飲食業は、売上が伸びていても利益が残りにくい業種です。
2026年時点では、外食需要の回復や値上げにより売上高は上昇傾向にあります。一方で、食材費、人件費、光熱費、家賃、デリバリー手数料などの負担が重く、中小店舗では利益率が改善しないケースも少なくありません。
日本フードサービス協会の2026年7月調査では、外食全体の売上高は前年同月比106.8%、客数103.2%、客単価103.5%、店舗数101.1%とされています。客数の回復に加え、値上げや客単価上昇が売上を押し上げている状況です。
一方、帝国データバンクの調査では、2026年上半期の飲食店倒産は473件で、上半期として過去最多とされています。倒産の多くは小規模事業者であり、食材費、光熱費、人件費の上昇を価格転嫁し切れない店舗ほど厳しい状況にあります。
そのため、飲食業では、単に売上前年比を見るだけでは不十分です。原価率、人件費率、FL比率、客数、客単価、値引率、デリバリー手数料率、廃棄率、営業利益率を月次で確認する必要があります。
税務上も、飲食業には固有の注意点があります。特に、現金売上、店内飲食10%とテイクアウト8%の区分、デリバリー売上、食材・酒類の期末棚卸、従業員のまかない、役員の私的飲食、厨房・内装設備の処理、インボイス対応は、税務調査でも確認されやすい論点です。
経営者
飲食業を営む法人です。
この業界について、最近の業況や、税務上の注意点、税務調査で聞かれやすいことを詳しく教えてください。
税理士
飲食業は、2026年時点では「売上は伸びているが、利益は残りにくい」という状況がかなりはっきりしています。
外食全体では、客数の回復や値上げにより売上は増えています。
しかし、食材費、人件費、光熱費、家賃、デリバリー手数料などの上昇により、中小店舗では利益率が改善しにくい状況です。
税務上は、現金売上、軽減税率、デリバリー売上、棚卸、まかない、簡易課税、インボイスなど、飲食業特有の論点が多い業種です。
飲食業の最近の業況と動向
経営者
飲食業の業況は、良くなっているのでしょうか?
税理士
業界全体の売上高だけを見ると、回復傾向にあります。
日本フードサービス協会の2026年7月調査において、外食全体の売上高は前年同月比106.8%、客数103.2%、客単価103.5%、店舗数101.1%とされています。
ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋、ディナーレストランなど、主要業態はいずれも前年を上回っています。
ただし、これは協会加盟企業を中心とするデータであり、中小店舗や個人店の状況とは分けて考える必要があります。
経営者
売上が伸びているなら、飲食業は楽になっているということですか?
税理士
そう単純ではありません。
飲食業では、売上が増えても、食材費、人件費、光熱費、家賃、キャッシュレス手数料、デリバリー手数料なども増えています。
帝国データバンクの調査では、2026年上半期の飲食店倒産は473件で、上半期として過去最多とされています。
また、倒産の多くは負債5,000万円未満の小規模事業者とされています。
つまり、大手や価格改定ができる店舗は売上を伸ばしやすい一方、価格転嫁が難しい中小店舗では、売上があっても資金繰りが苦しくなりやすい状況です。
経営者
会計上は、どの数字を見ればよいですか?
税理士
売上高だけでは足りません。
飲食業では、少なくとも次の数字を月次で確認した方がよいです。
原価率、人件費率、FL比率、客数、客単価、値引率、デリバリー手数料率、廃棄率、営業利益率です。
特に、売上が増えているのに利益が残らない場合は、原価率、人件費率、デリバリー手数料率、廃棄率のどこかに原因があることが多いです。
税務調査でも、原価率が前年と大きく違う場合や、仕入と売上の対応関係が不自然な場合には、その理由を確認されることがあります。
飲食業に多い税務上の論点
経営者
飲食業で、税務上特に注意すべき論点は何ですか?
税理士
主な論点は、次のとおりです。
店内飲食10%とテイクアウト8%の区分、現金売上・キャッシュレス売上・デリバリー売上の網羅性、食材・酒類の期末棚卸、まかないの給与課税、簡易課税の事業区分、厨房・内装設備の資産計上、インボイス、役員や従業員の私的飲食です。
飲食業は、売上経路と支払方法が多く、現金取引も残りやすいため、税務調査では「売上が全部計上されているか」が非常に重要になります。
店内飲食10%とテイクアウト8%の区分
経営者
店内飲食とテイクアウトで、消費税率が違うのがややこしいです。
税理士
飲食業では、消費税率の区分が非常に重要です。
店内飲食は、原則として10%です。
一方、テイクアウトや宅配については、酒類を除き、飲食料品の譲渡として軽減税率8%の対象になります。
ただし、酒類は持ち帰りであっても10%です。
また、ケータリングのように、調理や給仕等を伴う役務提供は、原則として10%です。
国税庁は、外食について「飲食設備のある場所における食事の提供」と整理しており、店内飲食と持帰りの双方を行う場合は、原則として提供時点で顧客の意思確認等により判定します。
経営者
店内で食べるつもりか、持ち帰るつもりかは、いつ判断するのですか?
