社は現場所長の隠蔽・仮装行為を防止することができたにもかかわらず、これを怠ったと評価されました。</p>
<h2>この裁決から学ぶべきこと</h2>
<h3>1．決算賞与は「支払」より前に「通知」が重要</h3>
<p>決算賞与を当期の損金にするためには、期末までに各人別の支給額を確定し、本人へ通知していることが重要です。</p>
<p>翌月に支払ったという事実だけでは足りません。</p>
<p>期末後に通知したのであれば、原則として、その賞与は支払日の属する翌期の損金になります。</p>
<h3>2．通知日は後から作れない</h3>
<p>通知書に期末日を書けば足りるわけではありません。</p>
<p>実際にいつ作成し、いつ交付し、いつ従業員が確認したのかが重要です。</p>
<p>電子データの作成日時や印刷日時も含めて、後から整合性を確認される可能性があります。</p>
<h3>3．重加算税は「意図的な外観作出」で問題になる</h3>
<p>今回の事案では、未払賞与の損金算入要件を満たしていないこと自体に加え、実際とは異なる通知日を記載した通知書やファイルを作成し、調査で提示したことが重視されました。</p>
<p>税務上の要件を満たすために、事実と異なる書類を作ることは、単なる処理ミスではなく、仮装行為と評価される可能性があります。</p>
<h3>4．従業員の不正でも会社の重加算税になることがある</h3>
<p>従業員や現場責任者が不正を行った場合でも、会社が知らなかったから常に重加算税を免れるわけではありません。</p>
<p>その従業員の地位・権限、行為の内容、会社の管理・監督体制によっては、従業員の隠蔽・仮装行為が会社の行為と同視されることがあります。</p>
<h3>5．現場管理は税務リスクにも直結する</h3>
<p>建設業では、現場所長に一定の裁量を与えざるを得ません。</p>
<p>しかし、外注費の変更、減額工事、自動販売機手数料、現場で発生する雑収入などは、税務上の収益や仕入税額控除に直結します。</p>
<p>現場に任せきりにすると、法人税・消費税・重加算税のリスクが生じます。</p>
<h2>会社が整備すべき内部管理</h2>
<p>今回の裁決を踏まえると、会社としては次のような管理体制を整える必要があります。</p>
<ul>
<li>決算賞与の支給決定日、通知日、支払日を明確に記録する</li>
<li>賞与通知書は、実際の通知日に作成・交付する</li>
<li>通知書の控え、メール送信記録、電子承認記録を保存する</li>
<li>期末後に通知書を作成する場合は、当期損金にしない</li>
<li>工事内容の変更について、変更増減一覧表と図面を照合する</li>
<li>減額工事についても、注文書・変更契約書・請求書を整備する</li>
<li>現場事務所の自動販売機、駐車場、廃材売却などの雑収入を本社で把握する</li>
<li>現場所長や担当者の個人口座へ取引先から入金されることを禁止する</li>
<li>優秀な担当者であっても、例外なく上席者による確認を行う</li>
<li>税務調査で提示する資料は、実際の事実関係と一致しているか確認する</li>
</ul>
<p>特に、決算賞与については、節税目的で急いで処理すると、日付や通知手続が曖昧になりがちです。</p>
<p>当期損金にしたいのであれば、決算日までに手続を完了させる必要があります。</p>
<p>決算後に書類を整えて当期の処理に合わせるという発想は、重加算税リスクにつながります。</p>
<h2>まとめ：決算賞与は「いつ通知したか」を証明できなければ危険</h2>
<p>決算賞与は、従業員への還元として有効な制度です。</p>
<p>また、一定の要件を満たせば、翌期支払であっても当期の損金に算入できる場合があります。</p>
<p>しかし、その要件は厳格です。</p>
<p>特に、各人別の具体的な支給額を、同時期に支給を受ける全ての使用人へ通知していることが重要です。</p>
<p>今回の裁決では、実際に通知書を交付した日が翌期であったため、未払決算賞与として当期の損金に算入することは認められませんでした。</p>
<p>さらに、通知書やフラットファイルに「令和3年9月30日通知」と記載し、税務調査で提示した行為は、実際には期末までに通知していないにもかかわらず、期末に通知したかのように装うものとして、重加算税の対象とされました。</p>
<p>決算賞与で重要なのは、書類の見た目を整えることではありません。</p>
<p><strong>実際に、期末までに、各人別の確定額を通知していること。</strong></p>
<p>そして、その事実を正確に証明できることです。</p>
<p>事実と異なる日付の書類を作成すれば、単なる損金不算入では済まず、重加算税に発展する可能性があります。</p>
<h2>今回参照した裁決例</h2>
<p>今回の記事では、次の裁決例を参照しています。</p>
<ul>
<li>国税不服審判所令和5年12月13日裁決</li>
<li>関裁（法・諸）令5第14号</li>
<li>コード番号：F0-2-1233</li>
<li>裁決結果：棄却</li>
<li>主な争点：未払決算賞与の損金算入時期、通知日の仮装と重加算税、現場所長の横領行為と会社行為の同視</li>
</ul>
<p>この裁決では、令和3年9月期に未払計上された決算賞与について、各人別の支給額を通知した日は賞与支給通知書を交付した令和3年10月25日であると認定され、令和3年9月期の損金算入は認められませんでした。</p>
<p>また、実際には令和3年9月30日までに通知していないにもかかわらず、「令和3年9月30日通知」と記載された通知書やフラットファイルを作成し、税務調査で提示した行為は、国税通則法68条1項の「隠蔽し、又は仮装し」に該当すると判断されました。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_22"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第22条第3項第2号</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097#Mp-At_72_3"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法施行令第72条の3</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_65"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第65条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_68"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第68条第1項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_74_2"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第74条の2</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108#Mp-At_2"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">消費税法第2条第1項第8号</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108#Mp-At_30"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">消費税法第30条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000011#Mp-At_19"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">地方法人税法第19条</a>
  </li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁決例を題材として、未払決算賞与の損金算入要件、通知日の重要性、重加算税、従業員の不正行為と会社の管理責任について一般的に解説したものです。実際の税務判断は、賞与規程、通知方法、支給対象者、支給日、会計処理、社内承認記録、電子データの作成日時、会社の管理体制など個別事情によって異なります。具体的な処理を行う場合には、事前に顧問税理士等へご相談ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11898">決算賞与は未払計上すれば経費になる？通知日を偽った重加算税裁決を解説</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>設立初年度の役員報酬はいつまでに決める？開業日から3か月ではないとされた裁決例</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11894</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 23 Jul 2026 00:00:18 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11894</guid>

					<description><![CDATA[<p>「会社を設立したばかりで、まだ売上がありませ [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11894">設立初年度の役員報酬はいつまでに決める？開業日から3か月ではないとされた裁決例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「会社を設立したばかりで、まだ売上がありません。実際に営業を始めてから役員報酬を決めれば大丈夫でしょうか？」</strong></p>
<p>会社設立直後は、売上が立つまで時間がかかることがあります。</p>
<p>特に、医院、歯科医院、美容業、不動産業、建設業、許認可が必要な事業などでは、法人設立日と実際の営業開始日がずれることも珍しくありません。</p>
<p>そのため、</p>
<p><strong>「まだ開業していないのだから、役員報酬も発生しない」</strong></p>
<p><strong>「実際に事業を始めてから3か月以内に役員報酬を決めればよい」</strong></p>
<p>と考えたくなる場面があります。</p>
<p>しかし、税務上の定期同額給与の判定では、原則として<strong>「開業日」ではなく「事業年度開始の日の属する会計期間開始の日」</strong>が基準になります。</p>
<p>今回取り上げる裁決例では、歯科医業を営む医療法人社団が、設立初年度に理事長報酬を月0円から180万円へ、その後280万円へ増額しました。</p>
<p>医療法人側は、事実上の事業開始日は令和元年6月1日であり、その日から3か月以内に改定したので定期同額給与に該当すると主張しました。</p>
<p>しかし、国税不服審判所は、開業日ではなく定款に定められた設立後最初の会計年度を基準に判断し、役員給与の全額2,040万円を損金に算入できないとしました。</p>
<h2>結論：設立初年度でも「開業日から3か月」ではありません</h2>
<p>結論からいうと、設立初年度の役員報酬についても、定期同額給与の判定では、原則として<strong>開業日ではなく、定款等に定められた会計期間の開始日</strong>を基準に考えます。</p>
<p>今回の裁決では、法人の設立後最初の事業年度は、定款に定められた設立後最初の会計年度である、設立の日から令和2年2月29日までと認定されました。</p>
<p>そして、役員報酬の改定は、令和元年7月18日及び同年9月17日にされたものと推認され、いずれも設立後最初の会計期間開始の日から3か月を経過した後の改定であると判断されました。</p>
<p>その結果、本件役員給与は、法人税法34条1項1号の定期同額給与に該当せず、損金の額に算入されませんでした。</p>
<p>重要なのは、次の点です。</p>
<ul>
<li>設立初年度でも、役員報酬は原則として会計期間開始日から3か月以内に決める必要がある</li>
<li>実際の開業日や営業開始日を基準にできるとは限らない</li>
<li>月額報酬の「限度額」を決めただけでは、具体的な支給額を決めたことにはならない</li>
<li>資金繰りの都合で一時的に低く支給し、後から増額しても、当然に定期同額給与になるわけではない</li>
<li>理事長は、医師として診療していても、法人税法上の使用人兼務役員には当たらない</li>
</ul>
<h2>定期同額給与とは何か</h2>
<p>法人が役員へ支給する給与は、従業員給与とは異なり、税務上、損金算入に厳しい制限があります。</p>
<p>法人税法34条1項は、内国法人が役員に対して支給する給与のうち、一定のものに該当しないものは損金に算入しないと定めています。</p>
<p>その代表が、<strong>定期同額給与</strong>です。</p>
<p>定期同額給与とは、簡単にいえば、毎月など1か月以下の一定期間ごとに支給され、各支給時期の支給額が同額である役員給与です。</p>
<p>例えば、毎月末に役員報酬50万円を支給し、事業年度を通じて同じ金額である場合には、原則として定期同額給与に該当します。</p>
<p>反対に、利益の状況を見ながら、途中で自由に増減させることができるとすると、法人の利益調整に使われるおそれがあります。</p>
<p>そのため、役員給与については、事前に支給額を決め、その後も原則として同額で支給することが求められています。</p>
<h2>役員報酬の改定が認められる3つの類型</h2>
<p>役員報酬を途中で変更した場合でも、すべてが直ちに損金不算入になるわけではありません。</p>
<p>法人税法施行令69条1項1号では、定期同額給与として認められる改定を、大きく次の3つに整理しています。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>区分</th>
<th>内容</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>通常改定</td>
<td>事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までにされた定期給与の額の改定</td>
</tr>
<tr>
<td>臨時改定事由による改定</td>
<td>役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による改定</td>
</tr>
<tr>
<td>業績悪化改定事由による改定</td>
<td>経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による減額改定</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>今回問題になったのは、このうち<strong>通常改定</strong>に該当するかどうかです。</p>
<p>医療法人側は、実際の事業開始日である令和元年6月1日を基準にすれば、7月及び9月の役員報酬改定は3か月以内であると主張しました。</p>
<p>しかし、審判所は、この主張を採用しませんでした。</p>
<h2>今回の事案の概要</h2>
<p>今回の請求人は、歯科医業を営む医療法人社団です。</p>
<p>設立総会では、定款及び役員の月額報酬限度額が承認され、理事長の月額報酬限度額は440万円とされていました。</p>
<p>また、定款には、会計年度について、毎年3月1日から翌年2月末日までとし、設立後最初の会計年度は設立の日から令和2年2月29日までとする旨が定められていました。</p>
<p>その後、請求人は、平成31年4月26日に診療所の新規開設許可を取得しました。</p>
<p>診療所開設許可申請書には、開設予定年月日は令和元年6月1日と記載されていました。</p>
<p>そして、理事長に対する役員給与は、次のように支給されました。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>期間</th>
<th>理事長報酬の月額</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>平成31年4月から令和元年6月</td>
<td>0円</td>
</tr>
<tr>
<td>令和元年7月及び8月</td>
<td>180万円</td>
</tr>
<tr>
<td>令和元年9月から令和2年2月</td>
<td>280万円</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>請求人は、この役員給与の合計額2,040万円を定期同額給与として損金に算入しました。</p>
<p>これに対し、原処分庁は、この役員給与は定期同額給与に該当しないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行いました。</p>
<h2>請求人の主張：開業日から3か月以内ならよいはず</h2>
<p>請求人は、主に次のように主張しました。</p>
<p>まず、医療法人としての事業開始日は令和元年6月1日であり、それ以前には全く取引が発生していませんでした。</p>
<p>したがって、開業前で売上のない平成31年4月及び令和元年5月に役員給与が発生しないのは当然であり、開業前から定期同額給与を発生させるべき法理も、会計上の妥当性も、経済合理性もないと主張しました。</p>
<p>そのうえで、法人税法施行令69条1項1号の「会計期間開始の日」とは、実質的には開業の日である令和元年6月1日と解すべきであると主張しました。</p>
<p>また、理事長の月額報酬280万円は、もともと決まっていた確定額であり、令和元年7月及び8月に180万円としたのは資金繰りの都合にすぎないとも主張しました。</p>
<p>さらに、設立総会において理事長の月額報酬限度額440万円が定められていた以上、その限度額以内であれば、お手盛りの弊害はなく、同額であると解することができるとも主張しました。</p>
<p>しかし、審判所は、これらの主張をいずれも採用しませんでした。</p>
<h2>審判所の判断1：会計期間開始日は開業日ではない</h2>
<p>審判所は、まず、法人税法13条1項に着目しました。</p>
<p>法人税法13条1項は、「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間、つまり会計期間で、法令又は定款等に定めるものをいうと規定しています。</p>
<p>今回の医療法人の定款には、設立後最初の会計年度は設立の日から令和2年2月29日までと定められていました。</p>
<p>そのため、審判所は、請求人の設立後最初の事業年度は、定款に定められた設立後最初の会計年度であると判断しました。</p>
<p>そして、法人税法施行令69条1項1号の「当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日」の意味は、法人税法13条1項の会計期間を前提にすれば明らかであり、これを開業日と解することはできないとしました。</p>
<p>租税法規は、多数の納税者間の公平を図る観点から、法的安定性が強く求められます。</p>
<p>そのため、文理上意味が明らかな規定について、納税者に有利なようにみだりに拡張解釈や類推解釈をすることはできない、という判断です。</p>
<h2>審判所の判断2：事前の定めがあったとは認められない</h2>
<p>次に、審判所は、役員給与の具体的な支給額について、事前の定めがあったかどうかを検討しました。</p>
<p>今回、設立総会議事録には、理事長の月額報酬限度額440万円が定められていました。</p>
<p>しかし、これはあくまで<strong>上限額</strong>です。</p>
<p>実際に理事長へいくら支給するのかについて、月額180万円や月額280万円と定めた書類は見当たりませんでした。</p>
<p>審判所は、本件役員給与の支給額について定めのある書類は、月額報酬限度額を定めた設立総会議事録以外に見当たらないと指摘しました。</p>
<p>そのため、本件7月支給額改定及び本件9月支給額改定は、そもそも事前の定めによるものとは認められないと判断しました。</p>
<p>そして、7月分の役員報酬が総勘定元帳の役員報酬勘定に計上された日である令和元年7月18日に、月0円から月180万円への改定がされたものと推認しました。</p>
<p>同じく、9月分の役員報酬が総勘定元帳に計上された日である令和元年9月17日に、月180万円から月280万円への改定がされたものと推認しました。</p>
<p>これらの改定は、いずれも設立後最初の会計期間開始の日から3か月を経過した後にされたものとされました。</p>
<h2>審判所の判断3：資金繰りの都合は臨時改定事由ではない</h2>
<p>請求人は、令和元年7月及び8月の支給額を180万円としたのは、資金繰りの都合によるものであると主張しました。</p>
<p>しかし、審判所は、この主張も採用しませんでした。</p>
<p>臨時改定事由とは、役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情をいいます。</p>
<p>例えば、役員が急に代表取締役へ就任した場合や、合併・組織再編等により職務内容が大きく変わった場合などが典型です。</p>
<p>今回のように、資金繰りの都合で一時的に支給額を低くし、後から増額することは、役員の地位や職務内容の重大な変更とはいえません。</p>
<p>また、3か月経過日までには予測し難い偶発的な事情も見当たらないとされました。</p>
<p>そのため、本件各支給額改定はいずれも臨時改定事由による改定には当たらないと判断されました。</p>
<h2>審判所の判断4：増額改定なので業績悪化改定事由にも当たらない</h2>
<p>業績悪化改定事由による改定は、経営状況が著しく悪化したことなどを理由とする改定です。</p>
<p>ただし、これは<strong>減額改定</strong>に限られます。</p>
<p>今回の改定は、月0円から180万円、さらに180万円から280万円への増額改定です。</p>
<p>そのため、業績悪化改定事由による改定に当たらないことは明らかであるとされました。</p>
<h2>「報酬限度額以内なら同額」という考え方も否定された</h2>
<p>請求人は、設立総会で理事長の月額報酬限度額440万円が定められていた以上、その限度額以内であれば、お手盛りの弊害はなく、各支給時期における支給額は同額と解することができるとも主張しました。</p>
<p>しかし、審判所はこれも否定しました。</p>
<p>定期同額給与は、各支給時期における支給額が同額であることが求められます。</p>
<p>月額報酬の上限が440万円と決まっていたとしても、実際の支給額が、0円、180万円、280万円と変動していれば、各支給時期の支給額が同額であるとはいえません。</p>
<p>「限度額以内だから同額」という解釈は、法令が役員給与の取扱いを明確に定めていることに照らして採用できないとされました。</p>
<h2>理事長は使用人兼務役員にはならない</h2>
<p>請求人は、本件理事長は医療法人の理事長である前に医師であるため、医師兼務役員であり、使用人兼務役員に当たる余地があるとも主張しました。</p>
<p>この点についても、審判所は明確に否定しています。</p>
<p>法人税法34条6項は、使用人としての職務を有する役員について定めていますが、社長、理事長その他一定の役員は、使用人兼務役員から除かれます。</p>
<p>つまり、理事長が医師として診療業務を行っていたとしても、法人税法上、理事長である以上、使用人兼務役員には当たりません。</p>
<p>したがって、理事長報酬について、使用人部分と役員部分に分けて、使用人給与として損金算入するという処理は認められませんでした。</p>
<h2>この裁決から学ぶべきポイント</h2>
<h3>1．設立初年度の3か月ルールは、開業日基準ではない</h3>
<p>設立後すぐに営業できない事業は多くあります。</p>
<p>許認可、内装工事、設備投資、スタッフ採用、広告準備などに時間がかかることもあります。</p>
<p>しかし、役員給与の定期同額給与判定では、原則として、実際に売上が発生した日や開業日ではなく、定款等に定めた会計期間の開始日が基準になります。</p>
<p>設立から営業開始まで間が空く場合ほど、役員報酬の決定時期には注意が必要です。</p>
<h3>2．設立総会では「限度額」だけでなく「具体的支給額」も決める</h3>
<p>会社や医療法人の議事録では、役員報酬について「月額○○円以内」と限度額だけを定めていることがあります。</p>
<p>しかし、税務上は、限度額の決議だけでは、具体的な支給額を決めたことにはなりません。</p>
<p>定期同額給与として処理するためには、誰に、いつから、月額いくらを支給するのかを明確に決め、その議事録を残しておく必要があります。</p>
<p>例えば、次のような記載が必要です。</p>
<ul>
<li>理事長又は代表取締役の氏名</li>
<li>支給開始月</li>
<li>月額支給額</li>
<li>支給日</li>
<li>改定理由</li>
<li>決議日</li>
</ul>
<h3>3．資金繰り都合で一時的に低く払うと危険</h3>
<p>設立初年度は、資金繰りが安定しないことがあります。</p>
<p>そのため、当初予定していた役員報酬をいったん低くし、資金繰りが改善してから増額したいという実務感覚は理解できます。</p>
<p>しかし、税務上は、資金繰りの都合による増額改定が、当然に臨時改定事由として認められるわけではありません。</p>
<p>特に、今回のように、月0円から180万円、さらに280万円へ増額するような処理は、定期同額給与の要件を満たさない可能性が高くなります。</p>
<p>設立初年度に資金繰りが不安定な場合には、無理に高額な役員報酬を設定するのではなく、最初から継続して支給できる金額を慎重に決める必要があります。</p>
<h3>4．「売上がないから役員報酬もない」は税務上の答えにならない</h3>
<p>開業前に売上がない以上、役員報酬を支給しないのは自然だと感じるかもしれません。</p>
<p>しかし、定期同額給与の制度は、売上の有無ではなく、役員給与の支給時期・支給額に対する恣意性を排除するための制度です。</p>
<p>したがって、売上がない期間があったとしても、その後に役員報酬を自由に増額してよいことにはなりません。</p>
<p>役員給与については、会計上の感覚や資金繰り上の都合だけでなく、法人税法上の要件に沿って設計する必要があります。</p>
<h3>5．医療法人の理事長報酬は特に注意が必要</h3>
<p>医療法人では、理事長が医師として診療にも従事していることが通常あります。</p>
<p>そのため、実務感覚としては、理事長報酬の中に「医師としての労務対価」が含まれていると考えたくなることがあります。</p>
<p>しかし、法人税法上、理事長は使用人兼務役員から除かれます。</p>
<p>医師として診療しているからといって、理事長報酬を使用人給与として扱えるわけではありません。</p>
<p>医療法人の設立初年度に理事長報酬を設定する場合には、通常の法人以上に、議事録、支給開始時期、支給額、支給実績を厳格に管理する必要があります。</p>
<h2>実務上の対応策</h2>
<h3>設立時点で役員報酬の設計をしておく</h3>
<p>法人を設立する場合には、設立後に売上が立ってから役員報酬を考えるのではなく、設立時点で役員報酬の方針を決めておくべきです。</p>
<p>具体的には、設立総会又は設立後最初の社員総会・株主総会・理事会等で、役員ごとの月額報酬を決定し、議事録に残します。</p>
<p>売上開始が遅れることが見込まれる場合でも、無理なく継続支給できる金額を設定することが重要です。</p>
<h3>報酬限度額だけで終わらせない</h3>
<p>「月額○○円以内」といった限度額決議だけでは、税務上不十分になる可能性があります。</p>
<p>限度額とは別に、具体的に、誰に、いつから、月額いくら支給するのかを明確に決議しておくべきです。</p>
<p>特に、設立初年度は、後から議事録を整えることが難しくなるため、設立時の書類整備が重要です。</p>
<h3>支給開始月を慎重に決める</h3>
<p>開業準備中で売上がない期間に役員報酬を支給するかどうかは、資金繰りと税務の両面から検討する必要があります。</p>
<p>支給しない期間を設ける場合には、その後の増額が定期同額給与の要件を満たすかを事前に確認する必要があります。</p>
<p>設立初年度の役員報酬は、単に「開業してから決める」のではなく、設立日、会計期間、開業予定日、資金繰りを踏まえて、事前に設計しておくべきです。</p>
<h3>資金繰りが不安なら低めに設定する</h3>
<p>設立初年度で売上や資金繰りの見通しが不安定な場合には、後から増額する前提で高めの役員報酬を想定するよりも、最初から継続して支給できる水準に抑える方が安全です。</p>
<p>高額な役員報酬を予定していたものの、資金繰りの都合で一時的に減額し、その後に増額するという処理は、定期同額給与の要件を外れるリスクがあります。</p>
<h3>改定日と議事録日を明確にする</h3>
<p>今回の裁決では、具体的な支給額を定めた書類がなかったため、総勘定元帳の役員報酬勘定に計上した日付から、改定日が推認されました。</p>
<p>これは、実務上かなり重要です。</p>
<p>役員報酬を決めた日を証明できる議事録がなければ、実際に帳簿へ計上した日や支給した日を基準に、後から改定日を認定される可能性があります。</p>
<p>そのため、役員報酬を決める場合には、議事録の日付、決議内容、支給開始時期を明確に残しておく必要があります。</p>
<h2>この裁決を一般法人に置き換えるとどうなるか</h2>
<p>今回の事案は医療法人社団の理事長報酬に関するものです。</p>
<p>しかし、考え方は、株式会社や合同会社などの一般法人にも参考になります。</p>
<p>例えば、株式会社を設立し、実際の営業開始が数か月後になる場合でも、法人税法上の事業年度は、定款で定めた会計期間を基準に判断されます。</p>
<p>そのため、</p>
<ul>
<li>法人設立日は4月1日</li>
<li>店舗オープン日は7月1日</li>
<li>役員報酬は7月から支給開始</li>
<li>9月に資金繰りが安定したので増額</li>
</ul>
<p>という場合、安易に「開業日から3か月以内だから問題ない」と考えるのは危険です。</p>
<p>法人税法施行令69条1項1号の基準は、開業日ではなく、事業年度開始の日の属する会計期間開始の日です。</p>
<p>設立初年度こそ、役員報酬の決定時期と議事録整備を慎重に行う必要があります。</p>
<h2>まとめ：設立初年度の役員報酬は「開業後に考える」では遅い</h2>
<p>今回の裁決では、歯科医業を営む医療法人社団の理事長報酬について、月0円から180万円、さらに280万円へ増額した処理が、定期同額給与に該当しないと判断されました。</p>
<p>ポイントは、実際の開業日ではなく、定款に定められた設立後最初の会計年度を基準に3か月ルールが判断されたことです。</p>
<p>また、設立総会で月額報酬限度額を定めていたとしても、具体的な支給額を決めたことにはなりません。</p>
<p>資金繰りの都合で一時的に低く支給し、後から増額することも、当然に臨時改定事由として認められるわけではありません。</p>
