リフォーム業は、住宅ストックの老朽化、省エネ改修、断熱改修、バリアフリー改修などを背景に、需要そのものは比較的堅調な業界です。
一方で、資材価格、人件費、外注費の上昇、人手不足により、売上は増えても粗利や資金繰りが悪化しやすい業界でもあります。
税務上も、リフォーム業には業種特有の注意点があります。
特に重要なのは、工事売上をいつ計上するか、未完成工事の原価をどう処理するか、一人親方への支払いが外注費といえるか、簡易課税の事業区分、インボイス未登録の協力業者への支払い、工事請負契約書の印紙税です。
経営者
リフォーム業を営んでいます。
この業界について、最近の業況や、固有の税務上の論点、税務調査でよく聞かれることを詳しく教えてください。
税理士
リフォーム業は、仕事そのものは比較的ある一方で、利益が残りにくくなっている業界です。
住宅の老朽化、省エネ改修、断熱改修などの需要はありますが、資材費、人件費、外注費が上がっています。
そのため、売上高だけを見ると伸びていても、実際には粗利率が下がっていたり、先行支出が増えて資金繰りが苦しくなっていたりする会社があります。
税務上は、工事売上の計上時期、未成工事支出金、一人親方への外注費、消費税の簡易課税、インボイス、印紙税が特に重要です。
リフォーム業の最近の業況
リフォーム市場は、住宅の老朽化や省エネ改修等を背景に、一定の需要があります。
矢野経済研究所の2026年7月公表資料では、2025年の住宅リフォーム市場規模は前年比2.5%増の7兆5,119億円と推計され、2026年は約7.7兆円と予測されています。
ただし、この伸びの一部は、工事件数の増加だけではなく、資材費・人件費の上昇による工事単価の上昇によるものです。
つまり、リフォーム業では、
「受注はある」
「売上も増えている」
「しかし利益と資金が残りにくい」
という状況が起こりやすくなっています。
経営者
市場が伸びているなら、リフォーム業は安心ということでしょうか?
税理士
そこは注意が必要です。
市場規模が伸びていても、会社ごとの利益が増えているとは限りません。
資材価格、外注費、人件費が上がると、売上高は増えても粗利率が下がります。
特に、見積り後に資材価格が上がった場合や、追加工事の請求が曖昧な場合は、工事が終わってみたら利益がほとんど残らないことがあります。
リフォーム業では、売上高よりも、案件別粗利率、外注費率、材料費率、追加工事を含めた最終粗利を見ることが重要です。
リフォーム業で最も重要な税務論点
リフォーム業で特に注意すべき税務論点は、次の5つです。
1つ目は、工事売上をいつ計上するかです。
2つ目は、期末時点で未完成の工事に対応する材料費や外注費を、当期の費用にしていないかです。
3つ目は、一人親方や職人への支払いが、本当に外注費といえるかです。
4つ目は、消費税の簡易課税で、第3種事業と第4種事業を正しく区分しているかです。
5つ目は、インボイス未登録の協力業者への支払いについて、消費税の処理を正しく行っているかです。
経営者
まず、工事売上はいつ計上するのでしょうか。
入金日ですか?請求書を出した日ですか?
税理士
原則として、単純な入金日や請求書発行日ではありません。
リフォーム工事では、工事が完成し、引渡しがあった日が重要です。
法人税法では、資産の販売や役務提供に係る収益について、原則として引渡しまたは役務提供の日の属する事業年度の益金とする考え方が定められています。
たとえば、3月決算法人で、3月28日に工事が完成して引渡し済み、請求書発行が4月3日、入金が4月末という場合でも、原則として3月期の売上になる可能性があります。
経営者
では、決算日前後の工事はかなり重要ですね。
税理士
非常に重要です。
税務調査では、決算日前後に完成した工事が特に確認されやすいです。
たとえば3月決算法人なら、3月20日から4月10日ごろまでの工事一覧を作成し、工事完了日、検収日、引渡日、請求書発行日、入金日を説明できるようにしておくべきです。
工事完了報告書、施主確認書、検収書、完了メール、完成写真などを保存しておくと、売上計上時期の説明に役立ちます。
未完成工事の原価は当期費用にしてよいのか
リフォーム業でよく問題になるのが、期末時点でまだ完成していない工事の材料費、外注費、現場労務費を、すべて当期の経費にしてしまう処理です。
法人税法上、損金となる売上原価には、当該事業年度の収益に係る売上原価や完成工事原価が含まれます。
逆にいうと、まだ完成していない工事に対応する原価は、原則としてその期の完成工事原価ではありません。
期末時点で未完成の工事に対応する材料費、外注費、労務費などは、未成工事支出金等として資産計上し、工事完成時に原価化する必要があります。
経営者
期末までに材料を買って、外注先にも支払っています。
まだ工事が終わっていなくても、経費にできますか?
