うちの専属の職人さんやデザイナーさんが、何度お願いしてもインボイス登録をしてくれません。
このまま外注費を支払い続けると、会社の消費税負担は具体的にいくら増えるのでしょうか。
結論からいうと、御社が原則課税で、外注費の全額について仕入税額控除を受けられる事業を行っている場合、未登録先への支払いに含まれる消費税相当額のうち、控除できない部分がそのまま納付増加または還付減少につながります。
経営者
うちの専属の職人さんが、いくら頼んでもインボイス登録をしてくれません。
2割特例が終わった後に、新しい「3割特例」が始まるなら、未登録のままでも会社側の負担は軽くなるのでしょうか?
税理士
いいえ。ここは、二つの「3割」を分けて考える必要があります。
新しい3割特例は、インボイス登録をした個人事業者本人について、令和9年分・令和10年分の消費税納付額を、原則として売上税額の3割にする制度です。
そのため、職人さんやデザイナーさんが未登録のままであれば、その方自身は3割特例を利用できません。
また、3割特例によって、未登録先に支払う会社側の仕入税額控除が増えるわけでもありません。
経営者
では、会社側では具体的にいくら損をするのですか?
税理士
消費税10%対象の外注費であれば、概算額は次の式で計算できます。
追加負担額 = 税込支払額 × 10/110 × 控除できない割合
例えば、税込110万円の支払いに含まれる消費税相当額は10万円です。
そのうち30%を控除できなければ、会社側の追加負担は3万円となります。
未登録先への支払いによる追加負担額
経営者
年間の支払総額が1,100万円なら、令和8年10月以後は年間30万円の増税ということですか?
税理士
おおむねその理解で構いません。
年間支払総額1,100万円のうち、消費税相当額は100万円です。
令和8年10月1日から令和10年9月30日までの課税仕入れについては、その30%に当たる30万円を控除できないため、会社の消費税納付額が30万円増える、または還付額が30万円減る計算です。
その後は、同じ支払額であれば50万円、70万円、最終的には100万円まで増える可能性があります。
経営者
支払日が令和8年10月1日以後なら、すべて30%不控除になるのですか?
税理士
必ずしも支払日だけで決めるわけではありません。
原則として、その課税仕入れを行った時期、つまり役務提供が完了した日や検収日などで判断します。
決算期をまたぐ継続業務や、月をまたぐ制作案件については、契約内容や検収条件を確認する必要があります。
経営者
御社が簡易課税なら、この追加負担は発生しないのですか?
税理士
簡易課税制度を適用している場合は、実際の仕入額ではなく、売上税額に業種ごとのみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算します。
そのため、この外注先が未登録であることだけを理由とする直接的な納付増加は、原則として生じません。
御社自身が2割特例を適用している課税期間についても、同様に実際の仕入税額を積み上げて納付額を計算しないため、未登録先への支払いによる直接的な増加は通常生じません。
経営者
少額の支払いなら、インボイスがなくても控除できることがありますか?
税理士
一定の事業者については、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスがなくても帳簿のみで仕入税額控除を受けられる少額特例があります。
適用期限は令和11年9月30日までで、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下であることなどが要件です。
ただし、1回の取引額が税込1万円以上であれば、この特例は使えません。
経営者
登録番号がないなら、請求書自体をもらわなくても同じですか?
税理士
いいえ。未登録先であっても、請求書や領収書の保存は必要です。
経過措置を使うためには、帳簿に経過措置の対象であることを記載し、区分記載請求書に相当する請求書等を保存する必要があります。
登録番号がないことと、請求書を保存しなくてよいことは別問題です。
経営者
相手が専属の職人なのですが、消費税だけを見ていればよいですか?
税理士
ここは注意が必要です。
「専属」という言葉だけで給与になるわけではありませんが、勤務時間や勤務場所を会社が指定している、仕事の進め方を具体的に指揮している、本人以外への代替が認められない、道具や材料を会社が負担している、時間給や固定給に近い報酬体系である、といった事情が重なると、外注費ではなく給与と判断されるリスクがあります。
給与に該当すれば、そもそも消費税の課税仕入れではありません。さらに、源泉所得税や社会保険の問題も発生します。
デザイン料についても、業務内容によっては報酬・料金として源泉徴収が必要になるため、別途確認が必要です。
経営者
会社としては、今後どう対応するのがよいでしょうか?
税理士
まず、御社が原則課税、簡易課税、2割特例のどれで申告しているかを確認します。
原則課税であれば、未登録先への年間税込支払額に、各時期の控除できない割合を掛けて、今後の追加負担を試算します。
そのうえで、登録を改めて依頼するのか、契約価格を見直すのか、取引先を変更するのかを検討します。
ただし、価格交渉は消費税相当額だけを一方的に差し引くのではなく、業務内容、代替可能性、品質、取引継続の必要性などを含め、契約価格全体として判断する必要があります。
また、「専属」の実態が強い場合は、価格交渉より先に、外注費として処理してよい契約関係なのかを確認してください。
この記事の要点
主な根拠
※本記事の金額は、御社が原則課税を適用し、消費税10%対象の外注費について本来全額控除できることを前提とした概算です。課税売上割合、仕入税額控除の計算方法、契約金額、役務提供時期、法人税上の税効果等によって、実際の負担額は異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




