法人の「2割特例」終了と個人の新「3割特例」を解説

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令和8年(2026年)に入り、インボイス制度に関する令和8年度税制改正の内容が具体化しています。

特に重要なのが、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となった方に認められてきた「2割特例」の終了、その後の個人事業者向け「3割特例」、そして簡易課税制度への移行方法です。

2026年8月31日時点では、国税庁から令和8年度税制改正後の具体的な取扱いも公表されています。

今回の改正は、単に「2割特例が終わる」というだけではありません。

特に重要なのは、2割特例・3割特例を使った後に簡易課税へ移行する場合について、従来よりも届出期限が大幅に緩和されたことです。

今回は、町田・相模原の法人・個人事業主にどう影響するのか、「いつまでに、何を判断すべきか」という実務面を中心に解説します。

1. 法人は「2割特例」終了へ。9月決算が最も早く終了

まず、法人への影響です。

2割特例は、インボイス発行事業者への登録を機に免税事業者から課税事業者となった事業者について、一定の要件のもと、消費税の納付税額を売上税額の2割とすることができる制度です。

法人・個人事業者ともに、原則として「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」が対象です。

法人の場合、決算月によって最後に2割特例を使える課税期間が異なります。

最も早く使えなくなるのは「9月決算」の法人

令和8年9月30日決算の法人については、その令和8年9月期までは、要件を満たせば2割特例を利用できます。

しかし、その翌日である令和8年10月1日から始まる令和9年9月期には、2割特例を適用できません。

そのため、9月決算法人が、法人の中では最も早く「2割特例終了後の消費税計算」に移行することになります。

一方、例えば10月決算法人であれば、令和8年10月31日に終了する課税期間には令和8年9月30日が含まれているため、その課税期間については、要件を満たせば2割特例を適用できます。

重要改正:9月30日までに簡易課税届出を出さなくても間に合う場合があります

ここは、令和8年度税制改正で非常に重要な変更がありました。

従来の簡易課税制度では、原則として、簡易課税を使いたい課税期間が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

そのため、従来のルールだけで考えると、令和8年9月決算法人が令和8年10月1日から始まる次期に簡易課税を使うためには、令和8年9月30日までに届出が必要となります。

しかし、令和8年度税制改正で、2割特例・3割特例から簡易課税制度へ円滑に移行するための特例が設けられました。

2割特例または3割特例を適用した課税期間の翌課税期間について簡易課税を使う場合には、原則として、その翌課税期間の消費税申告期限までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、その課税期間から簡易課税を適用できます。

つまり、9月決算法人だからといって、必ず令和8年9月30日までに簡易課税の届出を出さなければならないわけではありません。

9月決算法人ならどうなる?

例えば、次の法人を考えます。

  • 9月決算法人
  • 令和8年9月期について2割特例を実際に適用
  • 令和8年10月1日から令和9年9月30日までの次期について簡易課税を検討

この場合、令和9年9月期は「2割特例を適用した課税期間の翌課税期間」に該当します。

そのため、簡易課税制度への円滑な移行措置を利用できる場合には、原則として、令和9年9月期の消費税申告期限である令和9年11月30日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、令和9年9月期から簡易課税を適用できます。

つまり、一定の場合には、次期が終わった後に実際の売上・仕入れ等を確認したうえで、本則課税と簡易課税のどちらが有利かを検討できる余地があります。

これは、2割特例終了後の法人にとって非常に大きな改正です。

ただし、この特例は誰でも使えるわけではありません。

前の課税期間で2割特例または3割特例を実際に適用していることや、簡易課税制度自体の要件である基準期間の課税売上高5,000万円以下などの条件を満たす必要があります。

また、簡易課税制度は一度選択すると、原則として2年間継続して適用する必要があります。

したがって、「届出期限が延びたから、とりあえず簡易課税を選べばよい」というものでもありません。

国税庁「令和8年度税制改正特集」

2. 個人事業主には令和9年・10年の「3割特例」

個人事業主については、2割特例終了後の激変緩和措置として、令和9年分・令和10年分の2年間について「3割特例」が設けられました。

3割特例は、インボイス発行事業者への登録を機に免税事業者から課税事業者となった個人事業者について、一定の要件を満たす場合に、消費税の納付税額を売上税額の3割とすることができる制度です。

法人は3割特例を利用できません。

また、個人事業者であっても、すべての方が利用できるわけではありません。

例えば、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど、インボイス登録とは関係なく課税事業者となる方や、一定の高額資産を取得したことなどによって免税事業者になれない方などは、3割特例を利用できない場合があります。

3割特例について事前の届出は必要ありません。

ただし、何もしなくても自動的に3割特例になるわけではなく、確定申告時に適用を選択します。

3割特例と簡易課税、どちらが有利?

