妻が会社の経理やバックオフィスを担当している場合、「役員ではないから給与は毎月違ってもよい」と考えてしまうことがあります。
確かに、通常の従業員であれば、役員報酬のような定期同額給与のルールは直接適用されません。
そのため、勤務時間、業務量、歩合、手当などの合理的な理由に基づいて、月ごとに給与額が変わること自体は可能です。
しかし、配偶者が会社のお金回りを含めてバックオフィスを大きく任されている場合には、税務上の「みなし役員」に該当しないかを先に確認する必要があります。
経営者
妻には、お金回りも含めてバックオフィスを完全に任せています。
ただ、役員ではないので、給与は毎月違う金額でもいいんですよね?
税理士
「登記上の役員ではないから、毎月違う給与でも問題ない」とは直ちには言えません。
奥様が税務上も通常の従業員であれば、役員給与の定期同額給与のルールは適用されません。
そのため、勤務時間、業務量、手当などの合理的な理由があれば、月ごとに給与額が変わること自体は可能です。
ただし、今回のように「お金回りも含めてバックオフィスを完全に任せている」という場合は、税務上のみなし役員に該当しないかを確認する必要があります。
経営者
みなし役員とは何ですか?
登記上の役員とは違うのですか?
税理士
はい。登記上の役員とは別に、法人税法上は、実質的に法人の経営に従事している一定の人を役員として扱う制度があります。
これが、いわゆる「みなし役員」です。
法人税法上の役員には、取締役、執行役、監査役などの会社法上の役員だけでなく、それ以外で法人の経営に従事している者のうち、政令で定める者も含まれます。
つまり、登記簿に役員として載っていないことだけでは、法人税法上も役員ではないとは言い切れません。
経営者
妻が経理を全部やっていると、みなし役員になるのですか?
税理士
経理を全部担当しているというだけで、直ちにみなし役員になるわけではありません。
重要なのは、奥様が「事務を担当している」のか、「経営判断まで行っている」のかです。
たとえば、社長が支払、借入、投資、人事などを決定し、奥様はその指示に基づいて請求書処理、振込、記帳、給与計算、税理士との資料のやり取りをしているだけであれば、通常の使用人として整理しやすくなります。
一方で、奥様自身が資金繰りを判断し、支払時期、大口支出、借入、採用、給与、重要な契約などを実質的に決めている場合は、経営に従事していると見られるリスクが上がります。
経営者
「お金回りを任せている」というのは、どこから危ないのでしょうか?
税理士
単にネットバンキングを操作している、請求書を整理している、会計ソフトに入力している、給与計算をしているというだけであれば、経理実務の範囲にとどまる可能性があります。
問題になるのは、会社のお金をどう使うかを奥様が実質的に決めている場合です。
たとえば、
「この支払いは今月行う」
「この支払いは翌月に回す」
「この借入をする」
「この設備投資をする」
「この人を雇う」
「この人の給与をいくらにする」
「この取引先と契約する」
といった判断を、奥様自身が実質的に行っている場合は、単なる経理担当ではなく、経営に関与していると見られる可能性があります。
経営者
同族会社だと、妻はみなし役員になりやすいのですか?
税理士
同族会社の場合は、特に注意が必要です。
法人税法施行令では、同族会社の使用人であっても、一定の持株要件を満たし、かつ、その会社の経営に従事している者は、法人税法上の役員に含まれるとされています。
そのため、奥様が株主であるかどうか、代表者や親族を含めた株主グループの持株割合がどうなっているかを確認する必要があります。
オーナー会社では、形式上は従業員でも、持株関係と実際の職務権限によって、みなし役員該当性を検討しなければならないことがあります。
経営者
もし妻がみなし役員に該当したら、何が問題になりますか?