<p>設立初年度の役員報酬は、売上が立ってから考えるのではなく、法人設立時点で、会計期間、開業予定日、資金繰り、議事録整備を含めて設計しておく必要があります。</p>
<p>特に、医療法人、許認可事業、店舗ビジネス、開業準備期間が長い事業では、設立日と営業開始日がずれることが多いため、役員報酬の決定時期に注意が必要です。</p>
<h2>今回参照した裁決例</h2>
<ul>
<li>国税不服審判所 令和6年8月1日裁決</li>
<li>金裁（法）令6第1号</li>
<li>コード番号：F0－2－1296</li>
<li>事案：設立後最初の事業年度における医療法人社団の理事長報酬について、定期同額給与該当性が争われた事例</li>
<li>結論：審査請求棄却</li>
</ul>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_13" target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第13条第1項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_34" target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第34条第1項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_34" target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第34条第6項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097#Mp-At_69" target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法施行令第69条第1項第1号</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_65" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第65条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205#Mp-At_7" target="_blank" rel="noopener noreferrer">医療法第7条第1項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205#Mp-At_45" target="_blank" rel="noopener noreferrer">医療法第45条第1項</a>
  </li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁決例を題材として、設立初年度の役員報酬と定期同額給与に関する一般的な考え方を解説したものです。実際の取扱いは、法人の種類、定款の内容、事業年度、役員報酬決議の時期、議事録の記載内容、支給実績その他の事情によって異なります。個別の処理については、実行前に顧問税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11894">設立初年度の役員報酬はいつまでに決める？開業日から3か月ではないとされた裁決例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>事前確定届出給与は減額支給でも損金になる？届出額と違う役員賞与が否認された裁判例</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11889</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 22 Jul 2026 00:00:21 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11889</guid>

					<description><![CDATA[<p>「役員賞与について事前確定届出給与の届出をし [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11889">事前確定届出給与は減額支給でも損金になる？届出額と違う役員賞与が否認された裁判例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「役員賞与について事前確定届出給与の届出をしています。資金繰りの都合で、届出額より少ない金額を支給した場合、実際に支給した金額は経費になりますか？」</strong></p>
<p>役員賞与を法人の損金に算入するために、事前確定届出給与の届出を行うことがあります。</p>
<p>しかし、事前確定届出給与は、単に届出書を提出すればよい制度ではありません。</p>
<p>今回取り上げる裁判例では、会社が代表取締役2名に対し、それぞれ2,800万円の役員賞与を支給する旨を届け出ていたにもかかわらず、実際にはそれぞれ2,500万円を支給しました。</p>
<p>会社は、実際に支給した合計5,000万円を損金に算入して申告しました。</p>
<p>しかし、税務署は、届出額と実際の支給額が異なるため、事前確定届出給与には該当しないとして、5,000万円全額の損金算入を否認しました。</p>
<p>裁判所も、会社側の主張を認めず、届出額と異なる金額の役員給与は、事前確定届出給与に該当しないと判断しています。</p>
<h2>結論：届出額と違う金額を支給すると、実際に支給した分も損金にならない</h2>
<p>結論からいうと、事前確定届出給与について、届出額と異なる金額を支給した場合、原則として、実際に支給した金額も損金に算入できません。</p>
<p>今回の事案では、会社は、代表取締役2名に対して、それぞれ2,800万円を支給する旨を届け出ていました。</p>
<p>ところが、実際に支給した金額は、それぞれ2,500万円でした。</p>
<p>会社側としては、少なくとも実際に支給した2,500万円ずつ、合計5,000万円については損金になると考えたくなるところです。</p>
<p>しかし、裁判所は、事前確定届出給与とは、金額を含めて、届出どおりに支給された給与をいうと判断しました。</p>
<p>そのため、届出額2,800万円と実際の支給額2,500万円が異なる以上、実際に支給した2,500万円部分も含めて、事前確定届出給与には該当しないとされました。</p>
<p>つまり、今回のポイントは、次の一文に集約されます。</p>
<p><strong>事前確定届出給与は、「届出を出したか」だけではなく、「届出どおりの時期・金額で支給したか」まで見られる制度です。</strong></p>
<h2>事前確定届出給与とは何か</h2>
<p>法人が役員に支給する給与は、一般の従業員給与と同じように、自由に損金算入できるわけではありません。</p>
<p>法人税法34条1項は、内国法人が役員に対して支給する給与のうち、一定の要件を満たすもの以外は、損金に算入しないと定めています。</p>
<p>代表的なものが、次の3つです。</p>
<ul>
<li>定期同額給与</li>
<li>事前確定届出給与</li>
<li>業績連動給与</li>
</ul>
<p>このうち、事前確定届出給与とは、簡単にいえば、役員に対して、あらかじめ決めた時期に、あらかじめ決めた金額を支給するものです。</p>
<p>ただし、同族会社などが役員賞与を損金に算入するためには、原則として、所轄税務署長へ事前確定届出給与に関する届出を行う必要があります。</p>
<p>この制度の趣旨は、役員給与による所得調整を防ぐ点にあります。</p>
<p>役員給与を自由に増減できると、会社は利益が出た後に役員賞与を増やし、法人税の課税所得を減らすことができてしまいます。</p>
<p>そこで、事前に支給時期と支給額を確定し、税務署へ届け出たものについては、恣意的な所得調整の危険が低いものとして、一定の要件のもとで損金算入を認める仕組みになっています。</p>
<h2>今回の事案の概要</h2>
<p>今回の会社は、令和元年9月30日に定時株主総会を開催し、代表取締役2名に対して、それぞれ2,800万円の賞与を支給することを決議しました。</p>
<p>支給日は、令和2年6月30日とされていました。</p>
<p>その後、会社は、令和元年10月16日に、所轄税務署長に対して事前確定届出給与に関する届出を行いました。</p>
<p>届出書には、代表取締役2名について、支給時期を令和2年6月30日、支給額をそれぞれ2,800万円と記載していました。</p>
<p>しかし、実際に令和2年6月30日に支給された賞与は、それぞれ2,500万円でした。</p>
<p>届出額との差額は、各300万円です。</p>
<p>会社は、実際に支給した各2,500万円、合計5,000万円を損金に算入して法人税の申告をしました。</p>
<p>これに対し、税務署は、届出額と支給額が異なる以上、事前確定届出給与には該当しないとして、5,000万円全額を損金不算入としました。</p>
<h2>会社側の主張：少なくとも支給した2,500万円は損金になるはず</h2>
<p>会社側は、主に次のような主張をしました。</p>
<p>まず、役員賞与は職務執行の対価であり、企業会計上は費用として処理されるものであるから、原則として損金に算入されるべきであると主張しました。</p>
<p>また、事前確定届出給与に関する届出は行っており、株主総会で決議された支給時期に、実際に役員賞与を支給している以上、法人税法34条1項2号の要件は満たしているとも主張しました。</p>
<p>さらに、届出額2,800万円と実際の支給額2,500万円との差額300万円については、単なる未払状態にすぎないとも主張しました。</p>
<p>つまり、会社側の考え方は、次のようなものです。</p>
<ul>
<li>株主総会で2,800万円の支給を決議している</li>
<li>事前確定届出給与の届出もしている</li>
<li>支給日に2,500万円を実際に支給している</li>
<li>差額300万円は未払にすぎない</li>
<li>少なくとも実際に支給した2,500万円は損金になるべきである</li>
</ul>
<p>一見すると、実際に支給している以上、その分は経費として認めてもよさそうにも見えます。</p>
<p>しかし、裁判所はこの考え方を採用しませんでした。</p>
<h2>裁判所の判断：届出どおりに支給された給与だけが対象</h2>
<p>裁判所は、事前確定届出給与制度の趣旨を重視しました。</p>
<p>事前に支給時期と支給額を決め、税務署に届け出たにもかかわらず、後から届出額と異なる金額の支給を認めてしまうと、制度の趣旨が失われると判断したのです。</p>
<p>例えば、会社があらかじめ高額の役員賞与を届け出ておき、実際の利益状況を見ながら、後で届出額より少ない金額を支給することが認められるとします。</p>
<p>そうすると、会社は、事前確定届出給与の届出を「損金算入できる上限枠」のように利用できてしまいます。</p>
<p>利益が多ければ届出額どおり支給し、利益が少なければ減額して支給するという操作が可能になってしまうからです。</p>
<p>裁判所は、このような取扱いを認めると、役員給与による所得操作を防止するという事前確定届出給与制度の趣旨を没却し、課税の公平を害するおそれがあるとしました。</p>
<p>そのうえで、法人税法34条1項2号の「確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」とは、株主総会等の決議により役員給与が確定的に定められ、その決議に基づいて所轄税務署長へ届出がされた場合において、金額を含め、所定の手続に従って届出どおりに支給する給与をいうと判断しました。</p>
<p>したがって、届出額と異なる金額の役員給与が支給されたときは、事前確定届出給与の要件を満たさず、損金の額に算入できないとされています。</p>
<h2>「少なく支給しただけ」でも損金不算入になる</h2>
<p>今回の事案で重要なのは、届出額より多く支給したケースではなく、届出額より少なく支給したケースだったという点です。</p>
<p>届出額より多く支給した場合に、超過部分が問題になることはイメージしやすいでしょう。</p>
<p>しかし、今回の裁判例では、届出額より少ない金額を支給した場合でも、実際に支給した金額全体が事前確定届出給与に該当しないと判断されています。</p>
<p>つまり、次のような処理は認められません。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>項目</th>
<th>金額</th>
<th>会社側が期待した処理</th>
<th>裁判所の判断</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>届出額</td>
<td>2,800万円</td>
<td>上限額として機能</td>
<td>届出どおり支給する必要がある</td>
</tr>
<tr>
<td>実際支給額</td>
<td>2,500万円</td>
<td>実際に支給した分は損金</td>
<td>届出額と異なるため損金不算入</td>
</tr>
<tr>
<td>差額</td>
<td>300万円</td>
<td>未払または不支給</td>
<td>仮に未払でも要件を満たさない</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>事前確定届出給与は、「届出額を上限として、その範囲内で支給すればよい」という制度ではありません。</p>
<p>あくまで、「所定の時期に、確定した額を、届出どおりに支給する」ことが求められます。</p>
<h2>「差額は未払賞与」という主張も認められなかった</h2>
<p>会社は、届出額2,800万円と支給額2,500万円との差額300万円について、未払にすぎないとも主張しました。</p>
<p>しかし、地裁判決では、会社の総勘定元帳の「役員賞与」勘定には、実際の支給額である2,500万円が計上されていた一方、差額300万円について「未払賞与」として計上されていなかったことが指摘されています。</p>
<p>そのため、会計処理上も、役員給与の一部が未払であるとは直ちに認めにくいとされました。</p>
<p>もっとも、東京高裁は、仮に未払状態だったとしても結論は変わらないと判断しています。</p>
<p>なぜなら、問題は、届出額と実際の支給額が一致しているかどうかだからです。</p>
<p>仮に一部未払であるとしても、届出額どおりに支給されていない以上、法人税法34条1項2号の要件を満たさないと判断されました。</p>
<p>この点は実務上かなり重要です。</p>
<p>単に「未払にしておけばよい」という処理では、事前確定届出給与の要件を満たせない可能性が高いと考えるべきです。</p>
<h2>租税回避の意図がなくても結論は変わらない</h2>
<p>会社側は、租税回避の意図はなかったとも主張しました。</p>
<p>経理部門等の過誤により、一部が未払になっただけであり、課税の公平を害するような事情はないという主張です。</p>
<p>しかし、裁判所は、租税回避の意図があったかどうかを重視しませんでした。</p>
<p>事前確定届出給与制度は、課税関係を明確にし、画一的に処理する必要がある制度です。</p>
<p>そのため、個別に「悪意があったか」「租税回避目的があったか」を判断して損金算入の可否を決めるのではなく、届出どおりに支給されたかどうかが重要になります。</p>
<p>裁判所も、届出額と異なる金額が支給された場合には、租税回避の意図の有無にかかわらず、事前確定届出給与には該当しないと判断しています。</p>
<p>ここから分かる実務上の教訓は明確です。</p>
<p><strong>事前確定届出給与では、「うっかり」「資金繰りの都合」「悪意はない」という事情だけでは救済されにくいということです。</strong></p>
<h2>減額したい場合は変更届出が必要になる</h2>
<p>では、会社の業績悪化や資金繰りの都合で、事前に届け出た役員賞与を減額したい場合は、どうすればよいのでしょうか。</p>
<p>法人税法施行令69条5項は、一定の事由により、既に届け出た内容を変更する場合の手続を定めています。</p>
<p>具体的には、臨時改定事由や業績悪化改定事由に該当する場合には、変更後の定めの内容に関する届出を行うことで、変更後の金額による事前確定届出給与として扱われる余地があります。</p>
<p>ただし、変更届出には期限があります。</p>
<p>業績悪化改定事由による減額の場合には、原則として、変更に関する株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日までに届出を行う必要があります。</p>
<p>さらに、その支給日が先に到来する場合には、その支給日の前日までに届出を行う必要があります。</p>
<p>今回の事案では、会社は、変更後の定めの内容に関する届出をしていませんでした。</p>
<p>そのため、届出額と異なる金額を支給したことについて、変更手続による救済は認められませんでした。</p>
<h2>実務上の注意点</h2>
<h3>1．届出額を「上限枠」と考えない</h3>
<p>事前確定届出給与の届出額は、損金算入できる上限額ではありません。</p>
<p>届出額そのものを、届出どおりの時期に支給する必要があります。</p>
<p>例えば、2,800万円で届け出た場合、2,500万円の支給でも、2,900万円の支給でも、届出どおりではありません。</p>
<p>「少なく払っただけだから問題ない」という理解は危険です。</p>
<h3>2．支給日前に資金繰りを確認する</h3>
<p>事前確定届出給与は、支給日に実際に支給できることが重要です。</p>
<p>そのため、届出を行う時点で、支給予定日の資金繰りを慎重に確認しておく必要があります。</p>
<p>特に、多額の役員賞与を届け出る場合には、支給月の資金繰り表を作成し、納税資金、借入返済、賞与資金を含めて検討しておくべきです。</p>
<h3>3．減額するなら変更決議と変更届出を検討する</h3>
<p>業績悪化などにより、届出額どおりの支給が難しくなった場合には、支給日を迎える前に対応する必要があります。</p>
<p>具体的には、変更に関する株主総会等の決議を行い、法人税法施行令69条5項に基づく変更後の定めの内容に関する届出が必要になるかを確認します。</p>
<p>支給日後に、「実は減額しました」「差額は未払です」と説明しても、今回の裁判例のように認められない可能性があります。</p>
<h3>4．未払処理で解決できるとは考えない</h3>
<p>届出額との差額について、未払賞与として処理すればよいと考えるのは危険です。</p>
<p>今回の裁判例では、そもそも未払賞与として計上されていなかった点も指摘されています。</p>
<p>さらに、高裁は、仮に一部未払だったとしても、届出額と異なる支給である以上、事前確定届出給与の要件を満たさないと判断しています。</p>
<p>未払処理は、事前確定届出給与の不一致を当然に治癒するものではありません。</p>
<h3>5．支給日・支給額・振込額を直前に照合する</h3>
<p>実務では、届出書、株主総会議事録、支給予定表、振込データの不一致が起きることがあります。</p>
<p>事前確定届出給与については、支給日前に必ず次の資料を照合すべきです。</p>
<ul>
<li>株主総会議事録</li>
<li>事前確定届出給与に関する届出書</li>
<li>役員別の支給予定表</li>
<li>源泉所得税の計算資料</li>
<li>振込データ</li>
<li>会計仕訳</li>
</ul>
<p>特に、複数役員に同額または類似額を支給する場合、1人あたりの金額、合計額、源泉徴収後の振込額を取り違えないよう注意が必要です。</p>
<h2>今回の裁判例から分かること</h2>
<p>今回の裁判例から分かる実務上のポイントは、次のとおりです。</p>
<ul>
<li>事前確定届出給与は、届出どおりの支給が前提である</li>
<li>届出額より少ない金額を支給した場合でも、実際支給額が損金になるとは限らない</li>
<li>届出額との差額を未払と説明しても、当然には認められない</li>
<li>租税回避の意図がなくても、届出額と支給額が異なれば否認され得る</li>
<li>減額する場合には、支給日前に変更決議・変更届出の要否を確認する必要がある</li>
</ul>
<p>役員賞与は、金額が大きくなりやすく、否認された場合の法人税額や加算税の影響も大きくなります。</p>
<p>今回の事案でも、実際に支給された5,000万円が損金不算入とされ、法人税・地方法人税の更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分が適法と判断されました。</p>
<h2>まとめ：事前確定届出給与は「届出どおり」がすべて</h2>
<p>事前確定届出給与は、役員賞与を損金算入するための有効な制度です。</p>
<p>しかし、その分、形式的な要件は厳格に見られます。</p>
<p>特に重要なのは、次の点です。</p>
<p><strong>事前確定届出給与は、届出書を提出する制度ではなく、届出どおりに支給する制度です。</strong></p>
<p>届出額2,800万円に対して、実際の支給額が2,500万円であった場合、差額300万円だけが問題になるのではありません。</p>
<p>届出額と異なる金額を支給した以上、実際に支給した2,500万円部分も含めて、事前確定届出給与に該当しないと判断される可能性があります。</p>
<p>役員賞与を事前確定届出給与として処理する場合には、届出前の設計、支給日前の資金確認、振込前の金額照合、変更が必要な場合の期限管理を徹底する必要があります。</p>
<p>「少なく払っただけだから大丈夫」という理解は、今回の裁判例に照らすと非常に危険です。</p>
<h2>今回参照した裁判例</h2>
<p><strong>東京高等裁判所令和6年10月2日判決</strong></p>
<ul>
<li>事件番号：東京高等裁判所令和6年（行コ）第93号</li>
<li>事件名：法人税等の更正処分及び加算税の賦課決定処分の取消請求控訴事件</li>
<li>結論：控訴棄却</li>
<li>国税庁訴訟資料：Z888-2733</li>
<li>原審：東京地方裁判所令和6年2月21日判決・令和4年（行ウ）第566号・Z888-2700</li>
<li>争点：届出額と異なる金額で支給された役員賞与が、事前確定届出給与に該当するか</li>
</ul>
<p>本件では、会社が代表取締役2名に対して、それぞれ2,800万円の役員賞与を支給する旨を届け出ていたにもかかわらず、実際にはそれぞれ2,500万円を支給しました。</p>
<p>裁判所は、事前確定届出給与とは、金額を含めて届出どおりに支給する給与をいうと判断し、実際に支給された合計5,000万円についても損金算入を認めませんでした。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_22"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第22条第3項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_34"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第34条第1項第2号</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097#Mp-At_69"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法施行令第69条第4項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097#Mp-At_69"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法施行令第69条第5項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097#Mp-At_69"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法施行令第69条第7項</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040012#Mp-At_22_3"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法施行規則第22条の3第1項第3号</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_65"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第65条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_118"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第118条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_119"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第119条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000011#Mp-At_6"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">地方法人税法第6条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000011#Mp-At_9"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">地方法人税法第9条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_01.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税基本通達 第9章第2節「役員給与等」</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税庁「事前確定届出給与に関する届出書」</a>
  </li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁判例を題材として、事前確定届出給与に関する一般的な税務上の考え方を分かりやすく解説したものです。実際の取扱いは、支給時期、支給額、株主総会決議、届出内容、変更理由、変更届出の有無、会計処理その他の事情により異なります。個別の役員給与の支給や届出については、実行前に顧問税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11889">事前確定届出給与は減額支給でも損金になる？届出額と違う役員賞与が否認された裁判例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>分掌変更退職金は分割払いでも経費になる？裁判例から見る役員退職給与の損金算入時期</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11869</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 21 Jul 2026 00:00:59 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11869</guid>

					<description><![CDATA[<p>「先代社長が代表を退いて非常勤役員になりまし [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11869">分掌変更退職金は分割払いでも経費になる？裁判例から見る役員退職給与の損金算入時期</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「先代社長が代表を退いて非常勤役員になりました。役員退職金を支払いたいのですが、一括で払う資金がないため、数年に分けて支払っても経費になりますか？」</strong></p>
<p>中小企業の事業承継では、創業者である先代社長が代表取締役を退任し、後継者へ経営を引き継ぐ場面があります。</p>
<p>このとき、先代社長に対して役員退職金を支給することがあります。</p>
<p>しかし、役員退職金は金額が大きくなりやすく、会社の資金繰りとの関係で、全額を一括で支払うことが難しいケースもあります。</p>
<p>では、代表取締役を退任して非常勤取締役になった役員に対する退職慰労金を、数年に分けて支払った場合、実際に支払った年度ごとに経費として処理することはできるのでしょうか。</p>
<p>今回取り上げる裁判例では、創業者である代表取締役が非常勤取締役となったことに伴い、退職慰労金2億5,000万円の支給を決め、そのうち7,500万円を1年目に、1億2,500万円を2年目に支払いました。</p>
<p>税務署は、2年目に支払われた1億2,500万円について、退職給与ではなく賞与であり、法人税上の損金にもならず、所得税上も退職所得ではないとして処分を行いました。</p>
<p>これに対し、東京地方裁判所は、2年目に支払われた1億2,500万円について、所得税法上の退職所得に該当し、法人税法上も退職給与に該当すると判断しました。</p>
<p>さらに、実際に支払った平成20年8月期の損金に算入できるとして、納税者側の主張を認めました。</p>
<h2>結論：分掌変更退職金の分割支給でも、支給年度の損金算入が認められる場合があります</h2>
<p>結論からいうと、代表取締役を退任して非常勤取締役になるような分掌変更の場合でも、実質的に退職したのと同様の事情があり、退職金としての実態がある場合には、役員退職給与として扱われる可能性があります。</p>
<p>また、役員退職金を一括で支払えず、複数年度に分けて支払った場合でも、実際に支払った年度に損金経理をしたときには、その支払年度の損金算入が認められる場合があります。</p>
<p>ただし、これは、</p>
<ul>
<li>退職金の総額が明確に決まっている</li>
<li>分掌変更によって役員としての地位や職務内容が実質的に大きく変わっている</li>
<li>退職金としての支給決議や計算根拠がある</li>
<li>実際に支払った金額をその年度に損金経理している</li>
<li>利益調整だけを目的とした恣意的な支給ではない</li>
</ul>
<p>といった事情がある場合の話です。</p>
<p>「分割払いでも必ず経費になる」という意味ではありません。</p>
<h2>分掌変更退職金とは何か</h2>
<p>通常、退職金は、役員や従業員が会社を退職したときに支払われるものです。</p>
<p>しかし、役員の場合、完全に会社を辞めるのではなく、代表取締役を退任して平取締役や非常勤取締役になることがあります。</p>
<p>このように、役員として会社に残るものの、職務内容や地位が大きく変わることを、一般に「分掌変更」といいます。</p>
<p>法人税基本通達9－2－32では、役員の分掌変更等により、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したのと同様の事情にあると認められる場合には、退職給与として取り扱うことができるとされています。</p>
<p>例えば、次のような場合です。</p>
<ul>
