不動産仲介業は、売買契約書、賃貸借契約書、媒介契約、決済明細、請求書、入金記録など、取引の証拠が多く残る業種です。
そのため、税務調査では、契約データと会計データを突合されやすく、決算日前後の仲介手数料、AD・広告料・紹介料、外注営業マンへの報酬、顧客からの預り金などが確認されやすくなります。
特に重要なのは、仲介手数料をいつ売上に計上するかです。
不動産仲介業には、法人税基本通達2-1-21の9「不動産の仲介あっせん報酬の帰属の時期」という専用の通達があります。原則として、土地・建物等の売買、交換、賃貸借の仲介・あっせん報酬は、その売買等の契約の効力が発生した日の属する事業年度の益金となります。
また、土地の売買や住宅の貸付けそのものが消費税非課税であっても、不動産仲介会社が受け取る仲介手数料まで非課税になるわけではありません。
不動産仲介業では、法人税、消費税、源泉所得税、印紙税が複合的に関係します。売上計上、消費税区分、外注費・紹介料、預り金、非居住者取引、印紙税を分けて整理することが重要です。
経営者
不動産仲介業を営んでいます。
この業界について、最近の業況や、税務上注意すべき点を教えてください。
税理士
不動産仲介業は、2026年時点では、地価や中古住宅価格は強い一方で、金利上昇や物件価格の上昇により、取引数量には地域差・物件種別ごとの差が出やすい環境です。
2026年地価公示では、全国平均の全用途・住宅地・商業地が5年連続で上昇し、三大都市圏では上昇幅も拡大しています。
一方で、既存住宅販売量指数では、月によって戸建てとマンションで動きが分かれています。首都圏の中古マンション市場は成約件数・成約価格とも強い面がありますが、価格高騰によって買える人が限られてくる面もあります。
つまり、不動産仲介業にとっては、単純な好況というより、単価上昇と成約難易度の上昇が同時に進みやすい局面です。
経営者
不動産仲介業の税務で、一番注意すべき点は何ですか?
税理士
まずは、仲介手数料の売上計上時期です。
不動産仲介業には、法人税基本通達2-1-21の9という専用の通達があります。
土地・建物等の売買、交換、賃貸借の仲介・あっせん報酬は、原則として、その売買等の契約の効力が発生した日の属する事業年度の益金になります。
そのため、単純に「入金された日」だけで売上計上時期を決めるのは危険です。
経営者
売買契約は決算日前に終わっていますが、決済と入金は翌期です。この場合は翌期の売上でよいですか?
税理士
そこは慎重に確認が必要です。
原則は、契約の効力が発生した日の属する事業年度です。
ただし、売買・交換については、継続して取引完了日に収益計上している場合には、一定の取扱いが認められます。
たとえば、3月決算法人で、3月25日に売買契約、4月20日に決済・引渡し、4月20日に仲介手数料入金という案件があった場合、「入金が4月だから翌期売上」と単純に処理するのは危険です。
契約日、決済日、引渡日、請求日、入金日、社内の継続的な売上計上基準を確認する必要があります。
経営者
土地の売買は消費税が非課税ですよね。土地の仲介手数料も非課税になりますか?
税理士
なりません。
ここは不動産仲介業で非常に間違えやすいところです。
土地そのものの譲渡や貸付けは、一定の場合、消費税非課税です。
しかし、不動産仲介会社が提供しているのは、土地そのものではなく、仲介という役務提供です。
そのため、土地の売買に係る仲介手数料であっても、通常は消費税の課税売上になります。
経営者
住宅の賃貸仲介も同じですか?住宅家賃は非課税ですよね。
税理士
考え方は同じです。
住宅の貸付けそのものは、一定の要件を満たせば消費税非課税です。
しかし、仲介会社が受け取る仲介手数料は、住宅そのものの貸付けの対価ではなく、仲介サービスの対価です。
そのため、住宅家賃が非課税であっても、仲介手数料まで当然に非課税になるわけではありません。
経営者
簡易課税を使っている場合、不動産仲介業はサービス業なので第5種ですか?
税理士
そこも注意が必要です。
簡易課税では、不動産業は原則として第6種事業、みなし仕入率40%です。
通常のサービス業の第5種、みなし仕入率50%と混同しやすいですが、不動産仲介業は基本的に第6種として確認する必要があります。
ただし、複数の事業を行っている場合には、課税売上げごとに事業区分を判定します。
経営者
ADや広告料、紹介料を受け取ることがあります。これも売上になりますか?
税理士
実態に応じて売上計上が必要です。
不動産仲介業では、仲介手数料以外に、AD、広告料、紹介料、業務委託料などの名目で入金があることがあります。
本当に広告業務の対価であれば、広告サービスの対価として通常は課税売上になります。
一方、成約に連動して支払われる追加報酬である場合には、実態として何の対価なのかを確認する必要があります。
税務調査では、仲介手数料以外の入金が売上に計上されているか、ADや広告料が簿外になっていないかを確認されやすいです。
経営者
逆に、紹介者や外部の営業マンへ紹介料・業務委託料を払う場合はどうですか?
税理士
支払う側も注意が必要です。
まず、紹介料や外注費として支払っていても、実際には給与と認定されることがあります。
たとえば、営業担当者が会社の指揮命令を受け、勤務時間や働き方を管理され、専属的に業務を行っている場合には、個人事業主として請求書を出していても、税務上は給与ではないかと問題になることがあります。
また、個人に対する営業報酬が、所得税法上の外交員報酬等に該当する場合には、源泉徴収が必要になることがあります。
単発の一般的な紹介料が直ちに源泉徴収対象になるわけではありませんが、支払先、業務内容、契約形態、継続性、実態を確認する必要があります。
経営者
共同仲介の場合、入金された仲介手数料から他社に払った分を引いた純額だけを売上にしてもよいですか?
