資産の修理代については、一般的に、通常の維持管理や原状回復のための支出は修繕費、資産の価値を高めたり、耐久性を増したりする支出は資本的支出とされます。
ただ、実務では「これは明らかに修繕費」「これは明らかに資本的支出」と言い切れない工事もあります。
そのような場合、法人税基本通達7-8-1〜7-8-6を、段階的な判断フローとして整理することが重要です。
特に注意が必要なのは、「60万円未満なら修繕費」といきなり判断しないことです。
60万円基準は、あくまで資本的支出か修繕費かが明らかでない金額について使う形式基準です。明らかに価値を高める工事を、60万円未満だから修繕費にできるという規定ではありません。
経営者
資産の修理代のうち、資産の価値を高めるものが資本的支出、元に戻すのが修繕費なのは分かりました。
でも、どちらとも判断がつかないものもありますよね?
税理士
あります。
実務では、修理なのか改良なのか、原状回復なのか性能向上なのか、判断が難しい工事は少なくありません。
そのため、法人税基本通達では、修繕費と資本的支出を判断するための段階的なルールが設けられています。
大きくいうと、
災害復旧の特例
20万円未満・おおむね3年以内周期
実質判定
60万円未満・取得価額10%以下
30%基準
という順番で確認します。
経営者
まず、「価値が上がるか」「元に戻すか」を見るのではないのですか?
税理士
基本の考え方はそのとおりです。
ただし、判断フローとしては、先に確認すべき特例があります。
まず、災害による復旧費かどうかを確認します。災害復旧には、法人税基本通達7-8-6の特別なルールがあります。
災害でなければ、次に「一の修理、改良等」の金額が20万円未満か、またはおおむね3年以内の周期で行われることが明らかかを確認します。
これに該当する場合は、法人税基本通達7-8-3により、修繕費として損金経理することができます。
経営者
20万円未満なら、内容に関係なく修繕費でよいのですか?
税理士
法人税基本通達7-8-3は、「7-8-1にかかわらず」とされています。
つまり、一の修理、改良等が20万円未満である場合、またはおおむね3年以内の周期で行われることが明らかな場合には、修繕費として損金経理することが認められます。
ここが、後で出てくる60万円基準とは違う点です。
60万円基準は、あくまで資本的支出か修繕費かが明らかでない場合の形式基準です。
経営者
では、20万円未満でも3年以内周期でもない場合は、次に何を見ますか?
税理士
次に、工事内容から実質判定をします。
固定資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたり、耐久性を増したりする部分は、資本的支出になります。
一方、通常の維持管理や、壊れた部分を元の状態に戻すための支出は、修繕費になります。
たとえば、用途変更のための改造、高性能部品への交換による通常額を超える部分などは、資本的支出になりやすいです。
反対に、通常の維持管理や毀損した部分の原状回復であれば、修繕費になりやすいです。
経営者
そこで判断できない場合に、60万円基準を見るのですか?
税理士
そのとおりです。
法人税基本通達7-8-4は、資本的支出か修繕費かが明らかでない金額について、次のいずれかに該当する場合に、修繕費として損金経理することを認めています。
一つ目は、その金額が60万円未満である場合です。
二つ目は、その金額が、その固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%以下である場合です。
重要なのは、対象が「明らかでない金額」だという点です。
明らかに資産価値を高める工事を、60万円未満だから修繕費にできるわけではありません。
経営者
10%基準の「取得価額」は、減価償却後の帳簿価額ですか?
税理士
いいえ。
10%基準で使うのは、減価償却後の帳簿価額ではなく、前期末における取得価額です。
ここを間違えると、判定額が大きく変わることがあります。
また、過去に資本的支出をしている場合には、その取扱いにも注意が必要です。
実務では、固定資産台帳で対象資産の取得価額を確認したうえで判定します。
経営者
60万円基準や10%基準にも当てはまらない場合は、どうなりますか?