<li>常勤役員が非常勤役員になった場合</li>
<li>取締役が監査役になった場合</li>
<li>分掌変更後の役員報酬が、おおむね50％以上減少した場合</li>
</ul>
<p>ただし、非常勤役員になったとしても、代表権を持っていたり、実質的に経営上主要な地位を占め続けていたりする場合には、退職したのと同様とはいえません。</p>
<p>つまり、形式だけで「非常勤」としても足りません。</p>
<p>実際に経営の第一線から退いているかが重要です。</p>
<h2>今回の事案</h2>
<p>今回の会社は、創業者である役員が、長年代表取締役として会社を経営していました。</p>
<p>その後、この役員は代表取締役を辞任し、非常勤取締役となりました。</p>
<p>この分掌変更に伴い、会社は役員退職慰労金として2億5,000万円を支給することを決めました。</p>
<p>支給状況は、次のとおりです。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>時期</th>
<th>支給額</th>
<th>会社の処理</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>平成19年8月期</td>
<td>7,500万円</td>
<td>退職金として損金算入</td>
</tr>
<tr>
<td>平成20年8月期</td>
<td>1億2,500万円</td>
<td>退職金として損金算入</td>
</tr>
<tr>
<td>残額</td>
<td>5,000万円</td>
<td>その後、税務調査や経営状況等の事情により未支給</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>会社は、2億5,000万円を一括で支給する資金的余裕がなかったため、3年以内に分割して支払うこととしていました。</p>
<p>また、実際に支払った7,500万円と1億2,500万円について、それぞれ支給した事業年度に退職金として損金経理しました。</p>
<h2>税務署の主張</h2>
<p>税務署側は、2年目に支払われた1億2,500万円について、主に次のように主張しました。</p>
<ul>
<li>役員は完全に退職しておらず、非常勤取締役として会社に残っている</li>
<li>2年目の支払は、分掌変更に基因する退職金とはいえない</li>
<li>退職金として支給するなら、支給額が確定した年度に損金算入すべきである</li>
<li>分掌変更の場合に、分割支給した金額を支払年度ごとに損金算入することは認められない</li>
<li>2年目の1億2,500万円は退職所得ではなく、役員賞与として給与所得に該当する</li>
</ul>
<p>このため、法人税については、1億2,500万円を損金に算入できないとして更正処分を行いました。</p>
<p>また、源泉所得税についても、退職所得ではなく賞与として計算すべきであるとして、追加の源泉所得税や不納付加算税の処分を行いました。</p>
<h2>裁判所は、2年目の支払も退職所得に該当すると判断した</h2>
<p>東京地裁は、まず、2年目に支払われた1億2,500万円が所得税法上の退職所得に該当するかを検討しました。</p>
<p>所得税法30条1項では、退職所得について、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得とされています。</p>
<p>裁判所は、退職所得に該当するためには、一般に次の3つの要件を満たす必要があると整理しました。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>要件</th>
<th>内容</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>退職基因要件</td>
<td>退職、又は退職と同視できる事情によって初めて支給されること</td>
</tr>
<tr>
<td>労務対価要件</td>
<td>従来の勤務に対する報償又は労務の対価の後払いとしての性質を持つこと</td>
</tr>
<tr>
<td>一時金要件</td>
<td>退職により一時に支払われる性質を持つこと</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>この事案では、創業者が代表取締役を辞任し、非常勤取締役となり、役員報酬も月額87万円から40万円へ減額されていました。</p>
<p>裁判所は、この分掌変更により、実質的に一旦退職したのと同視できる状況にあったと判断しました。</p>
<p>そして、2年目に支払われた1億2,500万円は、当初決議された退職慰労金2億5,000万円の一部として支払われたものであり、退職基因要件を満たすとしました。</p>
<h2>分割払いでも「一時金要件」は否定されなかった</h2>
<p>税務署側は、退職所得というためには、一時に一括で支払われる必要があり、1年後に支払われた1億2,500万円は一時金要件を満たさないとも主張しました。</p>
<p>しかし、裁判所はこの主張を採用しませんでした。</p>
<p>裁判所は、一時金要件が問題とされる趣旨について、退職後に年金のように定期的、継続的に支給されるものを退職所得から除くためであると説明しました。</p>
<p>したがって、退職を原因として支払われる金員が複数回に分けて支払われたからといって、それだけで一時金要件を満たさないとはいえないと判断しました。</p>
<p>今回の退職慰労金は、3年以内に分割支給するものとされており、年金のように定期的、継続的に支給されるものではありません。</p>
<p>そのため、裁判所は、2年目の1億2,500万円についても一時金要件を満たすとしました。</p>
<h2>法人税法上も退職給与に該当すると判断された</h2>
<p>次に問題となったのは、2年目に支払われた1億2,500万円が、法人税法上の退職給与に該当するかです。</p>
<p>法人税法34条1項は、役員給与について、一定のものを除き損金算入を制限しています。</p>
<p>ただし、退職給与は、同項の損金不算入の対象となる役員給与から除かれています。</p>
<p>裁判所は、役員退職給与について、役員としての在任期間中における継続的な職務執行の対価の後払いとしての性質を持つため、適正額の範囲であれば損金算入されるべきものと説明しました。</p>
<p>そして、役員が完全に退職していなくても、分掌変更により役員としての地位や職務内容が激変し、実質的に退職したのと同様の事情がある場合には、その分掌変更時に退職給与として支給される給与も、法人税法上の退職給与に該当すると判断しました。</p>
<p>今回の事案では、代表取締役を辞任し、非常勤取締役となり、報酬も半額以下になっていました。</p>
<p>そのため、裁判所は、2年目に支払われた1億2,500万円も、法人税法上の退職給与に該当すると判断しました。</p>
<h2>最大の争点：2年目の損金にできるのか</h2>
<p>この裁判例で特に重要なのは、2年目に支払われた1億2,500万円を、実際に支払った平成20年8月期の損金にできるかという点です。</p>
<p>役員退職給与の損金算入時期について、法人税基本通達9－2－28は、次のように定めています。</p>
<blockquote>
<p>退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認める。</p>
</blockquote>
<p>つまり、原則は、株主総会の決議等により金額が具体的に確定した日の属する事業年度です。</p>
<p>しかし、ただし書により、実際に支払った日の属する事業年度で損金経理した場合には、その処理も認めるとされています。</p>
<p>今回の会社は、このただし書に依拠して、1年目に支払った7,500万円は1年目に、2年目に支払った1億2,500万円は2年目に、それぞれ損金経理しました。</p>
<h2>裁判所は、支給年度損金経理を公正処理基準に従ったものと判断した</h2>
<p>法人税法22条4項では、益金や損金の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準、いわゆる公正処理基準に従って計算されるものとされています。</p>
<p>裁判所は、役員退職給与について、どの事業年度に費用を計上すべきかは、公正処理基準に従うべきであるとしました。</p>
<p>そのうえで、次の点を重視しました。</p>
<ul>
<li>企業では、資金繰りの観点から役員退職給与を複数年度にわたって分割支給することがある</li>
<li>分割支給の都度、その金額をその事業年度の退職給与として損金経理している中小企業も少なくない</li>
<li>複数の文献や税理士・公認会計士の解説でも、法人税基本通達9－2－28ただし書に依拠した支給年度損金経理が紹介されている</li>
<li>通達は法令ではないが、租税行政が通達に依拠している実情から、企業が通達をしんしゃくして会計処理を検討することは自然である</li>
<li>特に中小企業では、企業会計原則よりも税務会計に依拠して会計処理を行う実態がある</li>
</ul>
<p>これらを踏まえ、裁判所は、少なくとも中小企業との関係では、法人税基本通達9－2－28ただし書に依拠した支給年度損金経理は、一般に公正妥当な会計慣行の一つであると判断しました。</p>
<p>その結果、2年目に実際に支払った1億2,500万円を、平成20年8月期の損金に算入することを認めました。</p>
<h2>この裁判例から読み取れる実務上のポイント</h2>
<h3>1．分掌変更退職金は、形式ではなく実態が重要</h3>
<p>代表取締役を辞任して非常勤取締役になったとしても、実質的に経営を支配し続けていれば、退職したのと同様とはいえません。</p>
<p>分掌変更退職金として認められるためには、役員としての地位や職務内容が本当に大きく変わっている必要があります。</p>
<p>今回の事案では、代表権を失い、非常勤取締役となり、役員報酬も月額87万円から40万円へ減額されていました。</p>
<p>このような事情があったため、裁判所は実質的に退職したのと同様の状況にあったと判断しました。</p>
<h3>2．退職金総額と支払期限は明確にしておくべき</h3>
<p>今回の会社は、退職慰労金の総額を2億5,000万円とし、3年以内に分割支給することを決めていました。</p>
<p>裁判所も、退職金の総額と分割支給の終期が決まっていたことを重視しています。</p>
<p>逆に、総額も支払期限も曖昧なまま、利益が出た年度だけ退職金名目で支払うような処理であれば、退職金ではなく役員賞与と判断される危険があります。</p>
<h3>3．議事録・計算書・源泉処理は重要な証拠になる</h3>
<p>この事案では、当時の株主総会議事録や取締役会議事録が作成されていなかった点が問題になりました。</p>
<p>ただし、裁判所は、同族会社であり、普段から議事録を作成していなかった事情などを踏まえ、議事録が当時存在しなかったことだけで決議がなかったとは判断しませんでした。</p>
<p>また、退職慰労金の計算書、住民税の分納報告、源泉所得税の計算・納付などが、退職金総額2億5,000万円を前提として行われていた点も重視されました。</p>
<p>もっとも、これはあくまで裁判で救済された事例です。</p>
<p>実務上は、株主総会議事録、取締役会議事録、退職慰労金規程、計算書、支払計画書を、支給時点で整備しておくべきです。</p>
<h3>4．支給年度損金経理は万能ではない</h3>
<p>今回の裁判例では、支給年度損金経理が認められました。</p>
<p>しかし、どのような分割払いでも認められるわけではありません。</p>
<p>例えば、次のようなケースではリスクが高くなります。</p>
<ul>
<li>退職金総額が明確に決まっていない</li>
<li>支払期限が決まっていない</li>
<li>毎年の利益状況を見て支払額を後から決めている</li>
<li>代表権や実質的な経営権を維持している</li>
<li>分掌変更後も主要取引先との交渉や資金決済を実質的に支配している</li>
<li>役員報酬がほとんど減っていない</li>
<li>退職金規程や支給決議がない</li>
<li>未払計上も支払年度損金経理も曖昧である</li>
</ul>
<p>この裁判例は、分割支給を広く無条件に認めたものではありません。</p>
<p>あくまで、退職金としての実態と、支給年度損金経理が公正処理基準に従ったものといえる事情があったため、納税者側が勝った事案です。</p>
<h3>5．中小企業の実態が考慮された点は重要</h3>
<p>この判決で特徴的なのは、裁判所が中小企業の会計実務をかなり現実的に見ている点です。</p>
<p>裁判所は、法人税基本通達は法令ではなく、行政内部の解釈基準にすぎないと明言しています。</p>
<p>その一方で、租税行政が通達に依拠して行われている実情を踏まえ、企業が通達をしんしゃくして会計処理を検討することは自然であるとしました。</p>
<p>さらに、中小企業では、企業会計原則などの会計基準よりも、法人税法上の計算処理に依拠して企業会計を行っている場合が多いという実態も考慮しています。</p>
<p>この点は、中小企業の事業承継における役員退職金実務にとって、非常に重要な判断です。</p>
<h2>実務で行うべき対応</h2>
<p>分掌変更に伴い役員退職金を支給する場合には、少なくとも次の事項を整備しておくべきです。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>確認事項</th>
<th>実務対応</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>退職金規程</td>
<td>役員退職慰労金規程を作成し、計算方法を明確にする</td>
</tr>
<tr>
<td>分掌変更の実態</td>
<td>代表権喪失、非常勤化、職務内容の変更、報酬減額を明確にする</td>
</tr>
<tr>
<td>株主総会・取締役会決議</td>
<td>退職金総額、支給理由、支払方法、支払期限を議事録に残す</td>
</tr>
<tr>
<td>計算根拠</td>
<td>最終報酬月額、在任年数、功績倍率、功労加算の根拠を保存する</td>
</tr>
<tr>
<td>分割支給の理由</td>
<td>資金繰り、金融機関対応、会社の経営状況などを説明できるようにする</td>
</tr>
<tr>
<td>支給年度損金経理</td>
<td>実際に支払った年度に、支払額を退職金として損金経理する</td>
</tr>
<tr>
<td>源泉所得税</td>
<td>退職所得としての源泉徴収税額を適切に計算し、期限内に納付する</td>
</tr>
<tr>
<td>分掌変更後の行動</td>
<td>退任後も実質的に経営を支配していると見られないよう、職務実態を整理する</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<h2>この裁判例を過信してはいけない場面</h2>
<p>この裁判例は納税者勝訴の事案ですが、どの会社にもそのまま使えるわけではありません。</p>
<p>特に、次のようなケースでは、今回の裁判例を根拠にするのは危険です。</p>
<ul>
<li>代表取締役を退任しただけで、実際には引き続き経営判断をしている</li>
<li>金融機関や主要取引先との交渉を退任後も先代が行っている</li>
<li>役員報酬が形式的にしか下がっていない</li>
<li>退職金の総額が事前に決まっていない</li>
<li>利益が出た年度にだけ、後出しで退職金を支払っている</li>
<li>支払期限がなく、いつまで分割するのか不明である</li>
<li>退職金規程や議事録がなく、計算根拠も説明できない</li>
<li>支給額が同業類似法人と比べて著しく高額である</li>
</ul>
<p>このような場合、退職給与ではなく役員賞与と認定され、法人税上損金不算入となる可能性があります。</p>
<p>また、所得税上も退職所得ではなく給与所得として取り扱われ、源泉所得税の不足が問題になる可能性があります。</p>
<h2>まとめ</h2>
<p>今回の裁判例では、代表取締役を退任して非常勤取締役となった創業者に対する退職慰労金について、2年目に分割支給された1億2,500万円も、所得税法上の退職所得に該当し、法人税法上も退職給与に該当すると判断されました。</p>
<p>また、法人税基本通達9－2－28ただし書に依拠して、実際に支払った年度に損金経理した処理は、公正処理基準に従ったものとされ、平成20年8月期の損金算入が認められました。</p>
<p>この判決は、分掌変更退職金の分割支給について、中小企業の実務に配慮した重要な裁判例です。</p>
<p>ただし、重要なのは、単に「分割払いでもよい」という点ではありません。</p>
<p>退職金としての実態、分掌変更の実質、退職金総額の確定、支払期限、損金経理、源泉処理、議事録や計算根拠の整備がそろっていたからこそ、納税者側の主張が認められた事案です。</p>
<p>分掌変更退職金を支給する場合には、金額の妥当性だけでなく、支給時期、分割方法、経理処理、退任後の職務実態まで含めて、事前に慎重に設計する必要があります。</p>
<h2>今回参照した裁判例</h2>
<p><strong>東京地方裁判所平成24年（行ウ）第592号 法人税更正処分取消等請求事件</strong></p>
<ul>
<li>判決日：平成27年2月26日</li>
<li>変更判決：平成27年3月3日</li>
<li>結論：一部認容・確定</li>
<li>国税庁訴訟資料：Z265－12613</li>
<li>国側当事者：国</li>
<li>処分行政庁：宇都宮税務署長</li>
<li>主な争点：分掌変更に伴う役員退職給与の分割支給と損金算入時期</li>
</ul>
<p>本件では、創業者である役員が代表取締役を辞任して非常勤取締役となったことに伴い、退職慰労金2億5,000万円を分割支給した事案について、2年目に支払われた1億2,500万円が、所得税法上の退職所得及び法人税法上の退職給与に該当し、支払年度である平成20年8月期の損金に算入できると判断されました。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_22"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第22条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_34"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第34条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034#Mp-At_130"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第130条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_30"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第30条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_183"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第183条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_199"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第199条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_201"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第201条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_56"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第56条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_58"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第58条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_65"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第65条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_67"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第67条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026#Mp-At_93"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">租税特別措置法第93条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026#Mp-At_95"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">租税特別措置法第95条</a>
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_02_02.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税基本通達2－2－12</a><br />
    ：債務の確定の判定
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_07.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税基本通達9－2－28</a><br />
    ：役員に対する退職給与の損金算入の時期
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_07.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税基本通達9－2－32</a><br />
    ：役員の分掌変更等の場合の退職給与
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/04.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税基本通達30－1</a><br />
    ：退職手当等の範囲
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/04.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税基本通達30－2</a><br />
    ：引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/30/01.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税基本通達183～193共－1</a><br />
    ：支給総額が確定している給与等を分割して支払う場合の税額の計算
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/34/01.htm"
       target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税基本通達201－3</a><br />
    ：退職手当等を分割して支払う場合の税額の計算等
  </li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁判例を題材として、分掌変更に伴う役員退職給与の分割支給と損金算入時期について一般的な考え方を解説したものです。実際の税務判断は、役員の退任後の職務実態、代表権の有無、報酬の減少割合、退職金規程、株主総会・取締役会決議、支払時期、支払原資、金額の妥当性、源泉徴収処理その他の事情により異なります。個別の役員退職金の支給にあたっては、実行前に顧問税理士等へご相談ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11869">分掌変更退職金は分割払いでも経費になる？裁判例から見る役員退職給与の損金算入時期</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>親の土地を子どもが駐車場にしたら、収入は誰のもの？使用貸借と不動産所得の裁判例</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11863</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 20 Jul 2026 00:00:38 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11863</guid>

					<description><![CDATA[<p>親の土地を子どもが駐車場にしたら、収入は誰の [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11863">親の土地を子どもが駐車場にしたら、収入は誰のもの？使用貸借と不動産所得の裁判例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h1>親の土地を子どもが駐車場にしたら、収入は誰のもの？使用貸借と不動産所得の裁判例</h1>
<p><strong>「親名義の土地を子どもが無償で借りて、月極駐車場として貸し出した場合、その駐車場収入は子どもの収入として申告してよいのでしょうか？」</strong></p>
<p>相続税対策や所得分散の一環として、親の不動産から生じる収入を子どもへ移したいと考えるケースがあります。</p>
<p>例えば、親が所有している土地を子どもに無償で貸し、子どもがその土地を駐車場として第三者に貸し出す形にすれば、駐車場収入は子どもに帰属するようにも見えます。</p>
<p>契約書を作成し、駐車場の賃貸人を子ども名義に変更し、駐車場収入も子どもの預金口座へ振り込まれていれば、なおさらです。</p>
<p>しかし、税務上は、形式だけで所得の帰属が決まるわけではありません。</p>
<p>実際に、親子間で土地の使用貸借契約を締結し、子ども名義で駐車場収入を得ていた事案について、大阪地裁は子どもに収入が帰属すると判断した一方、大阪高裁はこれを覆し、最終的に駐車場収入は土地所有者である親に帰属すると判断しました。</p>
<h2>結論：契約書と口座変更だけで、不動産所得を子どもへ移せるとは限りません</h2>
<p>この裁判例の結論は、次のとおりです。</p>
<p><strong>親子間の使用貸借契約自体は有効に成立していると認められました。</strong></p>
<p>しかし、それでも大阪高裁は、駐車場収入は子どもではなく、土地所有者である親に帰属すると判断しました。</p>
<p>ポイントは、使用貸借契約が有効かどうかと、所得税法上その収入が誰に帰属するかは、別の問題だという点です。</p>
<p>つまり、民法上は親から子どもへの土地の使用貸借契約が成立していても、そのことだけで、土地から生じる駐車場収入が当然に子どもの所得になるわけではありません。</p>
<p>今回の大阪高裁判決では、子どもらは「単なる名義人」であり、実質的には土地所有者である親が収益を享受していたとして、親の不動産所得と判断されました。</p>
<h2>事案の概要</h2>
<p>この事案では、親が複数の土地を所有し、それらを駐車場として第三者に貸し出していました。</p>
<p>もともとは、親が土地所有者かつ駐車場の賃貸人として、駐車場収入を得ていました。</p>
<p>その後、親と長男・長女との間で、次のような一連の取引が行われました。</p>
<ul>
<li>親と子どもとの間で、土地の使用貸借契約書を作成した</li>
<li>土地上のアスファルト舗装等を子どもへ贈与する契約書を作成した</li>
<li>駐車場の賃貸人を、親から子どもへ変更した</li>
<li>駐車場管理会社との契約上の委任者を、親から子どもへ変更した</li>
<li>駐車場収入の振込先を、子ども名義の預金口座へ変更した</li>
<li>子どもは親に対し、固定資産税・都市計画税相当額を支払うこととした</li>
</ul>
<p>これにより、平成26年2月以降の駐車場収入は、親ではなく子どもに帰属するものとして申告されました。</p>
<p>これに対し、税務署は、駐車場収入は土地所有者である親に帰属するとして、親に対して所得税等の更正処分等を行いました。</p>
<h2>大阪地裁は「子どもに帰属する」と判断した</h2>
<p>第一審である大阪地裁は、納税者側の主張を認めました。</p>
<p>大阪地裁は、使用貸借契約書に親本人の署名押印があること、親が契約の基本的な内容を認識していたこと、契約後に実際に駐車場収入が子どもの口座へ振り込まれていたことなどを踏まえ、使用貸借契約は有効に成立していると判断しました。</p>
<p>そのうえで、子どもは土地の使用収益権に基づいて第三者と駐車場の賃貸借契約を締結し、駐車場収入を得ていたのであるから、その収入は子どもに帰属するとしました。</p>
<p>つまり、大阪地裁は、民法上の契約関係を重視した判断をしたといえます。</p>
<h2>大阪高裁は「親に帰属する」と逆転判断した</h2>
<p>これに対し、大阪高裁は、大阪地裁の判断を覆しました。</p>
<p>大阪高裁も、使用貸借契約そのものについては、有効に成立していると認めています。</p>
<p>しかし、そのうえで、駐車場収入の所得税法上の帰属については別途検討し、最終的には土地所有者である親に帰属すると判断しました。</p>
<p>大阪高裁が重視したのは、次のような事情です。</p>
<ul>
<li>本件取引は、親の相続税対策を主たる目的としていた</li>
<li>土地の所有権は、あくまでも親が保有し続けていた</li>
<li>親の所得を子どもへ形式上分散する目的があった</li>
<li>子どもは、土地取得等について特段の出捐をしていなかった</li>
<li>駐車場管理は従前と同じ管理会社へ委託されていた</li>
<li>子どもが管理上必要な役務を提供していたとはいえなかった</li>
<li>親は、子どもに土地の法定果実収取権を無償で付与していたにすぎない</li>
</ul>
<p>その結果、大阪高裁は、子どもらは駐車場収入について「単なる名義人」であり、実質的には土地所有者である親がその収益を享受していたと判断しました。</p>
<h2>実質所得者課税の原則とは</h2>
<p>この事案で中心となったのが、所得税法12条の「実質所得者課税の原則」です。</p>
<p>所得税法12条は、資産又は事業から生ずる収益について、法律上その収益が帰属するとみられる者が単なる名義人であり、実際にはその者以外の者が収益を享受している場合には、その収益は実際に享受している者に帰属するものとして所得税法を適用する、という趣旨の規定です。</p>
<p>簡単にいえば、次のような考え方です。</p>
