2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが一部改正されます。
創業したばかりの会社や個人事業主が、初めてパート・アルバイトを1人だけ雇う場合でも、その方が「短時間労働者」または「有期雇用労働者」に該当すれば対象になります。
特に重要なのは、雇入れ時の労働条件通知書などで明示すべき事項が増える点です。
これまでも、パート・有期雇用労働者を雇う場合には、昇給の有無、賞与の有無、退職手当の有無、相談窓口などを明示する必要がありました。
2026年10月1日以降は、これに加えて「正社員等との待遇の相違の内容・理由等について、事業主に説明を求めることができる旨」も、書面等で明示する必要があります。
なお、この記事は2026年9月15日時点で公表されている改正省令・告示・厚生労働省資料を前提にしています。実際に雇用契約書や労働条件通知書を作成する場合は、最新の厚生労働省様式や社会保険労務士・弁護士等の確認も踏まえてください。
創業者
2026年10月から、パートやアルバイトを雇うときのルールが変わると聞きました。
創業したばかりで、初めて1人だけアルバイトを雇う場合でも関係ありますか?
税理士
関係あります。
会社の規模や従業員数で除外されるわけではありません。
雇う方が、通常の労働者より週の所定労働時間が短い「短時間労働者」や、3か月契約・1年契約など期間の定めがある「有期雇用労働者」に該当する場合は、創業直後で従業員が1人だけでも、パートタイム・有期雇用労働法の対象になります。
創業者
「パート」「アルバイト」という名前なら、必ず対象になるのですか?
税理士
名前だけでは決まりません。
法律上は、「パート」「アルバイト」という呼び方ではなく、短時間労働者または有期雇用労働者に該当するかで判断します。
たとえば、アルバイトという名称でも、フルタイムで無期契約の場合は、この法律上の短時間労働者にも有期雇用労働者にも該当しない可能性があります。
一方で、正社員と同じ勤務時間でも、3か月契約や1年契約などの有期契約であれば、有期雇用労働者として対象になります。
創業者
2026年10月1日から、具体的に何が変わるのでしょうか?
税理士
一番分かりやすい変更は、雇入れ時の明示事項です。
これまでも、短時間・有期雇用労働者を雇うときは、労働基準法上の労働条件明示に加えて、パートタイム・有期雇用労働法上の特定事項を文書等で明示する必要がありました。
従来の主な特定事項は、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、雇用管理に関する相談窓口です。
2026年10月1日以降は、これに加えて、正社員等との待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることができる旨を明示する必要があります。
創業者
待遇差について説明を求める権利は、2026年10月に初めてできる制度なのですか?
税理士
そこは誤解しやすいところです。
待遇差について説明を求める権利そのものは、2026年10月に初めてできる制度ではありません。
パートタイム・有期雇用労働法14条2項により、短時間・有期雇用労働者が求めた場合、事業主は、通常の労働者との待遇差の内容や理由、待遇決定時に考慮した事項を説明する義務を既に負っています。
今回の改正は、その説明を求められること自体を、雇入れ時に労働者へ書面等で知らせる義務が新たに追加される、という位置付けです。
創業者
つまり、労働条件通知書に書く項目が増えるということですね。
税理士
その理解でよいです。
2026年10月1日以降にパート・アルバイトを雇う場合は、労働条件通知書や雇用契約書に、少なくとも次の趣旨を入れる必要があります。
「正社員等との待遇の相違の内容・理由等について、事業主に説明を求めることができます。」
あわせて、誰に申し出ればよいのか、相談窓口や申出先も分かるようにしておくべきです。
創業直後の会社であれば、代表者本人を相談窓口にすること自体は可能です。ただし、通知書上で「申出先:代表者○○」などと特定しておく必要があります。
創業者
正社員がまだいない場合でも、待遇差の説明が必要になるのですか?
