事業用の土地・建物を売って買い換えたら税金はどうなる?買い換え特例を税理士が解説

事業用土地・建物の買い換え

事業で使っている土地や建物を売却すると、取得費より高く売れた場合には譲渡所得が生じ、所得税・住民税がかかります。

例えば、昔から所有している店舗や工場の土地を売却すると、取得価額が低いため、大きな譲渡益が発生することがあります。

そこで確認したいのが、「特定の事業用資産の買換えの特例」です。

個人が一定の事業用の土地・建物等を売却し、法律で定められた組合せに該当する新たな事業用資産へ買い換えた場合には、売却益の一部について、その時点での課税を将来へ繰り延べることができます。

2026年現在、原則的な課税割合は20%です。

つまり一定の場合には、譲渡益のうちおおむね80%相当について課税を将来へ繰り延べる仕組みになります。

ただし、これは税金を免除する制度ではありません。

買換資産の税務上の取得価額を圧縮することで、将来その資産を売却した場合や、建物を減価償却する過程で課税関係が引き継がれます。

また、買換えの種類や地域によって、課税割合が20%ではなく10%、25%、30%、40%となる場合もあります。

この記事では、個人が所有する事業用土地・建物の買換えを中心に説明します。

法人が所有する資産については、租税特別措置法65条の7等による「特定資産の買換えの圧縮記帳」という別の制度になるため、計算方法や手続が異なります。

買換え特例は「非課税」ではなく「課税の繰延べ」

この特例を利用すると、買換資産の取得費は、単純に実際の購入価格になるわけではありません。

売却した旧資産の取得費を一定の方法で引き継ぎます。

その結果、

・将来、買換資産を売却したときの譲渡益が大きくなる

・買換資産が建物の場合、その後の減価償却費が小さくなる

といった影響が生じます。

つまり、

現在の税金を減らす代わりに、将来へ課税を持ち越す

制度です。

原則は譲渡益の80%程度を繰り延べる仕組み

例えば、次のようなケースを考えます。

・事業用不動産の売却価額 1億円
・取得費と譲渡費用の合計 4,000万円
・買換資産の取得価額 1億円以上
・課税割合 20%

通常であれば、単純化すると、

1億円-4,000万円=6,000万円

の譲渡益が生じます。

買換え特例を使い、課税割合が20%の場合には、

収入金額

1億円×20%=2,000万円

必要経費

4,000万円×20%=800万円

となり、

2,000万円-800万円=1,200万円

が課税対象となる譲渡所得です。

本来の譲渡益6,000万円のうち、

1,200万円が今回課税

4,800万円相当が将来へ繰延べ

というイメージになります。

買換資産の方が安い場合は差額部分にも課税される

課税割合20%の場合、売却価額が買換資産の取得価額を上回るときの収入金額は、

(売却価額-買換資産の取得価額)+買換資産の取得価額×20%

によって計算します。

したがって、

「買換えをしたから売却益の80%が必ず繰り延べられる」

という理解は正確ではありません。

80%ではなく90%・75%・70%・60%になる場合もある

課税割合と、おおまかな課税繰延割合の関係は次のとおりです。

課税割合 おおまかな繰延割合
10% 90%
20% 80%
25% 75%
30% 70%
40% 60%

例えば、長期所有資産の買換えについて、東京都特別区内の主たる事務所を集中地域外へ移転する一定の買換えでは、課税割合10%となるケースがあります。

反対方向の移転等では、25%、30%、40%となるケースがあります。

所在地によって税額が変わるため、

「買換え特例=80%繰延べ」

と固定して計算しないことが重要です。

2026年現在、よく使われる「10年超所有」の買換え特例は2029年3月31日まで

この代表的な買換えでは、

・譲渡する年の1月1日時点で所有期間が10年を超える国内の土地等・建物・構築物を譲渡する

・国内にある一定の土地等・建物・構築物を取得する

といった要件があります。

土地を買換資産とする場合には、原則として300平方メートル以上で、一定の事務所、工場、店舗、倉庫などの敷地として使用するものなどに限られます。

土地なら何でも買換資産にできるわけではない

さらに、買換資産が土地等の場合には、原則として、

譲渡した土地等の面積の5倍以内

という面積制限があります。

5倍を超える部分については、買換え特例の対象となりません。

したがって、

「土地を売った金額を全部別の土地に投資すればよい」

という制度ではありません。

所在地、面積、用途をセットで確認する必要があります。

空き地や空き家は「事業用」にならないことがある

不動産賃貸については、事業的規模まで達していなくても、

・相当の対価を得ている

・継続的に貸し付けている

といった場合には、「事業に準ずるもの」として特例の対象となる場合があります。

一方、単に何も使っていない土地や建物を売却する場合は、

「昔は事業用だった」

というだけでは足りません。

売却時点の利用状況まで確認します。