<p><strong>名義だけを変えても、実際に収益を支配・享受している人が別にいるなら、その人に課税する。</strong></p>
<p>この規定は、親族間取引や同族関係のある取引では特に重要になります。</p>
<p>形式上の契約書、振込口座、名義だけを整えても、実態として収益を生み出す資産を誰が支配しているのか、誰がその収益を享受しているのかが問われます。</p>
<h2>駐車場収入は「土地の使用の対価」と考えられた</h2>
<p>大阪高裁は、駐車場収入について、駐車場賃貸事業を営む者の役務提供の対価ではなく、土地の使用の対価として受けるべき金銭であると捉えました。</p>
<p>ここが非常に重要です。</p>
<p>例えば、店舗経営やサービス業であれば、誰が実際に働き、誰がサービスを提供しているかが重要になります。</p>
<p>しかし、土地を駐車場として貸す場合、その収入の中心は、土地という資産から生じる収益です。</p>
<p>特に本件では、駐車場管理業務は従前から管理会社に委託されており、子どもが新たに多大な役務を提供したとは認められませんでした。</p>
<p>そのため、大阪高裁は、駐車場収入は土地所有者が本来享受すべき法定果実であり、親がその収益を子どもへ無償で処分していたにすぎないと評価しました。</p>
<h2>アスファルト舗装を贈与しても、土地とは切り離せなかった</h2>
<p>この事案では、親が子どもへ土地上のアスファルト舗装等を贈与する契約も締結されていました。</p>
<p>これは、単に更地を無償で借りたのではなく、駐車場設備を子どもが取得し、それを使って駐車場事業を行っているという形を作る意図があったものと考えられます。</p>
<p>しかし、大阪高裁は、アスファルト舗装は土地の構成部分となり、独立の所有権が成立する余地はないと判断しました。</p>
<p>つまり、アスファルト舗装だけを土地から切り離して子どもが所有する、という構成は認められませんでした。</p>
<p>ただし、大阪高裁は、アスファルト舗装の贈与契約がそのまま有効でないとしても、親子間で土地全体を駐車場として使用させる使用貸借契約自体は成立していると判断しています。</p>
<p>ここでも、契約の有効性と所得の帰属は分けて考えられています。</p>
<h2>「契約が有効」でも「所得移転が有効」とは限らない</h2>
<p>この裁判例の一番重要な教訓は、ここです。</p>
<p><strong>民法上の契約が有効だからといって、税務上もその契約どおりに所得が移転するとは限りません。</strong></p>
<p>大阪高裁は、使用貸借契約の成立自体は認めました。</p>
<p>それでも、所得税法12条の観点から、子どもは単なる名義人であり、駐車場収入は親に帰属すると判断しました。</p>
<p>つまり、次のような単純な理解は危険です。</p>
<ul>
<li>契約書があるから大丈夫</li>
<li>賃貸人名義を子どもに変えたから大丈夫</li>
<li>振込先を子どもの口座にしたから大丈夫</li>
<li>管理会社との契約名義も子どもにしたから大丈夫</li>
</ul>
<p>これらは重要な事情ではありますが、それだけで十分とは限りません。</p>
<p>税務上は、収益の基因となる資産の真実の権利者が誰か、その収益を実質的に誰が支配・享受しているかが問題になります。</p>
<h2>親族間の不動産所得分散で問題になりやすいポイント</h2>
<p>親族間で不動産所得を移そうとする場合、税務上は次の点が問題になりやすいです。</p>
<h3>1．所有権が移転しているか</h3>
<p>土地や建物の所有権が移転していれば、その資産から生じる収益の帰属も変わりやすくなります。</p>
<p>しかし、所有権を移転せず、使用貸借だけで収益を移そうとする場合には、実質所得者課税の問題が生じやすくなります。</p>
<h3>2．対価を支払っているか</h3>
<p>賃貸借であれば、賃料や権利金などの対価を支払うことで、一定の経済的な権利移転が認められやすくなります。</p>
<p>一方、使用貸借は無償で借りる契約です。</p>
<p>無償である以上、使用借主の権利は弱く、親族間の情誼による利益付与と評価される余地があります。</p>
<h3>3．収益獲得のための役務やリスクを誰が負担しているか</h3>
<p>子どもが実際に駐車場管理、集客、修繕対応、クレーム対応、資金負担、設備投資、空車リスクなどを負っているかどうかも重要です。</p>
<p>本件では、駐車場管理は従前どおり管理会社へ委託されており、子どもが管理に必要な役務を提供していたとは認められませんでした。</p>
<h3>4．取引の主目的が所得分散・相続税対策に偏っていないか</h3>
<p>節税目的があること自体で、直ちに契約が否定されるわけではありません。</p>
<p>しかし、所有権は親に残したまま、所得だけを子どもへ形式的に移すことが主目的である場合には、税務上のリスクが高くなります。</p>
<h3>5．収益を子どもが自由に使っているだけで十分か</h3>
<p>子どもの口座に収入が入り、子どもがそれを使っていたとしても、それだけで所得の帰属が子どもになるとは限りません。</p>
<p>大阪高裁は、そのような状態自体が、親が本来享受すべき収益を子どもへ無償で処分している結果であると評価しました。</p>
<h2>一般的な実務への影響</h2>
<p>この判例は、親族間で不動産所得を分散させようとする場面で、非常に重要です。</p>
<p>特に、次のようなスキームには注意が必要です。</p>
<ul>
<li>親の土地を子どもが無償で借り、青空駐車場として貸し出す</li>
<li>親の土地にある駐車場設備だけを子どもへ贈与する</li>
<li>賃貸人名義だけを子どもへ変更する</li>
<li>管理会社との契約名義と振込口座だけを子どもへ変更する</li>
<li>親の相続税対策として、賃料収入だけを子どもへ移す</li>
</ul>
<p>これらは、形式だけを整えても、所得税法上は親の不動産所得と判断される可能性があります。</p>
<p>親族間で不動産収入を移転したい場合には、単に契約書を作るのではなく、所有権の移転、適正な賃貸借契約、対価の支払、管理業務の実態、リスク負担、資金負担などを総合的に検討する必要があります。</p>
<h2>実務上の対応策</h2>
<p>親族間で土地や建物を使わせる場合には、次の点を確認しておくべきです。</p>
<h3>土地所有者を確認する</h3>
<p>不動産所得の出発点は、その収益の基因となる資産の所有者です。</p>
<p>土地所有者が親のままであれば、原則としてその土地から生じる収益は親に帰属すると判断される可能性があります。</p>
<h3>使用貸借か賃貸借かを明確にする</h3>
<p>無償で貸す使用貸借なのか、適正な地代を支払う賃貸借なのかを明確にします。</p>
<p>固定資産税相当額程度の支払では、使用収益の対価としての賃料ではなく、実質的には使用貸借と評価される可能性があります。</p>
<h3>契約書だけでなく、実態を整える</h3>
<p>契約書、管理契約、賃貸借契約、振込口座の変更だけでは不十分です。</p>
<p>実際に誰が管理し、誰がリスクを負い、誰が費用を負担し、誰が設備投資を行っているのかを整理する必要があります。</p>
<h3>相続税対策だけを目的にしない</h3>
<p>相続税対策や所得税対策が動機として存在すること自体はあり得ます。</p>
<p>しかし、それ以外の合理的な理由が乏しく、親の所得を子どもへ形式的に分散するだけの取引と見られる場合には、否認リスクが高まります。</p>
<h3>実行前に税務上の帰属を検討する</h3>
<p>不動産所得の帰属は、契約書を作った後で考えるものではありません。</p>
<p>土地の所有権、使用権、賃貸人の地位、管理実態、費用負担、収入の使途、相続対策との関係を踏まえて、実行前に検討する必要があります。</p>
<h2>まとめ：親族間では「名義変更」よりも「実質」が見られます</h2>
<p>親の土地を子どもが無償で借り、子ども名義で駐車場として貸し出した場合でも、その駐車場収入が当然に子どもの所得になるわけではありません。</p>
<p>今回の大阪高裁判決では、親子間の使用貸借契約自体は有効に成立していると認められました。</p>
<p>しかし、土地の所有権は親に残ったままであり、一連の取引は相続税対策を主たる目的として、親の所得を子どもへ形式上分散するものにすぎないと評価されました。</p>
<p>その結果、子どもらは単なる名義人であり、駐車場収入は土地所有者である親に帰属すると判断されました。</p>
<p>この判例から分かる重要なポイントは、次のとおりです。</p>
<ul>
<li>親子間の使用貸借契約が有効でも、所得の帰属は別に判断される</li>
<li>不動産所得では、収益の基因となる資産の真実の権利者が重視される</li>
<li>賃貸人名義や振込口座を変えただけでは不十分である</li>
<li>土地所有権を親に残したまま、所得だけを子どもへ移すスキームはリスクが高い</li>
<li>相続税対策を目的とした形式的な所得分散は、実質所得者課税の対象となり得る</li>
</ul>
<p>親族間で不動産収入を移す場合には、「契約書を作ったから大丈夫」と考えるのではなく、所有権、対価、管理実態、費用負担、リスク負担まで含めて、税務上の実質を整える必要があります。</p>
<h2>今回参照した裁判例</h2>
<p><strong>大阪高等裁判所令和3年（行コ）第64号 所得税更正処分等取消請求控訴事件</strong></p>
<ul>
<li>判決日：令和4年7月20日</li>
<li>結論：原判決中、国敗訴部分取消し。納税者側の請求棄却</li>
<li>確定：確定</li>
<li>税務訴訟資料：第272号・順号13735</li>
<li>国税庁訴資番号：Z272－13735</li>
<li>争点：親子間の土地使用貸借契約後の駐車場収入が、土地所有者である親に帰属するか、使用借主である子に帰属するか</li>
</ul>
<p><strong>第一審：大阪地方裁判所平成31年（行ウ）第51号 所得税更正処分等取消請求事件</strong></p>
<ul>
<li>判決日：令和3年4月22日</li>
<li>結論：一部却下、一部認容。納税者勝訴</li>
<li>控訴審：大阪高裁で原判決取消し</li>
<li>税務訴訟資料：第271号－51・順号13553</li>
<li>国税庁訴資番号：Z271－13553</li>
</ul>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_12" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第12条</a>：実質所得者課税の原則</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_26" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第26条</a>：不動産所得</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_33" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第33条</a>：譲渡所得</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_120" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第120条</a>：確定所得申告</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_88" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民法第88条第2項</a>：法定果実</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_242" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民法第242条</a>：不動産の付合</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_593" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民法第593条</a>：使用貸借</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_594" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民法第594条第2項</a>：借主による第三者使用・収益の制限</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_23" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第23条</a>：更正の請求</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_24" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第24条</a>：更正</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_35" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第35条</a>：申告納税方式による国税等の納付</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-At_118" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法第118条</a>：国税の課税標準の端数計算等</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109#Mp-At_228" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民事訴訟法第228条第4項</a>：私文書の真正成立の推定</li>
<li><a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/03/01.htm" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税基本通達12－1</a>：資産から生ずる収益を享受する者の判定</li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁判例を題材として、親族間の土地使用貸借と不動産所得の帰属に関する一般的な税務上の考え方を分かりやすく解説したものです。実際の取扱いは、土地の所有関係、契約内容、対価の有無、管理実態、費用負担、収益の使途、相続対策の内容その他の事情によって異なります。個別の実行については、事前に顧問税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11863">親の土地を子どもが駐車場にしたら、収入は誰のもの？使用貸借と不動産所得の裁判例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>契約書に「用途を問わない」と書けば消費税は還付される？居住用転貸建物が争われた裁決例</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11815</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Fri, 17 Jul 2026 00:00:39 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11815</guid>

					<description><![CDATA[<p>「賃貸アパートを自分の会社へ貸す契約にして、 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11815">契約書に「用途を問わない」と書けば消費税は還付される？居住用転貸建物が争われた裁決例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「賃貸アパートを自分の会社へ貸す契約にして、契約書へ『使用用途を問わない』と書いておけば、建築費の消費税を全額控除できますか？」</strong></p>
<p>共同住宅を建築すると、建築会社へ支払う工事代金には多額の消費税が含まれます。</p>
<p>そのため、建物の貸付けを消費税の課税取引として扱い、建築費に含まれる消費税の還付を受けられないかと考える方もいるでしょう。</p>
<p>今回取り上げる裁決例では、個人が建築した共同住宅を、妻が代表を務める法人へ貸し付けていました。</p>
<p>個人と法人との賃貸借契約書には、次のような趣旨の記載がありました。</p>
<p><strong>「賃借人の使用用途を問わない」</strong></p>
<p>契約書だけを見れば、住宅として使うことに限定されていないようにも見えます。</p>
<p>しかし、国税不服審判所は、契約書の一文だけで判断することはできないとして、建物の設計、登記、建築までの経緯、一括借上契約、転貸契約などを総合的に確認しました。</p>
<p>その結果、建物の貸付けは消費税がかからない「住宅の貸付け」に当たると判断され、建物取得費に係る仕入税額控除の処理が否認されました。</p>
<h2>結論：「用途を問わない」と書くだけでは、住宅の貸付けを課税取引にはできません</h2>
<p>賃貸借契約書に、建物の使用用途を問わないと記載していても、それだけで建物の貸付けが消費税の課税取引になるわけではありません。</p>
<p>今回の裁決では、次の事情が重視されました。</p>
<ul>
<li>設計変更後の建物用途が「共同住宅」とされていた</li>
<li>建築計画概要書でも主要用途が共同住宅とされていた</li>
<li>建物全体が住宅部分として計画されていた</li>
<li>管理会社が居住用物件として一括借上げすることが予定されていた</li>
<li>管理会社との契約でも、居住用として再転貸することが前提とされていた</li>
<li>所有者本人も、その契約内容や説明を認識していた</li>
<li>最終的な入居契約でも居住用に限定されていた</li>
</ul>
<p>このような事情から、国税不服審判所は、最初の賃貸借契約書に「用途を問わない」と書かれていても、実際には居住用として転貸されることが明らかだったと判断しました。</p>
<p>つまり、契約書の文言よりも、建物がどのように建てられ、どのような契約関係を通じて、最終的に何に使われる予定だったのかが重視されたのです。</p>
<h2>住宅の家賃には、原則として消費税がかからない</h2>
<p>事業者が建物を貸し付けて賃料を受け取る取引は、原則として消費税の対象です。</p>
<p>ただし、人の居住の用に供する住宅の貸付けは、政策的な理由から非課税取引とされています。</p>
<p>住宅家賃に消費税を課すと、最終的には賃借人がその負担を負うことになります。</p>
<p>そこで、住宅を借りる人の負担を軽減するため、一定の住宅の貸付けについては消費税を課さないこととされています。</p>
<p>現在の<a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener">消費税法</a>では、住宅の貸付けについて、契約上または貸付けの実態から人の居住の用に供されることが明らかなものを非課税取引としています。</p>
<p>国税庁も、住宅の貸付けに関する基本的な取扱いを「<a href="https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6226.htm" target="_blank" rel="noopener">住宅の貸付け（国税庁タックスアンサー）</a>」で案内しています。</p>
<h2>今回の裁決は、令和2年度税制改正前の取引だった</h2>
<p>今回の対象となった課税期間は、平成31年1月1日から同年3月31日までです。</p>
<p>当時の消費税法では、非課税となる住宅の貸付けについて、原則として、貸付契約において人の居住の用に供することが明らかにされていることが要件とされていました。</p>
<p>その後、令和2年度税制改正により、契約上は用途が明らかでなくても、実際の貸付状況などから居住用であることが明らかな場合も、住宅の貸付けとして扱われることになりました。</p>
<p>今回の納税者は、改正前の法律を前提として、次のように主張しました。</p>
<blockquote>
<p>契約書には「使用用途を問わない」と書かれているため、契約上、居住用であることは明らかにされていない。</p>
</blockquote>
<p>しかし、国税不服審判所は、この主張を認めませんでした。</p>
<p>改正前の法律であっても、契約書の一つの条項だけを形式的に読むのではなく、契約締結の経緯、建物の用途、関連する契約などを総合的に考慮すべきだと判断したためです。</p>
<h2>個人から妻の会社へ建物を貸していた</h2>
<p>今回の請求人は、不動産賃貸業を営む個人事業者でした。</p>
<p>一方、建物の賃借人となった法人は、不動産の所有、賃貸、管理などを目的として設立されており、請求人の妻が代表社員、請求人本人が業務執行社員を務めていました。</p>
<p>建物の貸付関係は、次のような構造でした。</p>
<p><strong>個人の建物所有者</strong><br />
↓ 建物を一括貸付け<br />
<strong>妻が代表を務める法人</strong><br />
↓ 管理会社へ一括転貸<br />
<strong>管理会社</strong><br />
↓ 各入居者へ再転貸<br />
<strong>最終入居者</strong></p>
<p>個人と妻の法人との契約書には、「使用用途を問わない」と記載されていました。</p>
<p>しかし、その先の管理会社との契約や建築計画では、建物が居住用として利用されることが一貫して予定されていました。</p>
<h2>当初は事務所兼用だったが、途中で共同住宅へ変更された</h2>
<p>建物の当初の設計では、主要用途が「事務所兼用住宅、共同住宅」とされていました。</p>
<p>しかし、その後に締結された変更契約では、主要用途が<strong>「共同住宅」</strong>へ変更されました。</p>
<p>さらに、建築計画概要書には、次の内容が記載されていました。</p>
<ul>
<li>主要用途は共同住宅</li>
<li>3階建て・6戸</li>
<li>建物のほぼ全体が住宅部分</li>
</ul>
<p>建物の完成後に行われた所有権保存登記でも、建物の種類は「共同住宅」とされていました。</p>
<p>これらの資料からは、建物が事務所や店舗として使われるのではなく、居住用の共同住宅として建築されたことが読み取れます。</p>
<h2>管理会社の一括借上げも、居住用が前提だった</h2>
<p>建設会社が作成した経営計画書には、管理会社による一括借上げが予定されていることが記載されていました。</p>
<p>管理会社や建設会社の従業員は、税務調査において、次のような趣旨の説明をしています。</p>
<ul>
<li>管理会社が一括借上げするのは、原則として居住用の建物である</li>
<li>事務所や店舗については、一括借上契約ではなく管理委託契約になる</li>
<li>今回の建物は、全6戸を居住用として借り上げる前提だった</li>
<li>建物所有者にも、その内容を説明していた</li>
</ul>
<p>国税不服審判所は、請求人が建設会社との打合せを通じて、管理会社が建物を居住用に限定して借り上げることを認識し、合意していたと判断しました。</p>
<h2>関連する契約書では、居住用に限定されていた</h2>
<p>請求人から建物を借りた法人は、さらにその建物を管理会社へ一括転貸していました。</p>
<p>管理会社との契約では、建物を主に居住用として第三者へ転貸することが予定されていました。</p>
<p>また、管理会社から交付された重要事項説明書も、賃貸住宅の一括借上げを前提とするものでした。</p>
<p>さらに、実際の一室について、管理会社と請求人が主宰する別法人との間で締結された契約書には、次のような条項がありました。</p>
<blockquote>
<p>賃借人は、居住のみを目的として本貸室を使用しなければならない。</p>
</blockquote>
<p>この用途に違反した場合には、契約を解除できる旨も定められていました。</p>
<p>最終的な賃借人が法人であったとしても、契約上の使用目的が居住用に限定されていれば、その貸付けが当然に事業用賃貸になるわけではありません。</p>
<h2>契約書の一文だけを切り取って判断することはできない</h2>
<p>今回の納税者は、個人と妻の法人との賃貸借契約書に記載された、次の文言を強く主張しました。</p>
<p><strong>「賃借人の使用用途を問わない」</strong></p>
<p>しかし、国税不服審判所は、住宅の貸付けに当たるかどうかを、その文言だけで決めることはできないとしました。</p>
<p>判断に当たって考慮されたのは、次のような資料です。</p>
<ul>
<li>工事請負契約書</li>
<li>設計・工事監理業務委託契約書</li>
<li>変更契約書</li>
<li>建築計画概要書</li>
<li>建物の登記</li>
<li>経営計画書</li>
<li>管理会社との一括借上契約</li>
<li>重要事項説明書</li>
<li>最終的な入居者との賃貸借契約</li>
<li>建設会社・管理会社の担当者の説明</li>
</ul>
<p>これらの資料を総合すると、建物は一貫して居住用として建築・運用される予定だったと判断されました。</p>
<p>そのため、契約書に「用途を問わない」という条項を加えても、住宅の貸付けという実態を覆すことはできませんでした。</p>
<h2>具体的な入居者が決まっていなくても、居住用と判断される</h2>
<p>請求人は、建物の引渡しを受けた時点では、最終的な入居者がまだ決まっていなかったとも主張しました。</p>
<p>仕入税額控除における課税仕入れの用途区分は、原則として、その課税仕入れを行った時点の状況により判断します。</p>
<p>そのため、請求人は、引渡日時点で入居者が確定していない以上、住宅の貸付けに使われることは確定していなかったと主張したのです。</p>
<p>しかし、国税不服審判所は、この主張も認めませんでした。</p>
<p>具体的な入居者の氏名が決まっていなくても、次の事情はすでに確定していました。</p>
<ul>
<li>共同住宅として建築されている</li>
<li>管理会社が居住用として一括借上げする</li>
<li>全室を居住用として募集する</li>
<li>居住用として再転貸する契約関係が整っている</li>
</ul>
<p>したがって、建物の引渡日時点で、将来の個々の入居者が未定だったとしても、建物が居住の用に供されることは明らかだったと判断されました。</p>
<h2>建物部分は非課税、駐車場部分は課税だった</h2>
<p>今回の裁決では、建物の貸付けは非課税となる住宅の貸付けに該当すると判断されました。</p>
<p>一方、駐車場の貸付けは課税取引に該当するとされています。</p>
<p>そのため、建物と駐車場の取得に係る課税仕入れは、すべてが住宅家賃のためだけに使われるものでも、すべてが課税売上げのためだけに使われるものでもありませんでした。</p>
<p>国税不服審判所は、建物等の取得費について、個別対応方式における次の区分に当たると判断しました。</p>
<p><strong>「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」</strong></p>
<p>個別対応方式では、課税仕入れを次の3つに区分します。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>用途区分</th>
<th>仕入税額控除</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>課税売上げにのみ要するもの</td>
<td>原則として全額控除</td>
</tr>
<tr>
<td>非課税売上げにのみ要するもの</td>
<td>控除できない</td>
</tr>
<tr>
<td>課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの</td>
<td>課税売上割合に応じて控除</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>請求人は、建物等の取得費を「課税売上げにのみ要するもの」として処理していました。</p>
<p>しかし、住宅家賃という非課税売上げと、駐車場賃料という課税売上げの両方に対応するため、全額控除ではなく、共通対応として計算し直されました。</p>
<p>仕入税額控除の基本的な仕組みは、<a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener">消費税法第30条</a>に定められています。</p>
<h2>一度還付されたからといって、税務署が認めたことにはならない</h2>
<p>今回の請求人は、当初の消費税申告に基づき、実際に消費税の還付を受けていました。</p>
<p>その後、税務調査によって仕入税額控除の処理が否認され、更正処分と過少申告加算税の賦課決定を受けています。</p>
<p>請求人は、申告時に契約書などを提出しており、税務署がそれを確認したうえで還付したのだから、過少申告となったことには正当な理由があると主張しました。</p>
<p>しかし、国税不服審判所は、この主張も認めませんでした。</p>
<p>消費税の還付申告書が提出されると、税務署は法律に基づいて還付手続を行います。</p>
<p>還付金を支払ったという事実は、税務署が申告内容の適法性を最終的に確認し、承認したことを意味しません。</p>
<p>法律上は、いったん還付した後であっても、その後の調査により申告内容に誤りが判明すれば、更正処分を行うことができます。</p>
<p>したがって、</p>
<blockquote>
<p>一度還付されたから、税務署もこの処理を認めたはずだ。</p>
</blockquote>
<p>という主張は通用しませんでした。</p>
<p>国税の更正については<a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000066" target="_blank" rel="noopener">国税通則法第24条</a>、過少申告加算税については同法第65条に規定されています。</p>
<h2>この裁決から分かる実務上のポイント</h2>
<h3>1．関係会社を間に入れても、最終用途まで確認される</h3>
<p>建物所有者が直接入居者へ貸していなくても、最終的に居住用として転貸されることが明らかであれば、住宅の貸付けと判断される可能性があります。</p>
<p>次のように法人や管理会社を間に挟んでも、形式だけで課税関係が変わるとは限りません。</p>
<p>個人<br />
↓<br />
同族法人<br />
↓<br />
管理会社<br />
↓<br />
入居者</p>
<p>税務上は、契約の各段階を通じて、最終的に建物が何に使われるのかが確認されます。</p>
<h3>2．契約書に都合のよい文言を追加しても、それだけでは足りない</h3>
