源泉徴収票の「所得税額」の欄が、思っていたより一桁多い。
そんな経験はありませんか。
忙しい当直明けに確定申告の話を耳にしても、正直それどころではない、という方も多いはずです。
医師は収入が高い分だけ税率も上がりやすく、何もしなければ手取りの多くを税金と社会保険料に持っていかれてしまいます。
この記事では、勤務医・開業医それぞれの立場で「今日から始められる節税」を、つまずきやすいポイントも含めて順番に整理します。
なぜ医師の税負担はここまで重くなるのか
日本の所得税は累進課税で、課税所得が900万円を超えると税率33%、1,800万円を超えると40%になります。
ここに住民税(一律10%)を加えると、1,800万円超の層では所得の半分前後が税金として引かれる計算になります。
多くの勤務医はこの高い税率帯に該当しますが、給与所得者である以上、経費を自由に計上することはできません。
給与所得控除も年収850万円を超えると195万円で頭打ちになるため、収入が増えても控除は増えない仕組みになっています。
一方、開業医や医療法人の理事長であれば、事業所得や役員報酬という形で所得を得るため、経費計上や所得の分散といった選択肢が広がります。
同じ「医師の節税」でも、勤務医と開業医では使える手段がまったく違う、というのがまず押さえておきたい前提です。
勤務医が今日からできる節税の手順
勤務医の場合、給与から天引きされる税金を減らす方法は限られていますが、順番に確認していくと意外と手が付けられていない制度が見つかります。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を確認する:掛金の全額が所得控除の対象になります。
勤務先に企業年金があるかどうかで上限額が変わるため、まずは掛金の上限を確認するところから始めます。 - ふるさと納税の上限額を計算する:自己負担2,000円を除いた金額が控除されます。
仕組みや損をしない使い方はふるさと納税は本当に節税になる?仕組みと損しないためのコツで詳しく整理しています。 - 生命保険料控除・医療費控除の申告漏れをなくす:年末調整や確定申告で忘れがちな控除です。
特に家族分の医療費を合算できているか、年に一度は確認する価値があります。 - 住宅ローン控除の要件を確認する:マイホームを検討している場合、控除期間や所得要件を事前に把握しておくと資金計画が立てやすくなります。
会社員全般に共通する考え方の整理はサラリーマンの節税、何から始める?会社員でも取り戻せるお金の話でも扱っていますので、あわせて確認してみてください。
勤務医の場合、まずiDeCoとふるさと納税の2つを埋めるだけでも年間数十万円の差が出ることがあります。
開業医・医療法人化を考えるときの節税の手順
開業医やクリニックの理事長であれば、選択肢はさらに広がります。
- 青色申告特別控除を使う:複式簿記による記帳と電子申告(e-Tax)を行うことで、最大65万円の所得控除が受けられます。
- 経費を正しく計上する:医療機器や学会費、診療所の家賃・光熱費などが対象になります。
自宅兼診療所の場合は、事業で使っている割合に応じて按分するのが基本です。 - 小規模企業共済に加入する:掛金は月1,000円から最大7万円まで設定でき、全額が所得控除になります。
将来の退職金代わりにもなる制度です。 - 家族への給与(青色事業専従者給与)を検討する:配偶者や家族が実際に業務に従事している場合、税務署への事前届出を条件に給与を経費にできます。
- 医療法人化のタイミングを見極める:課税所得がおおむね1,000万円を超えてくると、個人の所得税より法人税率のほうが低くなる場面が出てきます。
法人化した後の節税の考え方は法人の節税、何から手をつける?経営者が知っておきたい基本と落とし穴で解説しています。
なお、講演料や執筆料など副業的な収入がある勤務医の場合、法人を別に持つという選択肢も検討されがちですが、仕組みと注意点はマイクロ法人は本当に節税になる?仕組みとメリット・デメリットを整理を先に読んでから判断することをおすすめします。
つまずきやすいポイント・よくある誤解
節税を調べていくと、次のような落とし穴に出会うことがあります。
- 「節税になる」という言葉だけで商品を選ばない:不動産投資や太陽光発電などは、減価償却を使って一時的に赤字を作れますが、空室リスクや価格下落といった本業のリスクを背負うことになります。
不動産投資の節税効果を検討する場合は不動産投資の節税、本当に得する人・損する人の違いとはで仕組みを確認してから動くと判断を誤りにくくなります。 - 経費と私的支出を混同しない:診療に直結しない支出を経費計上すると、税務調査で否認される可能性があります。
医師は高所得者として調査対象になりやすいため、線引きは慎重に行う必要があります。 - 家族への給与は「実態」が伴っているかが前提:業務に従事していないのに給与だけを支払う形は、税務署から否認されやすい典型例です。
- iDeCoは60歳まで引き出せない:節税効果は大きい一方で、流動性が下がる点は資金計画に織り込んでおきましょう。
まとめ
医師の節税は、勤務医であれば所得控除の見直し、開業医であれば経費と法人化のタイミングが軸になります。
自分がどちらの立場で、いつのタイミングで動くべきかを整理することが、遠回りに見えて一番の近道です。
判断に迷う制度が出てきたら、無理に自己判断せず税理士に相談することも検討してみてください。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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