社員旅行の費用は、一定の条件を満たせば福利厚生費として処理できることがあります。
しかし、従業員向けの社員旅行と、社長の妻や子どもの旅行費用は同じようには扱えません。
社長
従業員みんなで沖縄へ社員旅行に行きました。
ついでなので、私の妻と子どもも一緒に連れていき、旅費はまとめて会社の経費にしました。税務調査で問題になりますか?
税理士
社員旅行そのものと、社長のご家族分は分けて判断します。
従業員全体を対象とした旅行で、日程、参加割合、行程、会社負担額などが社会通念上相当であれば、従業員分と、従業員と同じ条件で参加した社長本人分は、福利厚生費として認められる可能性があります。
一方、会社の従業員ではない妻や子どもの旅費まで会社が負担すると、社長の個人的費用を会社が負担したものと判断される可能性が高くなります。
社長
社員旅行なら、家族を連れて行っても福利厚生費にはならないのですか?
税理士
家族が同行したというだけで、当然に福利厚生費になるわけではありません。
福利厚生費として認められるためには、基本的に従業員の慰安を目的とし、従業員全体に公平な機会が与えられ、旅行内容や会社負担額が社会通念上相当であることが必要です。
社長のご家族だけを特別に会社負担で同行させている場合は、従業員の福利厚生というより、社長個人の家族旅行費用を会社が負担したものと見られやすくなります。
社長
社員旅行には、何泊まで、参加率何%以上といった基準がありますか?
税理士
国税庁は、従業員レクリエーション旅行について、原則的な目安として次の2点を示しています。
1つ目は、旅行期間が4泊5日以内であることです。海外旅行の場合は、外国での滞在日数によって判断します。
2つ目は、旅行に参加した人数が全従業員の50%以上であることです。工場や支店ごとに旅行する場合は、その職場ごとに判定します。
ただし、この2つを満たせば必ず福利厚生費になるという安全基準ではありません。旅行の目的、行程、自由行動の割合、1人当たりの会社負担額などを含めて総合的に判断されます。
社長
では、私本人の旅行費用も役員賞与になるのでしょうか?
税理士
社長本人分まで直ちに役員賞与になるわけではありません。
社長が従業員と同じ旅行に、同じ行程、同じ負担基準で参加しており、社員旅行全体が社会通念上相当であれば、社長本人分も社員旅行の費用として認められる余地があります。
問題になりやすいのは、会社の従業員ではない妻や子どもの費用を会社が負担した部分です。
社長
妻は会社の仕事を少し手伝っています。それなら妻の分も会社負担で大丈夫ですか?
税理士
名目上の役員や従業員であるだけでは足りません。
実際に継続して会社業務に従事しているか、給与の支給実態があるか、ほかの従業員と同じ参加基準で社員旅行に参加しているかなどを確認します。
実際の勤務実態がなく、今回の旅行のためだけに従業員扱いすることは困難です。子どもについても、通常は会社業務との関係を説明できないため、会社負担は認められにくいと考えられます。
社長
家族分が福利厚生費にならない場合、会社ではどのように処理されますか?
税理士
会社が社長の家族分を負担した場合、社長が本来負担すべき個人的費用を会社が代わりに支払ったものとして、社長に対する経済的利益、つまり役員給与と認定される可能性があります。
社員旅行は通常、単発の支出です。そのため、毎月おおむね一定額を支給する定期同額給与には該当しにくく、法人税上は役員賞与として損金不算入となる可能性があります。
社長
経費にならないだけで終わりますか?
税理士
それだけでは終わらない可能性があります。
家族分の会社負担が社長への役員給与と認定されると、社長個人では給与所得として課税対象になります。
会社側には、その経済的利益に対する源泉所得税を徴収し、納付する義務が生じます。税務調査では、法人税の損金不算入だけでなく、源泉所得税の徴収漏れも同時に指摘される可能性があります。
社長
旅行会社からは一括請求で、家族分の金額が分かれていません。どうすればよいですか?
税理士
旅行会社の請求明細、航空券、宿泊者名簿、部屋割り、食事代、アクティビティ代などから、妻と子どもに対応する費用を個別に算定します。
少なくとも、家族が同行したことで追加された航空券代、宿泊追加料金、食事代、施設利用料などは区分する必要があります。
共通費用についても、参加人数や利用実態に応じて合理的に按分し、計算根拠を残してください。
社長
今から家族分を会社へ返金すれば大丈夫ですか?
税理士
決算・申告前であれば、家族分を福利厚生費から役員貸付金や未収入金などへ振り替え、社長から速やかに全額返金を受ける方法が考えられます。
返金日、返金額、対象となる旅行費用の明細を残し、会社口座への入金記録も保存してください。
ただし、税務調査が始まってから返金したからといって、過去の役員給与認定が当然に解消されるわけではありません。すでに申告済みの場合は、法人税と源泉所得税の修正要否を確認する必要があります。
社長
税務調査に備えて、何を保存しておけばよいですか?
税理士
社員旅行規程、社内案内、参加者名簿、稟議書、旅行日程表、旅行会社の請求明細、航空券、宿泊者名簿、会社負担額の計算資料を保存してください。
また、全従業員数、参加人数、参加割合、1人当たりの会社負担額、自由行動の割合、家族同伴者の費用負担ルールも説明できるようにしておきます。
社長の家族分を返金した場合は、返金計算書と入金記録も必要です。
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、旅行内容、参加割合、会社負担額、家族の勤務実態、返金状況などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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