<p>「用途を問わない」「事業用にも使用できる」と契約書へ記載しても、他の資料がすべて居住用を示していれば、その一文だけで課税取引にすることは困難です。</p>
<p>特に、次の資料との整合性が問われます。</p>
<ul>
<li>建築確認関係書類</li>
<li>設計図面</li>
<li>登記事項証明書</li>
<li>融資申込資料</li>
<li>収支計画書</li>
<li>管理契約書</li>
<li>一括借上契約書</li>
<li>入居者募集資料</li>
<li>最終入居者との契約書</li>
</ul>
<p>税務上の結論だけを意識して、一部の契約書へ他の資料と矛盾する文言を入れることは、かえって不自然な証拠を残す結果になりかねません。</p>
<h3>3．課税仕入れの用途区分は、取得時点の客観的な予定で判断する</h3>
<p>建物取得時に入居者が未定であっても、建物の構造、募集方法、管理契約、転貸計画などから居住用として使用されることが明らかであれば、非課税売上げに対応する仕入れと判断されます。</p>
<p>入居者名が決まっていないことと、建物の用途が決まっていないことは同じではありません。</p>
<h3>4．還付後でも税務調査で否認される</h3>
<p>消費税の還付が実行されたからといって、その申告内容が税務署から正式に承認されたわけではありません。</p>
<p>高額な還付申告については、申告直後ではなく、数年後の税務調査で契約や使用実態を確認されることもあります。</p>
<p>還付金を受け取った後も、申告根拠となった契約書、設計資料、用途判定資料などを保存しておく必要があります。</p>
<h3>5．現在は「居住用賃貸建物」に関する別の制限もある</h3>
<p>今回の事案は平成31年の取引であり、主として個別対応方式における用途区分が争われたものです。</p>
<p>現在は、令和2年10月1日以後に取得した一定の居住用賃貸建物について、建物取得時の仕入税額控除を制限する別の制度も設けられています。</p>
<p>したがって、現在の賃貸住宅の取得では、今回の裁決と同じ用途区分の問題だけでなく、居住用賃貸建物に関する仕入税額控除制限も確認する必要があります。</p>
<p>古い裁決の結論をそのまま現在の建物取得へ当てはめることはできません。</p>
<h2>まとめ：契約書の名称や一文ではなく、建物の実態で判断される</h2>
<p>今回の裁決では、個人と同族法人との賃貸借契約書に「使用用途を問わない」と記載されていました。</p>
<p>それでも、国税不服審判所は、建物の貸付けを消費税が非課税となる住宅の貸付けと判断しました。</p>
<p>その理由は、次のような客観的事情があったためです。</p>
<ul>
<li>建物が共同住宅として設計・建築・登記されていた</li>
<li>建物全体が住宅部分として計画されていた</li>
<li>管理会社による居住用の一括借上げが予定されていた</li>
<li>関連契約でも居住用としての再転貸が前提だった</li>
<li>所有者自身も、その仕組みを認識していた</li>
<li>最終入居者との契約でも居住用に限定されていた</li>
</ul>
<p>消費税の課税関係は、契約書の表題や都合のよい一文だけで決まりません。</p>
<p><strong>建物の構造、契約締結の経緯、関連契約、募集方法、最終的な使用目的まで含めた実態</strong>によって判断されます。</p>
<p>また、一度消費税が還付されても、それによって申告内容が税務署から是認されたことにはなりません。</p>
<p>賃貸建物の取得に伴う消費税は金額が大きくなりやすいため、建築契約や賃貸借契約を締結した後ではなく、建築計画や事業スキームを決める段階で税務上の取扱いを確認することが重要です。</p>
<h2>今回参照した裁決例</h2>
<p><strong>国税不服審判所 関裁（諸）令6第15号</strong></p>
<ul>
<li>裁決日：令和6年11月1日</li>
<li>コード番号：F0－5－462</li>
<li>対象税目：消費税および地方消費税</li>
<li>対象課税期間：平成31年1月1日から平成31年3月31日まで</li>
<li>結論：審査請求棄却</li>
<li>主な争点：居住用として転貸される共同住宅の貸付けが、消費税の非課税取引となる「住宅の貸付け」に該当するか</li>
</ul>
<p>本件では、建物の貸付けが住宅の貸付けに該当するかどうか、個別対応方式における課税仕入れの用途区分、一度消費税の還付を受けたことが過少申告加算税の「正当な理由」になるかが争われました。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener">消費税法</a>
<ul>
<li>第2条第1項第8号・第9号：資産の譲渡等、課税資産の譲渡等</li>
<li>第6条第1項・別表第一第13号：住宅の貸付けの非課税</li>
<li>第30条：仕入税額控除、個別対応方式</li>
<li>第52条：控除不足額の還付</li>
</ul>
</li>
<li><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000066" target="_blank" rel="noopener">国税通則法</a>
<ul>
<li>第24条：更正</li>
<li>第65条：過少申告加算税</li>
<li>第56条：還付</li>
<li>第58条：還付加算金</li>
</ul>
</li>
<li><a href="https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6226.htm" target="_blank" rel="noopener">国税庁「住宅の貸付け」</a></li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁決例を題材として、住宅の貸付け、転貸借、仕入税額控除および消費税還付に関する一般的な考え方を解説したものです。実際の取扱いは、建物の取得時期、建物の構造、契約関係、用途、課税売上割合、駐車場等の付帯設備、居住用賃貸建物に関する仕入税額控除制限その他の事情によって異なります。個別の建築・取得・賃貸スキームについては、契約締結前に税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11815">契約書に「用途を問わない」と書けば消費税は還付される？居住用転貸建物が争われた裁決例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>税務署で「これでいい」と言われても自己責任？給与を課税仕入れに入力した裁判例</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11806</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 16 Jul 2026 00:00:58 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11806</guid>

					<description><![CDATA[<p>「税務署の確定申告会場で職員に画面を見せ、『 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11806">税務署で「これでいい」と言われても自己責任？給与を課税仕入れに入力した裁判例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「税務署の確定申告会場で職員に画面を見せ、『これでいいですか』と確認しました。それでも入力ミスがあった場合、私の責任になるのでしょうか？」</strong></p>
<p>確定申告会場では、税務署職員の案内を受けながら、パソコンで申告書を作成することがあります。</p>
<p>税務署の中で申告書を作成し、職員にも画面を確認してもらったのであれば、納税者としては、</p>
<p><strong>「税務署が確認したのだから、申告内容も正しいはずだ」</strong></p>
<p>と考えたくなるところです。</p>
<p>しかし、確定申告会場に配置された職員が担当しているのは、必ずしも申告内容そのものの税務判断ではありません。</p>
<p>実際に、従業員へ支払った給料賃金を、消費税の課税仕入れに係る支払対価として誤って入力した個人事業者が、過少申告加算税の取消しを求めた裁判があります。</p>
<p>納税者は、入力後の画面を税務署職員に見せて「これでいいか」と確認し、職員から「それでいい」と言われたと主張しました。</p>
<p>それでも大阪高等裁判所は、申告内容の最終確認は納税者自身の責任であり、過少申告加算税を免除する「正当な理由」はないと判断しました。</p>
<h2>結論：税務署職員に確認しても、申告内容の最終責任は納税者にあります</h2>
<p>大阪高等裁判所は、次のような考え方を示しました。</p>
<p><strong>申告納税制度では、納税者が自らの判断と責任で税額を計算し、正しい申告を行うことが予定されている。</strong></p>
<p>確定申告会場にいる税務署職員が、パソコン操作や入力作業を補助したとしても、通常、その職員が申告内容の税務上の正しさまで保証したことにはなりません。</p>
<p>そのため、職員へ画面を見せて「これでいい」と言われたとしても、</p>
<ul>
<li>入力漏れがないか</li>
<li>画面操作が完了しているか</li>
<li>明らかな形式上の誤りがないか</li>
</ul>
<p>という意味での確認にとどまり、税務上の内容まで正式に確認したとは限らないと判断されました。</p>
<p>今回の事案では、納税者が自ら誤った項目へ入力し、その内容で申告書を提出していました。</p>
<p>したがって、誤申告について納税者に責任を負わせることが不当または酷であるとはいえず、過少申告加算税を免除する「正当な理由」は認められませんでした。</p>
<h2>従業員の給与を「課税仕入れ」に入力していた</h2>
<p>今回の納税者は、個人事業者でした。</p>
<p>令和元年分の消費税および地方消費税の確定申告をした際、従業員へ支払った給料賃金を、課税仕入れに係る支払対価の額へ含めて申告しました。</p>
<p>しかし、従業員に支払う給与は、原則として消費税の課税仕入れには該当しません。</p>
<p><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener noreferrer">消費税法</a>では、課税仕入れについて、事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、借り受け、または役務の提供を受けることと定めています。</p>
<p>ただし、給与等を対価とする役務の提供は、課税仕入れから除かれます。</p>
<p>従業員は、雇用契約に基づいて会社や個人事業者へ労務を提供し、その対価として給与を受け取ります。</p>
<p>これは、外部の事業者へ業務委託料を支払って役務の提供を受ける場合とは異なります。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>支払内容</th>
<th>消費税上の原則的な取扱い</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>従業員に支払う給与・賞与</td>
<td>課税仕入れに該当しない</td>
</tr>
<tr>
<td>外部事業者に支払う業務委託料</td>
<td>課税仕入れに該当する可能性がある</td>
</tr>
<tr>
<td>税理士・弁護士等への報酬</td>
<td>原則として課税仕入れに該当する</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>今回の誤入力によって、本来控除できない給料賃金に係る金額まで、仕入税額控除の計算に含まれる結果となりました。</p>
<p>税務署長は消費税の更正処分を行い、併せて3万5,000円の過少申告加算税を課しました。</p>
<h2>確定申告会場では、どのように申告書を作成していたのか</h2>
<p>当時の確定申告会場では、申告者が次の手順で申告書を作成していました。</p>
<ol>
<li>事前準備兼自書記載コーナーで、申告に必要な書類を整理する</li>
<li>整理した資料を基に「個票」を作成する</li>
<li>パソコンコーナーへ移動する</li>
<li>個票の内容をパソコンへ入力する</li>
<li>作成された確定申告書を提出する</li>
</ol>
<p>今回の納税者は、事前準備の段階で作成した個票には、給料賃金を正しく記載していました。</p>
<p>ところが、パソコンへ入力する際、給料賃金を課税仕入れに係る支払対価の欄へ誤って入力しました。</p>
<p>つまり、税務上の基礎資料そのものが間違っていたのではなく、個票から申告用ソフトへ転記する段階で入力欄を誤った事案です。</p>
<h2>「税務署職員に画面を見せた」という納税者の主張</h2>
<p>納税者は、パソコンへの入力後、画面をスクロールして税務署職員へ見せ、</p>
<p><strong>「これでいいですか」</strong></p>
<p>と尋ねたと主張しました。</p>
<p>これに対し、職員は「それでいい」と答え、誤りを指摘しなかったとされています。</p>
<p>そのため納税者は、税務署職員の確認を受けて申告した以上、入力ミスには過少申告加算税を免除すべき「正当な理由」があると主張しました。</p>
<p>しかし、大阪高裁は、この主張を認めませんでした。</p>
<h2>税務署職員は「申告内容の審査担当者」ではなかった</h2>
<p>裁判所が重視したのは、確定申告会場のパソコンコーナーに配置された職員の役割です。</p>
<p>その職員は、既に個票の作成を終えた申告者に対し、</p>
<ul>
<li>パソコンの操作方法</li>
<li>入力作業の進め方</li>
<li>画面上の形式的な確認</li>
</ul>
<p>などを補助するために配置されていました。</p>
<p>裁判所は、その職員について、通常は税務署として正式な見解を示す立場になく、その権限もないと判断しました。</p>
<p>また、申告内容が税法上正しいかを確認し、誤りを指摘する義務まで負っていたとも認めませんでした。</p>
<p>したがって、職員が「それでいい」と答えたとしても、通常は、</p>
<p><strong>入力の形式上、漏れや明白な操作ミスは見当たらない</strong></p>
<p>という意味にすぎないとされました。</p>
<p>職員が相応の時間をかけて、個票と入力画面を一項目ずつ照合し、消費税法上の取扱いまで確認したことを示す証拠もありませんでした。</p>
<h2>税務署で作成しても「税務署が作った申告書」にはならない</h2>
<p>今回の判決から読み取れる重要な点は、申告書を作成した場所と、その申告の責任者は別であるということです。</p>
<p>申告書を、</p>
<ul>
<li>税務署の確定申告会場で作成した</li>
<li>税務署のパソコンを使用した</li>
<li>税務署職員に操作を教えてもらった</li>
<li>職員へ画面を見せた</li>
</ul>
<p>としても、その申告書は、税務署が作成・保証した申告書ではありません。</p>
<p>申告者本人が、自分の申告として提出したものです。</p>
<p><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法</a>上、申告納税方式の国税は、原則として納税者が提出する申告書によって税額が確定します。</p>
<p>したがって、申告内容の最終確認も、納税者自身の責任で行うことが前提となります。</p>
<h2>過少申告加算税の「正当な理由」とは何か</h2>
<p>過少申告加算税は、申告した税額が本来納めるべき税額より少なかった場合に、原則として課される附帯税です。</p>
<p>ただし、過少申告となったことについて「正当な理由」がある場合には、その正当な理由がある部分について、過少申告加算税は課されません。</p>
<p>ここでいう正当な理由は、単に、</p>
<ul>
<li>うっかり入力を間違えた</li>
<li>制度が難しかった</li>
<li>申告ソフトが分かりにくかった</li>
<li>税務署職員が誤りを指摘しなかった</li>
</ul>
<p>というだけで認められるものではありません。</p>
<p>裁判例上、正当な理由が認められるためには、一般に、</p>
<p><strong>真に納税者の責任に帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税を課すことが不当または酷といえること</strong></p>
<p>が必要とされています。</p>
<p>今回の納税者は、自ら個票を作成し、自らパソコンへ入力し、自ら申告書を提出していました。</p>
<p>そのため、入力ミスは納税者自身の責任によるものであり、正当な理由はないと判断されました。</p>
<h2>申告ソフトが入力を禁止しなかったことも理由にはならなかった</h2>
<p>納税者は、確定申告会場で使用されていた申告用ソフトについて、</p>
<p><strong>給与賃金を課税仕入れの欄へ入力できないように設計すべきだった</strong></p>
<p>とも主張しました。</p>
<p>確かに、給与を課税仕入れの欄へ入力できないシステムであれば、今回の誤申告は発生しなかった可能性があります。</p>
<p>しかし、裁判所は、当時の国や税務署に、そのような入力制御を備えたシステムにしておく法的義務があったとまでは認めませんでした。</p>
<p>したがって、申告ソフトが誤入力を受け付けたことによって、納税者自身が入力を誤ったという評価が変わることはありませんでした。</p>
<h2>システムが入力を受け付けたことと、税務上正しいことは別です</h2>
<p>この点は、現在の会計ソフトや申告ソフトを利用する場合にも共通します。</p>
<p>ソフトへ入力できたからといって、その処理が税務上正しいとは限りません。</p>
<p>システムは、さまざまな事業者や例外的な取引に対応するため、入力を完全には制限していないことがあります。</p>
<p>また、入力内容が事実と合っているか、税法上適切かまで、ソフトが自動的に判断できるとは限りません。</p>
<p>例えば、同じ「人に対する支払」でも、</p>
<ul>
<li>従業員給与</li>
<li>外注費</li>
<li>税理士報酬</li>
<li>講師謝金</li>
<li>派遣会社への支払</li>
</ul>
<p>では、所得税、消費税、源泉徴収などの取扱いが異なります。</p>
<p>ソフトへ入力できるかどうかではなく、取引の実態に基づいて判断する必要があります。</p>
<h2>民法上の「錯誤無効」も認められなかった</h2>
<p>納税者は、給料賃金を課税仕入れへ計上したことには錯誤があるため、その申告は無効であるとも主張しました。</p>
<p>錯誤とは、簡単にいえば、本人の認識と実際の内容との間に食い違いがあることです。</p>
<p><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民法</a>には、錯誤による意思表示の取消しに関する規定があります。</p>
<p>しかし、申告納税制度では、申告書の記載に誤りがあった場合、原則として修正申告や更正の請求など、税法上定められた手続によって訂正します。</p>
<p>納税者が自ら入力を誤った今回の事情では、民法上の錯誤を理由として過少申告加算税の処分を取り消すべき特別な事情はないと判断されました。</p>
<h2>税務調査の方法に対する主張も認められなかった</h2>
<p>納税者は、税務調査についても、次のような違法があったと主張しました。</p>
<ul>
<li>事前通知よりも調査対象期間を不当に延長した</li>
<li>必要がないのに自宅2階へ立ち入った</li>
<li>必要がないのに帳簿等を留め置いた</li>
</ul>
<p>そして、調査方法が公序良俗に反するほど違法であるため、その後にされた過少申告加算税の処分も取り消すべきだと主張しました。</p>
<p>しかし、裁判所は、証拠上、調査対象期間が不当に延長されたとは認められず、自宅2階への立入りや帳簿等の留置きについても、必要性がなかったとは認められないと判断しました。</p>
<p>また、今回の過少申告加算税は、給料賃金を課税仕入れへ計上したという法令上明白な誤りを主な理由として課されたものです。</p>
<p>そのため、税務調査に重大な違法があり、処分を取り消すべきだとの主張も退けられました。</p>
<h2>この判決から分かる実務上のポイント</h2>
<h3>1．税務署職員への相談内容を明確にする</h3>
<p>税務署職員へ相談する場合には、単に画面を見せて、</p>
<p><strong>「これでいいですか」</strong></p>
<p>と尋ねるだけでは不十分です。</p>
<p>例えば、</p>
<ul>
<li>この金額は従業員給与です</li>
<li>消費税の課税仕入れに含めてよいですか</li>
<li>この入力欄で税務上正しいですか</li>
</ul>
<p>というように、確認したい事実と税務上の論点を具体的に伝える必要があります。</p>
<p>ただし、口頭で相談しただけでは、後に相談内容や回答内容を証明できないことがあります。</p>
<h3>2．操作補助と税務相談を区別する</h3>
<p>確定申告会場の職員が、どの立場で対応しているかを確認することが重要です。</p>
<p>パソコンの操作補助を担当している職員が、申告内容の税務判断まで確認するとは限りません。</p>
<p>入力方法を尋ねることと、税務上の取扱いを尋ねることは別です。</p>
<h3>3．提出前に申告書全体を確認する</h3>
<p>入力後は、少なくとも次の点を確認する必要があります。</p>
<ul>
<li>元資料と入力金額が一致しているか</li>
<li>給与と外注費を混同していないか</li>
<li>課税仕入れに含めてはいけない支出が入っていないか</li>
<li>課税売上・非課税売上・不課税取引の区分が正しいか</li>
<li>簡易課税と本則課税を取り違えていないか</li>
<li>申告書上の税額が前年や試算額と大きく異なっていないか</li>
</ul>
<p>元資料上は正しくても、入力時に欄を誤ることがあります。</p>
<p>資料の確認と入力結果の確認は、別々に行う必要があります。</p>
<h3>4．消費税の申告は所得税の申告以上に入力区分へ注意する</h3>
<p>消費税は、同じ支出であっても、取引区分によって税額が変わります。</p>
<p>特に、</p>
<ul>
<li>給与</li>
<li>外注費</li>
<li>保険料</li>
<li>租税公課</li>
<li>国外取引</li>
<li>住宅家賃</li>
<li>土地の取得・賃借</li>
</ul>
<p>などは、会計上費用であっても、消費税の課税仕入れに該当するとは限りません。</p>
<p><strong>経費になることと、消費税の仕入税額控除ができることは別問題です。</strong></p>
<h3>5．不明点が大きい場合は税理士へ依頼する</h3>
<p>確定申告会場は、申告書を作成するための支援を受けられる場所ですが、納税者の事業内容を継続的に把握し、帳簿全体を精査する顧問税理士とは役割が異なります。</p>
<p>消費税の課税区分、外注費と給与の判定、仕入税額控除などに不安がある場合には、申告書を提出する前に税理士へ確認することが安全です。</p>
<h2>まとめ：税務署で申告しても、最終確認は自分で行う必要があります</h2>
<p>今回の裁判では、納税者が確定申告会場でパソコン入力を行い、入力後の画面を職員へ見せて「これでいいか」と確認していました。</p>
<p>それでも大阪高裁は、職員はパソコン操作を補助するために配置されていたにすぎず、申告内容の税務上の正しさまで確認・保証したとは認めませんでした。</p>
<p>申告納税制度では、原則として、</p>
<p><strong>申告書を作成・提出した納税者自身が、その内容について責任を負います。</strong></p>
<p>今回の判決から分かるポイントは、次のとおりです。</p>
<ul>
<li>従業員給与は原則として消費税の課税仕入れに該当しない</li>
<li>確定申告会場の職員は、操作補助を担当しているにすぎない場合がある</li>
<li>職員に「これでいい」と言われても、税務上の内容が保証されたとは限らない</li>
<li>申告用ソフトが入力を受け付けても、その処理が正しいとは限らない</li>
<li>単純な入力ミスだけでは、過少申告加算税を免除する正当な理由になりにくい</li>
<li>申告書の最終確認は、納税者自身の責任で行う必要がある</li>
</ul>
<p>確定申告会場で作成した申告書であっても、提出前には元資料と入力結果を照合し、税務上の区分に誤りがないかを確認しましょう。</p>
<h2>今回参照した裁判例</h2>
<p><strong>大阪高等裁判所令和6年（行コ）第●●号・処分取消請求事件</strong></p>
<ul>
<li>判決日：令和7年3月18日</li>
<li>結論：控訴棄却</li>
<li>処分行政庁：龍野税務署長</li>
<li>国税庁訴資番号：Z888－2764</li>
<li>原審判決日：令和6年9月19日</li>
<li>対象処分：令和元年分の消費税および地方消費税に係る過少申告加算税賦課決定処分</li>
</ul>
<p>本件では、個人事業者が従業員の給料賃金を消費税の課税仕入れに係る支払対価として誤って入力したことについて、過少申告加算税を免除する「正当な理由」があるかが争われました。</p>
<p>大阪高裁は、確定申告会場の職員はパソコン操作等を補助するために配置されていたにすぎず、申告内容の適正性を確認する義務を負っていたとは認められないとして、納税者の請求を退けました。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法</a>第16条（国税についての納付すべき税額の確定の方式）</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国税通則法</a>第65条（過少申告加算税）</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener noreferrer">消費税法</a>第2条第1項第12号（課税仕入れの定義）</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener noreferrer">消費税法</a>第30条（仕入れに係る消費税額の控除）</li>
<li><a href="https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089" target="_blank" rel="noopener noreferrer">民法</a>第95条（錯誤）</li>
</ul>
<p>※本件で問題となった国税通則法第65条第4項第1号および民法第95条は、対象となる申告・行為当時の法令によるものです。現在の条文構成や文言とは異なる場合があります。</p>
<p>※本記事は、上記裁判例を題材として、確定申告会場での入力支援、消費税の課税仕入れ、過少申告加算税に関する一般的な考え方を解説したものです。実際の取扱いは、申告時の説明内容、税務署職員の回答内容、相談記録、誤申告に至った事情その他の事実関係によって異なります。個別の申告については、税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11806">税務署で「これでいい」と言われても自己責任？給与を課税仕入れに入力した裁判例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>土地建物の購入価額は契約書どおりでよい？建物価額の過大配分が否認された裁決例</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11809</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 15 Jul 2026 00:00:52 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11809</guid>

					<description><![CDATA[<p>「中古アパートを土地と建物のセットで購入しま [&#8230;]</p>
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										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「中古アパートを土地と建物のセットで購入しました。売買契約書には土地と建物の金額が分けて書かれています。この金額をそのまま減価償却費や消費税の計算に使ってよいのでしょうか？」</strong></p>
<p>土地と建物を一括して購入した場合、税務上は、その購入代金を土地と建物に分ける必要があります。</p>
<p>土地は減価償却できませんが、建物は減価償却できます。また、住宅以外の一定の建物の取得は消費税の課税仕入れとなる一方、土地の取得は消費税の非課税取引です。</p>
<p>そのため、購入代金のうち建物に配分される金額が大きいほど、一般に、</p>
<ul>
<li>所得税上の減価償却費が大きくなる</li>
<li>消費税の仕入税額控除の対象額が大きくなる</li>
</ul>
<p>という効果が生じます。</p>
<p>では、売主と買主が売買契約書で土地と建物の価額を合意していれば、どのような配分でも税務上認められるのでしょうか。</p>
<p>この点について、土地建物を繰り返し購入して不動産賃貸業を営んでいた個人事業者の申告が問題となり、売買契約書に記載された建物価額が客観的価値と比べて著しく不合理であるとして、固定資産税評価額または鑑定評価額による按分が採用された裁決例があります。</p>
<h2>結論：契約書に建物価額が書かれていても、著しく不合理ならそのまま認められません</h2>
<p>土地と建物を一括して購入した場合、売買契約書に土地と建物の価額が区分して記載されていれば、原則として、その契約金額が税務上の購入価額になります。</p>
<p>しかし、その配分が客観的な価値と比較して著しく不合理である場合には、契約書記載額がそのまま認められるとは限りません。</p>
<p>国税不服審判所は、次のような考え方を示しました。</p>
<blockquote>
<p>売買契約書に定められた土地と建物の価額が、それぞれの客観的価値と比較して著しく不合理である場合には、合理的な基準によって土地と建物の購入価額を算定し直すべきである。</p>
</blockquote>
<p>その合理的な基準として、原則的には、土地と建物の固定資産税評価額の比率による按分が認められました。</p>
<p>ただし、物件の個別事情を適切に反映した不動産鑑定があり、固定資産税評価額による比率と実質的な差異が生じている場合には、鑑定評価額による按分の方が合理的と判断されています。</p>
<h2>なぜ建物価額を大きくすると税金が変わるのか</h2>
<p>土地と建物の購入価額の配分は、単なる会計上の内訳ではありません。</p>
<p>所得税と消費税の両方に影響します。</p>
<h3>所得税では建物だけが減価償却の対象になる</h3>
<p>土地は、通常、時間の経過によって消耗する資産ではないため、減価償却の対象にはなりません。</p>