税理士
みなし役員に該当すると、奥様への給与は法人税法上の役員給与として扱われます。
役員給与は、原則として、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与などに該当しなければ、法人側で損金算入できません。
定期同額給与とは、簡単にいうと、1か月以下の一定期間ごとに支給され、各支給時期の支給額が同額である給与です。
そのため、みなし役員に該当する人に対して、「今月は30万円、来月は45万円、その次は35万円」というように任意に給与額を変えていると、定期同額給与に該当せず、法人側で損金不算入となるリスクがあります。
経営者
みなし役員に当たらず、普通の従業員なら毎月違っても大丈夫ですか?
税理士
通常の従業員として整理できるのであれば、役員給与の定期同額給与のルールは適用されません。
そのため、勤務時間、業務量、歩合、担当件数、時間外手当など、合理的な理由に基づいて月ごとに給与額が変わること自体は可能です。
ただし、「社長がその月の利益を見て適当に決める」という運用は避けるべきです。
配偶者への給与は、税務調査で確認されやすい項目です。通常の従業員として扱うのであれば、雇用契約書、給与規程、勤務実績、業務内容、算定根拠を残しておく必要があります。
経営者
妻が通常の従業員なら、いくら払ってもよいわけではないですよね?
税理士
そのとおりです。
奥様がみなし役員ではなく通常の使用人であったとしても、役員の親族は「特殊関係使用人」に該当する可能性があります。
特殊関係使用人に対する給与については、職務内容、会社の収益状況、他の従業員の給与、同業他社の給与水準などと比べて、不相当に高額な部分は損金不算入となります。
つまり、みなし役員でなければ何でも自由というわけではありません。
通常の従業員としての実態と、その職務に見合った給与水準が必要です。
経営者
給与を毎月変える場合、どういう形にしておけば説明しやすいですか?
税理士
給与額を変えるのであれば、あらかじめ算定ルールを作っておくことが重要です。
たとえば、
基本給○万円
勤務時間に応じた時間外手当
担当件数に応じた手当
繁忙期業務に対する手当
資格や職務に応じた手当
といった形で、給与規程や雇用契約書に根拠を残します。
さらに、勤務日数、勤務時間、担当業務、実際に行った作業内容を記録しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。
反対に、利益が出た月だけ多く支給する、資金繰りの都合で社長が任意に金額を変える、記録がなく口頭だけで決めている、という運用は危険です。
経営者
結局、まず何を確認すればよいですか?
税理士
まず確認すべきことは3つです。
1つ目は、奥様が経営に従事しているといえるかです。
2つ目は、同族会社の場合、奥様や親族を含めた持株関係が、みなし役員の持株要件に該当するかです。
3つ目は、毎月給与を変える場合の算定根拠があるかです。
この3つを確認しないまま、「役員ではないから自由に変えてよい」と判断するのは危険です。
特に、奥様が経理を全部やっているだけなのか、会社のお金をどう使うかまで決めているのかで、リスクは大きく変わります。
町田・相模原で配偶者給与や役員報酬に不安がある方へ
配偶者が会社の経理、総務、資金管理を担当している場合、税務上は単に「役員登記しているかどうか」だけでは判断できません。
特に同族会社では、みなし役員、定期同額給与、特殊関係使用人、過大給与といった論点が重なります。
配偶者への給与を毎月変えたい場合は、給与額を決める前に、職務内容、権限、持株関係、給与規程、勤務実績を整理することが重要です。
町田・相模原で、役員報酬、配偶者給与、法人成り後の給与設計に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、株主構成、職務権限、決裁権限、給与の算定根拠、勤務実績、他の従業員との比較などにより異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
Latest entries
所得税2026年8月13日商品を廃棄したら経費になる?廃棄時に残すべき証拠書類を税理士が解説
法人税2026年8月13日交通違反の反則金は経費になる?会社が払った場合の税務処理を税理士が解説
法人税2026年8月13日スポンサー料は広告宣伝費?寄附金?交際費?経費になる判断基準を税理士が解説
法人税2026年8月13日会社設立1期目の役員報酬はいつまでに決める?定期同額給与を税理士が解説