税理士
基本的には、商品を提供する時点で判断します。
たとえば、注文時に「店内ですか、持ち帰りですか」と確認し、その意思に応じて税率を判定する運用です。
後から顧客の行動が変わる可能性まで追いかけるのではなく、提供時点の意思確認に基づいて処理することが実務上重要です。
POSレジで店内10%、持帰り8%、酒類10%を正しく区分できるようにしておく必要があります。
デリバリー売上とアプリ手数料の処理
経営者
Uber Eatsなどのデリバリー売上は、入金額だけを売上にしてもよいですか?
税理士
原則として、入金額だけを売上にする処理は注意が必要です。
デリバリーアプリでは、売上総額からプラットフォーム手数料等が差し引かれて入金されることがあります。
この場合、契約関係にもよりますが、売上総額を売上として計上し、プラットフォーム手数料を経費として処理する必要があるケースが多いです。
手数料控除後の入金額だけを売上にすると、売上高が過小に見える可能性があります。
税務調査では、デリバリーアプリの売上明細、手数料明細、銀行入金額、会計売上が対応しているかを確認されることがあります。
飲食業の簡易課税は第四種事業が基本
経営者
飲食店でテイクアウトをしている場合、簡易課税では第二種事業になるのでしょうか?
税理士
ここは非常に間違えやすいところです。
通常の飲食店業は、簡易課税では第四種事業、みなし仕入率60%とされます。
消費税法基本通達13-2-8の3でも、飲食店業は第四種事業に含まれる取扱いが示されています。
重要なのは、「テイクアウトだから第二種」「軽減税率8%だから第二種」という判断にはならないことです。
消費税率の8%・10%区分と、簡易課税の事業区分は、別の判定です。
経営者
持ち帰り専門店や宅配専門店も第四種ですか?
税理士
業態によって変わる可能性があります。
飲食設備を有しない持帰り専門店や宅配専門店の場合、自ら製造した食品を販売する部分は第三種事業、仕入れた商品をそのまま販売する部分は第二種事業となるケースがあります。
一方、通常の飲食店が行う出前等は第四種事業として取り扱われる場合があります。
そのため、飲食業の簡易課税では、業態、製造の有無、仕入商品の販売か、自社調理品か、飲食設備の有無を確認する必要があります。
食材・酒類の期末棚卸
経営者
飲食店でも、決算日に食材やお酒の棚卸は必要ですか?
税理士
必要です。
決算日に残っている食材、酒類、飲料、包装資材などは、原則として棚卸資産として整理します。
飲食業では、仕入れた食材をすぐ使うため、棚卸を軽視しがちです。
しかし、期末に未使用の食材や酒類が残っている場合、それを全額その期の経費にしてしまうと、売上原価が過大になる可能性があります。
法人税法上も、棚卸資産は一定の評価方法により評価する必要があります。
経営者
廃棄やロスが多い場合はどうすればよいですか?
税理士
廃棄やロスが多い場合は、廃棄記録を残すことが重要です。
飲食業では、仕入量と売上量の対応関係から、売上漏れを推測されることがあります。
たとえば、仕入量が多いのに売上が少ない場合、調査官から「本当に廃棄したのか」「売上を抜いていないか」と確認されることがあります。
廃棄日、品目、数量、理由を記録しておくと、原価率の変動やロスの説明に役立ちます。
従業員のまかないと給与課税
経営者
従業員にまかないを出しています。税務上、問題になりますか?
税理士
飲食業では、まかないは非常に重要な論点です。
役員や従業員に食事を支給した場合、原則として経済的利益として給与課税の対象になる可能性があります。
ただし、一定の要件を満たせば、給与課税しなくてもよい取扱いがあります。
2026年4月1日以後の食事については、役員・従業員が食事価額の50%以上を負担し、かつ会社負担額が月額7,500円以下、消費税等を除く金額であれば、原則として給与課税しない取扱いとされています。
従来の月額3,500円から7,500円へ引き上げられているため、まかない制度を以前のまま運用している店舗は再確認が必要です。
経営者
自社で調理したまかないは、販売価格で計算するのですか?
税理士
自社で調理した食事については、原則として、販売価格ではなく、材料等の直接費相当額で評価します。
所得税基本通達36-38では、使用者が調理して支給する食事について、食事の価額を材料等の直接費の額により評価する旨が示されています。
そのうえで、従業員負担が50%以上か、会社負担額が月額7,500円以下かを確認します。
まかないを無償で出している場合や、従業員負担額を全く取っていない場合は、給与課税や源泉所得税の論点が出ます。
厨房設備・内装工事・修繕費の処理
経営者
厨房機器や内装工事は、全部経費にできますか?
税理士
金額や内容によって変わります。
厨房機器、冷蔵庫、製氷機、食洗機、空調設備、内装工事などは、固定資産として資産計上し、減価償却する必要があるケースが多いです。
一方、単なる修理や原状回復に近いものは、修繕費として処理できる場合もあります。
飲食店では、内装、厨房、電気、給排水、空調、看板などが一括請求されることがあります。
税務上は、その中身を確認し、建物附属設備、器具備品、修繕費などに分けて処理する必要があります。
役員や家族の私的飲食
経営者
役員や家族が店で飲食した場合、会社の経費になりますか?
