会社を設立した後は、税務署へいくつかの書類を提出する必要があります。
ただし、すべての書類を同じ重要度で考えると危険です。
会社設立後の税務署手続は、大きく分けると、提出義務がある届出と、税制を選択するために期限を守らないと適用を受けられなくなる申請・届出があります。
特に注意すべきなのは、青色申告承認申請書と消費税関係の選択届出です。
法人設立届出書が少し遅れた場合とは異なり、青色申告や消費税の選択届出は、期限を過ぎると第1期から青色申告できない、設備投資の消費税還付を受けられないなど、税額そのものに影響することがあります。
経営者
会社を設立したのですが、税務署には何をいつまでに提出すればよいのでしょうか?
税理士
会社設立後の税務署手続は、まず「必ず提出する届出」と「税制を選択するための届出」を分けて整理します。
代表的なものは、法人設立届出書、青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例承認申請書、消費税関係の届出、インボイス登録申請です。
この中でも、特に期限管理が重要なのは青色申告承認申請書と消費税関係です。
経営者
まず、法人設立届出書はいつまでに出すのですか?
税理士
法人設立届出書は、原則として会社設立の日から2か月以内に、納税地の所轄税務署へ提出します。
法人税法上、新たに設立された内国普通法人等は、設立の日以後2か月以内に法人設立届出書を提出しなければならないとされています。
ただし、法人設立届出書が遅れたからといって、会社そのものが無効になったり、法人税の申告義務がなくなったりするわけではありません。
未提出に気づいた場合は、放置せず速やかに提出します。
経営者
青色申告の届出は、法人設立届出書と同じタイミングで出せばよいですか?
税理士
実務上は、法人設立届出書と一緒に出すことが多いです。
ただし、青色申告承認申請書は期限を特に厳しく管理してください。
設立第1期から青色申告をしたい場合、原則として、設立の日以後3か月を経過した日と、第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに提出する必要があります。
経営者
「設立後3か月以内」ではないのですか?
税理士
そこが非常に間違えやすいところです。
設立の日以後3か月を経過した日と、第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日までです。
たとえば、2026年8月1日に設立し、第1期の決算日が2027年7月31日の場合、3か月経過日が2026年11月1日なので、原則として2026年10月31日までです。
一方、2026年8月1日に設立し、第1期の決算日が2026年9月30日の場合、第1期末の方が早いため、原則として2026年9月29日までです。
第1期が短い会社では、設立後3か月より前に青色申告の期限が来ることがあります。
経営者
青色申告承認申請書を出し忘れると、何が困るのですか?
税理士
第1期から青色申告できなくなる可能性があります。
たとえば第1期に赤字が出た場合、青色申告書を提出した事業年度の欠損金として繰越控除を使うには、原則としてその欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していることが必要です。
創業直後は赤字になりやすいため、青色申告を逃すと、その赤字を翌期以降の黒字と相殺できなくなる可能性があります。
また、中小企業向けの特別償却や税額控除など、青色申告法人であることを要件とする制度にも影響します。
経営者
社長1人の会社でも、給与関係の届出は必要ですか?
税理士
社長に役員報酬を支払う場合は、通常、給与支払事務所等の開設届出書を確認します。
給与等の支払事務を取り扱う事務所等を設けた場合は、その事実があった日から1か月以内に届出が必要です。
従業員がいない会社でも、社長に役員報酬を支給するなら給与等の支払者になります。
そのため、「従業員がいないから不要」と単純には考えない方が安全です。
経営者
源泉所得税は、届出を出してから納めればよいのですか?
税理士
いいえ。届出の有無とは別に、給与を支払った時点で源泉徴収義務が発生します。
給与を支払う場合、原則として支払時に源泉所得税を徴収し、翌月10日までに納付します。
給与支払事務所等の開設届出書が遅れていても、「届出を出していなかったから源泉徴収しなくてよかった」ということにはなりません。
経営者
源泉所得税は毎月納付しなければいけませんか?