税理士
そこは注意が必要です。
期末時点で工事が完成していない場合、その工事に対応する材料費や外注費をすべて当期費用にするのは問題になります。
たとえば、決算日時点でA邸のリフォーム工事が進行中で、材料費120万円、外注費100万円が発生している場合、通常はその220万円を未成工事支出金等として管理することを検討します。
工事が完成し、売上を計上するタイミングで、対応する原価として費用化します。
経営者
材料在庫も見られますか?
税理士
見られる可能性があります。
倉庫に残っているフローリング、クロス、塗料、配管材料、住宅設備、木材などは、金額的重要性があれば棚卸の対象になります。
「材料を買ったから全部その年の経費」という処理は危険です。
現場に搬入済みでも未使用であれば、どの工事に使う予定なのか、期末時点で使用済みなのか未使用なのかを説明できるようにしておく必要があります。
法人税と消費税では未成工事の扱いがずれることがある
未成工事支出金については、法人税と消費税で処理時期がずれることがあります。
法人税では、未完成工事に対応する材料費や外注費を未成工事支出金として翌期へ繰り越すことがあります。
一方、消費税では、原則として材料を購入した日や外注工事等の役務提供を受けた日の課税期間で仕入税額控除を行います。
つまり、
法人税では未完成なので原価を翌期へ繰り越す
消費税では今期の仕入税額控除を行う
というズレが起こり得ます。
なお、未成工事支出金に含まれる課税仕入れについて、完成・引渡し時の課税期間で控除する処理も、継続適用を条件に認められています。
経営者
法人税で未成工事支出金にした場合、消費税の仕入税額控除も翌期ですか?
税理士
必ずしもそうではありません。
法人税では未成工事支出金として翌期へ繰り越す場合でも、消費税では原則として、材料を購入した日や外注工事の役務提供を受けた日の課税期間で仕入税額控除を行います。
ただし、未成工事支出金に含まれる仕入れについて、完成・引渡し時の課税期間で控除する処理も、継続適用を条件に認められています。
法人税の未成工事処理と、消費税の仕入税額控除時期を混同しないことが重要です。
一人親方・職人への外注費は高リスク
リフォーム業では、一人親方や個人職人に外注することが多くあります。
しかし、税務上は、請求書に「外注費」と書いてあれば必ず外注になるわけではありません。
実態として従業員に近い働き方であれば、給与と判断されるリスクがあります。
国税庁は、大工、左官、とび職等の報酬について、給与か事業所得かを判断する要素を示しています。
主な判断要素は、代替者が仕事をできるか、時間的拘束があるか、仕事の具体的方法について指揮監督を受けるか、完成前に目的物が滅失した場合でも報酬請求できるか、材料や主要な工具を誰が負担しているか、といった点です。
経営者
一人親方に毎月外注費を払っています。
請求書をもらっていれば問題ありませんか?
税理士
請求書があるだけでは十分ではありません。
税務調査では、契約書や請求書の形式だけではなく、実際の働き方を見られます。
たとえば、毎日8時に会社へ集合し、会社が現場を指定し、日当で支払い、道具や材料を会社が用意し、他社の仕事を禁止しているような場合は、外注というより従業員に近いと判断される可能性があります。
給与と認定されると、源泉所得税の徴収漏れや、消費税の仕入税額控除の否認につながることがあります。
給与は消費税上の課税仕入れではないためです。
経営者
外注として整理するためには、何を確認しておけばよいですか?
