学習塾業は、少子化の影響を受けやすい一方で、個別指導、受験対策、オンライン授業、不登校支援、推薦・総合型選抜対策など、ニーズが細分化している業界です。
売上全体としては直近まで大きく崩れているわけではありませんが、15歳未満人口は長期的に減少しており、生徒数が自然に増える市場ではありません。総務省統計局によれば、2026年4月1日現在の15歳未満人口は1,329万人で、前年より35万人減少し、45年連続の減少、過去最少となっています。
また、東京商工リサーチによれば、2025年の学習塾倒産は55件とされ、2006年以降で過去最多となりました。負債1億円未満の倒産が52件と全体の94.5%を占めており、小規模塾を中心に、少子化、物価高、生徒募集や講師確保の難しさ、授業料を上げにくいことなどが経営上の負担になっています。
東京商工リサーチ「2025年の『学習塾』倒産 過去最多の55件」
税務上も、学習塾には独自の注意点があります。
特に重要なのは、授業料や講習費の売上計上時期、消費税の課税関係、講師への支払いが給与なのか外注費なのか、個人講師への源泉徴収、教材販売の処理、税務調査で生徒名簿と売上を照合されやすいことです。
塾経営者
学習塾を営んでいます。
この業界では、税務上どのような点に注意すればよいですか?
税理士
学習塾業で特に重要なのは、授業料の売上計上時期、消費税の課税関係、講師への支払い、教材費・模試代の処理です。
また、税務調査では、生徒名簿、受講履歴、料金表、口座振替データ、現金入金、講師名簿などを見られやすい業種です。
生徒数と料金表から、税務署側でも概算売上を計算しやすいため、売上管理と会計帳簿を一致させておくことが非常に重要です。
塾経営者
最近の学習塾業界は、業況としてはどうなのでしょうか?
税理士
学習塾業界は、売上全体としては直近まで一定の規模を維持している一方で、少子化によって生徒数が自然に増える市場ではなくなっています。
総務省統計局によれば、2026年4月1日時点の15歳未満人口は1,329万人で、45年連続の減少となっています。
また、東京商工リサーチによると、2025年の学習塾倒産は55件と過去最多となり、そのうち負債1億円未満が52件を占めています。
今後は、単に教室を構えて生徒を集めるだけではなく、合格実績、個別指導、難関校対策、補習、不登校支援、オンライン対応、学習管理、保護者への報告などで差別化する必要があります。
また、講師不足、人件費上昇、家賃、広告費、教材費、システム利用料の負担も増えやすく、小規模塾ほど利益率が圧迫されやすい状況です。
塾経営者
学習塾の授業料は、消費税がかからないのではないですか?教育サービスですよね?
税理士
ここは非常に誤解が多いところです。
一般的な民間の学習塾は、「教育だから消費税が非課税」という扱いにはなりません。
消費税法では、学校教育に係る一定の役務提供が非課税とされていますが、これは学校教育法上の学校、専修学校、一定の要件を満たす各種学校等に限られます。
通常の進学塾、補習塾、個別指導塾、英会話教室などの入学金や授業料は、原則として消費税の課税対象です。
課税事業者であれば、通常は10%の課税売上として処理します。
国税庁も、一般的な学習塾等について、学校教育法上の各種学校等に該当しないことから、入学金や授業料等は課税対象になると示しています。
塾経営者
月謝や講習費は、入金された日に売上にすればよいですか?
税理士
必ずしも入金日で売上にするわけではありません。
授業料は、原則として、実際に授業を行った期間に対応して売上計上を検討します。
例えば、3月決算法人が3月25日に4月分の月謝を受け取った場合、そのお金は3月時点では翌期の授業に対応する前受金として整理することが考えられます。
逆に、3月中に授業を実施しているのに、口座振替が4月だから4月売上にしている場合は、3月の未収売上として計上すべき可能性があります。
入金日だけではなく、何月分の授業料なのか、いつ授業を提供したのかを確認することが重要です。
塾経営者
春期講習や夏期講習はどうですか?
税理士
春期講習、夏期講習、冬期講習、受験直前講座は、特に注意が必要です。
これらは、申込みや入金の時期と、実際の授業実施期間がずれやすいからです。
例えば、3月中に春期講習代を受け取っていても、授業が4月に実施される部分については、前受金として処理する必要があるかを確認します。
税務調査では、生徒管理システム、講習申込書、請求データ、口座振替データ、会計帳簿を突き合わせられることがあります。
したがって、「いつ入金されたか」だけではなく、「何月分の授業か」「いつ授業を実施したか」が分かる資料を残しておくことが重要です。
塾経営者
入塾金は、受け取った時点で売上にしてよいですか?
税理士
入塾金は、名称だけで判断しない方が安全です。
契約成立時点で返還不要となり、入塾手続などの役務がその時点で完了しているのか、それとも将来の在籍期間全体に対応する性質があるのかを確認します。
入塾規約、返金規定、入塾金が何の対価なのかを見たうえで、売上計上時期を判断します。
単純に「入塾金だから入金時売上」と決めつけるのではなく、契約内容を確認することが重要です。
塾経営者
簡易課税を使っている場合、学習塾の授業料は何種になりますか?