税理士
必ず純額でよいとは限りません。
共同仲介では、元付・客付、請求権の所在、顧客との契約関係、手数料分配の仕組みによって処理が変わります。
自社が顧客に対して仲介サービスを提供し、仲介手数料全額を請求する立場なのか、それとも他社から分配を受けているだけなのかを確認する必要があります。
税務調査では、総額計上すべき売上を純額だけにしていないか、逆に他社分を自社売上として処理していないか、契約書や精算書と照合されることがあります。
経営者
手付金や敷金、家賃を一時的に預かることがあります。これは売上ですか?
税理士
単に顧客や貸主・売主のために預かっているだけであれば、自社の売上とは性質が異なります。
手付金、敷金、家賃などを一時的に自社口座で預かる場合には、自社の仲介手数料や広告料と明確に区分する必要があります。
専用口座、預り金台帳、精算書、送金記録を整備しておかないと、税務調査で「この入金は売上ではないのか」と確認されやすくなります。
不動産仲介業では、銀行入金の金額が大きくなりやすいため、預り金と売上の区分は非常に重要です。
経営者
外国人や海外在住者が売主の物件を仲介する場合、税務上の注意点はありますか?
税理士
あります。
非居住者や外国法人が国内不動産を売却する場合、買主側に源泉徴収義務が発生することがあります。
原則として、買主は売買代金の10.21%を源泉徴収する必要があります。
ただし、個人が自己または親族の居住用として1億円以下で購入する場合などには例外があります。
仲介会社自身が納税義務者とは限りませんが、決済時に源泉徴収漏れがあると重大なトラブルになり得ます。
そのため、売主が居住者なのか非居住者なのか、早い段階で確認する運用が必要です。
経営者
紙の契約書や領収書の印紙税も注意が必要ですか?
税理士
必要です。
紙の不動産売買契約書や土地賃貸借契約書は、印紙税の課税文書になることがあります。
また、仲介会社が保管する控えについても、「コピーだから必ず非課税」とは限りません。契約成立を証明する目的で双方の署名・押印等があるものは、課税文書になる可能性があります。
一方、電子契約については、印紙税法上の「文書」とは扱われないため、紙の契約書とは取扱いが異なります。
さらに、仲介手数料を現金等で受け取り、紙の領収書を発行する場合、原則として5万円以上の受取書について印紙税の検討が必要です。
経営者
インボイス制度では、どこに注意すべきですか?
税理士
原則課税の場合、共同仲介先、外注先、広告業者、紹介者などから受け取る請求書について、インボイスの保存が問題になります。
特に、個人の紹介者や小規模な外注先には、インボイス未登録者が混在しやすいです。
その場合、仕入税額控除の経過措置の管理が必要になります。
また、2026年10月以降は、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の控除割合について改正が予定されています。2026年10月をまたぐ事業年度では、外注費や紹介料の相手先管理に注意が必要です。
経営者
税務調査では、どのようなことを聞かれやすいですか?
税理士
不動産仲介業では、契約書、媒介契約、案件台帳、請求書、入金記録などが残りやすいため、売上の漏れや期ズレを確認されやすいです。
たとえば、期末までに契約した物件一覧、契約日、決済日、請求日、入金日、仲介手数料以外のAD・広告料の有無、銀行入金の内容、預り金の管理、共同仲介先への支払い、紹介料の支払先と内容などが確認されます。
特に重要なのは、
仲介案件台帳、契約書、請求書、入金、会計売上
の5点が一致しているかです。
この5点が揃っていれば、税務調査でも説明しやすくなります。
不動産仲介業で特に確認すべき税務ポイント
不動産仲介業の税務では、まず仲介手数料の売上計上時期を確認する必要があります。
決算日前後に売買契約や賃貸借契約がある場合、入金日だけで売上時期を判断すると、期ズレが発生する可能性があります。
次に、消費税です。
土地の売買や住宅家賃が非課税であっても、仲介手数料は通常、課税売上です。簡易課税の場合も、不動産仲介業を第5種サービス業として処理するのではなく、第6種不動産業として判定する必要があります。
さらに、AD、広告料、紹介料、業務委託料、共同仲介手数料、顧客からの預り金、外注営業マンへの報酬、非居住者売主の案件、印紙税など、不動産仲介業には業界特有の論点が多くあります。
税務調査前に、少なくとも次の資料を整理しておくとよいです。
契約台帳、媒介契約書、売買契約書・賃貸借契約書、決済明細、請求書、領収書、入金口座、共同仲介の精算書、AD・紹介料の契約書やメール、預り金台帳、インボイス登録番号の確認資料です。
町田・相模原で不動産仲介業を営む方へ
町田・相模原エリアでも、不動産仲介業は、売買仲介、賃貸仲介、管理業、買取再販、紹介料、広告料などが混在しやすい業種です。
特に、地元密着型の不動産会社では、昔からの取引先、紹介者、外部営業担当者、管理物件、預り金が複雑に絡むことがあります。
そのため、単に会計ソフトへ入金を登録するだけでは、仲介手数料の期ズレ、AD・紹介料の売上漏れ、外注費の給与認定、消費税区分の誤り、印紙税の貼付漏れを見落とす可能性があります。
タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原の中小企業・個人事業主向けに、税務顧問、記帳、決算、申告、資金繰り支援を行っています。
不動産仲介業の売上計上、消費税、外注費、紹介料、預り金管理に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所へご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、不動産仲介業に関する一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、売買仲介・賃貸仲介・管理業・買取再販の別、契約内容、決算期、消費税の課税方式、インボイス登録状況、外注先との契約実態、預り金管理の状況などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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