インボイス制度が始まってから、少額の経費について「税込1万円未満ならインボイスをもらわなくても大丈夫ですか?」という質問を受けることがあります。
結論からいうと、一定規模以下の事業者であれば、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスを保存しなくても、必要事項を記載した帳簿だけで仕入税額控除を受けられる場合があります。
これが、いわゆる少額特例です。
ただし、「税込1万円未満なら誰でもインボイス不要」という制度ではありません。
対象になる事業者、対象期間、金額判定の単位、帳簿の記載内容を誤ると、仕入税額控除が認められない可能性があります。
経営者
税込1万円未満なら、インボイスをもらわなくても大丈夫ですか?
税理士
一定規模以下の事業者であれば、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスを保存しなくても、必要事項を記載した帳簿だけで仕入税額控除を受けられる場合があります。
いわゆる少額特例です。
ただし、すべての事業者が使えるわけではありません。
経営者
「1万円未満なら誰でもOK」ではないのですね。
税理士
はい。そこが最初の注意点です。
少額特例の対象になるのは、原則として次のいずれかを満たす事業者です。
基準期間の課税売上高が1億円以下である事業者、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者です。
つまり、税込1万円未満の支払いであっても、事業者の規模によっては少額特例を使えません。
経営者
基準期間とは、いつの売上を見るのですか?
税理士
基準期間は、原則として個人事業者であればその年の前々年、法人であればその事業年度の前々事業年度です。
たとえば、個人事業者が2026年分について判断する場合は、原則として2024年の課税売上高を見ます。
1年決算法人の場合は、原則として前々事業年度の課税売上高を見ます。
経営者
特定期間はどう考えればよいですか?
税理士
特定期間は、原則として個人事業者であれば前年の1月1日から6月30日まで、法人であれば前事業年度開始の日以後6か月の期間です。
少額特例では、この特定期間の課税売上高が5,000万円以下であれば対象になり得ます。
ただし、通常の消費税の納税義務判定と違い、少額特例の5,000万円判定では、課税売上高の代わりに給与等支払額を使うことはできません。
経営者
税込1万円未満ということは、税込10,000円ちょうどは対象ですか?
税理士
対象外です。
少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れが対象です。
したがって、税込9,999円は対象になり得ますが、税込10,000円ちょうどは対象になりません。
この「未満」を「以下」と間違えると、判断を誤ります。
経営者
1万円未満かどうかは、商品1個ごとに見ればよいですか?
税理士
いいえ。原則として、一回の取引の税込総額で判断します。
たとえば、5,000円の商品と7,000円の商品を同時に購入した場合、商品ごとに見ればそれぞれ1万円未満です。
しかし、一回の取引全体では12,000円です。
この場合、税込1万円未満の取引ではないため、少額特例は使えません。
経営者
では、5,000円の購入と7,000円の購入が別々ならどうなりますか?
税理士
別々の取引として行われていれば、それぞれ税込1万円未満の取引として、少額特例の対象になり得ます。
また、月末に請求書がまとめて発行されたというだけで、直ちに全取引を合算するわけではありません。
ただし、実際には一つの取引であるものを、形式上だけ分けて1万円未満に見せるような処理は避けるべきです。
経営者
月額契約の場合は、日割りして1万円未満と考えることはできますか?
税理士
通常はできません。
たとえば、月額10万円の清掃契約について、12日稼働したから1日あたり8,333円と考え、少額特例を使うという判断はできません。
契約上の一取引が月額10万円であれば、その月額10万円を基準に判断します。
経営者
この少額特例は、いつまで使える制度ですか?
税理士
少額特例は恒久制度ではありません。
2023年10月1日から2029年9月30日までに行う課税仕入れが対象です。
現行制度上、2029年10月1日以後の課税仕入れには、この少額特例は使えません。
経営者
仕入先がインボイス登録事業者でない場合でも使えますか?
税理士
要件を満たせば使えます。
少額特例は、一定規模以下の買手側事業者について、税込1万円未満の課税仕入れについて帳簿のみで仕入税額控除を認める制度です。
そのため、仕入先がインボイス登録事業者であるかどうかにかかわらず、要件を満たせば対象になり得ます。
免税事業者から税込1万円未満の課税仕入れをした場合でも、対象になる可能性があります。
経営者
売手側も、税込1万円未満ならインボイスを発行しなくてよいのですか?
税理士
そこは別問題です。
少額特例は、買手側が仕入税額控除を受けるための特例です。
売手がインボイス発行事業者で、買手からインボイスの交付を求められた場合の交付義務まで免除する制度ではありません。
つまり、買手側で少額特例を使える場合でも、売手側のインボイス交付義務が当然になくなるわけではありません。
経営者
インボイスが不要なら、何も保存しなくてよいのですか?
税理士
いいえ。帳簿の保存は必要です。
少額特例は、インボイスの保存が不要になる制度であって、帳簿の記録まで不要になる制度ではありません。
帳簿には通常どおり、仕入先の名称、取引年月日、取引内容、税込支払額などを記載します。
なお、国税庁Q&Aでは、少額特例について「少額特例の適用がある旨」を帳簿へ特別に記載する必要はないとされています。
経営者
新設法人の場合はどうなりますか?
税理士
新設法人は、基準期間がない場合があるため注意が必要です。
国税庁Q&Aでは、基準期間がない課税期間については、特定期間の課税売上高が5,000万円を超えていても、少額特例を適用できる場合があるとされています。
ただし、新設法人については、設立日、事業年度、消費税の課税事業者判定、インボイス登録状況なども絡むため、個別に確認した方が安全です。
町田・相模原でインボイス制度に不安がある方へ
税込1万円未満の少額特例は、日々の経費処理を楽にする便利な制度です。
しかし、対象事業者、適用期限、取引単位、帳簿保存を誤ると、インボイスがない支出について仕入税額控除が認められない可能性があります。
特に、法人成り直後の会社、インボイス登録をしたばかりの個人事業主、基準期間や特定期間の判定に不安がある方は、早めに整理しておくことが重要です。
町田・相模原で、インボイス制度、消費税、経理処理に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月16日現在の制度を前提に、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、事業者の規模、基準期間・特定期間の課税売上高、取引内容、消費税の計算方法、帳簿の記載状況などにより異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




