製造業は、材料を仕入れて加工し、製品を販売する業種です。
そのため、単に売上と経費を集計するだけではなく、原材料、労務費、外注費、工場経費、仕掛品、製品在庫、設備投資などをどう整理するかが重要になります。
特に税務上は、製品や仕掛品の原価計算、期末棚卸資産、売上計上時期、機械設備や金型の減価償却、修繕費と資本的支出、研究開発税制、設備投資税制、輸出入と消費税が重要です。
この記事では、製造業を営む中小企業の方向けに、最近の業況、製造業特有の税務論点、税務調査で確認されやすいポイントを整理します。
なお、本記事は2026年8月29日時点の公表情報を前提とした一般的な解説です。実際の申告では、製造品目、原価計算方法、在庫金額、設備投資額、研究開発の有無、輸出入の有無により判断が変わります。
経営者
製造業を営んでいます。
この業界について、最近の業況や税務上の注意点を教えてください。
税理士
製造業は、税務上の論点がかなり多い業種です。
特に重要なのは、原価計算、仕掛品、期末在庫、設備投資、研究開発、輸出入、消費税です。
飲食業や小売業と比べても、決算時に「まだ売れていないもの」「作りかけのもの」「工場で使っている設備」をどう評価するかが大きなポイントになります。
税務調査でも、帳簿だけでなく、工場、在庫、製造工程、出荷記録との整合性を確認されやすい業種です。
経営者
最近の製造業の業況は、どのような状況ですか?
税理士
2026年時点では、製造業の景況感は比較的底堅いものの、原材料費、人件費、エネルギーコスト、物流費の上昇が重い状況です。
2026年6月の日銀短観では、製造業の業況判断DIは、大企業、中堅企業、中小企業のいずれもプラス圏とされています。
一方で、先行きはやや低下する見通しも示されており、特に中小製造業では、仕入価格の上昇をどこまで販売価格に転嫁できるかが重要な経営課題です。
また、ものづくり白書でも、保護主義的な通商政策、経済安全保障、AIやデジタル技術への対応、人手不足が重要テーマとされています。
経営者
製造業では、税務上まず何に注意すべきですか?
税理士
最初に注意すべきなのは、製品、半製品、仕掛品の原価計算です。
製造業では、材料を買った時点で全額をその期の経費にできるわけではありません。
まだ売れていない製品や、決算日時点で製造途中の仕掛品については、棚卸資産として計上する必要があります。
自己製造した棚卸資産の取得価額には、原材料費だけでなく、労務費や製造経費も含まれます。
そのため、「仕掛品だからゼロ」「ざっくり材料費だけ」という処理は危険です。
経営者
仕掛品というのは、作りかけの製品のことですよね?
税理士
はい。仕掛品は、決算日時点でまだ完成していない製造途中のものです。
たとえば、材料を投入して加工を始めているものの、まだ完成品として出荷できない状態のものです。
税務上は、その時点までに投入された材料費、直接工の労務費、工場の電力費、減価償却費、外注費などを、合理的な方法で仕掛品に配賦する必要があります。
税務調査では、直接工の人件費を仕掛品へ入れているか、工場の減価償却費や電力費をどう配賦しているか、標準原価と実際原価との差額をどう処理しているかを確認されることがあります。
経営者
期末在庫も重要ですか?
税理士
非常に重要です。
製造業の在庫には、原材料、仕掛品、半製品、製品があります。
業種によっては、副産物、スクラップ、端材、消耗品も確認対象になります。
税務調査では、帳簿上の在庫数量と実際の在庫が合っているか、棚卸表が残っているか、廃棄した在庫の証拠があるか、不良品や長期滞留品をなぜ評価減したのかを確認されることがあります。
単に「古いからゼロ評価」「売れなさそうだから評価損」という処理は危険です。
評価損を計上する場合は、税務上の要件を満たすかを別途確認する必要があります。
経営者
売上の計上時期も問題になりますか?
税理士
問題になります。
製造業では、出荷日、納品日、検収日、船積日など、売上計上のタイミングが複数考えられます。
法人税法では、原則として資産を引き渡した日の属する事業年度に収益を計上します。
また、通達上も、商品の性質や契約条件に照らして合理的な日を選び、継続して適用することが認められています。
そのため、決算日前後の出荷については、売上、売掛金、製品在庫の三つが一致しているかを確認されやすいです。
たとえば、3月31日に出荷したのに翌期売上になっていないか、翌期の請求書に前期出荷分が混ざっていないか、といった点です。
経営者
機械や金型を買った場合は、普通に経費にできますか?
税理士
金額や内容によります。
製造業では、機械装置、金型、治具、工具、生産ライン、電気設備、工場設備、ソフトウェアなどの固定資産が多くなります。
これらは、原則として購入時に全額を経費にするのではなく、取得価額を資産計上し、減価償却により費用化します。
また、本体代金だけでなく、運賃、据付費、試運転費などが取得価額に含まれる場合があります。
税務調査では、「請求書の日」ではなく、実際に事業の用に供した日、つまり供用開始日がいつかを確認されることもあります。
経営者
機械の修理代は修繕費でよいですか?