税理士
ここは個別判断が必要です。
創業直後で、社長本人とアルバイト1人だけという場合、社内に比較対象となる正社員や無期フルタイム労働者がまだ存在しないことがあります。
ただし、比較対象となる通常の労働者がいないから、労働条件通知書を出さなくてよい、という意味ではありません。
有期雇用労働者であれば、雇入れ時の明示義務は基本的に生じます。
また、厚生労働省の説明資料では、待遇差説明の比較対象として、一人の通常の労働者、複数の通常の労働者、過去1年以内に雇用していた通常の労働者、標準的な通常労働者モデルなども想定されています。
したがって、実際にどのように説明するかは、雇用形態や社内制度に応じて整理する必要があります。
創業者
労働条件通知書には、今回追加される項目だけを書けばよいのでしょうか?
税理士
いいえ。
パートタイム・有期雇用労働法の明示事項は、労働基準法15条による一般的な労働条件明示に上乗せされるものです。
パート・アルバイトであっても、契約期間、契約更新の有無、更新基準、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金、退職に関する事項などは、労働基準法に基づいて明示する必要があります。
さらに、2024年4月以降は、就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限などについても明示が必要になっています。
そのため、2026年10月対応版の労働条件通知書を作るときは、今回追加される1項目だけでなく、労働基準法上の明示事項も含めた最新様式で整える必要があります。
創業者
同一労働同一賃金ガイドラインも変わると聞きました。何が変わるのですか?
税理士
2026年10月から、同一労働同一賃金ガイドラインの記載も改正されます。
特に、賞与、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、勤続褒賞などについて、正社員とパート・有期雇用労働者との待遇差をどう考えるかが、より具体化されます。
ただし、これは「パートにも必ず正社員と同じ賞与や退職金を払わなければならない」という単純な改正ではありません。
それぞれの待遇の性質や目的に照らして、職務内容、責任の程度、配置転換の範囲、勤務期間、その他の事情を考慮し、不合理な待遇差になっていないかを判断する、という考え方です。
創業者
正社員には賞与あり、アルバイトには賞与なし、という制度はダメになりますか?
税理士
必ずダメというわけではありません。
ただし、「アルバイトだから賞与なし」という説明だけでは弱くなります。
賞与の目的が、会社業績への貢献、功労報償、長期勤続への期待などである場合、その目的がパート・有期雇用労働者にも一定程度当てはまるのかを検討する必要があります。
仕事内容、責任、勤務時間、配置転換の有無、勤務期間などに違いがあるなら、その違いに応じた説明が必要です。
最高裁の大阪医科薬科大学事件では、アルバイト職員に賞与を支給しなかったことが、当該事案では不合理とは認められませんでした。
しかし、これは「非正規には賞与ゼロでよい」という一般ルールではありません。あくまで、その会社の賞与の性質、職務内容、配置転換の範囲などを総合して判断されたものです。
創業者
退職金も同じですか?
税理士
退職金も同じ考え方です。
最高裁のメトロコマース事件では、契約社員に退職金を支給しなかったことについて、当該事案では不合理とはされませんでした。
ただし、これも「有期社員には退職金を一切払わなくてよい」という意味ではありません。
退職金には、賃金の後払い、功労報償、長期勤続奨励など、複数の性質があり得ます。
長期間にわたって契約更新を繰り返して勤務している有期労働者に、その退職金の目的が一定程度当てはまる場合には、待遇差が不合理と評価される可能性があります。
創業者
家族手当や住宅手当、休暇なども関係しますか?
税理士
関係します。
2026年改正ガイドラインでは、家族手当、住宅手当、無事故手当、病気休職、夏季冬季休暇、勤続褒賞などについても、より具体的な考え方が示されます。
たとえば、家族手当については、相応に継続勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の支給を求める方向の考え方が示されています。
住宅手当についても、転居を伴う配置変更の範囲が通常の労働者と同じであれば、同一の支給が問題になります。
日本郵便事件の最高裁判決でも、扶養手当、年末年始勤務手当、病気休暇、夏季冬季休暇などについて、それぞれの待遇の性質・目的を踏まえて、不合理な待遇差と判断されたものがあります。
つまり、正社員とパートで待遇を変える場合は、「正社員だから」「アルバイトだから」ではなく、その待遇が何のためにあるのかを説明できる制度設計が必要です。
創業者
「正社員は将来責任ある仕事を任せる予定だから高待遇」という説明ではダメですか?
