領収書の宛名が法人名ではなく、代表者の個人名になっている場合でも、それだけで直ちに法人の経費にできなくなるわけではありません。
ただし、法人税上の経費処理と、消費税の仕入税額控除は分けて考える必要があります。
会社の業務に必要な支出を代表者が一時的に立て替えたものなのか、それとも代表者個人の支出を会社が負担しているだけなのか。ここが実務上の分かれ目です。
経営者
領収書の宛名が会社名ではなく、代表者である私の個人名になっています。
この場合でも、立替経費として法人の経費にできますか?
税理士
はい。領収書の宛名が代表者個人名であることだけを理由に、法人の経費にできないわけではありません。
会社の業務に必要な支出を代表者が一時的に立て替えたものであり、領収書、立替経費精算書、利用目的、精算記録などから、実質的に法人が負担すべき費用であることを説明できれば、原則として法人の経費として処理できます。
経営者
宛名が個人名でも、実態が会社の支出なら大丈夫ということですか?
税理士
考え方としてはそのとおりです。
法人税法上、販売費、一般管理費その他の費用は、別段の定めがあるものを除き、損金の額に算入されます。
ここで重要なのは、領収書の宛名だけではなく、その支出が本当に法人の業務に必要な費用だったかどうかです。
たとえば、会社の備品、取引先との打合せ費用、業務上必要な交通費などを代表者が一時的に支払った場合は、会社の立替経費として整理できる可能性があります。
経営者
では、代表者名義の領収書をそのまま保存しておけばよいですか?
税理士
領収書だけでは不十分な場合があります。
少なくとも、立替経費精算書を作成し、支出日、支払先、金額、利用目的、会社業務との関係、会社から代表者への精算日、精算方法を記録しておくのが安全です。
未精算の場合は、一般的には費用を計上したうえで、相手勘定を役員借入金などとして処理することになります。
経営者
個人的な支出を会社で払った場合はどうなりますか?
税理士
その場合は、法人の経費にはできません。
代表者の私的な飲食代、家族の買い物、個人的な旅行費用などを法人が負担した場合は、単なる経費ではなく、代表者への役員給与や役員貸付金として問題になる可能性があります。
法人税基本通達でも、法人の業務のために使用したことが明らかでない支給や、役員の個人的費用を法人が負担した場合には、役員への経済的利益として扱われる考え方が示されています。
経営者
法人税では経費にできるとして、消費税も同じように仕入税額控除できますか?
税理士
ここは分けて考える必要があります。
法人税上の経費処理が可能であっても、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として、一定事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が必要です。
つまり、「法人の経費になるか」と「消費税の仕入税額控除ができるか」は、別の問題です。
経営者
インボイスの宛名が代表者個人名になっている場合はどうなりますか?
税理士
通常の適格請求書の場合は、交付を受ける事業者の氏名又は名称が記載事項とされています。
そのため、法人が仕入税額控除を受ける資料として保存するのであれば、可能であれば法人名に訂正又は再発行してもらうのが安全です。
代表者個人名のまま処理する場合は、領収書だけでなく、立替経費精算書などにより、実際には法人のための支出であることを明確にしておく必要があります。
経営者
コンビニ、飲食店、タクシーなどのレシートでも同じですか?
税理士
小売店、飲食店、タクシー業などが発行する適格簡易請求書、いわゆる簡易インボイスの場合は、受け取る側の氏名又は名称は法定記載事項とされていません。
そのため、通常の適格請求書とは少し扱いが異なります。
ただし、代表者が会社のために立て替えたことを説明できるよう、立替経費精算書、役員名簿、登記情報など、代表者が法人に所属していることや、その支出が法人の業務に関係することを確認できる資料を保存しておくのが安全です。
経営者
従業員が立て替えた場合と、代表者が立て替えた場合で違いはありますか?
税理士
国税庁のインボイスQ&Aでは、従業員名が宛名として記載された適格簡易請求書について、その従業員が会社に所属していることが分かる名簿等と併せて保存すれば、一定の保存要件を満たす考え方が示されています。
ただし、このQ&Aは従業員を前提とした説明です。
代表者の場合も、法人の代表者であること自体は登記情報等で確認できますが、代表者の私的支出との区別が問題になりやすいため、立替経費精算書を作成し、支出の業務関連性を明確にしておくべきです。
経営者
高額な支出でも、代表者個人名の領収書で処理してよいですか?
税理士
高額な支出の場合は、より慎重に判断してください。
たとえば、パソコン、車両、設備、備品などは、金額や内容によっては一括で経費にできず、資産計上や減価償却が必要になることがあります。
また、高額な支出や反復継続する代表者立替は、私的支出の混在、役員給与、役員貸付金などの論点が生じやすくなります。
通常の適格請求書で宛名が代表者個人名になっている場合は、できる限り法人名で再発行又は訂正してもらう運用をおすすめします。
経営者
結局、実務ではどのように処理すればよいですか?
税理士
まず、その支出が会社の業務に必要なものかを確認します。
次に、代表者個人名の領収書を保存したうえで、立替経費精算書を作成します。精算書には、支出日、支払先、金額、利用目的、業務との関係、精算日、精算方法を記載してください。
消費税については、その領収書が通常の適格請求書なのか、適格簡易請求書なのかを確認します。
通常の適格請求書で宛名が代表者個人名の場合は、可能であれば法人名への訂正又は再発行を依頼してください。
個人的な支出や家事関連の支出が混ざっている場合は、法人経費にはできません。
要点
主な根拠
なお、消費税法基本通達11
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※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、支出内容、金額、証憑の種類、消費税の申告方法、精算状況などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




