「今期は利益が出そうだから、パソコンや車を買って減価償却で節税しよう」。
決算前になると、こんな話を耳にすることはありませんか。
実はこの発想、半分正解で半分は勘違いです。
減価償却の仕組みを正しく理解しないまま資産を買ってしまうと、期待したほど税金が減らなかったり、逆に資金繰りを苦しくしてしまったりすることもあります。
節税の基本と失敗しない考え方でも触れていますが、節税は「仕組みを理解したうえで選ぶ」ことが何より大切です。
今回は、減価償却がなぜ節税につながるのか、その仕組みと限界、そして実務で使える具体的な対策を整理してお伝えします。
なぜ「減価償却=節税」と言われるのか
減価償却とは、パソコンや機械、車両といった長く使う固定資産の購入代金を、一度に経費にせず、法律で定められた耐用年数に応じて複数年に分けて経費計上していく会計処理のことです。
たとえば500万円の機械を購入し、耐用年数が10年だった場合、毎年50万円ずつを減価償却費として経費に計上します。
現金の支出は購入時に済んでいるのに、その後何年にもわたって「支出を伴わない経費」を計上できるのが減価償却の特徴です。
この経費が増えるほど利益が圧縮され、結果として法人税や所得税の負担が軽くなります。
これが「減価償却は節税になる」と言われる理由です。
ただし、ここで注意したいのは、減価償却の本質は「経費の先取り」ではなく「経費計上のタイミングを耐用年数に分散させているだけ」だという点です。
最終的に計上できる経費の総額は、資産の取得価額を超えることはありません。
つまり通常の減価償却だけを見れば、税負担が軽くなるというより「今年の税金を将来に先送りしている」という側面が強いのです。
この違いを理解しないまま「経費が増えるから得だ」と考えると、後で「思ったより税金が減らなかった」という誤解につながります。
減価償却で実際に得をする仕組み・コツ
とはいえ、使い方次第で実質的な節税効果を得られる制度もあります。
代表的なものを整理します。
少額の資産は一括で経費にする
取得価額が30万円未満の資産は、青色申告をしている中小企業者であれば、購入した年に全額を経費にできる「少額減価償却資産の特例」が使えます。
年間の合計が300万円までという上限はありますが、パソコンやオフィス家具など日常的に買い替える備品には特に相性がよい制度です。
10万円以上20万円未満の資産であれば「一括償却資産」として3年間で均等に償却する方法もあり、こちらは償却資産税(固定資産税の一種で、事業用の機械や器具備品などが対象)がかからないというメリットがあります。
定額法と定率法を使い分ける
減価償却の計算方法には、毎年同じ金額を計上する「定額法」と、初年度に多くの金額を計上する「定率法」があります。
資金繰りに余裕を持たせたい年度には、初年度の償却額が大きい定率法を選ぶことで、早い段階で税負担を軽くできます。
逆に、利益の見通しが安定していて計画を立てやすくしたい場合は定額法が向いています。
どちらを選べるかは資産の種類や会社の設立時期によって異なるため、迷ったら顧問税理士に確認するのが確実です。
特別償却・税額控除の制度を活用する
一定の設備投資を行う中小企業には、通常の減価償却に加えて特別償却や税額控除を受けられる制度が用意されています。
たとえば中小企業投資促進税制では取得価額の30%の特別償却か7%の税額控除、中小企業経営強化税制では即時償却や10%の税額控除が選択できます(適用期限は延長が重ねられていますが、時期によって条件が変わるため、利用前に最新の要件を国税庁や税理士に確認することをおすすめします)。
こうした制度は、通常の減価償却よりも直接的に税負担を軽くできるため、まとまった設備投資を検討しているなら早めにチェックしておきたいところです。
中古資産を活用する
中古の車両や設備は、新品に比べて法定耐用年数が短くなる場合があります。
耐用年数が短いほど1年あたりの減価償却費は大きくなるため、短期間で経費化を進めたい場合には中古資産の購入も選択肢に入ります。
つまずきやすいポイント・よくある誤解
減価償却を活用するうえで、実務でつまずきやすい点もあわせて押さえておきましょう。
まず、「経費が増えるから資産をどんどん買えばいい」という考え方は危険です。
減価償却費が増えても、資産の購入自体には現金が出ていきます。
手元資金が減っているのに、見かけの利益だけを気にして必要のない資産を買い込むと、資金繰りが悪化してしまいます。
節税額よりも支出額のほうが大きいことを忘れないようにしましょう。
次に、法定耐用年数を誤って適用してしまうケースです。
耐用年数は資産の種類ごとに細かく定められており、誤った年数で計算すると税務調査で否認されるリスクがあります。
固定資産台帳の整備が不十分なまま何年も運用していると、いざというときに根拠を示せず、余計な手間がかかることもあります。
また、事業用の機械や器具備品などは、法人税とは別に償却資産税(固定資産税の一種)の申告が必要になる場合があります。
この申告を忘れていると、後から追徴課税を受けることもあるので注意が必要です。
最後に、法人の場合、減価償却費の計上額は基本的に任意で調整できますが、意図的に減価償却を見送って利益を大きく見せる、あるいは逆に多く計上しすぎるといった操作は、金融機関の融資審査で不自然に映ることがあります。
法人の節税でも解説している通り、短期的な税負担よりも、決算書全体の信頼性を優先すべき場面もあることは覚えておきたいところです。
個人事業主の場合も同様で、個人事業主の節税で紹介しているように、経費計上をやりすぎると融資審査で不利になることがあります。
まとめ
減価償却は正しく理解して使えば、資金繰りを維持しながら税負担を調整できる有効な手段です。
ただし、その効果の多くは「経費計上のタイミングを分散させる」ことによるものであり、無条件に税金が減るわけではないという前提を押さえたうえで、少額減価償却資産や特別償却などの制度を組み合わせて活用することが大切です。
判断に迷う場面では、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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