税理士
少なくとも、外注先ごとに次の点を確認しておくべきです。
仕事を断れるか、他社の仕事をしているか、作業時間を会社が細かく拘束していないか、作業方法についてどこまで指揮監督しているか、報酬が日当なのか請負金額なのか、やり直し費用を誰が負担するのか、工具・車両・材料を誰が用意するのか、請求書を本人が作成しているか。
「業務委託契約書があります」だけでは防御として弱いです。
実態に沿った外注先管理表を作成しておくことが有効です。
インボイス未登録の一人親方への支払い
リフォーム業では、インボイス未登録の一人親方や小規模協力会社へ外注費を支払っていることがあります。
インボイス制度では、インボイス発行事業者以外から行った課税仕入れについて、原則として仕入税額控除が制限されます。
ただし、一定期間は仕入税額相当額の一部を仕入税額とみなして控除できる経過措置があります。
2026年度税制改正により、この経過措置の控除割合と適用期間が見直されました。
| 課税仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除不可 |
従来は、2026年10月1日から2029年9月30日まで50%控除とされ、その後は控除できなくなる予定でした。
しかし、2026年度税制改正により経過措置が2年間延長され、2026年10月から2年間は70%、2028年10月から2年間は50%、2030年10月から1年間は30%と、段階的に控除割合を引き下げる仕組みに変更されています。
したがって、2026年10月1日から直ちに50%になるわけではありません。
一方で、2026年9月30日までの80%から、2026年10月1日以後は70%へ下がるため、インボイス未登録の一人親方・協力業者を多く使うリフォーム会社では、原則課税の場合、消費税負担が増える可能性があります。
協力業者ごとのインボイス登録状況と年間外注額を把握し、原価率や資金繰りへの影響を確認しておくことが重要です。
経営者
インボイス未登録の職人さんに支払っている外注費があります。
2026年10月から何が変わりますか?
税理士
2026年10月1日から、経過措置の控除割合が80%から70%に下がります。
たとえば、インボイス未登録事業者への外注費について、2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%を控除できる経過措置があります。
2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%となり、2031年10月1日以後は原則として控除できなくなります。
そのため、同じ未登録外注先へ同じ金額を支払い続けていても、原則課税の場合には、経過措置の控除割合が下がるにつれて会社側の消費税負担は大きくなっていきます。
協力業者名、年間外注予定額、インボイス登録番号、登録・未登録の状況を一覧化して、影響額を試算しておくことをおすすめします。
経営者
9月から10月にまたがるリフォーム工事の場合、80%と70%のどちらを使うのでしょうか?
税理士
単純に請求書の日付や、代金を支払った日だけで判断するわけではありません。
経過措置の控除割合は、その取引について課税仕入れを行った時期によって判断します。
国税庁のインボイス制度Q&Aでは、たとえば、インボイス未登録事業者から2026年9月21日から役務の提供を受け、その一つの役務が10月20日に完了し、10月31日に代金を支払う場合には、原則として役務の全部が完了した10月20日が課税仕入れの時期となるため、70%を用いる例が示されています。
一方、商品の仕入れについては、原則として商品の引渡しを受けた日が課税仕入れの時期になります。
リフォーム業では、外注工事や材料仕入れが2026年9月から10月にまたがることがあります。
その場合、「9月に契約したから80%」「10月に支払ったから70%」と一律に決めるのではなく、それぞれの取引について課税仕入れを行った時期を確認する必要があります。
簡易課税では第3種・第4種の区分に注意
リフォーム業では、消費税の簡易課税を選択している会社もあります。
原則的な建築リフォーム工事業は、簡易課税上、第3種事業に該当し、みなし仕入率は70%とされています。
また、自社が請け負った建設工事の全部を下請業者に施工させる、いわゆる丸投げの場合であっても、建設工事の元請として第3種事業に該当する取扱いが示されています。
一方で、発注者から原材料の支給を受け、実質的に職人の人的役務だけを提供する工事などは、第4種事業となる場合があります。
第4種事業のみなし仕入率は60%です。
第3種と第4種では、消費税額が変わります。
「建設業だから全部第3種」と機械的に処理するのは危険です。
経営者
当社は簡易課税です。
リフォーム業なら全部第3種でよいですか?