税理士
その場合は、法人税基本通達7-8-5の特例を検討します。
資本的支出か修繕費かが明らかでない金額について、継続して一定の経理をしている場合には、次のいずれか少ない金額を修繕費として処理することが認められます。
区分不明額の30%
または
前期末取得価額の10%
この少ない方を修繕費とし、残りを資本的支出とする考え方です。
ただし、これも自由に30%だけ修繕費にできる制度ではありません。
対象は、あくまで資本的支出か修繕費かが明らかでない金額です。また、継続してその経理をしていることが必要です。
経営者
つまり、明らかに資本的支出なのに、30%だけ修繕費にすることはできないのですね。
税理士
できません。
たとえば、工事内容から明らかに資産の価値を高める支出だと分かる場合に、「7-8-5を使って30%だけ修繕費」とするのは危険です。
7-8-5は、実質判定をしてもなお区分できない金額について、継続適用を条件に認められる処理です。
そのため、最初から請求書総額をまとめて30%修繕費とするのではなく、工事項目ごとに、明らかに修繕費、明らかに資本的支出、区分不明の部分に分けることが大切です。
経営者
災害で壊れた資産を復旧した場合は、別のルールがあるのですか?
税理士
はい。
災害による被災資産の復旧については、法人税基本通達7-8-6に特例があります。
原状回復のための費用は修繕費です。
また、被災前の効用を維持するために行う補強、排水設備、土砂崩れ防止などについても、修繕費として経理した場合には、その処理が認められることがあります。
それでも資本的支出か修繕費かが明らかでない部分については、30%を修繕費、70%を資本的支出とする処理も認められます。
ただし、新たな資産の取得や新しい施設の設置は、災害復旧費ではなく、新規資産の取得として扱われます。
経営者
実務では、どの順番で確認すればよいですか?
税理士
次の順番で確認すると整理しやすいです。
1つ目に、災害による復旧費かを確認します。
2つ目に、一の修理、改良等が20万円未満か、またはおおむね3年以内の周期で行われるものかを確認します。
3つ目に、工事内容から、価値増加・耐久性増加なのか、通常の維持管理・原状回復なのかを実質判定します。
4つ目に、それでも明らかでない金額について、60万円未満または前期末取得価額のおおむね10%以下かを確認します。
5つ目に、それにも該当しない区分不明額について、継続適用を前提に30%基準を検討します。
つまり、
災害特例
20万円・3年周期
実質判定
60万円・10%基準
30%基準
という順番です。
経営者
個別の工事で判断する場合、どんな資料が必要ですか?
税理士
少なくとも、工事の請求書、見積書、工事内容の明細、修理前後の写真、対象資産の固定資産台帳、過去の同種工事の実施状況を確認したいところです。
また、「一の修理、改良等」の範囲をどう見るかも重要です。
請求書の総額だけで判断するのではなく、工事項目ごとに、原状回復部分、性能向上部分、区分不明部分に分けて検討する必要があります。
金額が大きい工事や、設備更新・改良を含む工事では、事前に税理士へ確認することをおすすめします。
修繕費と資本的支出の判断フロー
判断順序は、次のように整理できます。
災害による復旧費か
一の修理、改良等が20万円未満か、またはおおむね3年以内周期か
内容から、価値増加・耐久性増加か、通常の維持管理・原状回復かを判定できるか
判定できない金額について、60万円未満または前期末取得価額のおおむね10%以下か
さらに区分できない金額について、継続適用を前提に30%基準を使えるか
実務上は、「60万円未満かどうか」から入るのではなく、まず工事内容を確認することが重要です。
町田・相模原で法人の経理処理に迷った方へ
修繕費と資本的支出の区分は、法人税の処理の中でも判断に迷いやすい論点です。
特に、建物、内装、機械設備、車両などの修理や改良は、請求書の名目だけでは判断できないことがあります。
町田・相模原で、法人の修繕費、資本的支出、固定資産処理、決算処理に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、工事内容、金額、対象資産の取得価額、過去の修理周期、請求書・見積書の内訳、継続した経理処理の有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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