社長一人だけの会社でも、出張旅費規程を作成し、実際の業務上の出張について日当を支給することは可能です。
「従業員がいない」「役員が社長一人だけ」という理由だけで、出張日当が一切認められないわけではありません。
ただし、旅費規程を作ったからといって、規程に書いた金額を何円でも非課税・損金にできるわけではありません。
出張の業務上の必要性、日当額の相当性、規程どおりの継続運用、出張記録の保存が重要です。
経営者
社長一人だけの会社でも、出張旅費規程を作れば日当を出せますか?
税理士
はい。社長一人会社でも、出張旅費規程を整備し、実際の業務上の出張について合理的な金額の日当を支給することは可能です。
「従業員がいない」「役員が社長一人だけ」という理由だけで、出張日当が認められないという規定は確認できません。
経営者
一人会社でも大丈夫なんですね。では、規程を作れば自由に日当を出せますか?
税理士
そこは注意が必要です。
旅費規程を作れば、規程に書いた金額なら何円でも非課税・損金になる、というわけではありません。
所得税では、勤務場所を離れて職務遂行のために旅行した場合に、その旅行に通常必要と認められる範囲の旅費が非課税とされています。
つまり、ポイントは「規程があるか」だけではなく、その出張が業務上必要か、日当額が通常必要な範囲か、という点です。
経営者
「通常必要な範囲」というのは、どう判断するのですか?
税理士
所得税基本通達9-3では、通常必要な旅費かどうかについて、旅行の目的、目的地、行路、期間、宿泊の要否、職務内容、地位などを総合して判断するとされています。
さらに、次のような点も勘案するとされています。
社内の役員・使用人全体を通じて適正なバランスの基準になっているか。
同業種・同規模の他社が一般的に支給している金額と比べて相当か。
一人会社の場合は従業員との比較ができないため、特に同業種・同規模の会社と比べて高すぎない水準にしておくことが重要です。
経営者
日当はいくらまでなら大丈夫、という決まった金額はありますか?
税理士
税法上、「出張日当は1日いくらまで」という全国一律の金額基準はありません。
その会社の規模、業種、出張内容、役職、宿泊の有無などを踏まえて、社会通念上相当な金額かどうかを判断します。
たとえば、国内日帰り出張で毎回2万円の日当を支給する、近所への通常の営業訪問まで日当対象にする、といった設計はリスクが高くなります。
規程があっても、実態として給与や利益分配に近いと見られれば、税務上問題になります。
経営者
社長一人会社だと、どんな旅費規程にしておけばよいですか?
税理士
少なくとも、次の点は明確にしておくべきです。
まず、「出張」とする範囲です。
たとえば、通常の勤務地から一定距離以上、県外、宿泊を伴う場合など、客観的な基準を定めます。
次に、日当額です。
国内日帰り出張、国内宿泊出張、海外出張などで金額を分けることがあります。
さらに、交通費や宿泊費を実費精算にするのか、定額支給にするのかも規程に書いておきます。
一人会社ほど、社長の裁量で自由に日当を出しているように見えないよう、客観的なルールを作ることが大切です。
経営者
旅費規程を作った後は、何を残しておけばよいですか?
税理士
出張ごとに、出張旅費精算書や出張記録を残してください。
具体的には、出張日、行先、訪問先、業務目的、交通手段、宿泊の有無、交通費、宿泊費、日当額が分かるようにしておきます。
打ち合わせであれば、訪問先とのメール、契約書、商談メモ、議事録なども残しておくと、業務上の出張であることを説明しやすくなります。
日当は領収書が出ない支出だからこそ、出張の実態を説明できる記録が重要です。
経営者
プライベート旅行を兼ねる場合はどうなりますか?
税理士
業務と私用が混在する場合は、特に慎重な処理が必要です。
業務上必要な部分と、私的な旅行部分を区分できない場合、日当や旅費の全部または一部が税務上否認されたり、社長への給与と見られたりする可能性があります。
出張日程のうち、どの日に、どこで、誰と、何の業務を行ったのかを説明できるようにしてください。
観光や私用が主目的で、ついでに仕事をしただけのような場合は、出張日当の対象にするのは危険です。
経営者
日当が高すぎると、社長個人に給与課税されますか?
税理士
その可能性があります。
所得税基本通達9-4では、通常必要と認められる旅費の範囲を超える部分について、職務遂行のための旅行であれば、その超過部分は給与所得になるとされています。
つまり、出張自体は業務上必要であっても、日当額が高すぎる場合には、通常必要な範囲を超える部分が給与として課税される可能性があります。
経営者
会社側では、旅費交通費として経費にできますか?
税理士
業務上必要な出張について、合理的な金額の日当を規程に基づいて支給している場合は、会社側では旅費交通費などとして処理することが考えられます。
ただし、実質的に役員への給与と見られる場合には、法人税法上の役員給与の問題になります。
特に、定期同額給与などの要件を満たさない役員給与に該当すると、会社側で損金算入できない可能性があります。
そのため、出張日当は「役員報酬を減らして日当で取る」という発想ではなく、実際の業務出張に伴う通常必要な旅費として設計する必要があります。
経営者
消費税の仕入税額控除はどうなりますか?
税理士
国内出張について、役員や従業員に支給する出張旅費、宿泊費、日当のうち、通常必要と認められる部分は、消費税上も課税仕入れとして取り扱われます。
ただし、業務上の出張であること、通常必要な範囲であること、帳簿や精算書などにより内容を説明できることが前提です。
海外出張や私用部分が混在する場合は、消費税の処理も含めて個別確認が必要です。
経営者
結局、一人会社で出張日当を導入するなら、何をすればよいですか?
税理士
まず、出張旅費規程を作成します。
その中で、出張の定義、日当額、交通費・宿泊費の精算方法、日帰り出張と宿泊出張の区分、海外出張の取扱いなどを明確にします。
次に、日当額を高くしすぎないことです。
同業種・同規模の会社と比べて説明できる水準にしておく必要があります。
そして、出張のたびに、出張日、行先、目的、訪問先、日当額を記録します。
社長一人会社でも日当を出すこと自体は可能ですが、規程、金額、実態、記録の4つがそろっていることが重要です。
町田・相模原で会社設立後の経理・税務に不安がある方へ
社長一人会社では、役員報酬、出張日当、社宅、車両、交際費など、会社と社長個人の境界が曖昧になりやすい論点が多くあります。
出張旅費規程も、作成すること自体が目的ではありません。
税務上説明できる金額にし、実際の出張記録と合わせて継続的に運用することが重要です。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、出張の内容、日当額、出張頻度、規程の内容、記録の保存状況、役員報酬の支給状況などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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