個人事業主の方から、よく次のような質問をいただきます。
「青色申告って、申請書を税務署に出せばそれだけでいいのですか?」
「白色申告と比べて、どれくらい有利なのですか?」
「令和9年分から制度が変わると聞いたのですが、何が変わるのですか?」
結論からいうと、青色申告は、申請書を税務署に出せばそれだけで65万円などの控除を受けられる制度ではありません。
青色申告を使うには、期限内に青色申告承認申請書を提出し、承認を受けたうえで、所定の方法で記帳し、帳簿や証憑を保存し、控除額ごとの要件を満たして確定申告をする必要があります。
また、令和9年分、つまり2027年1月1日から12月31日までの所得からは、青色申告特別控除の仕組みが変わります。最初に影響する申告は、原則として2028年に行う令和9年分の確定申告です。
個人事業主
個人事業主ですが、青色申告って、申請書を税務署に出せばそれだけでいいのですか?
税理士
いいえ。青色申告承認申請書を提出することは必要ですが、それだけで65万円控除などを受けられるわけではありません。
青色申告は、大きく分けると次の3段階が必要です。
1つ目は、期限内に青色申告承認申請書を提出し、税務署長の承認を受けること。
2つ目は、承認後に、所定の方法で記帳し、帳簿や領収書などの証憑を保存すること。
3つ目は、控除額ごとの要件を満たして確定申告することです。
個人事業主
申請期限はいつまでですか?
税理士
原則として、青色申告を始める年の3月15日までです。
ただし、1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、原則として開業日から2か月以内です。
たとえば、4月1日に開業した場合は、原則として6月1日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。
青色申告承認申請書と開業届は別の書類なので、開業届を出しただけでは青色申告にはなりません。
個人事業主
青色申告は毎年申請し直す必要がありますか?
税理士
通常は、毎年申請し直す必要はありません。
一度承認されれば、取りやめや承認取消しがない限り、その後も青色申告を続けることができます。
ただし、帳簿の備付け、記録、保存が不適切な場合や、隠蔽・仮装がある場合などには、青色申告の承認が取り消される可能性があります。
個人事業主
青色申告と白色申告は、何が違うのですか?
税理士
大きな違いは、青色申告には税務上の特典がある一方で、事前申請や帳簿作成の要件があることです。
青色申告では、青色申告特別控除、赤字の3年間繰越し、一定の場合の前年への繰戻し還付、青色事業専従者給与などの特典があります。
一方、白色申告は事前申請が不要で、帳簿の水準も比較的簡易ですが、青色申告特別控除はありません。
なお、白色申告であっても、帳簿を作らず領収書だけを保存すればよいわけではありません。事業所得、不動産所得、山林所得がある方は、白色申告でも記帳と帳簿書類の保存が必要です。
個人事業主
青色申告の控除額は、10万円、55万円、65万円と聞いたことがあります。
税理士
令和8年分までの現行制度では、主に10万円、55万円、65万円の青色申告特別控除があります。
簡易簿記などの場合は、原則として10万円控除です。
事業所得または事業的規模の不動産所得について、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成し、期限内に申告する場合は55万円控除です。
さらに、e-Taxで申告するか、一定の電子帳簿保存を行う場合は65万円控除になります。
個人事業主
令和9年分から変わるというのは、どこが変わるのですか?
税理士
令和9年分以後は、控除額の考え方が変わります。
大きなポイントは3つです。
1つ目は、複式簿記をしていても、書面で申告する場合は、従来の55万円控除ではなく、原則として10万円控除になることです。
2つ目は、複式簿記、貸借対照表・損益計算書の作成に加えて、期限内にe-Taxで申告すれば、65万円控除になることです。
3つ目は、e-Tax申告に加えて、一定の優良な電子帳簿保存などの要件を満たす場合、75万円控除を受けられる制度になることです。
個人事業主
今まで55万円控除だった人は、令和9年分からどうなりますか?
税理士
複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を作っていても、書面で申告している場合は注意が必要です。
令和9年分以後は、書面申告のままだと、原則として10万円控除に下がる可能性があります。
そのため、現在55万円控除を受けている方は、令和9年分以後に65万円控除を受けるため、e-Taxへの移行を検討する必要があります。
個人事業主
今まで65万円控除だった人は、自動的に75万円控除になりますか?
税理士
自動的にはなりません。
令和9年分以後も、複式簿記、貸借対照表・損益計算書、期限内e-Tax申告の要件を満たすだけであれば、基本的には65万円控除です。
75万円控除を受けるには、さらに優良な電子帳簿等の要件を満たす必要があります。
単に会計ソフトを使っている、クラウド会計を使っているというだけでは、75万円控除の電子帳簿要件を満たすとは限りません。訂正・削除履歴、相互関連性、検索機能など、電子帳簿保存法上の要件を確認する必要があります。
個人事業主
令和9年分以後も10万円控除は残るのですか?
