会社の経営に役立つ知識を学ぶための費用であっても、社長個人のMBA学費を会社が負担すれば、当然に研修費として認められるわけではありません。
会社の業務に直接必要な研修なのか、それとも社長個人に帰属する学位・能力形成のための支出なのかによって、税務上の取扱いが大きく変わります。
経営者
会社の経営スキルを上げるため、1年間で150万円かかるビジネススクールのMBA課程に通おうと思っています。
社長である私の学費は、全額を会社の研修費にして問題ありませんか?
税理士
150万円全額を、当然に会社の研修費として処理できるとはいえません。
会社の業務遂行上の必要に基づき、現在の社長の職務に直接必要な知識や技術を習得するための研修で、費用も適正と説明できる場合には、会社の研修費として処理できる余地があります。
一方、MBAは経営全般を幅広く学び、学位や知識が社長個人にも長期間帰属します。そのため、単に「経営スキルを上げるため」という説明だけでは、会社業務との直接必要性が弱いと判断される可能性があります。
経営者
会社経営に役立つ内容なのに、それでも認められないことがあるのですか?
税理士
「役に立つこと」と「現在の職務に直接必要であること」は、同じではありません。
たとえば、現在の会社が抱えている具体的な経営課題と、MBAの受講科目が明確に対応しているか、会社が受講を命じているか、受講成果を会社へ還元する仕組みがあるかなどが重要です。
経営戦略、財務、組織、人事などを広く学ぶだけでは、社長個人の自己啓発や将来のキャリア形成という側面も強くなります。
経営者
税務署から研修費ではないと判断された場合は、どうなりますか?
税理士
社長個人が本来負担すべき学費を会社が負担したと認定されると、その負担額は社長に対する経済的利益、つまり役員給与として扱われる可能性があります。
その場合、社長側では給与所得として課税され、会社には源泉所得税の徴収・納付が必要になります。
また、法人税では、役員給与が定期同額給与などの要件を満たさなければ、会社の損金に算入できない可能性があります。
経営者
役員給与とされれば、150万円は必ず全額が損金不算入になるのですか?
税理士
必ず全額が損金不算入になるとまではいえません。
授業が1年間継続して提供され、社長が毎月おおむね一定の教育サービスを受けると評価できる場合には、年間学費を一括払いしていても、毎月一定の経済的利益が継続して供与されるものとして、定期同額給与に該当する余地があります。
国税庁は、会社が役員の子の年間授業料を一括して支出した事例で、この考え方を示しています。
ただし、これは役員本人のMBA学費について直接判断した事例ではありません。本件にそのまま適用できるわけではなく、あくまで参考となる類似事例です。
さらに、定期同額給与に該当しても、通常の役員報酬と学費負担額の合計が不相当に高額である場合は、その過大部分が損金不算入となる可能性があります。
経営者
会社が最初に150万円を一括で支払えば、その年度に全額を研修費にできますか?
税理士
受講期間が会社の事業年度をまたぐ場合は、支払時に150万円全額を当期の費用にするのではなく、教育サービスの提供期間に応じて各事業年度へ配分する検討が必要です。
たとえば、翌事業年度分に対応する部分は、いったん前払費用として処理し、その後、受講期間に応じて費用へ振り替える方法が基本になります。
研修費として処理する場合も、役員給与として処理する場合も、支払時期とサービス提供期間の整合性を取る必要があります。
経営者
消費税は仕入税額控除できますか?
税理士
学校の種類と講座の内容によって異なります。
大学や大学院の正規課程の授業料は、原則として消費税が非課税となるため、仕入税額控除の対象にはなりません。
一方、民間のビジネススクールや公開講座などは、課税取引となる場合があります。学校の運営主体、講座の区分、請求書の消費税表示を確認する必要があります。
経営者
会社の研修費として処理するためには、何を準備すればよいですか?
税理士
少なくとも、支払前に次の資料を整備してください。
会社の経営課題と受講科目との対応を記載した受講目的書、取締役会議事録または株主総会議事録、研修規程、会社による受講命令書、MBAのシラバス、受講後の報告義務、学習成果を会社へ還元する計画、退学・退任時の返還規定などです。
学校との契約名義、請求書・領収書の宛名、支払者も会社にそろえておく必要があります。
ただし、書類を作れば必ず認められるわけではありません。会社の業種、規模、現在の経営課題から見て、150万円を会社が負担する合理性を第三者に説明できることが最も重要です。
経営者
同じような裁判例や裁決例はありますか?
税理士
ご提示の調査範囲では、役員本人のMBA学費を会社が負担した事案について、直接該当する公表裁決は確認されていません。
参考になるものとして、国税庁の質疑応答事例「法人が役員の子の授業料を一括して支出した場合」があります。
この事例では、年間授業料の一括払いであっても、毎月継続して教育サービスを受けるため、定期同額給与に該当するとされています。
ただし、役員本人の職務研修か、役員の子の学費負担かという点で事実関係が異なるため、本件への直接適用ではなく、役員給与該当後の取扱いを考えるための参考資料です。
要点
主な根拠
※本記事は一般的な税務上の考え方を解説したものです。実際の取扱いは、会社の業種・規模、社長の職務内容、受講目的、カリキュラム、契約関係、支払方法、役員報酬額などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