税理士
学習塾の授業サービスは、原則として簡易課税の第5種事業、みなし仕入率50%と整理されます。
第5種事業には、第1種から第3種までに該当しないサービス業等が含まれます。
国税庁の事業区分でも、教育、学習支援業は原則として第5種事業として整理されています。
ただし、教材を仕入れ、その性質や形状を変更せず生徒などの一般消費者へ販売している場合には、教材販売部分が小売業として第2種事業、みなし仕入率80%となる可能性があります。
したがって、簡易課税を使っている塾では、授業料と教材販売を区分して管理する意味があります。
塾経営者
教材費や模試代は、授業料と一緒に売上にしてよいですか?
税理士
教材費や模試代は、誰が売主なのかを確認する必要があります。
塾自身が教材や模試を仕入れて生徒に販売しているのであれば、塾の売上として総額計上する方向になります。
一方で、出版社や模試会社の代金を単に代理徴収しているだけで、塾に価格決定権や返金責任がないような場合には、預り金的な処理を検討する余地があります。
ただし、生徒からお金を受け取って、そのまま外部に払っているというだけで、直ちに預り金になるわけではありません。
申込規約、請求書、契約関係、返金責任、価格設定権限を確認して判断します。
塾経営者
講師に業務委託で報酬を払っています。外注費で大丈夫ですか?
税理士
講師の給与・外注区分は、学習塾業で非常に重要な論点です。
業務委託契約書を作っているだけで、必ず外注になるわけではありません。
授業日時や場所を塾側が指定している、指導方法を塾が細かく管理している、講師本人が必ず勤務し代替性がない、時給や時間単価で支払っている、塾の教材や設備を使っている、といった実態が強い場合には、給与として判断される可能性があります。
給与と判断されると、給与所得の源泉徴収、年末調整、消費税の仕入税額控除、場合によっては社会保険・労働保険にも影響します。
ここは契約書の名称ではなく、実態で確認すべきです。
塾経営者
本当に外注講師であれば、源泉徴収は不要ですか?
税理士
そこも注意が必要です。
真正な業務委託であっても、個人講師に「知識の教授」の報酬を支払う場合には、所得税法第204条、所得税法施行令第320条により、源泉徴収の対象になる可能性があります。
所得税法施行令第320条では、「技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導若しくは知識の教授」の報酬・料金が源泉徴収の対象として定められています。
つまり、「外注だから源泉徴収不要」とは限りません。
雇用関係なら給与として源泉徴収します。
真正な業務委託であっても、個人講師への知識の教授の報酬であれば、報酬・料金としての源泉徴収を検討します。
この場合の源泉徴収税率は、原則として、同一人に対し1回に支払う金額が100万円以下であれば10.21%、100万円を超える場合には100万円までの部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。
なお、請求書等で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合には、報酬額のみを源泉徴収の対象額として差し支えない取扱いがあります。
塾経営者
外注講師がインボイス登録していない場合はどうなりますか?
税理士
塾側が消費税の原則課税を採用している場合には、仕入税額控除に影響します。
真正な業務委託講師への支払いが消費税の課税仕入れに該当していても、その講師がインボイス発行事業者でなければ、原則として仕入税額控除が制限されます。
ただし、インボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては、一定期間、仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置があります。
2026年度税制改正により、この経過措置は次のように見直されました。
| 課税仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除不可 |
従来は、2026年10月1日から3年間50%控除とし、その後は控除できなくなる予定でした。
しかし、2026年度税制改正により経過措置の適用期限が2年間延長され、2026年10月から2年間は70%、2028年10月から2年間は50%、2030年10月から1年間は30%と、段階的に控除割合を引き下げる制度へ変更されています。
したがって、2026年10月1日から直ちに50%になるわけではありません。
一方で、2026年9月30日までの80%から、2026年10月1日以後は70%へ下がります。
個人講師への外注費が多い塾では、講師ごとのインボイス登録状況、源泉徴収の有無、契約形態、年間支払額を一覧化しておくことをおすすめします。
塾経営者
2026年10月から、具体的にどのように変わるのでしょうか?
税理士
原則課税の塾がインボイス未登録の外注講師へ支払っている場合、一定の課税仕入れについて控除できる割合が80%から70%へ下がります。
2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%を控除できますが、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%です。
その後、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%となり、2031年10月1日以後は原則として控除できなくなります。
そのため、同じインボイス未登録講師に同じ金額の外注費を支払い続けていても、経過措置の控除割合が下がるにつれて、塾側の消費税負担は大きくなっていきます。
塾経営者
簡易課税の場合も、講師がインボイス登録しているか確認する必要がありますか?
