年収1000万円という数字を初めて給与明細や源泉徴収票で見たとき、正直「これでようやく楽になる」と思った方は少なくないはずです。
ところが実際に手取りを計算してみると、思っていたより残らない——そんな戸惑いを感じたことはありませんか。
年収が上がるほど、税金と社会保険料の負担も比例以上に重くなる仕組みがあるからです。
「何から手をつければいいのか分からない」という方に向けて、年収1000万円台で使える節税の考え方と具体策を整理します。
なぜ年収1000万円は「手取りが増えない」と感じやすいのか
日本の所得税は累進課税で、課税所得が増えるほど段階的に税率が上がっていきます。
国税庁の税率区分では、課税所得900万円を超えると所得税率は33%になり、住民税(一律10%)と合わせると所得の3分の1以上が税金として差し引かれる水準に達します。
さらに、年収850万円を超えると給与所得控除(給与収入から一律で差し引ける控除)は195万円で頭打ちになります。
年収が900万円でも1500万円でも、この控除額は変わりません。
つまり年収が伸びるほど、控除で圧縮できる割合は相対的に小さくなっていく仕組みです。
年収1000万円の場合、給与所得控除と社会保険料控除・基礎控除などを差し引いた課税所得はおおむね600万円台になることが多く、ちょうど税率区分が切り替わる境目に近づいてきます。
まずサラリーマンの節税、何から始める?会社員でも取り戻せるお金の話で紹介した基本の考え方を押さえたうえで、年収1000万円層ならではの対策を見ていきましょう。
今日から始められる節税の具体策
1. iDeCoで所得控除を積み増す
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、毎月の掛金が全額所得控除の対象になる点が最大の特徴です。
運用益も非課税で受け取れるため、今の税金を減らしながら老後資金を作れる制度として位置づけられています。
企業年金のない会社員の場合、掛金の上限は現在月額2万3000円ですが、2026年12月拠出分(2027年1月からの引き落とし分)より月額6万2000円に引き上げられる制度改正が決まっています。
これまで上限まで使い切れていなかった方にとっては、節税効果を積み増せるタイミングが近づいているといえるでしょう。
仕組みと注意点はiDeCoの節税、結局いくら得なの?仕組みと落とし穴をやさしく解説で詳しく整理しています。
2. ふるさと納税で住民税・所得税を前払いする
ふるさと納税は、自己負担2000円を除いた寄付額が翌年の住民税・所得税から控除される仕組みです。
年収1000万円(独身・扶養なしの場合)であれば、控除上限額はおおむね15万〜18万円程度が目安とされています。
ただし、この上限額は家族構成や住宅ローン控除など他の控除の有無によって大きく変わるため、目安をそのまま鵜呑みにせず、必ず自分の条件でシミュレーションしてから寄付額を決めることが欠かせません。
詳しい仕組みはふるさと納税は本当に節税になる?仕組みと損しないためのコツをご覧ください。
3. 使い忘れている控除がないか棚卸しする
住宅ローン控除(年末のローン残高の0.7%を所得税額から直接差し引く「税額控除」)や、生命保険料控除・地震保険料控除、家族の医療費が年間10万円を超えた場合の医療費控除など、申告しなければ受けられない控除は意外と見落とされがちです。
年末調整で会社に提出する書類だけで完結しない控除(医療費控除など)は、確定申告が必要になる点も忘れずに確認しておきたいところです。
4. リスクの高い節税法に急がない
不動産投資による損益通算など、より踏み込んだ節税法を紹介されることもありますが、これらは物件選びや資金計画を誤ると節税効果より損失が上回るリスクもあります。
まずはiDeCoやふるさと納税など、制度として確立している対策から着実に積み上げるのが、年収1000万円台の節税では堅実な進め方といえるでしょう。
つまずきやすいポイント・よくある誤解
- NISAは「節税」ではなく「非課税」: NISAは投資で得た利益に本来かかる約20%の税金が非課税になる制度で、所得控除によって今の税負担そのものが軽くなるiDeCoとは仕組みが異なります。
「NISAをやっているから節税は十分」と考えてしまうと、iDeCoやふるさと納税など使えるはずの所得控除を見逃してしまうことがあります。 - ふるさと納税の上限額は毎年変わりうる: 賞与の増減や住宅ローン控除の適用開始などで課税所得が変わると、翌年の上限額も変わります。
前年の目安をそのまま使うと、上限を超えた分は単なる寄付(自己負担)になってしまうため注意が必要です。 - 控除を積み重ねすぎると審査に影響することも: 節税を優先しすぎて所得を圧縮しすぎると、住宅ローンなど収入証明を伴う審査で不利になるケースがあります。
節税と将来のライフプランのバランスは意識しておきたいところです。
まとめ
年収1000万円台は、給与所得控除の頭打ちや税率区分の境目が重なり、税負担の重さを実感しやすいゾーンです。
iDeCoやふるさと納税など確立された制度から着実に使い、控除の棚卸しをこまめに行うことが、無理のない節税の第一歩になります。
関連記事
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。