税理士
10万円控除自体は残ります。
ただし、簡易簿記を行う事業所得者のうち、前々年の事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える方などは、令和9年分以後、10万円控除の対象から除外される可能性があります。
ここで注意したいのは、1,000万円基準は「利益が1,000万円超」ではなく、原則として「収入金額が1,000万円超」という点です。
たとえば令和9年分の判定では、原則として令和7年分の対象収入金額を確認します。
個人事業主
青色申告特別控除は、税金から直接65万円や75万円が引かれるのですか?
税理士
いいえ。税額控除ではありません。
青色申告特別控除は、税金そのものから直接差し引くのではなく、事業所得などの金額から差し引く控除です。
また、控除前の黒字所得が上限です。赤字をさらに65万円や75万円増やせる制度ではありません。
個人事業主
青色申告のメリットは、特別控除以外にもありますか?
税理士
あります。
代表的なのは、赤字の3年間繰越しです。青色申告で生じた純損失は、一定の申告要件を満たせば、原則として翌年以後3年間繰り越せます。
また、前年も青色申告をしているなど一定の要件を満たす場合、その年の純損失を前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を請求できることがあります。
さらに、家族が事業に専従している場合、期限内に青色事業専従者給与に関する届出書を提出し、労務の対価として相当な給与を実際に支払えば、届出額の範囲内で必要経費にできる可能性があります。
個人事業主
白色申告にもメリットはありますか?
税理士
あります。
白色申告は、青色申告承認申請書が不要で、複式簿記を必須としないため、経理・決算作業が比較的簡易です。
利益が少なく、赤字の繰越しや青色事業専従者給与などの特典を使わない方であれば、事務負担との比較で白色申告を選ぶ余地はあります。
ただし、白色申告には青色申告特別控除がなく、一般的な事業赤字の3年間繰越しも原則としてできません。
また、家族への支払いについても、青色事業専従者給与のように実額給与を必要経費にするのではなく、原則として事業専従者控除の範囲に限られます。
個人事業主
結局、個人事業主は青色申告にした方がよいですか?
税理士
事業を継続して行う個人事業主であれば、原則として青色申告を検討した方がよいです。
ただし、重要なのは、青色申告の申請だけで終わらせないことです。
令和9年分以後は、複式簿記をしていても、e-Taxを使わなければ65万円控除を受けられません。また、75万円控除を目指す場合は、電子帳簿保存の要件確認が必要です。
そのため、今後は「青色申告にするかどうか」だけでなく、「どの控除額を目指すのか」「記帳方法はどうするのか」「e-Taxや電子帳簿に対応できるのか」を早めに確認することが重要です。
令和8年分までと令和9年分以後の青色申告特別控除の比較
| 記帳・申告方法 | 令和8年分まで | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記+貸借対照表・損益計算書+期限内e-Tax | 65万円 | 65万円 |
| 上記+優良な電子帳簿等 | 65万円 | 75万円 |
| 複式簿記+書面で期限内申告 | 55万円 | 原則10万円 |
| 簡易簿記 | 原則10万円 | 原則10万円。ただし一定の売上規模超では対象外 |
| 白色申告 | 青色申告特別控除なし | 青色申告特別控除なし |
青色申告と白色申告の比較
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 必要 | 不要 |
| 記帳義務 | あり | あり |
| 帳簿の水準 | 控除額に応じて複式簿記等が必要 | 簡易な記帳方法が可能 |
| 特別控除 | 現行10万円・55万円・65万円、令和9年分以後10万円・65万円・75万円 | なし |
| 赤字の繰越し | 原則3年間 | 一般的な事業赤字は原則不可 |
| 家族への給与等 | 届出額の範囲内で相当額を必要経費にできる可能性あり | 事業専従者控除に限度額あり |
| 事務負担 | 比較的大きい | 比較的小さい |
町田・相模原で青色申告・開業後の経理に不安がある方へ
青色申告は、申請書を提出すれば終わりではありません。
期限内の申請、日々の記帳、領収書や請求書の保存、e-Tax、会計ソフトの設定、令和9年分以後の改正対応まで、実際には早めに整えておくべきポイントが多くあります。
特に、開業直後の個人事業主の方は、最初に記帳方法を間違えると、後から修正する負担が大きくなります。
町田・相模原で、青色申告、開業後の経理、確定申告、法人成りまで見据えた税務相談をしたい方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※なお、「優良な電子帳簿」については、「令和9年分以後の75万円控除に必要な「優良な電子帳簿」とは?」で詳しく解説しています。
※本記事は、個人事業者の所得税を前提に、一般的な青色申告・白色申告の制度を解説したものです。法人の青色申告は別制度です。実際の適用は、所得区分、開業日、申請日、記帳方法、e-Taxの利用状況、電子帳簿保存の対応状況、令和9年分以後の最新の様式・手引により異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




