法人の投資信託、節税になる?損益通算と分配金非課税の仕組みと注意点

「会社の資金を投資信託で運用すれば節税になる」という話を聞いて、本当にそうなのか気になったことはありませんか。
本業の利益にそのまま税金がかかるのはもったいない、何か手を打てないかと考えている経営者の方は多いと思います。

結論から言うと、法人の投資信託には確かに節税として使える仕組みがあります。
ただし個人の投資とは税率も使える制度も違うため、仕組みを知らないまま始めると「思ったほど得にならなかった」となりかねません。
今回は、法人が投資信託で節税できると言われる理由と、その具体的な仕組み、見落としやすい注意点まで順番に整理していきます。

法人の投資信託が節税になると言われる理由

まず押さえておきたいのは、法人の投資信託による節税は「非課税になる」わけではなく、本業の損益と投資の損益を組み合わせて課税対象額を小さくするという仕組みだという点です。
個人の場合、投資の利益と本業の給与や事業の損益は別々に計算されますが、法人の場合はすべて1つの決算にまとめて法人税を計算します。
この「損益を1つにまとめられる」という法人特有の性質が、節税として使われる最大の理由です。

法人の節税全体の中でも、投資信託の活用は資金の置き場所を変えるだけで取り組める手段として挙げられることが多いのですが、実際にどう課税対象額が変わるのかを知らないまま話を聞くと、効果を過大に受け取ってしまいがちです。
次の章で、具体的にどんな場面で税負担が軽くなるのかを見ていきます。

法人の投資信託で使える節税の仕組み

1. 本業の損益と投資信託の損益を相殺する(損益通算)

法人税は、本業の利益と投資信託の利益・損失をまとめて計算します。
たとえば本業が200万円の赤字でも、投資信託で300万円の利益が出ていれば、課税対象になるのは差額の100万円です。
逆に、本業が800万円の利益で投資信託が200万円の損失であれば、課税対象は600万円に圧縮されます。

どちらのケースでも、投資信託の損益を本業に合算することで税金のかかる金額そのものを減らせるのが、法人ならではの強みです。
個人の場合、株式や投資信託の利益は本業の所得とは別枠で計算されるため、こうした相殺はできません。

2. 分配金の一部が益金不算入になる

投資信託の種類によっては、受け取った分配金の一部を法人税の課税対象外にできる「益金不算入」という制度があります。
たとえば特定の株式投資信託の分配金であれば、受け取った分配金のうち20%相当額は課税所得に含めずに計算できます。
これは、投資信託が保有する株式の配当にすでに税金がかかっている分を調整するための仕組みで、同じ利益への二重課税を避ける目的があります。
対象となる投資信託の種類や不算入の割合は運用会社によって扱いが異なるため、購入前に目論見書や運用会社への確認を挟んでおくと安心です。

3. 発生した損失は最大10年間繰り越せる

投資信託で損失が出た年に本業の利益と相殺しきれなかった場合でも、その損失は最大10年間、翌年以降の利益と相殺するために繰り越せます。
個人の場合、同様の損失繰越は最大3年までとされているため、長いスパンで損益を平準化できる点は、法人で運用する大きな利点の一つです。
繰越損失を抱えている法人であれば、投資信託の運用益をその範囲内でぶつけていく、という使い方も検討の余地があります。

法人名義で投資信託をする前に知っておきたい注意点

ここまでの仕組みだけを見ると良いことばかりに思えますが、個人の投資と比べて見落としやすい違いがいくつかあります。

税率そのものは個人より高くなりやすい

個人が投資信託で得た利益への税率は、所得の大きさに関わらず一律20.315%です。
一方、法人税の実効税率はおおむね21%〜34%程度で、会社の規模や利益額によって変わります。
つまり、損益通算や益金不算入をうまく使えたとしても、課税対象額にかかる税率そのものは個人より高くなる場面があるということです。
本業の利益が大きい会社ほど、この税率差の影響は大きくなります。

NISAや特定口座が使えない

個人の投資で使えるNISAの節税効果のような非課税制度は、法人には用意されていません。
また法人は特定口座を開設できないため、投資信託の売買で生じた損益は自社で計算し、法人税の申告に反映させる必要があります。
証券会社が自動的に税額を計算してくれる個人の特定口座(源泉徴収あり)のような仕組みがない分、事務の手間は増えると考えておいた方がよいでしょう。

売っていなくても期末時価で課税対象になることがある

個人の投資信託は、売却して利益を確定させるまで課税されません。
これに対し法人の場合、保有している投資信託の種類によっては、決算時点でまだ売却していない含み益であっても期末の時価で評価し、その評価益が課税対象に含まれることがあります。
手元に現金が入っていないのに税金だけがかかる状況は資金繰りを圧迫しかねないため、どの投資信託が期末評価の対象になるのかは、購入前に確認しておきたいポイントです。

本業が不安定なときは慎重に

損益通算は、本業の利益と投資信託の損益を相殺できることが前提の仕組みです。
本業自体が赤字続きで今後の見通しも不透明な状況で、余裕資金を超える規模の投資信託に手を出すと、相殺のメリットより相場変動のリスクのほうが重くなります。
節税になる投資を検討する際は、投資信託に限らず「本業が安定しているかどうか」を最初の判断基準にするとよさそうです。
会社の資産運用の手段としては、投資信託以外に資産管理会社を別に設立して運用する方法もあり、資金の規模や目的によって向き不向きが分かれます。

まとめ

法人の投資信託は、損益通算・分配金の益金不算入・10年間の損失繰越という仕組みを使えば、課税対象額を抑える効果が期待できます。
ただし個人のNISAのような非課税制度はなく、税率や期末評価の扱いも個人とは異なるため、仕組みを理解したうえで余裕資金の範囲で検討することが大切です。

関連記事

法人の節税、何から手をつける?経営者が知っておきたい基本と落とし穴法人の節税、何から手をつける?経営者が知っておきたい基本と落とし穴経営者が知っておきたい法人の節税の基本と、よくある落とし穴を整理しました。

節税になる投資、結局どれを選べばいい?仕組みと失敗しない考え方節税になる投資、結局どれを選べばいい?仕組みと失敗しない考え方節税になる投資の仕組みと、選ぶときに失敗しないための考え方を整理しました。

NISAの節税効果はいくら?仕組みとシミュレーションでわかる本当の得NISAの節税効果はいくら?仕組みとシミュレーションでわかる本当の得NISAの節税効果の仕組みと、シミュレーションでわかる本当の得を解説しました。

Author Profile

botbot