税理士
抽象的な説明だけでは危険です。
「将来の役割期待が違う」「正社員は責任が重いはず」「人材確保のため」といった説明は、まったく意味がないわけではありません。
しかし、それだけで当然に待遇差が合理化されるわけではありません。
実際の仕事内容、責任の程度、配置転換の範囲、勤務期間、評価制度、待遇の目的との関係を、具体的に説明できる必要があります。
名古屋自動車学校事件の最高裁判決でも、基本給等の相違を判断する際には、待遇の性質や目的を具体的に検討することが重要であると示されています。
創業者
待遇差をなくすために、正社員側の賞与や手当を下げる方法はどうでしょうか?
税理士
安易に行うべきではありません。
同一労働同一賃金の目的は、基本的にはパート・有期雇用労働者の待遇改善です。
2026年改正ガイドラインでも、通常の労働者の待遇を不利益に変更することなく、パート・有期雇用労働者の待遇改善を図るべきという方向が明確化されます。
また、正社員の労働条件を不利益に変更する場合には、労働契約法9条・10条の問題もあります。
差をなくすために正社員側を下げればよい、という発想は危険です。
創業者
違反すると、どのようなペナルティがありますか?
税理士
まず、雇入れ時に必要な特定事項を明示しなかった場合は、パートタイム・有期雇用労働法31条により、10万円以下の過料の対象になります。
2026年10月から追加される「待遇差等について説明を求めることができる旨」も、明示すべき特定事項に含まれるため、単なる様式ミスとは考えない方が安全です。
また、厚生労働大臣・労働局は、報告徴収、助言、指導、勧告を行うことができます。一定の義務違反について勧告に従わない場合には、その旨を公表される可能性があります。
報告徴収に応じない場合や虚偽報告をした場合には、20万円以下の過料の対象になります。
さらに、同一労働同一賃金に違反する不合理な待遇差がある場合は、労働者から損害賠償などを求められる民事リスクもあります。
創業者
創業直後に初めて1人雇う場合、まず何を準備すればよいですか?
税理士
まず、2026年10月対応版の労働条件通知書を使うことです。
そのうえで、雇用期間、有期契約か無期契約か、週の勤務時間、勤務日、時給、交通費、昇給、賞与、退職手当、相談窓口、待遇差説明の申出先を整理します。
正社員を雇う予定がある場合や、将来的に賞与・退職金・手当を設ける予定がある場合は、正社員とパートで待遇を変える理由を説明できるようにしておきます。
創業時は、採用を急ぐあまり、口頭だけで勤務条件を決めてしまいがちです。
しかし、1人目の雇用から、労働条件通知書、最低賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、労災などのルールは適用されます。
小規模だから関係ない、という考え方は避けてください。
2026年9月30日までと2026年10月1日以降の違い
改正前後の比較
町田・相模原で初めてパート・アルバイトを雇う方へ
創業直後に初めて人を雇うときは、税務だけでなく、労務・給与・社会保険・年末調整まで一気に実務が増えます。
特にパート・アルバイトを1人だけ雇う場合でも、労働条件通知書、源泉所得税、住民税、労災、雇用保険、社会保険、年次有給休暇、給与計算の管理は必要になります。
タクスリンク税理士事務所では、町田・相模原の創業者・個人事業主・小規模法人を中心に、創業直後の経理、給与、年末調整、税務申告まで見通したサポートを行っています。
なお、本記事のテーマは労務分野を含みます。個別の雇用契約書、就業規則、待遇制度の法的判断については、必要に応じて社会保険労務士・弁護士等の確認を前提としてください。
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要点
主な根拠
※本記事は、2026年9月15日時点で公表されている情報をもとに、創業直後の会社・個人事業主向けに一般的な考え方を整理したものです。実際の労働条件通知書、雇用契約書、待遇制度、就業規則の作成・判断については、個別事情に応じて社会保険労務士・弁護士等の確認を行ってください。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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