最低賃金を引き上げる会社が、生産性向上につながる設備投資を行う場合、「業務改善助成金」を利用できることがあります。
ただし、最低賃金を上げれば自動的にもらえる制度ではありません。
2026年度の業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上につながる設備投資等を行う場合に、その費用の一部が助成される制度です。
特に注意すべきなのは、順番です。
設備を先に契約・購入してから助成金を申請する、という進め方は原則としてNGです。購入予定のPOSレジ、機械、パソコン等がある場合は、契約・発注・納品・支払いの前に、助成対象になるか確認する必要があります。
なお、この記事は2026年8月24日時点で公表されている令和8年度制度を前提にしています。実際の申請にあたっては、厚生労働省、都道府県労働局、社会保険労務士等に最新情報を確認してください。
経営者
最低賃金を引き上げると、「業務改善助成金」がもらえると聞きました。
どんな会社が対象になるのでしょうか?
税理士
業務改善助成金は、最低賃金を引き上げるだけで自動的にもらえる制度ではありません。
大きくいうと、中小企業・小規模事業者が、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、そのうえで生産性向上につながる設備投資等を行う場合に、費用の一部が助成される制度です。
2026年度は、50円コース、70円コース、90円コースがあり、助成上限は最大600万円とされています。
経営者
対象になるのは、中小企業だけですか?
税理士
基本的には、中小企業・小規模事業者が対象です。
業種ごとに、資本金または常時使用する労働者数の基準があります。
小売業であれば、資本金5,000万円以下または常時使用する労働者数50人以下です。
サービス業であれば、資本金5,000万円以下または常時使用する労働者数100人以下です。
卸売業であれば、資本金1億円以下または常時使用する労働者数100人以下です。
製造業、建設業などその他の業種であれば、資本金3億円以下または常時使用する労働者数300人以下です。
ただし、いわゆる「みなし大企業」は対象外になります。
経営者
最低賃金をいくら上げれば対象になりますか?
税理士
2026年度は、事業場内で最も低い賃金を、50円、70円、90円以上引き上げるコースが予定されています。
ただし、誰の賃金を見ればよいかも重要です。
2026年度の制度では、事業場内最低賃金の基準となる労働者は、原則として雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者とされています。
そのため、単にアルバイトやパートの時給を見ればよいというだけではなく、雇用期間や雇用保険加入状況も確認する必要があります。
経営者
2026年度は、どの会社でも申請できるのでしょうか?
税理士
2026年度については、申請事業場の事業場内最低賃金が、2026年度の改定後地域別最低賃金を下回っていることが必要とされています。
一方で、申請時点で現在効力のある地域別最低賃金を下回っていてもいけません。
つまり、現在の最低賃金は守っているけれど、今年の最低賃金改定によって賃上げが必要になる事業場を主な対象とする仕組みです。
東京・神奈川のように最低賃金が高い地域では、対象になるかどうかを、事業場ごとの時給で早めに確認する必要があります。
経営者
POSレジを買いたいのですが、業務改善助成金の対象になりますか?
税理士
POSレジは、対象になり得ます。
厚生労働省も、POSレジシステムの導入による在庫管理時間の短縮を、対象経費の例として示しています。
ただし、単に「レジを買うから対象」というわけではありません。
導入によって、会計作業、在庫管理、売上集計、発注管理などの時間がどれだけ短縮されるのかを説明できる必要があります。
業務改善助成金は、生産性向上や労働能率の増進につながる設備投資が前提です。
経営者
パソコンは対象になりますか?
税理士
通常の事務用パソコンは、原則として対象外です。
普通の汎用事務機器、単なる経費削減、広告宣伝費などは、原則として助成対象になりません。
ただし、2026年度の制度では、物価高騰等要件を満たす特例事業者であれば、新規導入するパソコン、スマートフォン、タブレット、周辺機器も対象になり得るとされています。
ここで重要なのは、「新規導入」かどうかです。
古くなったパソコンを同程度の新しいパソコンに買い替えるだけでは、対象になりにくいと考えられます。
経営者
物価高騰等要件とは何ですか?
税理士
原材料費の高騰など、外的要因によって利益率が低下している事業者を想定した要件です。
2026年度の制度では、申請前最近6か月平均の売上高総利益率または売上高営業利益率が、前年同期より3%ポイント以上低下している場合が、物価高騰等要件に該当するとされています。
パソコン、スマートフォン、タブレットなどを助成対象に含めたい場合は、この物価高騰等要件を満たすかどうかを、数字で確認する必要があります。
経営者
製造機械や業務用設備は対象になりますか?