<p>一方、建物は減価償却資産です。</p>
<p>建物の取得価額が大きくなるほど、耐用年数にわたって必要経費に算入される減価償却費も大きくなります。</p>
<p>例えば、土地建物を合計1億円で購入した場合を考えます。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>配分方法</th>
<th>土地</th>
<th>建物</th>
<th>税務上の影響</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>建物を少なく配分</td>
<td>8,000万円</td>
<td>2,000万円</td>
<td>減価償却費は比較的小さい</td>
</tr>
<tr>
<td>建物を多く配分</td>
<td>4,000万円</td>
<td>6,000万円</td>
<td>減価償却費は大きくなる</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>売買総額は同じでも、土地と建物の配分によって、毎年の不動産所得が変わります。</p>
<h3>消費税では建物部分だけが課税仕入れになる</h3>
<p>土地の譲渡は、原則として消費税の非課税取引です。</p>
<p>一方、事業者から取得した建物は、原則として消費税の課税取引となります。</p>
<p>そのため、課税事業者が一定の要件を満たして仕入税額控除を行う場合、建物部分に配分される金額が大きいほど、控除対象となる消費税額も大きくなる可能性があります。</p>
<p>つまり、建物価額を過大に配分すると、</p>
<ul>
<li>所得税では減価償却費が過大になる</li>
<li>消費税では仕入税額控除が過大になる</li>
</ul>
<p>という二重の影響が生じます。</p>
<h2>47物件の土地建物の按分が調査対象となった</h2>
<p>今回の請求人は、不動産賃貸業を営む個人事業者でした。</p>
<p>平成29年分から令和3年分までの所得税と消費税について申告していましたが、税務調査では、一括購入した多数の土地建物について、建物価額の配分が問題とされました。</p>
<p>原処分庁は、対象となった47物件について、契約書等の記載状況をおおむね次のように分類しました。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>区分</th>
<th>契約書等の状況</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>区分①</td>
<td>売主・買主双方の契約書に土地建物の区分記載があり、金額も一致しているが、建物価額が著しく不合理とされた物件</td>
</tr>
<tr>
<td>区分②</td>
<td>売主側と買主側の契約書等で、土地建物の内訳金額が異なっていた物件</td>
</tr>
<tr>
<td>区分③</td>
<td>買主保管の契約書等には区分記載があるが、売主保管の契約書等には区分記載がなかった物件</td>
</tr>
<tr>
<td>区分④</td>
<td>契約書等に土地建物の区分記載がなかった物件</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>原処分庁は、これらの土地建物の購入総額を固定資産税評価額の比率で按分し、建物の取得価額と消費税の課税仕入れ額を計算し直しました。</p>
<h2>契約書の金額が一致していても絶対ではない</h2>
<p>請求人は、一部の物件について、売主と買主が契約書上の土地建物の配分に合意しており、双方の保管する契約書の記載も一致していると主張しました。</p>
<p>また、売主と買主は特殊関係者ではなく、租税回避や脱税を目的として虚偽の契約書を作成したわけでもないため、契約書記載額を尊重すべきであると主張しました。</p>
<p>しかし、審判所は、契約書の合意があることと、その配分が税務上合理的であることは別の問題であると判断しました。</p>
<p>通常の第三者間取引であれば、契約によって定められた建物代金は、その建物の適正な価額を反映していると考えられます。</p>
<p>ただし、その配分が客観的価値と比べて著しく不合理である場合まで、契約書記載額を無条件に認めると、土地に配分すべき価額を建物に付け替えることで、減価償却費を容易に増やせてしまいます。</p>
<p>審判所は、このような結果は租税負担の公平に反するとしました。</p>
<h2>「売主と買主が合意したから合理的」とはいえない</h2>
<p>土地建物の価格配分は、売主と買主で利害が一致しないように見えることがあります。</p>
<p>例えば、売主が課税事業者であれば、建物価額が大きくなるほど売主が納付する消費税が増える可能性があります。</p>
<p>一方、買主は、建物価額が大きいほど減価償却費や仕入税額控除が増える可能性があります。</p>
<p>そのため、契約当事者間で決めた金額には一定の合理性がある、という考え方もあります。</p>
<p>しかし、今回の裁決は、当事者間の合意が存在するだけで、税務上の合理性が当然に認められるわけではないことを明確にしました。</p>
<p>特に、固定資産税評価額や鑑定評価額との比較で、建物に著しく多額の価額が配分されている場合には、契約書記載額が修正される可能性があります。</p>
<h2>固定資産税評価額による按分が原則的に合理的とされた</h2>
<p>土地と建物の区分が不合理または不明な場合、どのように購入価額を配分すべきでしょうか。</p>
<p>今回の裁決では、原則として、土地と建物の固定資産税評価額の比率によって購入総額を按分する方法が合理的とされました。</p>
<p>計算式は、概ね次のとおりです。</p>
<p><strong>建物の購入価額 ＝ 土地建物の購入総額 × 建物の固定資産税評価額 ÷ 土地建物の固定資産税評価額合計</strong></p>
<p>例えば、土地建物の購入総額が1億円で、固定資産税評価額が次のとおりだったとします。</p>
<ul>
<li>土地：3,000万円</li>
<li>建物：2,000万円</li>
</ul>
<p>この場合、建物への配分割合は40％です。</p>
<p><strong>1億円 × 2,000万円 ÷ 5,000万円 ＝ 4,000万円</strong></p>
<p>したがって、建物の購入価額は4,000万円、土地の購入価額は6,000万円となります。</p>
<p>固定資産税評価額は、実際の売買価格そのものではありません。</p>
<p>それでも、一定の基準に基づいて評価され、土地と建物の双方について共通の基準で数値が存在するため、一括購入代金を按分する基準として一般的に合理的と判断されました。</p>
<h2>固定資産税評価額による按分が常に絶対というわけではない</h2>
<p>今回の裁決で重要なのは、固定資産税評価額による按分が唯一絶対の方法とされたわけではない点です。</p>
<p>審判所は、物件固有の事情を考慮した適正な不動産鑑定があり、その結果、固定資産税評価額と異なる土地建物の価額比が合理的に示された場合には、鑑定評価額による按分の方が合理的であるとしました。</p>
<p>実際に、対象物件の一部については、固定資産税評価額では建物内部の一定の設備や収益価値が十分に反映されていませんでした。</p>
<p>一方、不動産鑑定では、その設備等の経済的価値を含めて建物価額が評価されていました。</p>
<p>そのため、4物件については、固定資産税評価額ではなく、鑑定評価額による按分が採用されました。</p>
<p>つまり、実務上の優先順位は、概ね次のように整理できます。</p>
<ol>
<li>合理的な根拠に基づく契約書上の区分価額</li>
<li>契約価額が不明または著しく不合理な場合は、固定資産税評価額による按分</li>
<li>固定資産税評価額が物件の個別事情を適切に反映しない場合は、適正な鑑定評価額による按分</li>
</ol>
<h2>鑑定書を出せば必ず認められるわけではない</h2>
<p>不動産鑑定評価書があれば、固定資産税評価額による按分を必ず覆せるわけではありません。</p>
<p>審判所が認めたのは、</p>
<ul>
<li>物件の個別事情が考慮されている</li>
<li>評価の基礎となる数値や計算過程に不合理な点がない</li>
<li>土地と建物の価額比に実質的な差異がある</li>
<li>固定資産税評価額では反映されない設備や収益価値が適切に評価されている</li>
</ul>
<p>といった条件を満たす鑑定でした。</p>
<p>単に税務上有利な建物価額を出すためだけに作成された鑑定や、前提条件が不自然な鑑定であれば、税務上そのまま採用されるとは限りません。</p>
<h2>買主側の契約書にだけ内訳を書いても弱い</h2>
<p>今回の事案では、買主が保管する契約書や重要事項説明書には土地と建物の区分記載がある一方、売主が保管する書類には内訳がなかった物件もありました。</p>
<p>また、売主側と買主側で土地建物の内訳金額が異なる物件もありました。</p>
<p>このような場合、土地と建物の区分価額について、売主と買主の間に真実の合意があったのか疑問が生じます。</p>
<p>審判所は、買主側の保管書類に数字が記載されているだけでは、その金額が当事者間の合意に基づく合理的な購入価額であるとは認めませんでした。</p>
<p>実務では、少なくとも、</p>
<ul>
<li>売買契約書の原本</li>
<li>売主・買主双方が署名または記名押印した内訳</li>
<li>重要事項説明書との整合性</li>
<li>消費税額の記載との整合性</li>
<li>売主側の請求書・領収書との整合性</li>
</ul>
<p>を確認する必要があります。</p>
<h2>所得税と消費税で別の按分方法を使えるのか</h2>
<p>請求人は、仮に所得税上、契約書の建物価額が合理的でないとしても、消費税は実際の取引対価に基づいて課税されるため、契約書記載額を使うべきであると主張しました。</p>
<p>しかし、審判所は、この主張を認めませんでした。</p>
<p>土地と建物を同時に取得した場合、土地は非課税資産、建物は課税資産です。</p>
<p>その支払対価は、課税仕入れ部分とその他の部分に合理的に区分しなければなりません。</p>
<p>契約当事者が恣意的に建物価額を大きく配分し、その金額を無条件に消費税計算へ使用できるとすれば、課税の公平が損なわれます。</p>
<p>そのため、特段の事情がない限り、所得税で合理的とされる土地建物の配分基準と、消費税で合理的とされる配分基準は同じになると判断されました。</p>
<h2>建物の取得価額には仲介手数料も含まれる</h2>
<p>建物の取得価額は、建物本体の購入代金だけではありません。</p>
<p><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法施行令第126条</a>では、購入した減価償却資産の取得価額について、購入代価に、購入のために要した費用などを加えた金額としています。</p>
<p>今回の裁決でも、建物の取得価額には、建物に対応する、</p>
<ul>
<li>固定資産税精算金</li>
<li>仲介手数料</li>
</ul>
<p>を加えるとされました。</p>
<p>これらの付随費用についても、原則として土地と建物に合理的に配分する必要があります。</p>
<h2>固定資産税精算金は契約上の区分が認められたものもある</h2>
<p>固定資産税精算金についても、常に固定資産税評価額比で按分されたわけではありません。</p>
<p>一部の物件では、売主と買主が土地分と建物分の固定資産税相当額を日割り計算し、その区分について合意していました。</p>
<p>その計算方法にも合理性が認められたため、その合意額が採用されました。</p>
<p>これは、契約書の合意が一切無視されるわけではないことを示しています。</p>
<p>重要なのは、数字が契約書に書かれていることだけではなく、</p>
<ul>
<li>どのような基準で計算したのか</li>
<li>売主と買主が本当に合意したのか</li>
<li>客観的価値と比べて不自然ではないか</li>
</ul>
<p>を説明できることです。</p>
<h2>課税庁の計算にも誤りがあり、一部取消しとなった</h2>
<p>今回の裁決では、請求人の主張が全面的に退けられたわけではありません。</p>
<p>国税不服審判所が課税庁の計算を再確認したところ、複数の誤りが見つかりました。</p>
<p>例えば、</p>
<ul>
<li>使用する固定資産税評価額の年度を誤っていた</li>
<li>共有持分を正しく反映していなかった</li>
<li>実際に存在する建物や附属建物を計算に含めていなかった</li>
<li>消費税率8％の時期に10％で計算していた</li>
<li>固定資産税精算金の配分を誤っていた</li>
</ul>
<p>といった問題がありました。</p>
<p>その結果、所得税と消費税の各更正処分の一部が取り消されました。</p>
<p>この点も、実務上重要です。</p>
<p>税務署が固定資産税評価額按分を採用したからといって、その計算がすべて正しいとは限りません。</p>
<p>基準年度、共有持分、附属建物、適用税率、固定資産税精算金などを、物件ごとに確認する必要があります。</p>
<h2>契約書の建物価額が否認されやすいケース</h2>
<p>次のような場合には、契約書上の建物価額について、税務調査で説明を求められる可能性があります。</p>
<ul>
<li>建物価額が固定資産税評価額と比べて極端に大きい</li>
<li>土地価額が周辺相場と比べて不自然に小さい</li>
<li>売主側と買主側の契約書で内訳が異なる</li>
<li>売主側の契約書には土地建物の内訳がない</li>
<li>契約締結後に買主側だけで内訳を追記している</li>
<li>建物価額の算定根拠が残っていない</li>
<li>消費税額から逆算しただけの配分になっている</li>
<li>減価償却費や仕入税額控除を増やす目的が強く疑われる</li>
<li>複数物件で継続的に建物へ偏った配分をしている</li>
</ul>
<h2>土地建物を購入するときに残すべき資料</h2>
<p>土地建物を一括購入する場合には、契約時点で次の資料を整えておくことが重要です。</p>
<h3>売買契約書に土地建物の内訳を明記する</h3>
<p>売買総額だけでなく、土地、建物、建物に係る消費税額を明記します。</p>
<p>売主と買主双方が同じ内容の契約書を保管することも重要です。</p>
<h3>按分根拠を保存する</h3>
<p>固定資産税評価額を使ったのであれば、取得時の固定資産税課税明細書や評価証明書を保存します。</p>
<p>鑑定評価額を使ったのであれば、鑑定評価書だけでなく、評価の前提、基準時点、対象設備、収益性の評価方法も確認します。</p>
<h3>固定資産税評価額の年度を確認する</h3>
<p>取得時点に対応する適切な年度の固定資産税評価額を使用します。</p>
<p>取得日と評価年度がずれている場合には、なぜその評価額を使ったのか説明できるようにしておきます。</p>
<h3>附属建物や設備を漏らさない</h3>
<p>倉庫、車庫、附属建物、建物附属設備などがある場合、その評価額や取得価額が按分計算に反映されているか確認します。</p>
<h3>共有持分を正確に反映する</h3>
<p>土地や建物を共有で取得した場合には、自分の持分に対応する評価額だけを使います。</p>
<h3>消費税率を取得時期に合わせる</h3>
<p>建物の評価額に消費税相当額を加える計算を行う場合には、取得時の適用税率を確認します。</p>
<h2>不動産会社が作成した内訳でも安心とは限らない</h2>
<p>不動産会社や仲介会社が土地建物の内訳を作成したからといって、その金額が税務上必ず合理的とは限りません。</p>
<p>仲介会社の役割は、必ずしも税務上の取得価額を確定することではありません。</p>
<p>売買契約の締結を優先し、税務上の検証が十分にされないまま、売主と買主の希望に合わせた内訳が記載されることも考えられます。</p>
<p>特に、建物価額を大きくすれば節税になるという説明だけで配分を決めることは危険です。</p>
<p>契約前に、固定資産税評価額との比較や、必要に応じた不動産鑑定を行うべきです。</p>
<h2>まとめ：契約書の数字より、その数字の合理性が問われます</h2>
<p>土地と建物を一括購入した場合、契約書に土地建物の内訳が記載されていれば、原則としてその金額が購入価額になります。</p>
<p>しかし、契約書記載額が客観的価値と比べて著しく不合理である場合には、その金額が税務上そのまま認められるとは限りません。</p>
<p>今回の裁決から分かるポイントは、次のとおりです。</p>
<ul>
<li>契約書に区分記載があっても絶対ではない</li>
<li>売主と買主の合意があっても、著しく不合理なら修正される</li>
<li>原則的な按分方法として固定資産税評価額比が合理的とされる</li>
<li>物件固有の事情を反映した適正な鑑定があれば、鑑定評価額比が優先されることがある</li>
<li>所得税と消費税で、原則として同じ合理的な配分基準が使われる</li>
<li>建物の取得価額には、仲介手数料や固定資産税精算金の建物対応部分も含まれる</li>
<li>課税庁の按分計算にも誤りがないか確認する必要がある</li>
</ul>
<p>土地建物の価額配分は、契約後に申告段階で考える問題ではありません。</p>
<p>一度契約書に記載した金額を後から変更すると、売主側の契約書や消費税申告との不一致が生じる可能性があります。</p>
<p>高額な収益物件を取得する場合や、建物価額が固定資産税評価額と大きく異なる場合には、契約締結前に税理士や不動産鑑定士へ相談することをおすすめします。</p>
<h2>今回参照した裁決例</h2>
<p><strong>国税不服審判所 高裁（所・諸）令6第4号</strong></p>
<ul>
<li>裁決日：令和6年11月14日</li>
<li>コード番号：F0－1－1720</li>
<li>結論：原処分の一部取消し</li>
<li>対象税目：所得税、復興特別所得税、消費税および地方消費税</li>
<li>主な争点：一括取得した土地建物の取得価額および課税仕入れ額の区分方法</li>
</ul>
<p>本件では、土地建物の売買契約書に記載された建物価額が客観的価値と比べて著しく不合理である場合には、固定資産税評価額または適正な鑑定評価額の比率によって、建物の購入価額と課税仕入れに係る支払対価を算定すべきであると判断されました。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li>
    <a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      所得税法第37条・第49条<br />
    </a>
  </li>
<li>
    <a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      所得税法施行令第126条<br />
    </a>
  </li>
<li>
    <a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      消費税法第2条・第28条・第30条<br />
    </a>
  </li>
<li>
    <a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363CO0000000360" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      消費税法施行令第45条<br />
    </a>
  </li>
<li>
    <a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/04.htm" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      消費税法基本通達11－4－2「建物と土地等とを同一の者から同時に譲り受けた場合の取扱い」<br />
    </a>
  </li>
<li>
    <a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000066" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      国税通則法第65条<br />
    </a>
  </li>
<li>
    <a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000110" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><br />
      内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律<br />
    </a>
  </li>
</ul>
<p>※本記事は、上記裁決例を題材として、土地建物を一括取得した場合の取得価額および消費税の一般的な考え方を解説したものです。実際の税務処理は、契約書の内容、売主の課税関係、取得時期、物件の用途、固定資産税評価額、鑑定評価、設備の状況その他の個別事情によって異なります。個別の取引については、契約締結前に税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11809">土地建物の購入価額は契約書どおりでよい？建物価額の過大配分が否認された裁決例</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>不動産管理会社に家賃の4割を残してもよい？サブリース節税が否認された高裁判決</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11802</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 14 Jul 2026 00:00:33 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11802</guid>

					<description><![CDATA[<p>「個人で所有している賃貸物件を、自分の会社へ [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11802">不動産管理会社に家賃の4割を残してもよい？サブリース節税が否認された高裁判決</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p><strong>「個人で所有している賃貸物件を、自分の会社へ一括して貸し、会社から入居者へ転貸すれば、家賃収入の一部を会社に移せますか？」</strong></p>
<p>不動産オーナーが、自分や家族の会社を不動産管理会社として利用することは珍しくありません。</p>
<p>代表的な方法として、次の二つがあります。</p>
<ul>
<li>会社へ管理業務を委託し、管理料を支払う「管理委託方式」</li>
<li>会社へ物件を一括して貸し、会社が入居者へ転貸する「サブリース方式」</li>
</ul>
<p>サブリース方式では、入居者が支払う家賃と、会社がオーナーへ支払う賃料との差額が、会社側に残ります。</p>
<p>そのため、個人の高い所得税率を避け、法人側へ所得を移す方法として利用されることがあります。</p>
<p>しかし、契約書上はサブリースになっていても、会社が実際には転貸人として機能しておらず、家賃の受取窓口にすぎない場合には、契約どおりの所得移転が認められないことがあります。</p>
<p>実際に、個人が同族会社へ多数の不動産を一括賃貸し、家賃収入の約4割を会社側に残していた事案について、大阪高等裁判所は、サブリース契約が経済的合理性を欠くとして、所得税法157条の適用を認めました。</p>
<h2>結論：契約書がサブリースでも、実態が管理業務なら管理料相当額しか認められないことがあります</h2>
<p>今回の高裁判決では、個人と同族会社との間で一括サブリース契約が締結されていました。</p>
<p>しかし、裁判所は、同族会社が実際に行っていた業務について、次のように評価しました。</p>
<blockquote>
<p>同族会社は、送金される賃貸料を個人に代わって受領するなどの窓口業務をしていたにすぎず、少なくとも管理委託方式における役務を超えるものではない。</p>
</blockquote>
<p>そのうえで、形式上はサブリース契約であっても、実態が管理委託方式に近い以上、会社に残すことができる金額は、適正な管理料相当額を基準に算定できるとしました。</p>
<p>つまり、契約書に「一括賃貸」「転貸」と書かれているだけでは足りません。</p>
<p><strong>会社が本当に転貸人として契約当事者となり、空室リスク、入居者対応、契約管理、建物管理などを負担していたのか</strong>が問われます。</p>
<h2>個人が所有する多数の不動産を同族会社へ一括賃貸していた</h2>
<p>この事案の納税者は、司法書士業と不動産賃貸業を営む個人でした。</p>
<p>納税者は、自らが全株式を保有し、代表取締役を務める同族会社との間で、多数の賃貸不動産について一括マスターリース契約を締結していました。</p>
<p>形式上の流れは、次のようなものです。</p>
<p><strong>個人</strong><br />
↓ 不動産を一括賃貸<br />
<strong>同族会社</strong><br />
↓ 入居者等へ転貸<br />
<strong>入居者</strong></p>
<p>この方式であれば、入居者等から支払われる家賃のうち、個人へ支払う借上賃料を超える部分が、同族会社の収入になります。</p>
<p>ところが、税務署は、個人が同族会社から受け取っていた賃料が著しく低いとして、<a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033#Mp-At_157" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法157条1項</a>を適用しました。</p>
<p>同条は、同族会社の行為や計算を認めると、株主等の所得税負担が不当に減少する場合に、その行為や計算にかかわらず、税務署長が正常な取引へ引き直して所得を計算できるとする規定です。</p>
<h2>一審では納税者側が一部勝訴していた</h2>
<p>この事件では、一審と高裁で判断が分かれました。</p>
<p>一審は、交際費や減価償却費に関する課税処分は認めた一方、同族会社との賃貸借契約に所得税法157条を適用した部分については、課税庁の主張を認めませんでした。</p>
<p>つまり、一審では、サブリースに関する部分について納税者側が一部勝訴していました。</p>
<p>これに対して国が控訴し、大阪高裁は一審の納税者勝訴部分を取り消しました。</p>
<p>高裁は、契約書の形式ではなく、実際の契約関係と会社の活動内容を詳しく検討し、同族会社とのサブリース契約には経済的合理性がないと判断しました。</p>
<h2>高裁が問題視した「重複契約」とは</h2>
<p>今回の判決で特に重要なのが、同族会社との契約とは別に、多数の物件について第三者との契約が存在していたことです。</p>
<p>納税者は、同族会社へ物件を一括賃貸していたはずでした。</p>
<p>しかし、実際には、同じ物件について、納税者個人が第三者である不動産会社等との間で、次のような契約を締結していました。</p>
<ul>
<li>別の不動産管理会社とのマスターリース契約</li>
<li>駐車場業者との賃貸借契約</li>
<li>別の不動産管理会社との管理委託契約</li>
<li>入居者等との直接の賃貸借契約</li>
</ul>
<p>本来、個人から同族会社へ物件を一括賃貸し、同族会社が転貸人になるのであれば、同族会社が第三者や入居者との契約当事者になるのが自然です。</p>
<p>ところが、実際の契約当事者は、同族会社ではなく納税者個人のままでした。</p>
<p>同族会社名義の口座が家賃の振込先として使われていたものの、同族会社が転貸人として入居者と契約していたことを示す十分な証拠もありませんでした。</p>
<p>高裁は、この実態について、個人が第三者へ賃貸または管理委託を行い、家賃の振込先として同族会社名義の口座を指定していたにすぎないと評価しました。</p>
<h2>同族会社は「家賃の受取窓口」にすぎなかった</h2>
<p>サブリース会社は、通常、単に家賃を受け取るだけではありません。</p>
<p>一般的には、次のような役割やリスクを負います。</p>
<ul>
<li>オーナーに一定の借上賃料を支払う</li>
<li>空室があっても借上賃料を負担する</li>
<li>入居者を募集する</li>
<li>入居者と転貸借契約を締結する</li>
<li>家賃を回収する</li>
<li>入居者とのトラブルに対応する</li>
<li>物件の管理を行う</li>
<li>入居率を高める施策を行う</li>
</ul>
<p>一方、今回の同族会社について、高裁は、第三者から送金される家賃を個人に代わって受け取るなどの窓口業務をしていたにすぎないと判断しました。</p>
<p>同族会社の従業員数は少なく、数百人規模の入居者へ対応することも現実的に難しいとみられました。</p>
<p>また、実際の募集、管理、転貸、駐車場運営などは、第三者の不動産会社が行っていました。</p>
<p>このため、高裁は、同族会社が一般的なサブリース会社としての役務を提供していたとは認めませんでした。</p>
<h2>家賃収入の約4割が同族会社に残っていた</h2>
<p>今回の契約では、入居者等から得られた家賃収入と、同族会社が個人へ支払う賃料との差額が、同族会社側に残っていました。</p>
<p>会社側に残った差額は、各年おおむね次のとおりです。</p>
<ul>
<li>平成27年：約1億3,900万円</li>
<li>平成28年：約9,127万円</li>
<li>平成29年：約6,336万円</li>
</ul>
<p>入居者等からの家賃収入に対する割合では、約39％から44％が会社側に残っていました。</p>
<p>反対に、個人が会社から受け取る借上賃料の割合は、次のとおりでした。</p>
<ul>
<li>平成27年：約54.7％</li>
<li>平成28年：約59.8％</li>
<li>平成29年：約59.4％</li>
</ul>
<p>高裁判決は、一般的なサブリースにおける借上料率について、転貸料の80％から90％程度であることが多く、60％未満は通常想定しにくいと認定しています。</p>
<p>ただし、この80％から90％という割合は、あらゆる物件に一律に適用される法律上の基準ではありません。</p>
<p>あくまで本件判決が、提出された証拠に基づいて認定した一般的な実情です。</p>
<p>実際の適正割合は、物件の種類、所在地、築年数、空室率、契約期間、管理内容、保証範囲などによって異なります。</p>
<h2>借上賃料は物件の収益力ではなく、個人と会社の都合で決められていた</h2>
<p>高裁は、賃料の決め方も問題視しました。</p>
<p>一般的なサブリースでは、それぞれの物件について、次のような要素を考慮して借上賃料を決めます。</p>
<ul>
<li>所在地</li>
<li>建物の構造</li>
<li>間取り</li>
<li>周辺相場</li>
<li>稼働率</li>
<li>空室リスク</li>
<li>修繕・管理負担</li>
<li>契約期間</li>