3割特例を利用できるからといって、必ず3割特例が最も有利とは限りません。

簡易課税制度のみなし仕入率によっては、簡易課税の方が納付税額が少なくなる場合があります。

事業区分 主な業種 みなし仕入率 売上税額に対する概算納付割合 3割特例との比較
第1種 卸売業 90% 10% 簡易課税が有利
第2種 小売業等 80% 20% 簡易課税が有利
第3種 製造業・建設業・電気業等 70% 30% 原則として3割特例と同水準
第4種 飲食店業等 60% 40% 3割特例が有利になりやすい
第5種 サービス業等 50% 50% 3割特例が有利になりやすい
第6種 不動産業 40% 60% 3割特例が有利になりやすい

例えば、卸売業では簡易課税のみなし仕入率が90%のため、売上税額に対する納付割合は概ね10%となります。

3割特例では売上税額の30%を納付するため、他の条件が同じであれば簡易課税の方が有利です。

小売業でも、みなし仕入率80%であれば概算納付割合は20%となるため、3割特例より簡易課税の方が有利になりやすいです。

国税庁も、卸売業や小売業などについては、3割特例より簡易課税制度を適用した方が納付税額が少なくなる場合があると案内しています。

一方、建設業や製造業などの第3種事業は、みなし仕入率70%なので概算納付割合が30%となり、3割特例と同水準です。

サービス業や不動産業等では、3割特例の方が有利になるケースが多くなります。

ただし、多額の設備投資があるなら本則課税も比較

3割特例と簡易課税だけを比較すればよいわけではありません。

例えば、多額の設備投資、店舗改装、機械購入などがあり、仕入れに係る消費税額が大きい場合には、本則課税で申告することで還付が生じるケースがあります。

3割特例や簡易課税では、実際の仕入税額をそのまま控除する方式ではないため、原則としてこのような還付は生じません。

したがって、実務上は、

  • 本則課税
  • 簡易課税
  • 3割特例

の3つを比較して判断することが重要です。

3割特例の後も、簡易課税への移行措置があります

個人事業者についても、3割特例を適用した翌年に簡易課税を利用する場合、円滑な移行措置があります。

3割特例を適用した翌課税期間であれば、原則として、その翌課税期間の消費税申告期限までに簡易課税制度選択届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税を適用できます。

国税庁は、令和10年分に3割特例を適用した個人事業者が令和11年分から簡易課税を使う場合、本来は令和10年12月31日までに届出が必要なところ、令和11年分の申告期限までに届出を提出すればよいという具体例を示しています。

国税庁「令和8年度税制改正特集」

3. インボイス未登録事業者等からの仕入税額控除も変更

免税事業者など、インボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて認められている仕入税額控除の経過措置についても、令和8年度税制改正で変更されました。

改正前は、令和8年10月から3年間50%控除とし、令和11年10月から控除できなくなる予定でした。

今回の改正では、経過措置の適用期限を2年間延長したうえで、控除割合をより段階的に縮小する仕組みに変更されています。

【改正後のスケジュール】

  • 令和8年9月30日まで

    80%控除

  • 令和8年10月1日~令和10年9月30日

    70%控除

  • 令和10年10月1日~令和12年9月30日

    50%控除

  • 令和12年10月1日~令和13年9月30日

    30%控除

  • 令和13年10月1日以後

    控除不可

つまり、2026年10月1日に80%からいきなり50%になるのではなく、まず70%へ下がり、その後50%、30%と段階的に縮小していきます。

インボイス未登録の一人親方、フリーランス、外注先などへの支払いが多い事業者では、同じ金額を支払っていても、今後は徐々に控除できない消費税額が増えていきます。

そのため、取引価格、外注費率、利益率、資金繰りへの影響を事前に確認しておくことが重要です。

大口の未登録外注先には「1億円」の制限も新設

令和8年度税制改正では、7割・5割・3割控除について、さらに新しい制限も設けられています。

一のインボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れの年間合計額が税込1億円を超える場合、その1億円を超える部分については、7割・5割・3割控除を利用できません。

この制限は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

通常の小規模事業者では該当するケースは多くありませんが、特定の未登録外注先や仕入先へ非常に大きな支払いをしている事業者は注意が必要です。

国税庁「令和8年度税制改正特集」

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今回の改正で特に重要なのは、「9月決算法人は9月30日までに簡易課税の届出を出さなければならない」と単純に考えなくてよくなった点です。

2割特例を適用した翌課税期間であれば、一定の要件のもと、その課税期間の申告期限まで簡易課税制度選択届出書の提出を待てる場合があります。

これは、2割特例終了後の法人にとって、非常に実務的な改正です。

また、個人事業者については、令和9年・令和10年の3割特例と簡易課税のどちらが有利かを業種ごとに比較する必要があります。

特に卸売業・小売業では簡易課税が有利になる可能性が高く、サービス業や不動産業では3割特例が有利になりやすいなど、業種によって結論が変わります。

さらに、多額の設備投資がある場合には、本則課税まで含めて比較する必要があります。

「自社は2割特例をいつまで使えるのか」

「次期は本則課税と簡易課税のどちらが有利なのか」

「簡易課税の届出はいつまでに出せばよいのか」

「個人事業なので3割特例と簡易課税のどちらを使うべきか」

といった点は、決算月、基準期間の課税売上高、業種、設備投資額、外注費、インボイス登録状況によって結論が変わります。

町田・相模原エリアの法人・個人事業主で、2割特例終了後の消費税計算に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所へご相談ください。

Author Profile

末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。