税理士
単なる修理や原状回復であれば、修繕費として処理できる可能性があります。
ただし、機械のオーバーホール、部品交換、生産ラインの改造などは注意が必要です。
その支出によって、使用可能期間が延びる、処理能力が上がる、製品品質が向上する、資産価値が増加するという場合には、修繕費ではなく資本的支出として資産計上すべき部分が生じることがあります。
製造業では、大きな修理や改造工事を一括で修繕費にしていると、税務調査で確認されやすいです。
経営者
研究開発をしている場合、税制上のメリットはありますか?
税理士
一定の試験研究費については、研究開発税制を検討できる場合があります。
製品開発、素材研究、製造方法の改善などを行っている製造業では、対象になる可能性があります。
研究開発税制は、必ずしも全く新しい製品だけが対象ではありません。
既存製品や既存技術の改良に関する自然科学系の試験研究も、対象になり得ます。
ただし、通常の製造作業や品質管理、クレーム対応、単なる試作との区分が重要です。
研究開発税制を使う場合は、研究テーマ、担当者、作業時間、試験内容、試作品材料費、研究設備の減価償却費などを説明できる資料を残しておく必要があります。
経営者
設備投資をする場合、税額控除や特別償却は使えますか?
税理士
中小製造業では、設備投資税制を検討する価値があります。
たとえば、中小企業投資促進税制では、一定の機械装置等について、特別償却や税額控除を検討できる場合があります。
また、中小企業経営強化税制では、一定の計画認定などを受けた設備について、特別償却や税額控除を検討できる場合があります。
ただし、これらの制度は、対象設備、資本金、業種、取得日、供用日、計画認定の有無などにより判断が変わります。
設備を購入してから相談すると間に合わない制度もあります。
大きな設備投資をする場合は、発注前、契約前、取得前に税制適用を確認することが重要です。
経営者
輸出をしている場合、消費税も注意が必要ですか?
税理士
はい。輸出取引がある製造業では、消費税のリスクが高くなります。
一定の輸出取引は消費税が免税になります。
一方で、国内で材料や外注費を支払うと、仕入れにかかる消費税を負担します。
そのため、輸出売上が多い会社では、消費税の還付が発生しやすくなります。
消費税還付は税務署の確認が入りやすい分野です。
輸出許可通知書、インボイス、船積書類、契約書、入金記録など、実際に輸出したことを証明する資料を保存しておく必要があります。
経営者
税務調査では、製造業の場合どんなことを聞かれやすいですか?
税理士
製造業の税務調査では、まず「工場と帳簿が一致しているか」を見られます。
具体的には、次のようなことを聞かれやすいです。
棚卸は誰が、いつ、どのように数えたのか。
仕掛品に材料費だけでなく、労務費や工場経費を入れているか。
長期滞留品や不良品をなぜ評価減したのか。
決算日前後の出荷分をいつ売上計上したのか。
スクラップや端材の売却代金を会社の売上として計上しているか。
機械の修理代が本当に修繕費なのか、それとも資本的支出ではないのか。
研究開発税制を使っている場合、通常の製造作業と研究開発作業をどう区分したのか。
輸出免税や消費税還付がある場合、本当に輸出したことを証明できるか。
このあたりは、製造業では非常に確認されやすいポイントです。
経営者
結局、製造業ではどのような資料を残しておくべきですか?
税理士
決算書だけでは足りません。
製造現場から税務申告まで、一本につながる資料が必要です。
具体的には、原価計算表、作業日報、製造指図書、材料払出記録、外注先への発注書、棚卸表、廃棄記録、不良品リスト、出荷記録、検収書、売上請求書、設備の見積書・契約書・請求書、供用開始日が分かる資料、修繕内容の説明資料などです。
研究開発税制を使う場合は、研究テーマ、試験内容、担当者、作業時間、試作品、研究設備などを説明できる資料が必要です。
輸出がある場合は、輸出許可通知書、インボイス、船積書類、入金記録を保存しておく必要があります。
製造業では、「製造現場、在庫、原価、売上、税務申告」が一本の線で説明できる状態を作ることが、最も有効な税務調査対策です。
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製造業は、創業時から設備投資、資金繰り、融資、補助金、原価管理、在庫管理が重要になる業種です。
特に、機械装置や金型への投資がある場合、創業時の資金計画、法人成りのタイミング、役員報酬、設備投資税制、減価償却、補助金・助成金の検討を一体で考える必要があります。
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また、製造業では、設備投資や研究開発、輸出入、消費税還付など、申告前に確認すべき論点が多くなります。
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要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月29日時点の公表情報を前提とした一般的な解説です。実際の税務処理は、製造品目、原価計算方法、在庫金額、設備投資額、研究開発の内容、輸出入の有無、海外関連会社の有無などにより異なります。申告に反映する場合は、個別事情を確認したうえで判断してください。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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