税理士
簡易課税の場合は、原則課税とは考え方が異なります。
簡易課税では、実際の仕入れや外注費に含まれる消費税額を一件ずつ積み上げて仕入税額控除を計算するのではなく、売上に係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算します。
そのため、簡易課税を適用している課税期間では、原則課税のように、外注講師がインボイス登録しているかどうかによって、その外注費について実際の仕入税額控除額が変わるわけではありません。
学習塾の授業サービスは原則として第5種事業、みなし仕入率50%です。
一方で、仕入れた教材をその性質や形状を変更せず生徒へ販売する小売部分は、第2種事業、みなし仕入率80%となる場合があります。
簡易課税を適用している塾では、講師のインボイス登録状況だけでなく、授業料と教材販売の売上区分を正しく管理することが重要です。
塾経営者
月謝袋に印紙は必要ですか?
税理士
一定の学習塾用の月謝袋については、印紙税を課さない取扱いがあります。
印紙税基本通達では、授業料、講習料などについて継続的に記入する一定の月謝袋について、課税文書として取り扱わない趣旨の整理があります。
ただし、すべての領収書や受取書が非課税になるという意味ではありません。
通常の領収書、入金証明書、契約書などは、内容によって印紙税の確認が必要です。
塾経営者
税務調査では、どのようなことを聞かれやすいですか?
税理士
学習塾の税務調査では、生徒名簿、在籍一覧、料金表、受講履歴、入退塾履歴、講習申込書、請求データ、口座振替明細、現金出納帳などが確認されやすいです。
税務署は、「在籍生徒数 × 月謝 × 月数 + 講習費等」という形で、概算売上を計算しやすいからです。
そのため、会計帳簿の売上と、生徒管理システム上の請求額、実際の入金データが一致しているかが重要です。
また、退塾、休塾、無料期間、兄弟割引、特待生、紹介割引、返金などがある場合は、その差額を説明できる資料を残しておく必要があります。
塾経営者
現金月謝や個人口座への入金がある場合は危ないですか?
税理士
リスクは高くなります。
現金月謝、個人口座入金、QR決済、カード決済、口座振替が混在していると、売上の集計漏れが起きやすくなります。
特に、塾長個人の口座に授業料や講習費が入っている場合、法人や事業の売上に計上されているかを確認される可能性があります。
売上除外を疑われないためにも、決済手段ごとの入金データと会計売上を毎月照合しておくべきです。
塾経営者
実務上、まず何を整備すればよいですか?
税理士
まず、直近1年分について、生徒管理システム上の請求額、決済データ、会計売上の3点照合を行うことをおすすめします。
次に、前受月謝や季節講習費について、決算日に翌期分が含まれていないかを確認します。
そのうえで、講師ごとに、雇用か業務委託か、源泉徴収しているか、インボイス登録しているかを一覧化します。
原則課税の場合には、2026年10月以降、インボイス未登録講師への外注費について経過措置の控除割合が80%から70%へ下がるため、年間外注額も一緒に把握しておくと消費税への影響を確認しやすくなります。
最後に、教材費、模試代、検定料、FCロイヤリティ、広告費、自宅兼用経費などを確認します。
この3点照合と講師区分の整理を行うだけでも、学習塾業の税務リスクはかなり見えやすくなります。
町田・相模原で学習塾を開業・運営する方へ
町田・相模原で学習塾を開業する場合、税務だけでなく、教室の立地、家賃、人件費、講師採用、広告費、資金繰り、法人化のタイミングも重要です。
特に学習塾は、開業直後から月謝管理、講師報酬、教材費、講習費、入塾金、前受金などが発生しやすく、最初の経理設計を誤ると後から整理が大変になります。
また、業務委託講師を利用する場合には、単に「外注費」と処理するだけではなく、給与か外注かの実態判定、個人講師への源泉徴収、インボイス登録状況まで確認する必要があります。
原則課税の塾では、2026年10月からインボイス未登録事業者等からの一定の課税仕入れに係る経過措置が80%から70%へ縮小するため、外注講師が多い塾ほど消費税への影響も確認しておく必要があります。
タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原で起業する方向けに、個人事業と法人のどちらが有利か、最適な役員報酬、補助金・助成金・融資制度、金融機関検索、税務署提出書類の作成などを確認できる「まちさが起業ナビ」を公開しています。
町田・相模原で学習塾を開業する方は、まちさが起業ナビもご活用ください。
また、学習塾業は、売上管理と講師報酬の処理が税務調査で重要になりやすい業種です。
町田・相模原で学習塾を経営している方、これから学習塾を開業する方、法人化を検討している方は、タクスリンク税理士事務所へご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月31日時点の法令、国税庁、総務省統計局等の公表情報をもとに、一般的な民間学習塾の税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、個人事業か法人か、消費税の課税方式、授業料・教材費・講習費の請求方法、講師の契約形態、インボイス登録状況、決算月などによって異なります。実際の申告・処理にあたっては、個別の資料に基づいて確認してください。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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