役員社宅は経費にできる?賃料の決め方と失敗しない進め方

「役員の家賃を会社の経費にできると聞いたけれど、実際どこまでやっていいのか分からない」——顧問先の社長からそんな相談を受けることがよくあります。
役員社宅は正しく設計すれば法人税・所得税・社会保険料の負担を同時に軽くできる制度ですが、賃料の決め方や契約名義を間違えると、思っていた節税効果がゼロになってしまうこともあります。

このページでは、役員社宅の家賃をどこまで経費にできるのか、そして税務調査で否認されないための進め方を、初めて検討する方にも分かるように整理します。

なぜ「どこまで経費にできるか」で迷うのか

役員社宅の仕組みは、会社が住宅を借り上げて役員に貸し、役員から一定の家賃(賃貸料相当額)を受け取ることで成り立っています。
会社が支払った家賃は経費(地代家賃)として計上でき、役員が負担すべき賃貸料相当額との差額は、役員個人への現物給与とはみなされません。

ここで迷いやすいのが、「役員がいくら負担すれば給与課税されずに済むのか」という金額の基準です。
国税庁の計算式は建物の固定資産税評価額や床面積を使う専門的なものなので、感覚で「家賃の半分くらい払っておけば大丈夫だろう」と決めてしまい、後から金額が足りていなかったと気づくケースが少なくありません。

もうひとつの落とし穴が契約の名義です。
役員個人が先に賃貸借契約を結んでしまい、あとから会社が家賃を肩代わりする形にすると、たとえ金額の計算が正しくても給与として課税されてしまいます。
制度の仕組みそのものより、手続きの順番を間違えることでつまずく方が多い印象です。

経費にするための具体的な手順

1. 会社名義で賃貸借契約を結び直す

役員社宅の前提は、契約の当事者が「会社」であることです。
個人契約のまま会社が家賃を負担すると、全額が役員給与として扱われてしまいます。
すでに役員個人が住んでいる物件を社宅にしたい場合は、大家さんや管理会社に相談し、契約者を会社に変更する手続きが必要です。
分譲マンションなど契約の切り替えが難しい物件もあるため、検討段階で不動産会社に確認しておくと安心です。

2. 賃貸料相当額を計算する

役員社宅の家賃負担には、住宅の規模に応じた計算式があります。

  • 小規模な住宅(木造なら床面積132平方メートル以下、鉄筋コンクリート造なら99平方メートル以下が目安)の場合は、次の3つを合計した金額が賃貸料相当額です。
  • その年の建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
  • 12円 ×(その建物の総床面積 ÷ 3.3平方メートル)
  • その年の敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%
  • 会社が第三者から借り上げている住宅の場合は、上記の計算額と、家主に支払っている家賃の50%とを比べて高い方が賃貸料相当額になります。

固定資産税課税標準額は、物件の所有者(大家さんや管理会社)に確認するか、固定資産税の課税明細書で確認できます。
自分たちだけで計算しきれない場合は、顧問税理士に一度確認してもらうのが確実です。

3. 役員から賃貸料相当額以上を天引きで徴収する

計算した賃貸料相当額を、役員報酬から天引きする形で確実に徴収します。
ここで賃貸料相当額を下回る金額しか徴収していないと、その差額が給与として課税対象になります
逆に相当額ちょうど、またはそれ以上を負担していれば、会社が負担する家賃との差額に給与課税は発生しません。

4. 社内規程を整備する

社宅制度を運用するなら、対象者の範囲・負担割合・入居中のルールなどを定めた「社宅管理規程」を用意しておきましょう。
規程がない状態で社長個人だけが社宅を利用していると、税務調査で「実質的な役員への利益供与ではないか」と指摘されるリスクが高まります。
規程は一度作れば済むものなので、制度を始める前の準備として欠かせません。

つまずきやすいポイント・よくある誤解

  • 豪華社宅は特例が使えない:床面積が240平方メートルを超える住宅や、取得価額・内外装が特別に高額な住宅は「豪華社宅」とされ、上記の計算式ではなく通常の賃料相当額(市場家賃に近い金額)を負担する必要があります。
    240平方メートル以下でもプールなど特別な設備があると該当することがあるため、高額物件を検討する際は事前確認が必須です。
  • 光熱費・駐車場代は原則対象外:経費にできるのは基本的に家賃部分だけです。
    電気・ガス・水道代や駐車場代を会社が負担すると、その分は役員への現物給与として課税される点に注意しましょう。
  • 敷金は経費にならない:契約時の初期費用のうち、仲介手数料や火災保険料は経費計上できますが、退去時に返還される敷金は経費にはなりません。
  • 住宅ローン控除とは併用できない:役員個人が所有する住宅ではなく会社が借り上げた住宅に住む形になるため、住宅ローン控除の対象にはなりません。
    マイホーム購入を検討している役員の場合は、どちらを優先するか事前に整理しておく必要があります。

なお、社宅制度そのものの基本的な仕組みは役員以外の従業員にも共通しています。
従業員向けの社宅と役員向けの社宅で計算基準が異なる点も含めて、社宅を経費にするには?家賃を節税につなげる仕組みとよくある失敗でも整理しているので、あわせて確認してみてください。

まとめ

役員社宅は、会社名義での契約・正しい賃貸料相当額の計算・確実な天引き徴収という手順さえ踏めば、無理なく経費化できる制度です。
役員報酬の見直しとあわせて検討すると節税効果がさらに見えやすくなるので、役員報酬で節税できるって本当?損しない決め方と3つの落とし穴もあわせてご覧ください。

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末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。