税理士
対象になり得ます。
たとえば、製造機械、業務用設備、予約管理システム、POSレジ、券売機、調理機器、特殊機器などは、作業時間の短縮や処理能力の向上を説明できれば対象になる可能性があります。
一方で、古い機械を同じ程度の新品に買い替えるだけでは、単なる更新と見られやすく、対象になりにくいです。
「何分短縮できるのか」「何人分の作業を減らせるのか」「処理件数がどれだけ増えるのか」など、生産性向上の説明が重要です。
経営者
先に買ってしまってから申請してもよいですか?
税理士
それは避けてください。
業務改善助成金で最も危険なのは、順番を間違えることです。
設備の契約、発注、納品、支払いは、原則として交付決定後でなければ対象になりません。
先に設備を買ってから「助成金を使えますか」と確認しても、原則として対象外になります。
購入予定の設備がある場合は、見積り段階で止めて、契約・発注の前に確認してください。
経営者
2026年度は、いつまでに申請する必要がありますか?
税理士
2026年度は、交付申請の受付が2026年9月1日開始とされています。
申請期限は、「地域別最低賃金発効日の前日」と「2026年11月30日」のいずれか早い日です。
そのため、東京・神奈川の最低賃金が10月1日発効となる場合、原則として9月30日までに申請し、対象となる賃上げを進める必要があります。
9月1日から9月30日までしか時間がないため、かなりタイトです。
対象になりそうな会社は、購入予定設備、現在の最低時給、賃上げ予定額、対象労働者数を早めに整理する必要があります。
経営者
助成率はどのくらいですか?
税理士
2026年度の制度では、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は4分の5、1,050円以上の場合は4分の3とされています。
東京・神奈川の事業場については、適法に最低賃金を支払っている限り、基本的には4分の3区分になると考えられます。
助成上限額は、賃上げ額と引上げ人数によって変わり、90円コースでは最大600万円とされています。
経営者
申請前に確認しておくことはありますか?
税理士
少なくとも、次の確認が必要です。
業種、資本金、常時使用する労働者数、申請する店舗や事業所ごとの人数、最も低い従業員の現在の時間給、その従業員の雇用期間と雇用保険加入状況、何円引き上げる予定か、購入予定設備の内容と金額、現在の業務時間と導入後の削減見込みです。
さらに、すでに見積り、契約、発注、納品、支払いをしていないか、過去6か月の解雇や賃金引下げ等がないか、パソコン等を申請する場合は物価高騰等要件を満たすかも確認してください。
業務改善助成金は、制度を知っているだけでは足りません。順番と証拠資料が重要です。
町田・相模原で設備投資や起業準備を考えている方へ
町田・相模原で店舗、飲食店、美容室、小売業、製造業、建設業などを始める場合、最低賃金、採用、設備投資、資金繰りは切り離して考えられません。
業務改善助成金は、賃上げと設備投資がセットになる制度です。そのため、単に「POSレジを買いたい」「パソコンを買いたい」という話ではなく、賃金水準、設備導入の順番、生産性向上の説明、資金繰りまで含めて検討する必要があります。
タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原で起業する方や小規模事業者向けに、起業時に役立つ情報をまとめたポータルページ「まちさがビジネスナビ」も公開しています。
町田・相模原で起業する方向けの情報は、まちさがビジネスナビをご覧ください。
助成金そのものの申請代行は、制度上、社会保険労務士などの専門領域になる場合があります。一方で、設備投資、資金繰り、会計処理、法人設立後の経理体制については、税理士として確認すべき点が多くあります。
町田・相模原で、賃上げ、設備投資、資金繰り、税務顧問をまとめて相談したい方は、タクスリンク税理士事務所へご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、2026年8月24日時点で公表されている情報に基づく一般的な解説です。業務改善助成金は、年度、地域別最低賃金、交付要綱、交付要領、Q&Aにより取扱いが変わる可能性があります。実際の申請可否、申請手続、代理申請については、厚生労働省、都道府県労働局、社会保険労務士等に最新情報を確認してください。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
Latest entries
税金あれこれ2026年8月26日フリーランスの節税、何から始める?経費・控除・共済で手取りを守る具体策
法人税2026年8月26日研究開発税制とは?試験研究費の範囲・人件費・ソフトウェア開発の注意点を解説
所得税2026年8月26日中退共の掛金は経費になる?損金・必要経費・消費税・仕訳を税理士が解説
所得税2026年8月26日国民年金基金は節税になる?個人事業主向けにiDeCoとの違い・併用を税理士が解説