税理士
必ずしもそうとはいえません。
国税庁の事業区分では、建築リフォーム工事業は原則として第3種事業とされています。
しかし、発注者から原材料の支給を受け、実質的に人的役務だけを提供しているような場合は、第4種事業になることがあります。
第3種のみなし仕入率は70%、第4種のみなし仕入率は60%です。
売上区分を間違えると消費税額に影響します。
簡易課税の場合は、売上の内容ごとに第3種か第4種かを確認する必要があります。
工事請負契約書・注文請書の印紙税
リフォーム業では、紙の工事請負契約書や注文請書を作成することがあります。
これらは、印紙税法上の第2号文書、つまり請負に関する契約書に該当することがあります。
「注文請書だから印紙不要」
「変更契約だから印紙不要」
とは限りません。
契約の成立を証明する内容であれば、名称にかかわらず課税文書になる可能性があります。
建設工事の請負契約書については、一定金額を超えるものについて、2027年3月31日まで軽減措置があります。
電子契約については、電磁的記録自体は印紙税上の「文書」ではありません。ただし、後から紙で変更契約書等を作成した場合には、別途判定が必要です。
経営者
注文請書にも印紙は必要ですか?
税理士
必要になる場合があります。
印紙税では、書類のタイトルだけで判断するわけではありません。
注文請書であっても、工事内容、請負金額、契約当事者などが記載され、契約の成立を証明する内容であれば、請負に関する契約書として課税文書になる可能性があります。
また、追加工事や変更契約についても、契約金額の記載内容によって印紙税の判定が必要です。
紙で契約書や注文請書を作成する場合は、金額と内容を確認してください。
リフォーム業の税務調査でよく聞かれること
リフォーム業の税務調査では、売上計上時期、未成工事、材料在庫、外注費、インボイス、印紙税、関係者向け工事が確認されやすいです。
特に、決算日前後の完成工事と、一人親方への外注費は重要です。
経営者
税務調査では、どのようなことを聞かれやすいですか?
税理士
たとえば、次のような質問が想定されます。
売上を計上する基準は何ですか。
工事完成日は何で確認していますか。
決算日前後に完成した工事一覧を見せてください。
この4月売上の工事は、3月には完成していませんでしたか。
着手金や中間金はどの科目で処理していますか。
未成工事支出金はどう計算していますか。
現場別の材料費・外注費を見せてください。
決算時に倉庫や現場の材料を棚卸していますか。
この職人さんは毎月ほぼ同額ですが、外注ですか、従業員ですか。
この一人親方には誰が仕事の指示を出しますか。
外注先は他社の仕事もしていますか。
外注先のインボイス登録番号を確認していますか。
追加工事はどのように売上計上していますか。
キャンセル、値引き、クレーム対応をどう処理していますか。
社長個人の自宅工事や、親族・知人の工事はありませんか。
会社の材料や職人を、社長や役員の自宅工事に使っていませんか。
このあたりは、事前に資料を整理しておくべきです。
町田・相模原でリフォーム業を営む方へ
町田・相模原エリアでも、住宅の老朽化、省エネ改修、店舗改装、賃貸物件の原状回復など、リフォーム業の需要は継続的にあります。
一方で、リフォーム業は、売上の計上時期、未成工事、材料在庫、外注費、一人親方、インボイス、印紙税など、税務調査で確認されやすい論点が多い業種です。
特に、工事台帳を作っていない、完成日を管理していない、外注先のインボイス登録状況を確認していない、決算時に未成工事や材料在庫を見ていない場合は、後から大きな修正が必要になることがあります。
また、2026年10月からは、インボイス未登録事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合が80%から70%へ下がります。
一人親方や小規模な協力業者への外注が多いリフォーム会社では、外注先ごとのインボイス登録状況と消費税負担への影響も確認しておく必要があります。
タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原の中小企業・個人事業主向けに、会計入力、決算申告、税務相談、資金繰りの見える化を含めた税務顧問サービスを提供しています。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月31日時点の法令、国税庁、国土交通省等の公表情報をもとに、リフォーム業に多い税務上の論点を一般的に整理したものです。実際の処理は、契約内容、工事完成時期、外注先の実態、消費税の計算方法、インボイス登録状況、印紙税の文書内容等により異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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