取引先に11,000円を請求したところ、振込手数料440円を差し引かれて、10,560円だけ入金されることがあります。
この場合、インボイス制度ではどう処理すればよいのでしょうか。
結論からいうと、最もシンプルな方法は、差し引かれた振込手数料相当額を「売上値引き」、つまり消費税法上の「売上げに係る対価の返還等」として処理する方法です。
この場合、すでに発行した11,000円のインボイスを作り直す必要はありません。
また、本来は値引きについて適格返還請求書、いわゆる返還インボイスの交付が問題になりますが、税込1万円未満の値引き・返品等については、返還インボイスの交付義務が免除されています。
通常の数百円程度の振込手数料であれば、追加でインボイスを発行しなくてよいケースが多いです。
経営者
取引先に11,000円を請求したのですが、振込手数料440円を差し引かれて、10,560円だけ入金されました。
この場合、インボイスはどうすればいいですか?
税理士
このケースでは、差し引かれた440円を「売上値引き」として処理する方法が、実務上は最もシンプルです。
つまり、11,000円の売上はそのまま計上し、440円を売上げに係る対価の返還等として処理します。
この方法であれば、すでに発行した11,000円のインボイスを10,560円に作り直す必要はありません。
経営者
売上値引きにするということは、返還インボイスが必要になるのではありませんか?
税理士
本来、インボイス発行事業者が売上値引きや返品、割戻しなどを行った場合には、適格返還請求書、いわゆる返還インボイスの交付が問題になります。
ただし、税込1万円未満の売上げに係る対価の返還等については、返還インボイスの交付義務が免除されています。
振込手数料として差し引かれる金額は、通常は数百円程度です。そのため、440円の売上値引きであれば、返還インボイスを別途発行する必要はありません。
経営者
では、最初に発行した11,000円のインボイスはそのままでよいのですか?
税理士
はい。11,000円のインボイスはそのままで構いません。
処理としては、
11,000円の請求インボイスはそのまま保存
差し引かれた440円は売上値引きとして記帳
という整理になります。
たとえば、会計処理のイメージとしては次のようになります。
普通預金 10,560円
売上値引等 440円
売掛金 11,000円
この場合、消費税上は11,000円の課税売上があり、そのうち440円について売上げに係る対価の返還等があった、という整理になります。
経営者
会計ソフトでは、今まで「支払手数料」で処理していました。それでもよいですか?
税理士
ここは注意が必要です。
会計上の科目として「支払手数料」を使うこと自体が、直ちに間違いというわけではありません。
ただし、消費税上の処理としては、「通常の課税仕入れである支払手数料」として処理するのか、「売上げに係る対価の返還等」として処理するのかを区別する必要があります。
国税庁のインボイスQ&Aでは、これまで会計上「支払手数料」として処理していた会社が、インボイス制度開始後に売上対価の返還として処理するよう変更しても問題ないとされています。
また、会計科目を「支払手数料」のままにしつつ、消費税上は売上対価の返還として扱うことも可能です。
ただし、その場合は通常の支払手数料と混ざらないように、税区分や補助科目などで区別しておく必要があります。
経営者
「支払手数料」として課税仕入れにする方法もあるのですか?
税理士
あります。
ただし、その場合は処理が少し複雑になります。
取引先が、自社に対して「代金決済上の役務」を提供したものとして、440円を支払手数料にする方法です。
この場合、自社側では取引先からサービスを受けた課税仕入れという整理になります。
そのため、原則として取引先から440円分のインボイスを受け取る必要があります。
少額特例の適用対象であれば別ですが、少額特例は一定規模以下の事業者に限られ、適用期限もある経過措置です。
通常の振込手数料控除では、インボイス対応を簡単にするため、支払手数料ではなく売上値引き方式で統一する方が管理しやすいです。
経営者
取引先が銀行手数料を立て替えた、と考える方法もありますか?
税理士
それも考え方としてはあります。
取引先が自社に代わって銀行振込手数料を立替払いした、という整理です。
ただし、この方法をとる場合は、原則として銀行が発行したインボイスと、取引先からの立替金精算書などが必要になります。
また、差し引かれた金額が、実際の銀行振込手数料と同額であることも重要です。
実務上は、そこまで資料をそろえるのが面倒なことが多いため、通常の数百円程度の振込手数料であれば、売上値引き方式の方が簡便です。
経営者
売上値引きにする場合、消費税率はどうなりますか?
税理士
値引きに適用する税率は、元の売上の税率に合わせます。
たとえば、元の売上が10%対象であれば、差し引かれた440円も10%対応の売上値引きとして処理します。
元の売上が軽減税率8%対象であれば、その値引きも8%対応です。
複数税率の商品が混在している場合は、どの売上に対応する値引きなのかを整理する必要があります。
経営者
税込1万円未満なら返還インボイス不要というのは、少額特例と同じですか?
税理士
別制度です。
税込1万円未満の売上げに係る対価の返還等について、返還インボイスの交付義務が免除される制度には、事業者規模の制限や適用期限はありません。
一方、一定規模以下の事業者が税込1万円未満の課税仕入れについてインボイス保存を不要とできる少額特例は、対象事業者や適用期間に制限があります。
名前は似ていますが、制度の中身は別です。
経営者
では、今後の社内ルールとしてはどうすればよいですか?
税理士
通常の振込手数料控除については、次のように統一するのが分かりやすいです。
取引先が振込手数料相当額を差し引いて入金してきた場合は、原則として売上値引きとして処理する。
税込1万円未満であれば、返還インボイスは発行しない。
元の売上と同じ税率で値引きを処理する。
会計科目を「支払手数料」として表示する場合でも、消費税区分は通常の課税仕入れと分け、売上対価の返還として分かるようにする。
このルールにしておくと、インボイス対応がかなり簡単になります。
経営者
税務以外に注意点はありますか?
税理士
あります。
税務上は売上値引きとして処理できる場合でも、取引上そもそも振込手数料を売手に負担させてよいかは別問題です。
国税庁のインボイスQ&Aでも、取適法の適用対象となる取引については、当事者間の合意があっても、振込手数料を売手に負担させて代金から差し引くことが禁止されている旨の注意書きがあります。
つまり、税務処理としては売上値引きで整理できても、その取引で手数料控除自体が許されるかは、契約内容や取引適正化法制の確認が必要です。
町田・相模原でインボイス対応に不安がある方へ
インボイス制度では、数百円の振込手数料控除であっても、売上値引き、支払手数料、立替金のどれとして処理するかで、必要な書類や消費税区分が変わります。
特に、会計ソフト上では「支払手数料」と表示していても、消費税上は売上げに係る対価の返還等として処理するケースがあります。
この区分が曖昧なままだと、消費税の申告や税務調査で説明が難しくなる可能性があります。
町田・相模原で、インボイス対応、売上入金時の振込手数料処理、消費税区分の整理に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、契約内容、振込手数料の負担関係、会計処理方法、税率、インボイス保存状況、取適法の適用有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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