「一昨年の売上は1,000万円以下だったのに、去年の上期の売上が1,000万円を超えました。この場合、今年は消費税の課税事業者になるのでしょうか。」
消費税では、原則として「基準期間」の課税売上高で納税義務を判定します。
しかし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者になることがあります。
経営者
去年の上期の売上が1,000万円を超えました。
一昨年の売上は1,000万円以下だったのですが、それでも今年は消費税の課税事業者になりますか?
税理士
ご質問の条件だけで、直ちに今年の消費税が課税事業者になるとは限りません。
ポイントは、去年の上期の売上だけでなく、同じ期間中に実際に支払った給与等の金額です。
国内事業者であれば、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、特定期間中の給与等支払額が1,000万円以下であれば、給与等支払額を基準として免税事業者と判定できる場合があります。
経営者
売上が1,000万円を超えたら、そこでアウトだと思っていました。
売上と給与のどちらで判定するかを選べるということですか?
税理士
国内事業者であれば、特定期間の判定では、課税売上高に代えて給与等支払額を用いることができます。
つまり、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円以下であれば、給与等支払額による判定を使うことで免税となる可能性があります。
逆に、給与等支払額が1,000万円を超えていても、特定期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、課税売上高による判定で免税となる可能性があります。
経営者
そもそも「特定期間」とは、どの期間のことですか?
税理士
個人事業者の場合は、原則として、その年の前年1月1日から6月30日までの期間です。
たとえば、今年の消費税の納税義務を判定する場合、前年1月1日から6月30日までの課税売上高や給与等支払額を確認します。
法人の場合は、原則として、前事業年度開始の日以後6か月の期間です。
ただし、法人では事業年度の長さや設立時期によって判定期間が変わることがあります。したがって、「去年の上期」という言い方だけで判断せず、自社の事業年度に合わせて特定期間を確認する必要があります。
経営者
給与が1,000万円以下なら、従業員がいない個人事業主や一人会社は免税になりやすいということですか?
税理士
そうですね。
従業員がいない個人事業者で、特定期間中の給与等支払額が0円であれば、給与等支払額は1,000万円以下です。
一人会社の場合も、特定期間中に実際に支払った役員報酬が1,000万円以下であれば、給与等支払額の基準では1,000万円以下になります。
ただし、給与等支払額の判定では、会計上の給与費ではなく、原則として特定期間中に実際に支払った所得税課税対象の給与や賞与などを見ます。
経営者
未払給与や非課税通勤手当も、給与等支払額に入りますか?
税理士
ここは誤解されやすく、注意が必要です。
給与等支払額に含めるのは、原則として、特定期間中に実際に支払った所得税課税対象の給与、賞与、役員報酬などです。
一方、未払給与は、まだ実際に支払っていないため含めません。
また、非課税通勤手当や旅費など、所得税の課税対象とならないものも、給与等支払額には含めません。
経営者
では、特定期間の売上が1,000万円を超えていて、給与が1,000万円以下なら、必ず免税事業者でよいですか?
税理士
そうとは限りません。
特定期間の給与等支払額で免税判定できるとしても、ほかの理由で課税事業者になることがあります。
たとえば、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、そもそも基準期間の判定で課税事業者です。
また、インボイス発行事業者の登録を受けている場合、消費税課税事業者選択届出書を提出している場合、新設法人や特定新規設立法人の特例に該当する場合なども、免税事業者になれないことがあります。
経営者
インボイス登録をしている場合も注意が必要なのですね。
税理士
はい。
基準期間や特定期間の判定だけを見ると免税になりそうでも、インボイス発行事業者として登録している期間は、原則として消費税の申告・納税が必要になります。
そのため、特定期間の判定を確認するときは、必ずインボイス登録の有無もセットで確認してください。
経営者
国外事業者の場合はどうなりますか?
税理士
2024年10月1日以後に開始する課税期間については、課税期間初日に国外事業者に該当する場合、給与等支払額による代替判定は使えません。
その場合は、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定することになります。
日本国内の個人事業者や法人であれば通常は問題になりにくいですが、国外事業者に該当する可能性がある場合は、特に注意が必要です。
経営者
実務では、何を確認すればよいですか?
税理士
まず、次の順番で確認します。
1つ目は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下かどうかです。
2つ目は、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかです。
3つ目は、同じ特定期間中に実際に支払った給与等支払額が1,000万円を超えているかどうかです。
4つ目は、インボイス登録、課税事業者選択届出書、新設法人・特定新規設立法人など、ほかに課税事業者となる理由がないかです。
特定期間の売上だけを見て判断すると誤りやすいため、給与等支払額と届出状況を必ずセットで確認してください。
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な消費税の納税義務判定を解説したものです。実際の判定では、個人事業者か法人か、事業年度、基準期間の課税売上高、特定期間の課税売上高、給与等支払額、インボイス登録状況、各種届出書、新設法人等の特例該当性を確認する必要があります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