税理士
事業上の必要性があるかどうかで判断します。
たとえば、試食、メニュー開発、接待、従業員研修など、業務上の目的が説明できる場合は、経費性を検討できます。
一方、役員や家族の私的な飲食、個人的な酒類購入、家庭用の食材購入などを会社経費にすると、法人税上の損金否認や、役員給与・経済的利益の問題になる可能性があります。
飲食業は、店の商品や食材を私的に利用しやすい業種です。
そのため、役員・家族利用、試食、まかない、廃棄、サービス提供の区分を記録しておくことが重要です。
インボイスと仕入税額控除
経営者
インボイスでは、飲食業は何に注意すべきですか?
税理士
食材仕入、酒類仕入、外注費、清掃費、デリバリー手数料、広告費、修繕費、家賃、設備購入などについて、仕入税額控除に必要な帳簿とインボイス等を保存する必要があります。
特に、個人事業者や小規模な仕入先、業務委託先、イベント出店、臨時仕入などでは、相手がインボイス登録事業者かどうかを確認する必要があります。
また、店内飲食10%、テイクアウト8%、酒類10%など、売上側の税率区分も正しく管理しなければなりません。
軽減税率とインボイスが重なるため、飲食業は消費税のミスが起きやすい業種です。
飲食業の税務調査でよく聞かれること
経営者
飲食業の税務調査では、どのようなことを聞かれますか?
税理士
最も確認されやすいのは、売上の網羅性です。
飲食業は、現金売上、クレジットカード、QR決済、電子マネー、デリバリーアプリ、商品券、ポイント利用など、売上経路が多くなります。
そのため、税務調査では、POSの日計表・月計表、会計帳簿、現金入金、カード会社の明細、QR決済明細、デリバリーアプリの売上明細、銀行入金を突き合わせられることがあります。
特に、POS上の取消、返品、値引、サービス処理が多い場合や、現金売上と銀行入金の関係が説明できない場合は、詳しく確認されやすいです。
経営者
売上以外では、何を見られますか?
税理士
売上以外では、原価率、棚卸、廃棄、まかない、役員や家族の私的利用、厨房設備・内装工事、インボイスの保存状況が確認されやすいです。
具体的には、次のような点です。
POS売上と申告売上が一致しているか、現金売上の入金が説明できるか、デリバリー売上を手数料控除後の入金額だけで処理していないか、店内10%・持帰り8%・酒類10%を正しく区分しているか、決算日に食材や酒類を棚卸しているか、原価率が前年や同業水準から大きく動いた理由は何か、まかないについて給与課税を検討しているか、役員や家族の私的飲食を経費にしていないか、という点です。
飲食業では、売上、仕入、棚卸、廃棄、まかないがつながっています。
このつながりを説明できる資料を残しておくことが、税務調査対策になります。
飲食業で毎月確認しておきたい管理資料
経営者
日々の経理では、何を残しておけばよいですか?
税理士
最低限、次の資料を毎月そろえておくことをおすすめします。
POSの日計表・月計表、現金出納帳、レジ締め記録、カード会社の入金明細、QR決済明細、デリバリーアプリの売上明細、銀行通帳、仕入請求書、インボイス、棚卸表、廃棄記録、まかない記録、値引・取消・サービス処理の記録です。
理想は、POS売上、会計売上、現金入金、カード・QR・デリバリーの未収金が説明できる状態です。
また、期首棚卸、仕入、期末棚卸から売上原価を計算し、原価率が大きく変動した場合に理由を説明できる状態にしておくと、税務調査でもかなり強くなります。
町田・相模原で飲食業の税務に不安がある方へ
飲食業は、売上管理、軽減税率、デリバリー売上、棚卸、まかない、インボイスなど、税務上の論点が非常に多い業種です。
特に中小飲食店では、経理に時間をかけにくい一方で、売上経路や決済手段が複雑化しています。そのため、レジ、キャッシュレス決済、デリバリーアプリ、通帳、請求書を毎月きちんと整理できる仕組みが重要です。
タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原の小規模法人・個人事業主を中心に、記帳、決算、申告、税務相談、資金繰り、納税予測までまとめてサポートしています。
町田・相模原で飲食業に強い税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
飲食店の開業準備、資金繰り、制度融資、補助金・助成金、事業計画づくりについては、町田・相模原で起業する方向けの情報をまとめた「まちさが起業ナビ」もご活用ください。
町田・相模原で起業する方向けの情報は、まちさが起業ナビをご覧ください。
要点
主な根拠
※本記事は、ご提示いただいた回答を基に、2026年時点の一般的な飲食業の税務論点を整理したものです。実際の処理は、業態、店舗数、消費税の計算方法、店内飲食・テイクアウト・デリバリーの割合、まかない制度、棚卸方法、証憑保存状況により異なります。最新の制度や個別判断については、税理士等の専門家に確認してください。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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