「不動産投資は減価償却で節税になる」と聞いて調べ始めたものの、耐用年数やら定額法やら聞き慣れない言葉が並んでいて、結局自分の物件でいくら経費にできるのか分からない——。
そんな状態で立ち止まっていませんか。
減価償却は、不動産投資の節税効果を左右する一番の要になる仕組みです。
ただ、計算のルールを正しく押さえていないと「思ったより経費にならなかった」「中古物件の耐用年数の出し方を間違えていた」ということが起こります。
この記事では、減価償却費がどう計算されるのか、その手順を具体的な数字とともに整理します。
なぜ分かりにくいのか。
減価償却の正体
減価償却とは、建物の購入代金を一度に経費にするのではなく、法律で決められた「耐用年数」に分けて少しずつ経費として計上していく会計処理です。
実際にお金が出ていく取引ではないのに、帳簿上は毎年経費が発生するため、不動産所得を圧縮でき、給与所得などと損益通算すれば所得税・住民税の負担を軽くできます。
分かりにくくなる理由は主に2つあります。
1つは、建物と土地を分けて考えなければならないこと。
土地は劣化しないという考え方から、減価償却できるのは建物部分だけで、土地の購入代金は経費にできません。
もう1つは、耐用年数が建物の構造によって違い、しかも中古物件では新築とは別の計算式を使う必要があることです。
この2点を押さえれば、計算の見通しはぐっと良くなります。
減価償却費を計算する手順
手順1:建物と土地の価格を分ける(按分)
売買契約書に建物と土地の価格が別々に書かれていればそれを使いますが、一括表示の物件も少なくありません。
その場合は、固定資産税評価額の建物・土地の比率で購入価格を按分するのが一般的なやり方です。
例えば評価額の内訳が建物30%・土地70%であれば、購入価格もその割合で振り分けます。
手順2:建物の構造から法定耐用年数を確認する
建物の構造ごとに、税法上の法定耐用年数が決まっています。
- 木造:22年
- 軽量鉄骨造(鋼材の厚さ3mm以下):19年
- 軽量鉄骨造(鋼材の厚さ3mm超):27年
- 鉄筋コンクリート造(RC造):47年
同じ建物価格でも、木造とRC造では1年あたりに経費にできる金額が大きく変わります。
木造は耐用年数が短い分、年間の減価償却費は大きくなり、RC造は耐用年数が長い分、1年あたりの償却費は小さくなります。
手順3:中古物件は「簡便法」で耐用年数を出し直す
新築ではなく中古物件を購入した場合、法定耐用年数をそのまま使うのではなく、国税庁が定める簡便法で残りの耐用年数を計算し直します。
- 法定耐用年数の一部が経過している場合:
残存耐用年数 =(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20% - 法定耐用年数をすでに超えている場合:
残存耐用年数 = 法定耐用年数×20%
いずれも1年未満の端数は切り捨てます。
計算結果が2年に満たない場合は、耐用年数を2年として扱う決まりになっています(国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」)。
例えば、築10年の木造アパート(法定耐用年数22年)なら、(22年-10年)+10年×20%=14年です。
築30年の木造アパートのように法定耐用年数をすでに超えている場合は、22年×20%=4.4年→端数切り捨てで4年となります。
耐用年数が短くなるほど、1年あたりに計上できる減価償却費は大きくなるため、築古の木造物件が節税効果を語られやすいのはこのためです。
手順4:定額法で年間の減価償却費を出す
耐用年数が決まれば、あとは建物価格をその年数で割る(正確には耐用年数ごとに定められた償却率をかける)だけです。
定額法の考え方はシンプルで、
年間の減価償却費 = 建物価格 ÷ 耐用年数
でおおよその金額がつかめます。
例えば建物価格2,000万円・耐用年数4年(築古の木造)であれば、2,000万円÷4年=年間500万円を経費として計上できる計算になります。
実際の申告では耐用年数ごとに定められた償却率を使いますが、まずはこの割り算のイメージを持っておくと全体像がつかみやすくなります。
つまずきやすいポイント
土地は減価償却の対象外であることを見落として、購入価格全体を耐用年数で割ってしまうミスがよくあります。
土地・建物の按分を最初にきちんと行わないと、経費計上額そのものがずれてしまうので注意してください。
耐用年数が終わった後の資金繰りにも目を向けておく必要があります。
減価償却費として計上できる金額がなくなる一方で、ローンの元本返済は続くため、帳簿上は黒字なのに手元の現金が減っていく状態になることがあります。
この現象や、そもそも自分にとって不動産投資が本当に得なのかどうかの判断は、不動産投資の節税、本当に得する人・損する人の違いとはで詳しく整理しているので、あわせて確認してみてください。
また、減価償却そのものへの誤解も起きやすいところです。
「減価償却費が多い=得」と単純に考えてしまいがちですが、減価償却は経費計上のタイミングを分散させているだけで、将来の売却時には取得費が減った分、譲渡益が増えて税負担が発生することもあります。
減価償却の基本的な考え方や、不動産以外の資産にも共通する誤解しやすいポイントは、減価償却は節税になる?勘違いしやすい仕組みと今日からできる対策でも解説しています。
まとめ
不動産投資の減価償却は、①建物と土地の按分、②構造ごとの法定耐用年数の確認、③中古なら簡便法での耐用年数の出し直し、④定額法での年間償却費の計算、という手順で整理すれば決して難しいものではありません。
自分の物件でいくら経費にできるかを一度この順番で計算してみると、節税効果の見通しがぐっとクリアになるはずです。