売却した年の前年・翌年に買っても対象になる場合がある

例えば、譲渡した翌年に買換資産を取得する予定であれば、譲渡年分の確定申告時に、

・取得予定年月日

・取得価額の見積額

・該当する買換えの種類

などを記載した「買換(代替)資産の明細書」を提出します。

また、一定のやむを得ない事情がある場合には、取得期間が延長される場合もあります。

2024年4月から「事前届出」を忘れると特例を使えないケースがある

同一年中に譲渡資産の譲渡と買換資産の取得を行う場合には、

譲渡日または取得日のいずれか早い日を含む「三月期間」の末日の翌日から2か月以内

に、「特定の事業用資産の買換えの特例の適用に関する届出書」を提出します。

具体的には次のとおりです。

譲渡日または先行取得日 届出期限
1月1日~3月31日 5月末日
4月1日~6月30日 8月末日
7月1日~9月30日 11月末日
10月1日~12月31日 翌年2月末日

例えば、2026年7月10日に事業用不動産を売却し、2026年9月に買換資産を取得する場合には、原則として2026年11月末までに届出が必要です。

確定申告時期になって初めて買換え特例を検討すると、すでに届出期限を過ぎている可能性があります。

先に買った場合にも別の届出がある

買換資産は取得後1年以内に事業で使う

そのため、

「とりあえず土地を買っておき、何年か後に店舗を建てる」

といった計画では、事業供用期限の問題が生じます。

特に土地については、建物の建設スケジュールも含めて確認する必要があります。

買換え特例を使うと建物の減価償却費も小さくなる

例えば、実際には5,000万円で建物を購入したとしても、買換え特例による取得価額の引継ぎ計算によって、税務上の取得価額がそれより大幅に低くなる場合があります。

その場合、

「売却年の譲渡所得税は少なくなった」

一方で、

「その後の事業所得・不動産所得の減価償却費も少なくなる」

ということが起こります。

目先の納税額だけでなく、将来の減価償却と出口まで含めて判断する必要があります。

将来売却すると繰り延べた課税が戻ってくる

これが、買換え特例が「非課税制度」ではなく「課税繰延制度」といわれる理由です。

法人名義の土地・建物なら制度が違う

買換え特例を検討するときに確認する資料

この制度は、物件の所在地や金額だけでは適用可否を判断できません。

少なくとも次の資料・情報を確認します。

確認項目 確認内容
所有者 個人か法人か
譲渡資産の所在地 どの買換え類型に該当するか
取得年月日 所有期間要件を満たすか
売却予定日・売却価額 適用期限・課税額の計算
取得費 土地建物の取得価額、建物の減価償却後取得費
譲渡費用 仲介手数料等
買換資産の所在地 地域要件・課税割合の判定
買換資産の取得価額 繰延対象額の計算
土地面積 300㎡要件・5倍面積制限等の確認
事業用途 売却前・買換え後とも事業用といえるか
取得・事業供用予定日 取得期間・1年以内供用要件

特に金額の大きな不動産については、

売買契約を締結してから税務を考えるのではなく、売却と購入のスケジュールを決める前に適用可否を確認する

ことをおすすめします。

届出期限を過ぎたり、買換土地の面積が要件を満たさなかったりすると、想定していた税額と大きく変わる可能性があります。

町田・相模原で事業用不動産の売却・買換えを検討している方へ

特定の事業用資産の買換え特例は、含み益の大きな事業用土地・建物を売却する際に、大きな納税負担を一時的に軽減できる場合があります。

一方で、

・個人か法人か

・所有期間

・売却物件と購入物件の所在地

・土地面積

・事業用途

・取得時期

・事業供用時期

・事前届出

によって適用可否や繰延割合が変わる複雑な制度です。

また、特例を使えば必ず有利というわけではなく、買換資産の取得価額が圧縮されることで、その後の建物の減価償却費や将来の売却時の譲渡所得にも影響します。

タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原を中心に東京都・神奈川県の個人事業主・中小企業の税務顧問、不動産譲渡、事業用資産の買換えに関する税務相談に対応しています。

事業用の土地・建物の売却と新しい物件の購入を検討している場合は、売買契約を進める前の段階でご相談ください。

※本記事は、2026年9月現在の法令・国税庁公表資料に基づき、個人が所有する事業用土地・建物等について、特定の事業用資産の買換え特例を利用する場合の一般的な取扱いを解説したものです。実際の適用可否・課税割合・譲渡所得額は、個人・法人の別、譲渡資産および買換資産の所在地、取得時期、所有期間、土地面積、事業用途、譲渡価額、取得価額、取得費、譲渡費用、取得日・事業供用日、地域区分等によって異なります。また、届出期限を過ぎると適用できない場合があるため、高額な不動産の売買については契約前に個別確認することをおすすめします。

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末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。