</ul>
<p>ところが、本件では、借上賃料を決める際、主として次の条件が考慮されていました。</p>
<ul>
<li>個人が必要とする資金を確保できること</li>
<li>同族会社の事業運営費を賄えること</li>
<li>売却予定物件の収入がなくても会社運営に支障がないこと</li>
<li>会社の信用力を高めるため、会社に資産を蓄積すること</li>
</ul>
<p>つまり、各物件の市場性や収益力から賃料を決めたのではなく、個人に必要な金額と、会社に残したい金額から逆算していたと評価されました。</p>
<p>高裁は、この目的を、実質的には<strong>「個人から同族会社へ所得を移転すること」</strong>にほかならないと判断しました。</p>
<h2>「会社の信用力を高める」という目的では認められなかった</h2>
<p>納税者は、個人で営んでいた不動産賃貸事業を、将来的に同族会社へ移行させる計画があったと主張しました。</p>
<p>また、会社の信用力を高めるため、会社側に利益や資産を蓄積する必要があったとも説明しました。</p>
<p>しかし、高裁は、この主張を認めませんでした。</p>
<p>会社の信用力を高めること自体は、事業上あり得る目的です。</p>
<p>ただし、その目的を達成するために、必ずしも個人の家賃収入を同族会社へ移転する必要はありません。</p>
<p>高裁は、例えば、次のような別の方法もあり得ると指摘しました。</p>
<ul>
<li>会社の増資を引き受ける</li>
<li>会社へ劣後ローンを提供する</li>
</ul>
<p>そのため、会社の信用力向上という説明は、著しく低い借上賃料を正当化する事業目的にはならないと判断されました。</p>
<h2>顧問税理士に相談していても、契約の合理性が保証されるわけではない</h2>
<p>納税者は、顧問税理士の意見に従って進めたとも主張しました。</p>
<p>しかし、高裁は、税理士の見解によって、<a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033#Mp-At_157" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法157条1項</a>の適用が左右されるものではないとしました。</p>
<p>さらに、その税理士が、次の点を十分に精査していたとは認められないとも指摘しています。</p>
<ul>
<li>サブリース契約書の具体的内容</li>
<li>著しく低い借上料率の妥当性</li>
<li>第三者との重複契約</li>
<li>同族会社が実際に行っていた業務</li>
</ul>
<p>税理士に相談していたという事実は、事実認定の一要素にはなり得ます。</p>
<p>しかし、契約の実態が不自然であり、対価も著しく不相当であれば、それだけで課税を免れることはできません。</p>
<h2>適正賃料は「転貸収入から適正管理料を差し引く方法」で計算された</h2>
<p>税務署は、形式上はサブリース契約であったものの、実態は管理委託方式に近いと考えました。</p>
<p>そこで、同族会社が受け取ったとされる家賃収入から、適正な管理料と会社負担経費を差し引き、残額を個人が受け取るべき適正賃料として計算しました。</p>
<p>適正な管理料率を算定するため、大阪国税局は、次のような条件を満たす比準同業者を抽出しました。</p>
<ul>
<li>大阪市内または隣接地域で申告していること</li>
<li>青色申告者であること</li>
<li>集合住宅と駐車場の両方を賃貸していること</li>
<li>転貸方式を採用していないこと</li>
<li>管理業務を非同族の不動産管理会社へ委託していること</li>
<li>事業規模が一定範囲内であること</li>
<li>課税処分について争っていないこと</li>
</ul>
<p>抽出された比準同業者は16件でした。</p>
<p>その平均管理料率は、次のとおりでした。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>年分</th>
<th>適正管理料率</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>平成27年</td>
<td>6.32％</td>
</tr>
<tr>
<td>平成28年</td>
<td>6.37％</td>
</tr>
<tr>
<td>平成29年</td>
<td>6.33％</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>高裁は、これらの割合について、一般的な管理委託料とされた5％から10％の範囲内であり、納税者が実際に第三者へ支払っていた管理料率3.5％から5％と比べても、納税者に有利な割合であるとして、合理性を認めました。</p>
<h2>実際の賃料と適正賃料には毎年数千万円の差があった</h2>
<p>適正管理料率を用いて計算した、個人が同族会社から受け取るべき適正賃料は、次のとおりです。</p>
<table>
<thead>
<tr>
<th>年分</th>
<th>実際の賃料</th>
<th>適正賃料</th>
<th>差額</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td>平成27年</td>
<td>1億8,000万円</td>
<td>2億5,349万7,634円</td>
<td>7,349万7,634円</td>
</tr>
<tr>
<td>平成28年</td>
<td>1億4,400万円</td>
<td>1億8,814万2,094円</td>
<td>4,414万2,094円</td>
</tr>
<tr>
<td>平成29年</td>
<td>9,600万円</td>
<td>1億2,720万1,255円</td>
<td>3,120万1,255円</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>高裁は、この差額を個人の不動産所得の総収入金額へ加算して所得税を計算することを認めました。</p>
<p>つまり、実際には個人が受け取っていなかった金額についても、適正な取引であれば個人が受け取るべき賃料だったとして課税されたことになります。</p>
<h2>サブリース方式そのものが否定されたわけではない</h2>
<p>この判決は、同族会社を使ったサブリース方式そのものを否定したものではありません。</p>
<p>個人所有の物件を同族会社へ賃貸し、会社が入居者へ転貸すること自体は、直ちに違法または税務上無効となるものではありません。</p>
<p>問題になるのは、次のような場合です。</p>
<ul>
<li>同族会社が入居者との転貸借契約の当事者になっていない</li>
<li>個人が別の管理会社と直接契約している</li>
<li>同族会社が実際の管理業務を行っていない</li>
<li>空室リスクや訴訟リスクを会社が負っていない</li>
<li>会社の業務が家賃の受領や送金にとどまる</li>
<li>借上賃料が物件の収益力ではなく、所得移転額から逆算されている</li>
<li>第三者間では成立しにくいほど会社側に利益が残る</li>
</ul>
<p>形式と実態が一致しており、会社が相応の役務とリスクを負担し、その対価が独立当事者間でも合理的な範囲であれば、結論は異なり得ます。</p>
<h2>不動産管理会社を利用するときに確認したいポイント</h2>
<h3>1．誰が入居者との契約当事者なのか</h3>
<p>サブリース方式を採るのであれば、原則として、同族会社が入居者との転貸借契約の当事者になる必要があります。</p>
<p>オーナー個人が別の不動産会社や入居者と直接契約したまま、家賃の振込先だけを同族会社にしても、サブリースの実態があるとは認められにくくなります。</p>
<h3>2．同族会社が実際に何をしているのか</h3>
<p>同族会社が行う業務を具体的に整理します。</p>
<ul>
<li>入居者募集</li>
<li>入居審査</li>
<li>契約締結・更新</li>
<li>家賃回収</li>
<li>滞納対応</li>
<li>クレーム対応</li>
<li>修繕手配</li>
<li>退去立会い</li>
<li>原状回復</li>
<li>法的トラブルへの対応</li>
</ul>
<p>会社がこれらの業務を行っているのであれば、契約書だけでなく、メール、チャット、業務日報、請求書、修繕記録などの証拠も残す必要があります。</p>
<h3>3．空室リスクを誰が負担しているのか</h3>
<p>サブリース会社の重要な役割の一つは、空室があってもオーナーへ一定の借上賃料を支払うことです。</p>
<p>空室が出るたびに借上賃料を自由に調整したり、毎年、実績を見て賃料を設定し直したりしている場合には、本当に空室リスクを負っているのか疑問を持たれる可能性があります。</p>
<h3>4．借上賃料を物件ごとに算定しているか</h3>
<p>借上賃料は、単に「個人にこれだけ残し、残りを会社へ移す」という決め方にしてはいけません。</p>
<p>少なくとも、次のような資料を基に算定根拠を残す必要があります。</p>
<ul>
<li>周辺の家賃相場</li>
<li>過去の稼働率</li>
<li>空室期間</li>
<li>建物の築年数・構造</li>
<li>修繕費の負担関係</li>
<li>契約期間</li>
<li>保証内容</li>
<li>第三者サブリース会社の見積り</li>
</ul>
<h3>5．第三者との契約関係に矛盾がないか</h3>
<p>同族会社とのサブリース契約と、外部の管理会社との契約が重複していないかを確認します。</p>
<p>重複している場合には、誰がどの業務を担当し、誰が契約上の責任を負うのかを明確にしなければなりません。</p>
<h3>6．管理委託方式の方が実態に合っていないか</h3>
<p>会社が空室リスクや転貸人としての責任を負わず、主として管理業務だけを行うのであれば、無理にサブリース方式を採る必要はありません。</p>
<p>実態が管理業務であれば、管理委託契約を締結し、合理的な管理料を支払う方が、契約と実態が一致します。</p>
<h2>まとめ：同族会社への所得移転は、契約名ではなく実態で判断されます</h2>
<p>個人所有の賃貸不動産を同族会社へ一括賃貸し、同族会社が入居者へ転貸するサブリース方式は、それ自体が否定されるものではありません。</p>
<p>しかし、今回の判決では、次の事情が重視されました。</p>
<ul>
<li>同族会社との契約とは別に、個人が第三者と多数の重複契約を締結していた</li>
<li>同族会社と入居者との転貸借契約を示す十分な証拠がなかった</li>
<li>同族会社は実質的に家賃の受取窓口にすぎなかった</li>
<li>空室リスクや管理責任を第三者または個人が負っていた</li>
<li>家賃収入の約4割が同族会社側に残っていた</li>
<li>借上賃料が物件の収益力ではなく、個人と会社の資金需要から決められていた</li>
<li>所得移転以外の合理的な事業目的が認められなかった</li>
</ul>
<p>その結果、高裁は、一括サブリース契約が実態とかい離した不自然な形式であり、経済的合理性を欠くと判断しました。</p>
<p>同族会社を利用した不動産管理では、契約書を作るだけでは足りません。</p>
<p><strong>会社が実際に何を行い、どのリスクを負い、その対価としていくらを受け取るのが合理的なのか</strong>を説明できる状態にしておく必要があります。</p>
<p>不動産管理会社へ支払う金額が大きい場合や、サブリース方式によって個人から法人へ多額の所得が移る場合には、契約締結前に、契約関係、業務実態、借上賃料の算定根拠を確認することが重要です。</p>
<h2>今回参照した裁判例</h2>
<p><strong>大阪高等裁判所令和6年（行コ）第〇〇号<br />
所得税更正処分取消等請求控訴事件</strong></p>
<ul>
<li>判決日：令和7年4月25日</li>
<li>国側当事者：国・東住吉税務署長</li>
<li>結論：国の控訴を認容し、一審の国敗訴部分を取消し</li>
<li>国税庁訴資番号：Z888－2774</li>
<li>第一審判決日：令和6年3月13日</li>
<li>第一審：納税者の請求を一部認容</li>
</ul>
<p>提供資料によれば、納税者側は上告しています。そのため、本記事は大阪高等裁判所判決の内容を解説するものであり、最終審の結論を示すものではありません。</p>
<h2>今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul>
<li><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033#Mp-At_157" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法第157条（同族会社等の行為又は計算の否認等）</a></li>
<li><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096#Mp-At_275" target="_blank" rel="noopener noreferrer">所得税法施行令第275条（同族関係者の範囲）</a></li>
<li><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034#Mp-At_2" target="_blank" rel="noopener noreferrer">法人税法第2条第10号（同族会社の定義）</a></li>
<li><a href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000059" target="_blank" rel="noopener noreferrer">賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律</a></li>
</ul>
<p>※本記事は、上記高裁判決を題材として、同族会社を利用した不動産管理・サブリースに関する一般的な税務上の考え方を解説したものです。実際の取扱いは、契約内容、物件数、借上賃料、管理業務、空室リスク、契約期間、第三者との契約関係その他の事情によって異なります。個別の契約や申告については、実行前に顧問税理士等へご確認ください。</p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11802">不動産管理会社に家賃の4割を残してもよい？サブリース節税が否認された高裁判決</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>車で通院したガソリン代は医療費控除になる？高裁判決から見る通院費の範囲</title>
		<link>https://suehirotax.jp/blog/11796</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[末廣 大地]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 13 Jul 2026 00:00:28 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[裁判例でわかる税務のポイント]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://suehirotax.jp/?p=11796</guid>

					<description><![CDATA[<p>車で通院したガソリン代は医療費控除になる？高 [&#8230;]</p>
<p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11796">車で通院したガソリン代は医療費控除になる？高裁判決から見る通院費の範囲</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h1 class="PDq2pG_selectionAnchorContainer" data-section-id="19orfpx" data-start="429" data-end="466">車で通院したガソリン代は医療費控除になる？高裁判決から見る通院費の範囲</h1>
<blockquote data-start="468" data-end="542">
<p data-start="470" data-end="542">「病院へ通うために車を使いました。電車やバスの運賃が医療費控除になるなら、ガソリン代や高速道路料金、駐車場代も対象になるのではないでしょうか？」</p>
</blockquote>
<p data-start="544" data-end="579">通院のために支払った交通費は、一定の範囲で医療費控除の対象になります。</p>
<p data-start="581" data-end="603">そのため、病院まで自家用車で通った場合にも、</p>
<ul data-start="605" data-end="639">
<li data-section-id="897apv" data-start="605" data-end="612">ガソリン代</li>
<li data-section-id="y4skxm" data-start="613" data-end="623">高速道路利用料金</li>
<li data-section-id="10x5o8x" data-start="624" data-end="639">病院や周辺施設の駐車場料金</li>
</ul>
<p data-start="641" data-end="672">を医療費に含められるのではないかと考える方は少なくありません。</p>
<p data-start="674" data-end="732">実際に、通院のために支払ったガソリン代、高速道路料金、駐車場料金が医療費控除の対象になるかが争われた裁判があります。</p>
<p data-start="734" data-end="790">令和7年8月20日、名古屋高等裁判所金沢支部は、これらの費用はいずれも医療費控除の対象にならないと判断しました。</p>
<h2 data-section-id="m3c462" data-start="792" data-end="830">結論：自家用車のガソリン代・高速道路料金・駐車場料金は対象になりません</h2>
<p data-start="832" data-end="886">今回の高裁判決によれば、病院へ通院するために支出したものであっても、次の費用は医療費控除の対象になりません。</p>
<ul data-start="888" data-end="921">
<li data-section-id="15d1dxv" data-start="888" data-end="900">自家用車のガソリン代</li>
<li data-section-id="y4skxm" data-start="901" data-end="911">高速道路利用料金</li>
<li data-section-id="1tw1l3j" data-start="912" data-end="921">駐車場利用料金</li>
</ul>
<p data-start="923" data-end="951">理由は、これらが「人による運送サービスの対価」ではなく、</p>
<ul data-start="953" data-end="986">
<li data-section-id="1r96rje" data-start="953" data-end="962">商品の購入代金</li>
<li data-section-id="1kgf1mv" data-start="963" data-end="974">道路設備の利用料金</li>
<li data-section-id="az6vl1" data-start="975" data-end="986">駐車施設の利用料金</li>
</ul>
<p data-start="988" data-end="997">に当たるためです。</p>
<p data-start="999" data-end="1063">裁判所は、医療費控除の対象となる通院費について、所得税法施行令が定める「人的役務の提供の対価」に当たる必要があると判断しました。</p>
<p data-start="1065" data-end="1123">自家用車のガソリン代等は、人的役務の提供に対して支払うものではないため、医療費控除の対象にはならないという結論です。</p>
<h2 data-section-id="1iya7kq" data-start="1125" data-end="1140">どのような裁判だったのか</h2>
<p data-start="1142" data-end="1212">納税者は、平成30年分から令和2年分までの所得税について、通院時に支払った次の費用を医療費控除に含めるべきだとして、更正の請求を行いました。</p>
<ul data-start="1214" data-end="1242">
<li data-section-id="897apv" data-start="1214" data-end="1221">ガソリン代</li>
<li data-section-id="y4skxm" data-start="1222" data-end="1232">高速道路利用料金</li>
<li data-section-id="1tw1l3j" data-start="1233" data-end="1242">駐車場利用料金</li>
</ul>
<p data-start="1244" data-end="1303">しかし、税務署は、これらは医療費控除の対象となる医療費には該当しないとして、「更正をすべき理由がない」と通知しました。</p>
<p data-start="1305" data-end="1334">納税者は、この通知処分の取消しを求めて訴訟を提起しました。</p>
<p data-start="1336" data-end="1390">一審は納税者の請求を棄却し、控訴審である名古屋高等裁判所金沢支部も、一審の判断を維持して控訴を棄却しました。</p>
<h2 data-section-id="i38hp7" data-start="1392" data-end="1413">医療費控除の対象になる「医療費」とは</h2>
<p data-start="1415" data-end="1503">医療費控除については、<a class="decorated-link cursor-pointer" target="_new" rel="noopener" data-start="1426" data-end="1494">所得税法第73条</a>に定めがあります。</p>
<p data-start="1505" data-end="1546">同条では、医療費控除の対象となる医療費について、おおむね次のように規定しています。</p>
<blockquote data-start="1548" data-end="1626">
<p data-start="1550" data-end="1626">医師または歯科医師による診療・治療、治療または療養に必要な医薬品の購入その他医療またはこれに関連する人的役務の提供の対価のうち、通常必要と認められるもの</p>
</blockquote>
<p data-start="1628" data-end="1724">そして、その具体的な範囲は、<a class="decorated-link cursor-pointer" target="_new" rel="noopener" data-start="1642" data-end="1714">所得税法施行令第207条</a>に定められています。</p>
<p data-start="1726" data-end="1745">通院費に関係するのは、同条第3号です。</p>
<p data-start="1747" data-end="1769">そこでは、医療費控除の対象となるものとして、</p>
<blockquote data-start="1771" data-end="1804">
<p data-start="1773" data-end="1804">病院、診療所または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価</p>
</blockquote>
<p data-start="1806" data-end="1816">が挙げられています。</p>
<p data-start="1818" data-end="1860">今回の裁判では、この「人的役務の提供の対価」という文言が重要な判断基準になりました。</p>
<h2 data-section-id="1jr0r9d" data-start="1862" data-end="1883">「通院に必要だった」だけでは足りない</h2>
<p data-start="1885" data-end="1911">納税者側の主張には、一定の直感的な説得力があります。</p>
<p data-start="1913" data-end="1944">病院で診療を受けるためには、病院まで移動しなければなりません。</p>
<p data-start="1946" data-end="2011">電車やバスの運賃が医療費控除の対象になるのであれば、自家用車を使った場合のガソリン代等も同様に扱うべきではないか、という考えです。</p>
<p data-start="2013" data-end="2022">しかし、裁判所は、</p>
<blockquote data-start="2024" data-end="2038">
<p data-start="2026" data-end="2038">通院に必要だったかどうか</p>
</blockquote>
<p data-start="2040" data-end="2046">だけでなく、</p>
<blockquote data-start="2048" data-end="2074">
<p data-start="2050" data-end="2074">その支出が、法律と施行令の定める費用に該当するか</p>
</blockquote>
<p data-start="2076" data-end="2085">を問題にしました。</p>
<p data-start="2087" data-end="2129">医療費控除は、病気や治療に関係する支出であれば、すべて対象になる制度ではありません。</p>
<p data-start="2131" data-end="2170">法律と政令で対象となる範囲が定められており、その範囲に含まれる必要があります。</p>
<h2 data-section-id="uyysec" data-start="2172" data-end="2199">なぜ電車・バスは対象で、ガソリン代は対象外なのか</h2>
<p data-start="2201" data-end="2240">両者の違いは、誰かから運送サービスを受け、その対価を支払っているかどうかです。</p>
<h3 data-section-id="3olb1h" data-start="2242" data-end="2251">電車・バス</h3>
<p data-start="2253" data-end="2297">電車やバスを利用した場合、鉄道会社やバス会社から、人を目的地まで運ぶサービスを受けます。</p>
<p data-start="2299" data-end="2336">その運送サービスに対して支払う運賃は、人的役務の提供の対価と考えられます。</p>
<h3 data-section-id="10xkee5" data-start="2338" data-end="2346">タクシー</h3>
<p data-start="2348" data-end="2386">タクシーも、運転手による運送サービスを受け、その対価として料金を支払います。</p>
<p data-start="2388" data-end="2444">電車やバスを利用できない事情がある場合など、通常必要と認められる範囲では、医療費控除の対象となることがあります。</p>
<h3 data-section-id="1npitod" data-start="2446" data-end="2460">自家用車のガソリン代</h3>
<p data-start="2462" data-end="2488">ガソリン代は、ガソリンという商品を購入した代金です。</p>
<p data-start="2490" data-end="2538">運転そのものは本人または家族が行っており、第三者から運送サービスを受けているわけではありません。</p>
<h3 data-section-id="r270hh" data-start="2540" data-end="2550">高速道路料金</h3>
<p data-start="2552" data-end="2580">高速道路料金は、道路設備を利用するために支払う料金です。</p>
<p data-start="2582" data-end="2603">人による運送サービスの対価ではありません。</p>
<h3 data-section-id="1m1mhts" data-start="2605" data-end="2614">駐車場料金</h3>
<p data-start="2616" data-end="2646">駐車場料金も、車を停める施設を利用するために支払う料金です。</p>
<p data-start="2648" data-end="2670">こちらも人的役務の提供の対価とはいえません。</p>
<p data-start="2672" data-end="2706">この違いにより、同じ通院目的の支出でも、税務上の取扱いが分かれます。</p>
<h2 data-section-id="ridyi3" data-start="2708" data-end="2719">高裁が示した判断</h2>
<p data-start="2721" data-end="2802">高裁は、所得税法施行令第207条第3号にいう「人的役務の提供」の対価となり得るものは、その文言上、人によるサービスを受けた際に支払う対価に限られると判断しました。</p>
<p data-start="2804" data-end="2832">そして、ガソリン代、高速道路料金、駐車場料金については、</p>
<ul data-start="2834" data-end="2882">
<li data-section-id="5vatpf" data-start="2834" data-end="2849">ガソリン代は商品購入の対価</li>
<li data-section-id="1lmh5v4" data-start="2850" data-end="2866">高速道路料金は設備利用の対価</li>
<li data-section-id="19pgrl" data-start="2867" data-end="2882">駐車場料金は施設利用の対価</li>
</ul>
<p data-start="2884" data-end="2912">であり、いずれも人的役務の提供の対価ではないとしました。</p>
<p data-start="2914" data-end="2967">さらに、所得税法施行令第207条の他の各号にも該当しないため、医療費控除の対象にはならないと判断しました。</p>
