「簡易課税では、実際の仕入額を使って消費税を計算しないのだから、領収書やインボイスは保存しなくてもよいのではないか」
このように考える方もいます。
しかし、簡易課税によって不要になるのは、受領したインボイスを消費税の仕入税額控除の要件として保存することです。帳簿や領収書などに関する他の保存義務までなくなるわけではありません。
経営者
簡易課税を選んでいます。仕入税額控除を実額で計算しないのであれば、領収書やインボイスは保存しなくてもよいのですか?
税理士
すべて保存しなくてよい、ということではありません。
簡易課税では、実際に支払った仕入税額を積み上げるのではなく、売上げに係る消費税額に、事業区分ごとの「みなし仕入率」を乗じて仕入控除税額を計算します。
そのため、消費税の仕入税額控除を受けるための要件としては、仕入先から受領したインボイスの保存は原則として必要ありません。
経営者
それなら、仕入先からもらった領収書や請求書は捨ててもよいのではありませんか?
税理士
捨ててはいけません。
「受領インボイスが簡易課税の控除要件ではない」ことと、「領収書や請求書を保存しなくてよい」ことは別問題です。
簡易課税を選んでいても、主に次の保存義務が残ります。
1つ目は、消費税法上の帳簿です。
2つ目は、法人税法または所得税法上の領収書、請求書、契約書などです。
3つ目は、自社が発行したインボイスの写しです。
4つ目は、メールやクラウドなどで授受した電子取引データです。
経営者
簡易課税でも、消費税の帳簿は保存しなければならないのですか?
税理士
はい。簡易課税事業者も、消費税法上の帳簿保存義務の対象です。
簡易課税では、仕入れに関する帳簿の一部記載を省略できる場合がありますが、帳簿保存そのものが不要になるわけではありません。
また、売上げの税率区分や、みなし仕入率を判定するための事業区分は、適切に記録する必要があります。
経営者
消費税で使わない領収書を、法人税や所得税ではなぜ残す必要があるのですか?
税理士
法人税や所得税では、その支出が実際に行われ、事業に必要な経費だったことを説明しなければなりません。
領収書や請求書がなければ、支払先、支払日、金額、購入内容、事業との関係を税務調査で説明できなくなる可能性があります。
法人の場合は、取引に関して受領した注文書、契約書、送り状、領収書などを原則として保存します。
個人事業者についても、青色申告か白色申告か、書類の種類などに応じて、帳簿や請求書、領収書などの保存が必要です。
経営者
自社が取引先に発行したインボイスはどうですか?
税理士
自社が適格請求書発行事業者としてインボイスを交付した場合は、その写しを保存しなければなりません。
電子データでインボイスを提供した場合は、その電磁的記録を保存します。
この義務は、簡易課税を選択しているかどうかとは別のものです。
経営者
メール添付のPDFや、クラウドサービスからダウンロードした領収書は、印刷して保存すればよいですか?
税理士
電子メール、クラウド請求書、ECサイトなどを通じて電子データで受け取った領収書や請求書は、電子取引データに当たります。
そのため、紙に印刷するだけではなく、元のPDFやダウンロードデータを電子データのまま保存する必要があります。
簡易課税を選択していても、電子帳簿保存法上の電子取引データの保存義務はなくなりません。
経営者
結局、実務ではどのように運用すればよいですか?
税理士
実務上は、簡易課税か原則課税かによって、領収書や請求書の保存ルールを変えない方が安全です。
紙で受け取った領収書や請求書は、法人税法・所得税法などに従って保存します。
電子データで受け取ったものは、電子データのまま保存します。
自社が発行したインボイスは、紙なら写しを、電子ならその電子データを保存します。
「簡易課税だから領収書を廃棄してよい」という運用はしないでください。
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の保存期間や保存方法は、法人・個人、青色申告・白色申告、書類の種類、授受方法などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