税理士
原則は毎月納付です。
ただし、給与の支給人員が常時10人未満であれば、源泉所得税の納期の特例を申請できます。
承認を受けると、1月から6月分は7月10日、7月から12月分は翌年1月20日にまとめて納付できます。
提出期限は随時ですが、申請書を提出して承認されるまでは、原則どおり翌月10日納付です。
納期の特例を出したつもりで、適用前の源泉所得税まで半年分まとめてしまうと危険です。
経営者
消費税は、会社を作ったばかりなら最初の2年間は免税ですよね?
税理士
必ず免税とは限りません。
たとえば、基準期間がない新設法人でも、事業年度開始日における資本金または出資金が1,000万円以上である場合、原則として免税制度は適用されません。
また、資本金が1,000万円未満でも、大企業等に50%超支配されている一定の法人などは、特定新規設立法人として設立当初から課税事業者になることがあります。
消費税は、会社を作ったばかりかどうかだけで判断してはいけません。
経営者
消費税の新設法人届出書や特定新規設立法人届出書を出し忘れたら、免税になりますか?
税理士
なりません。
新設法人や特定新規設立法人に該当するかどうかは、届出書を出したかどうかではなく、法令上の要件で決まります。
届出を忘れていたとしても、法令上課税事業者に該当する場合は、消費税の申告・納税が必要です。
届出漏れで免税になるわけではない、という点は重要です。
経営者
本来は免税の会社でも、課税事業者を選んだ方がよいことはありますか?
税理士
あります。
たとえば、第1期に大きな設備投資があり、消費税の還付を受けたい場合、本来免税でも課税事業者を選択することがあります。
通常、消費税課税事業者選択届出書は、適用を受ける課税期間開始日の前日までに提出します。
ただし、新たに事業を開始した課税期間については、その課税期間末日までに提出すれば、第1期から課税事業者を選択できる場合があります。
この期限を逃すと、原則として後から第1期に遡って課税事業者を選ぶことはできません。
設備投資の消費税還付を検討している会社では、第1期末までの期限管理が非常に重要です。
経営者
課税事業者を選べば、還付だけ受けてすぐ免税に戻れますか?
税理士
そう簡単ではありません。
課税事業者を選択すると、原則として2年間は免税事業者に戻れません。
さらに、一定の調整対象固定資産を取得した場合などは、さらに長い期間、課税事業者としての拘束が問題になります。
第1期だけでなく、第2期、第3期以降の売上、経費、設備投資、簡易課税の選択可否まで含めて試算する必要があります。
経営者
簡易課税制度選択届出書はどうですか?
税理士
簡易課税制度を選択する場合も、期限管理が必要です。
原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出が必要です。
ただし、新たに事業を開始した課税期間については、一定の場合、その課税期間末日までに提出して当期から適用できることがあります。
期限に間に合わなければ、原則としてその期は本則課税で計算することになります。
また、簡易課税を一度選択すると、原則として2年間は継続適用が必要です。
経営者
インボイス登録も会社設立時に考える必要がありますか?
税理士
必要です。
取引先にインボイスを発行する必要がある場合は、適格請求書発行事業者の登録申請を検討します。
新たに事業を開始した法人については、一定の場合、設立第1期中に登録申請を行うことで、第1期の初日から登録を受ける方法があります。
一方で、免税事業者がインボイス登録を受けると、登録期間中は原則として消費税の申告・納税が必要になります。
インボイス登録は、単に請求書を出せるようにする手続ではなく、消費税の納税義務にも関係します。
経営者
棚卸資産や減価償却の届出も必要ですか?
