研究開発税制とは、青色申告法人などが税法上の「試験研究費」を支出した場合に、通常の損金算入とは別に、一定額を法人税額から直接控除できる制度です。
個人事業者についても、青色申告者であれば、所得税の税額控除制度があります。
ただし、ここでいう「試験研究費」は、会計上の研究開発費や、会社が社内で何となく「開発費」と呼んでいるものと完全に一致するわけではありません。
実務上は、次の2段階で確認することが重要です。
まず、その活動自体が税法上の「試験研究」に該当するか。
次に、その活動に直接対応する費用か。
つまり、「開発に使った費用だから全部対象」という考え方は危険です。
経営者
研究開発税制とは、どのような制度ですか?
開発費を使えば、税金が安くなるのでしょうか?
税理士
研究開発税制は、税法上の「試験研究費」を支出した場合に、一定額を法人税額から直接控除できる制度です。
通常、経費は利益から差し引かれます。
一方、研究開発税制は、一定の要件を満たす試験研究費について、法人税額そのものから一定額を控除できる制度です。
そのため、対象になる場合は税務上の効果が大きい制度です。
ただし、開発費と名前が付いていれば何でも対象になるわけではありません。
経営者
「試験研究費」とは、どこまで含まれるのですか?
税理士
大きく分けると、まず活動そのものが「試験研究」に当たる必要があります。
税務上の試験研究は、製品の製造や技術の改良、考案、発明について、新たな知見を得る、または既存の知見を新たに応用するための創造的・体系的な自然科学上の活動を基本とします。
そのうえで、その試験研究に直接対応する費用である必要があります。
中心になるのは、試作品の原材料費、実験用消耗品、一定の人件費、研究用設備の減価償却費、外部への委託研究費などです。
経営者
新製品を作る場合だけが対象ですか?
既存製品の改良は対象外でしょうか?
税理士
新製品だけが対象ではありません。
既存製品や既存技術について、性能向上、品質向上、新しい応用方法の検討などを行う場合も、試験研究に該当する可能性があります。
ただし、単なる見た目の変更、販売上のデザイン変更、既に確立された方法による通常の改良、量産工程の調整などは、対象になりにくいです。
重要なのは、技術的な課題があり、その課題を解決するために、創造的・体系的に試験や分析を行っているかです。
経営者
試作品の材料費や外注費は対象になりますか?
税理士
試作品用の材料費や実験用消耗品は、試験研究との対応関係が明確であれば対象になり得ます。
外部企業や大学などへ研究を委託した場合の委託研究費も、契約内容や実際の研究内容が試験研究に該当すれば対象になり得ます。
一方で、単なる製造外注、量産委託、通常の保守業務、顧客仕様に合わせた個別対応などは、研究委託費とはいえない場合があります。
契約書、発注書、研究テーマ、成果物、報告書などから、何を研究していたのかを説明できるようにしておく必要があります。
経営者
人件費も対象になりますか?
開発担当者の給与なら全部入れてよいのでしょうか?
税理士
人件費は、研究開発税制で特に注意が必要な項目です。
対象になるのは、専門的知識をもって、その試験研究の業務に専ら従事する者の人件費です。
単に研究開発部門に所属している、開発チームに名前が入っている、というだけでは足りません。
実際にどの研究テーマに、いつ、どの程度従事したのかを説明できる必要があります。
研究所勤務であっても、研究そのものに直接従事していない事務職員、守衛、運転手などの人件費は対象外とされています。
経営者
兼務している技術者の人件費は、全部だめですか?
税理士
兼務者だから即座に全額対象外、というわけではありません。
ただし、かなり慎重に見る必要があります。
国税庁は、研究プロジェクトの特定フェーズについて、専門的知識をもって専属的に従事し、相当期間従事しており、その期間と人件費を明確に区分できる場合などには、対象になり得る考え方を示しています。
そのため、兼務者の人件費を入れる場合は、タイムシート、業務日報、研究テーマ別の工数表などが非常に重要です。
「だいたい半分くらい研究していました」という説明では、税務調査で弱くなります。
経営者
通常の品質検査や、製品テストは対象になりますか?
税理士
通常の品質管理や完成品検査は、原則として試験研究には含まれません。
たとえば、製品が規格どおりにできているかを確認する日常的な検査、出荷前検査、量産品の品質チェックなどは、通常の生産・管理業務と考えられます。
一方で、新しい材料や新しい製法を使うために、技術的な課題を検証しているような場合は、試験研究に該当する可能性があります。
単なる検査なのか、技術的課題を解決するための試験なのかを分ける必要があります。
経営者
マーケティングやアンケート調査はどうでしょうか?