<h2 data-section-id="h5l9tb" data-start="2969" data-end="3003">所得税基本通達に「通院費」と書かれていても対象にはならないのか</h2>
<p data-start="3005" data-end="3114">国税庁の<a class="decorated-link cursor-pointer" target="_new" rel="noopener" data-start="3009" data-end="3084">所得税基本通達73－3</a>では、医療費控除の対象となる通院費の取扱いが示されています。</p>
<p data-start="3116" data-end="3172">納税者側は、この通達が通院費を医療費控除の対象として認めている以上、自家用車の費用も含めるべきだと主張しました。</p>
<p data-start="3174" data-end="3196">しかし、高裁は、この主張を認めませんでした。</p>
<p data-start="3198" data-end="3243">所得税基本通達は、法律や政令を超えて、医療費控除の対象を新たに拡大するものではありません。</p>
<p data-start="3245" data-end="3295">あくまで、所得税法第73条と所得税法施行令第207条を前提として、その取扱いを明らかにするものです。</p>
<p data-start="3297" data-end="3369">したがって、通達に「通院費」と書かれていても、法律と政令上の要件である「人的役務の提供の対価」に当たらない費用まで対象になるわけではありません。</p>
<h2 data-section-id="vjrpv7" data-start="3371" data-end="3397">交通手段によって差が生じるのは不公平ではないか</h2>
<p data-start="3399" data-end="3405">納税者側は、</p>
<blockquote data-start="3407" data-end="3464">
<p data-start="3409" data-end="3464">電車やバスを使った場合は対象になるのに、自家用車を使った場合は対象にならないのは不公平であり、平等原則に反する</p>
</blockquote>
<p data-start="3466" data-end="3475">とも主張しました。</p>
<p data-start="3477" data-end="3496">しかし、高裁は、この主張も退けました。</p>
<p data-start="3498" data-end="3564">裁判所は、通院費は診療費そのもののような本来的な医療費ではなく、どの範囲まで医療費控除に含めるかは、立法政策の問題であるとしました。</p>
<p data-start="3566" data-end="3570">つまり、</p>
<blockquote data-start="3572" data-end="3632">
<p data-start="3574" data-end="3632">どの交通費を医療費控除に含めるかは、法律をどのように設計するかという問題であり、裁判所が対象範囲を広げる問題ではない</p>
</blockquote>
<p data-start="3634" data-end="3642">ということです。</p>
<p data-start="3644" data-end="3794">また、税務署が裁量で電車やバスだけを認め、自家用車を排除しているのではなく、法律と政令の文言に従って区分しているため、<a class="decorated-link cursor-pointer" target="_new" rel="noopener" data-start="3703" data-end="3772">日本国憲法第14条</a>の法の下の平等にも反しないと判断されました。</p>
<h2 data-section-id="1lec667" data-start="3796" data-end="3817">医療費控除の対象になり得る通院交通費</h2>
<p data-start="3819" data-end="3864">一般に、通院のために通常必要と認められる次のような交通費は、医療費控除の対象になり得ます。</p>
<ul data-start="3866" data-end="3932">
<li data-section-id="27lwfu" data-start="3866" data-end="3871">電車代</li>
<li data-section-id="1fuosi" data-start="3872" data-end="3877">バス代</li>
<li data-section-id="eb78ci" data-start="3878" data-end="3905">緊急時や公共交通機関を利用できない場合のタクシー代</li>
<li data-section-id="bsajsl" data-start="3906" data-end="3932">患者本人が一人で通院できない場合の付添人の交通費</li>
</ul>
<p data-start="3934" data-end="3967">ただし、どのような交通費でも自動的に認められるわけではありません。</p>
<p data-start="3969" data-end="3985">医療費控除の対象になるためには、</p>
<ul data-start="3987" data-end="4043">
<li data-section-id="1or4tag" data-start="3987" data-end="4002">通院のために必要だったこと</li>
<li data-section-id="o2i6t8" data-start="4003" data-end="4020">通常必要な範囲の支出であること</li>
<li data-section-id="1fho58x" data-start="4021" data-end="4043">単なる都合や贅沢のための支出ではないこと</li>
</ul>
<p data-start="4045" data-end="4051">が必要です。</p>
<h2 data-section-id="45rcmk" data-start="4053" data-end="4076">タクシー代なら必ず対象になるわけではない</h2>
<p data-start="4078" data-end="4102">タクシーは、人的役務の提供を受ける交通手段です。</p>
<p data-start="4104" data-end="4130">そのため、自家用車のガソリン代とは性質が異なります。</p>
<p data-start="4132" data-end="4176">ただし、タクシー代であれば、どのような場合でも医療費控除の対象になるわけではありません。</p>
<p data-start="4178" data-end="4182">例えば、</p>
<ul data-start="4184" data-end="4239">
<li data-section-id="juk9g8" data-start="4184" data-end="4201">電車やバスで問題なく通院できた</li>
<li data-section-id="16227t0" data-start="4202" data-end="4213">単に荷物が多かった</li>
<li data-section-id="1triv3" data-start="4214" data-end="4223">雨が降っていた</li>
<li data-section-id="154uvwy" data-start="4224" data-end="4239">自家用車を使いたくなかった</li>
</ul>
<p data-start="4241" data-end="4278">といった事情だけでは、「通常必要」な費用とは認められない可能性があります。</p>
<p data-start="4280" data-end="4284">一方で、</p>
<ul data-start="4286" data-end="4370">
<li data-section-id="g62h19" data-start="4286" data-end="4307">病状が重く、公共交通機関を利用できない</li>
<li data-section-id="15p9xjk" data-start="4308" data-end="4327">深夜や緊急時で、他の交通手段がない</li>
<li data-section-id="w4xolk" data-start="4328" data-end="4348">足が不自由で公共交通機関の利用が困難</li>
<li data-section-id="1og1l0z" data-start="4349" data-end="4370">出産などで緊急に病院へ向かう必要がある</li>
</ul>
<p data-start="4372" data-end="4406">といった場合には、通常必要な通院費として認められる可能性があります。</p>
<h2 data-section-id="2b82ci" data-start="4408" data-end="4429">家族が車で送迎した場合はどうなるのか</h2>
<p data-start="4431" data-end="4495">家族が患者を自家用車で病院へ送迎した場合にも、ガソリン代、高速道路料金、駐車場料金は、原則として医療費控除の対象にはなりません。</p>
<p data-start="4497" data-end="4552">家族が運転していても、家族から有償の運送サービスを受けたわけではなく、ガソリン代等の性質は変わらないためです。</p>
<p data-start="4554" data-end="4610">ただし、患者本人が一人で通院できず、家族が電車やバスなどで付き添った場合には、付添人の交通費も対象になり得ます。</p>
<p data-start="4612" data-end="4622">ここでも重要なのは、</p>
<blockquote data-start="4624" data-end="4633">
<p data-start="4626" data-end="4633">誰が移動したか</p>
</blockquote>
<p data-start="4635" data-end="4642">だけではなく、</p>
<blockquote data-start="4644" data-end="4660">
<p data-start="4646" data-end="4660">何に対して支払った費用なのか</p>
</blockquote>
<p data-start="4662" data-end="4669">という点です。</p>
<h2 data-section-id="uhq0i7" data-start="4671" data-end="4701">高速道路を使わなければ通院できなかった場合でも対象外か</h2>
<p data-start="4703" data-end="4776">病院が遠方にあり、高速道路を使わなければ現実的に通院できなかったとしても、今回の判決の考え方によれば、高速道路料金は医療費控除の対象になりません。</p>
<p data-start="4778" data-end="4830">必要性が高かったとしても、高速道路料金は道路施設の利用対価であり、人的役務の提供の対価ではないためです。</p>
<p data-start="4832" data-end="4905">同様に、病院に専用駐車場がなく、有料駐車場を利用せざるを得なかった場合でも、駐車場料金は施設利用の対価であるため、対象にはならないと考えられます。</p>
<p data-start="4907" data-end="4956">「治療のために必要だった」という事実と、「医療費控除の法定範囲に入る」ということは、別の問題です。</p>
<h2 data-section-id="2iu2mj" data-start="4958" data-end="4978">医療費控除で誤りやすい通院費の整理</h2>
<div class="TyagGW_tableContainer">
<div class="group TyagGW_tableWrapper flex flex-col-reverse w-fit" tabindex="-1">
<table class="w-fit min-w-(--thread-content-width)" data-start="4980" data-end="5233">
<thead data-start="4980" data-end="4996">
<tr data-start="4980" data-end="4996">
<th class="last:pe-10" data-start="4980" data-end="4987" data-col-size="sm">支出内容</th>
<th class="last:pe-10" data-start="4987" data-end="4996" data-col-size="sm">医療費控除</th>
</tr>
</thead>
<tbody data-start="5007" data-end="5233">
<tr data-start="5007" data-end="5024">
<td data-start="5007" data-end="5013" data-col-size="sm">電車代</td>
<td data-start="5013" data-end="5024" data-col-size="sm">原則として対象</td>
</tr>
<tr data-start="5025" data-end="5042">
<td data-start="5025" data-end="5031" data-col-size="sm">バス代</td>
<td data-start="5031" data-end="5042" data-col-size="sm">原則として対象</td>
</tr>
<tr data-start="5043" data-end="5072">
<td data-start="5043" data-end="5061" data-col-size="sm">病状等から通常必要なタクシー代</td>
<td data-start="5061" data-end="5072" data-col-size="sm">対象になり得る</td>
</tr>
<tr data-start="5073" data-end="5109">
<td data-start="5073" data-end="5098" data-col-size="sm">患者が一人で通院できない場合の付添人の交通費</td>
<td data-start="5098" data-end="5109" data-col-size="sm">対象になり得る</td>
</tr>
<tr data-start="5110" data-end="5130">
<td data-start="5110" data-end="5123" data-col-size="sm">自家用車のガソリン代</td>
<td data-start="5123" data-end="5130" data-col-size="sm">対象外</td>
</tr>
<tr data-start="5131" data-end="5147">
<td data-start="5131" data-end="5140" data-col-size="sm">高速道路料金</td>
<td data-start="5140" data-end="5147" data-col-size="sm">対象外</td>
</tr>
<tr data-start="5148" data-end="5163">
<td data-start="5148" data-end="5156" data-col-size="sm">駐車場料金</td>
<td data-start="5156" data-end="5163" data-col-size="sm">対象外</td>
</tr>
<tr data-start="5164" data-end="5190">
<td data-start="5164" data-end="5183" data-col-size="sm">通院のための自家用車の減価償却費</td>
<td data-start="5183" data-end="5190" data-col-size="sm">対象外</td>
</tr>
<tr data-start="5191" data-end="5211">
<td data-start="5191" data-end="5204" data-col-size="sm">通院時の自動車保険料</td>
<td data-start="5204" data-end="5211" data-col-size="sm">対象外</td>
</tr>
<tr data-start="5212" data-end="5233">
<td data-start="5212" data-end="5226" data-col-size="sm">通院時の車検代・修理代</td>
<td data-start="5226" data-end="5233" data-col-size="sm">対象外</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
</div>
<h2 data-section-id="upn3uq" data-start="5235" data-end="5255">実務上、どのように記録すればよいか</h2>
<p data-start="5257" data-end="5286">電車やバスの通院費は、領収書が発行されないこともあります。</p>
<p data-start="5288" data-end="5314">その場合には、次の事項を記録しておくとよいでしょう。</p>
<ul data-start="5316" data-end="5372">
<li data-section-id="27fm2d" data-start="5316" data-end="5321">通院日</li>
<li data-section-id="1mm8ite" data-start="5322" data-end="5329">通院した人</li>
<li data-section-id="11g4okh" data-start="5330" data-end="5337">医療機関名</li>
<li data-section-id="9m0af6" data-start="5338" data-end="5348">利用した交通機関</li>
<li data-section-id="1azytbk" data-start="5349" data-end="5358">出発地と到着地</li>
<li data-section-id="1ozgvzd" data-start="5359" data-end="5365">往復運賃</li>
<li data-section-id="1sai0q" data-start="5366" data-end="5372">通院目的</li>
</ul>
<p data-start="5374" data-end="5422">医療費控除の明細書に記載できるよう、通院記録を医療費の領収書と一緒に保管しておくことが重要です。</p>
<p data-start="5424" data-end="5487">タクシーを利用した場合には、領収書を保存し、公共交通機関を利用できなかった事情も記録しておくと、必要性を説明しやすくなります。</p>
<h2 data-section-id="a8btya" data-start="5489" data-end="5509">この判決から分かる実務上のポイント</h2>
<h3 data-section-id="qt3c2a" data-start="5511" data-end="5543">1．治療に必要でも、すべてが医療費控除になるわけではない</h3>
<p data-start="5545" data-end="5601">医療費控除の対象になるかは、治療との関係だけでなく、所得税法と所得税法施行令が定める範囲に入るかで判断されます。</p>
<h3 data-section-id="16vh3u8" data-start="5603" data-end="5627">2．通院費は「何に対する支払いか」が重要</h3>
<p data-start="5629" data-end="5652">電車、バス、タクシーは運送サービスの対価です。</p>
<p data-start="5654" data-end="5687">一方、ガソリン、高速道路、駐車場は、商品または施設利用の対価です。</p>
<p data-start="5689" data-end="5714">この性質の違いが、取扱いの違いにつながっています。</p>
<h3 data-section-id="1c66m5a" data-start="5716" data-end="5745">3．通達だけを読んで対象範囲を広げることはできない</h3>
<p data-start="5747" data-end="5773">基本通達は、法律や政令の解釈・取扱いを示すものです。</p>
<p data-start="5775" data-end="5808">法律や政令にない控除対象を、通達だけで新たに作ることはできません。</p>
<h3 data-section-id="o3s3sy" data-start="5810" data-end="5832">4．必要性と法的な対象範囲は別の問題</h3>
<p data-start="5834" data-end="5902">高速道路や駐車場を利用しなければ通院できなかったとしても、その支出が政令の定める医療費に該当しなければ、医療費控除の対象にはなりません。</p>
<h2 data-section-id="4273wg" data-start="5904" data-end="5933">まとめ：車での通院費は、必要でも医療費控除にならない</h2>
<p data-start="5935" data-end="5996">病院へ通院するために自家用車を使った場合、ガソリン代、高速道路利用料金、駐車場利用料金は、医療費控除の対象にはなりません。</p>
<p data-start="5998" data-end="6016">今回の高裁判決では、これらの費用は、</p>
<ul data-start="6018" data-end="6047">
<li data-section-id="1nnse6f" data-start="6018" data-end="6027">商品購入の対価</li>
<li data-section-id="1tbicss" data-start="6028" data-end="6037">設備利用の対価</li>
<li data-section-id="10p3o88" data-start="6038" data-end="6047">施設利用の対価</li>
</ul>
<p data-start="6049" data-end="6092">であり、所得税法施行令が定める「人的役務の提供の対価」には当たらないと判断されました。</p>
<p data-start="6094" data-end="6161">一方で、電車、バス、一定の場合のタクシー代などは、人による運送サービスの対価であるため、通常必要な範囲で医療費控除の対象になり得ます。</p>
<p data-start="6163" data-end="6189">この判決から分かる重要なポイントは、次のとおりです。</p>
<ul data-start="6191" data-end="6346">
<li data-section-id="15nvz98" data-start="6191" data-end="6221">通院目的の支出でも、すべてが医療費控除になるわけではない</li>
<li data-section-id="1w849xc" data-start="6222" data-end="6251">自家用車のガソリン代、高速道路料金、駐車場料金は対象外</li>
<li data-section-id="18xs7k2" data-start="6252" data-end="6282">電車やバスの運賃は、通常必要な通院費として対象になり得る</li>
<li data-section-id="xus1vp" data-start="6283" data-end="6314">タクシー代は、病状や緊急性などから通常必要な場合に限られる</li>
<li data-section-id="1wnmnqy" data-start="6315" data-end="6346">「必要だったこと」と「法律上控除対象であること」は別である</li>
</ul>
<p data-start="6348" data-end="6398">医療費控除を申告する際には、通院の目的だけで判断せず、支払った費用の性質まで確認する必要があります。</p>
<h2 data-section-id="1g0bi8i" data-start="6400" data-end="6412">今回参照した裁判例</h2>
<p data-start="6414" data-end="6470"><strong data-start="6414" data-end="6470">名古屋高等裁判所金沢支部令和7年（行コ）第○○号<br data-start="6440" data-end="6443" /><br />
所得税の更正の請求に対する通知処分取消請求控訴事件</strong></p>
<ul data-start="6472" data-end="6561">
<li data-section-id="1aob2id" data-start="6472" data-end="6487">判決日：令和7年8月20日</li>
<li data-section-id="35emev" data-start="6488" data-end="6497">結論：控訴棄却</li>
<li data-section-id="mr0zh5" data-start="6498" data-end="6515">国側当事者：国（小松税務署長）</li>
<li data-section-id="19z8khx" data-start="6516" data-end="6535">国税庁訴資番号：Z888－2868</li>
<li data-section-id="138x360" data-start="6536" data-end="6553">原審判決日：令和7年2月21日</li>
<li data-section-id="1q2l8oq" data-start="6554" data-end="6561">上告：あり</li>
</ul>
<p data-start="6563" data-end="6644">本件では、平成30年分から令和2年分までの所得税について、通院のために支出したガソリン代、高速道路料金および駐車場料金が、医療費控除の対象になるかが争われました。</p>
<p data-start="6646" data-end="6730">名古屋高裁金沢支部は、これらの費用はいずれも人的役務の提供の対価ではなく、所得税法施行令第207条各号にも該当しないとして、医療費控除の対象にはならないと判断しました。</p>
<p data-start="6732" data-end="6800">なお、提供資料上、本判決については上告がされたとされています。そのため、本記事では令和7年8月20日時点の高裁判断として紹介しています。</p>
<h2 data-section-id="hsg67d" data-start="6802" data-end="6818">今回参照した主な法令・通達</h2>
<ul data-start="6820" data-end="7148">
<li data-section-id="tafmbh" data-start="6820" data-end="6897"><a class="decorated-link cursor-pointer" href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033" target="_new" rel="noopener" data-start="6822" data-end="6897">所得税法第73条（医療費控除）</a></li>
<li data-section-id="9ttpnn" data-start="6898" data-end="6980"><a class="decorated-link cursor-pointer" href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096" target="_new" rel="noopener" data-start="6900" data-end="6980">所得税法施行令第207条（医療費の範囲）</a></li>
<li data-section-id="b9g1g9" data-start="6981" data-end="7068"><a href="https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/16/01.htm#a-02">所得税基本通達73－3を含む所得税基本通達</a></li>
<li data-section-id="1b8o1le" data-start="7069" data-end="7148"><a class="decorated-link cursor-pointer" href="https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION" target="_new" rel="noopener" data-start="7071" data-end="7148">日本国憲法第14条（法の下の平等）</a></li>
</ul>
<p data-start="7150" data-end="7291" data-is-last-node="" data-is-only-node="">※本記事は、上記高裁判決を題材として、医療費控除における通院費の一般的な取扱いを解説したものです。実際の取扱いは、利用した交通手段、患者の病状、緊急性、公共交通機関の利用可能性、付添いの必要性その他の事情によって異なります。個別の申告については、<span style="font-size: 16px;">税理士または所轄税務署へご確認ください。</span></p><p>The post <a href="https://suehirotax.jp/blog/11796">車で通院したガソリン代は医療費控除になる？高裁判決から見る通院費の範囲</a> first appeared on <a href="https://suehirotax.jp">町田・相模原 タクスリンク税理士事務所</a>.</p>]]></content:encoded>
					
		
		
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