税理士
法定方法以外の方法を選びたい場合は検討します。
棚卸資産の評価方法届出書や減価償却資産の償却方法届出書は、原則として第1期の確定申告期限までに提出します。
未提出の場合は、税法上の法定評価方法や法定償却方法が適用されます。
通常の小規模会社では、まず法人設立届、青色申告、給与・源泉、消費税関係を優先して確認し、そのうえで必要に応じて評価方法・償却方法を検討します。
経営者
結局、設立直後に一番危ないのはどれですか?
税理士
最優先は青色申告承認申請書です。
第1期が短い会社では期限が非常に早く来ますし、第1期の赤字を繰り越せるかどうかに影響します。
次に危険なのは消費税関係です。
資本金1,000万円以上か、特定新規設立法人に該当しないか、インボイス登録が必要か、設備投資還付を狙うか、簡易課税を選ぶかによって、届出と期限が変わります。
会社設立後は、単に書類を一式出すのではなく、期限を逃したときに税額へ影響するものから優先して管理する必要があります。
会社設立後に税務署へ提出・検討する主な書類
| 書類 | 主な対象 | 原則期限 | 期限を逃した場合の影響 |
|---|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 原則すべての普通法人 | 設立日から2か月以内 | 届出義務は残るため速やかに提出。遅れただけで法人税申告義務がなくなるわけではありません。 |
| 青色申告承認申請書 | 青色申告をしたい法人 | 設立後3か月経過日と第1期末の早い方の前日 | 第1期から青色申告できなくなる可能性があります。赤字の繰越等に重大な影響があります。 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 役員報酬・従業員給与を支払う法人 | 給与支払事務所開設から1か月以内 | 届出が遅れても源泉徴収義務は発生します。 |
| 源泉所得税の納期の特例承認申請書 | 給与支給人員が常時10人未満の事業者 | 随時 | 承認されるまでは原則毎月納付です。 |
| 消費税の新設法人届出書 | 基準期間なし、かつ期首資本金1,000万円以上の法人 | 速やかに | 届出漏れで免税になるわけではありません。 |
| 特定新規設立法人届出書 | 大企業等に50%超支配される一定法人等 | 速やかに | 届出漏れで免税になるわけではありません。 |
| 消費税課税事業者選択届出書 | 本来免税だが課税事業者を選びたい法人 | 原則は適用期開始前日。新規開業第1期はその課税期間末日までの特例あり | 期限を逃すと、第1期に遡って選択できず、設備投資還付を逃すことがあります。 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 簡易課税を選びたい法人 | 原則は適用期開始前日。新規開業期には特例あり | 間に合わなければ、原則としてその期は本則課税です。 |
| 適格請求書発行事業者登録申請書 | インボイスを発行したい法人 | 登録を受ける時期に応じて異なります | 登録前の取引については、原則としてインボイスを発行できません。登録により消費税申告も必要になります。 |
| 棚卸資産の評価方法届出書 | 法定方法以外を選びたい法人 | 第1期確定申告期限まで | 未提出なら法定評価方法が適用されます。 |
| 減価償却資産の償却方法届出書 | 法定方法以外を選びたい法人 | 第1期確定申告期限まで | 未提出なら法定償却方法が適用されます。 |
町田・相模原で会社設立後の税務手続に不安がある方へ
会社設立後の税務署手続は、単に書類を出すだけではありません。
特に、青色申告、消費税の課税事業者選択、簡易課税、インボイス登録は、提出期限を逃すと第1期の税額に直接影響することがあります。
また、役員報酬を支払う場合には、給与支払事務所等の開設届出書だけでなく、源泉所得税の納付、納期の特例、場合によっては事前確定届出給与も検討する必要があります。
町田・相模原で会社を設立した方、又はこれから法人化を予定している方は、設立日、決算日、資本金、役員報酬の開始日、設備投資予定、インボイス登録の必要性を整理したうえで、早めに税務手続を確認してください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の提出期限や必要書類は、設立日、決算日、資本金、株主構成、役員報酬の開始日、設備投資予定、インボイス登録の必要性などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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