税理士
販売目的の市場調査、アンケート、広告宣伝、販売方法の改善などは、原則として試験研究には含まれません。
研究開発税制の中心は、自然科学上の試験研究です。
売れるかどうかを調べるマーケティング活動と、技術的な課題を解決する試験研究は別です。
もちろん、マーケティング費用が法人税上の経費にならないという意味ではありません。
通常の広告宣伝費や調査費として損金になることはありますが、研究開発税制の税額控除の対象にはならない、という整理です。
経営者
ソフトウェア開発やAI開発も、研究開発税制の対象になりますか?
税理士
対象になり得ますが、線引きが重要です。
新しいアルゴリズムの開発、性能向上、新たな技術的課題の解決など、創造的・体系的な試験研究といえる部分は対象になる可能性があります。
一方で、通常のコーディング、顧客仕様への対応、画面修正、軽微な機能追加、販売後のバグ修正、保守、システム運用、マニュアル作成、ユーザーサポートなどは、原則として対象になりにくいです。
ソフトウェアやAIの開発では、「どこが技術的に未解決だったのか」「何を試したのか」「どの工数がその試験研究に対応するのか」を、研究テーマ別に記録しておくことが重要です。
経営者
新しいサービスの開発でも対象になりますか?
税理士
新たな役務、つまり新しいサービスの開発についても、一定の場合には研究開発税制の対象になり得ます。
ただし、通常の製品開発とは別に、情報の収集・分析、役務の設計、検証などの要件が問題になります。
単に新しいサービスを始めた、Webサイトを作った、業務フローを変えた、というだけでは足りません。
データ分析や技術的な検証を通じて、新しい役務の開発を行っているかを確認する必要があります。
経営者
研究用の機械や設備は、購入した年に全額対象になりますか?
税理士
研究用の機械、装置などについては、要件を満たせば、その減価償却費が試験研究費に含まれます。
つまり、機械を買った金額そのものをすぐ全額入れるのではなく、原則として、その事業年度の減価償却費として計上される金額が対象になります。
また、その機械を試験研究にも通常業務にも使っている場合は、試験研究に対応する部分を合理的に区分する必要があります。
共通経費を配賦する場合は、毎年都合よく基準を変えるのではなく、継続して同じ配賦方法を用いることが重要です。
経営者
補助金をもらって研究している場合はどうなりますか?
税理士
国や自治体などから補助金を受けて研究費を賄っている場合は、注意が必要です。
研究費のうち、他の者から支払を受ける金額がある場合には、試験研究費から控除する取扱いがあります。
つまり、会社が実質的に負担していない部分まで、研究開発税制の対象にすることはできません。
補助金、委託研究費、共同研究の負担金などがある場合は、誰が研究費を負担しているのかを確認する必要があります。
経営者
国外の会社に研究を委託した場合も対象になりますか?
税理士
国外委託試験研究については、2026年度税制改正により注意が必要です。
2026年4月1日以後開始事業年度の国外委託試験研究については、原則として試験研究費の全額ではなく70%相当額が控除対象とされています。
その後、2027年4月以後は60%、2028年4月以後は原則50%へ段階的に縮小されます。
一定の医薬品等の臨床試験には例外がありますが、通常の国外委託研究については、試験研究費そのものに該当するかという問題と、税額控除の計算に使える控除対象試験研究費がいくらかという問題を分けて考える必要があります。
経営者
税務調査に備えて、どのような資料を残しておけばよいですか?
税理士
少なくとも、研究テーマごとに資料を整理しておくことをおすすめします。
具体的には、研究テーマ、技術的課題、研究計画書、実験記録、試作記録、検証結果、担当者、工数表、原価明細、外注契約書、請求書などです。
大事なのは、「何が技術的に未解決だったのか」「何を試したのか」「どの費用がその試験に対応するのか」を説明できることです。
会計科目が研究開発費だから対象、という判断では危険です。
研究テーマと費用の対応関係を説明できる状態にしておくことが、研究開発税制では非常に重要です。
町田・相模原で研究開発税制や開発費の整理に不安がある方へ
研究開発税制は、税額控除の効果が大きい一方で、対象範囲の判断が難しい制度です。
特に、ソフトウェア開発、AI開発、製品改良、試作品開発、兼務者の人件費、外注費、補助金を受けている研究では、対象になる費用と対象外の費用を分けて管理する必要があります。
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要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月現在の法令・通達を前提に、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際に研究開発税制の対象になるかどうかは、開発内容、研究計画、担当者の従事状況、外注契約、補助金の有無、国内外の研究委託の状況などにより異なります。税額控除額が大きい場合や、兼務者人件費・ソフトウェア開発・AI開発・国外委託研究が含まれる場合は、個別確認が必要です。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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