従業員の資格取得費や研修費を会社が負担した場合、「従業員が得をしているのだから、給与として課税されるのではないか」と迷うことがあります。
結論として、会社が業務上の必要に基づいて、従業員の職務に直接必要な知識・技術の習得や資格取得のために負担する費用で、その金額が適正であれば、原則として給与課税しなくて差し支えない取扱いがあります。
一方で、本来は従業員個人が負担すべき自己啓発費や、現在の業務との関係が薄い資格取得費を会社が負担しただけと判断される場合は、給与課税の対象となる可能性があります。
経営者
従業員の資格取得費や研修費を会社が払うと、給与として課税されますか?
税理士
会社が負担したからといって、必ず給与課税されるわけではありません。
会社の業務上の必要に基づいて、その従業員の職務に直接必要な知識や技術を習得させるための研修費、または免許・資格を取得させるための費用で、金額が適正なものであれば、給与として課税しなくてよい取扱いがあります。
経営者
資格を取るのは従業員本人ですよね。退職後も本人が使える資格なら、給与になりませんか?
税理士
資格が従業員本人の名義で取得され、退職後も本人が使えるという理由だけで、直ちに給与課税になるわけではありません。
所得税基本通達36-29の2では、使用者が自己の業務遂行上の必要に基づいて、役員や使用人の職務に直接必要な技術・知識を習得させ、または免許・資格を取得させるための費用を支給する場合、費用として適正なものは課税しなくて差し支えないとされています。
つまり、資格が本人に残るかどうかだけでなく、会社の業務上の必要性と、その従業員の職務との直接的な関係が重要です。
経営者
どのような場合なら、給与課税しなくてよいと考えやすいですか?
税理士
たとえば、現在の担当業務に必要な専門資格、安全管理や技術習得のための講習、法令上または取引上必要になる研修などは、非課税処理を検討しやすいです。
重要なのは、次の3点です。
会社側に業務上の必要性があること。
その従業員の現在または具体的に予定されている職務に直接必要であること。
受講料、受験料、教材費などの金額が、通常必要な範囲として適正であることです。
経営者
逆に、給与課税になりやすいのはどのようなケースですか?
税理士
業務との関係が薄い資格や、本人の趣味・自己啓発に近いものは給与課税リスクが高くなります。
たとえば、現在の仕事内容と直接関係しない資格、将来の転職や独立を主目的とする講座、特定の従業員だけに合理的理由なく高額なスクール費用を補助するケースなどです。
このような場合は、本来従業員本人が負担すべき費用を会社が肩代わりしたものとして、給与課税の対象になる可能性があります。
経営者
会社が研修会社に直接払う場合と、従業員にお金を渡す場合で違いはありますか?
税理士
違いがあります。
会社が研修会社や資格学校へ直接支払う場合や、従業員が立て替えた実費を領収書に基づいて精算する場合は、業務上必要な費用として整理しやすいです。
一方で、実際の受講料や受験料と関係なく、毎月一定額を資格手当や研修手当として現金支給する場合は、給与として扱われやすくなります。
非課税処理をするなら、何の研修・資格なのか、誰のどの業務に必要なのか、実際にいくらかかったのかを資料で説明できる形にしておくことが大切です。
経営者
大学院やMBAの学費を会社が負担する場合も、研修費として非課税にできますか?
税理士
慎重に判断すべきです。
所得税基本通達36-29の2には、大学等で聴講するための費用も含まれていますが、すべての大学院費用やMBA費用が当然に非課税になるわけではありません。
会社の業務遂行上の必要性、現在の職務との直接的な関係、対象者の選定基準、金額の適正性を確認する必要があります。
また、学費の性格が強い場合には、所得税法9条1項15号の学資金の非課税規定との整理も必要になります。
高額な大学院、MBA、専門学校などの費用を会社が負担する場合は、通常の資格試験の受験料や短期研修よりも税務リスクが高くなります。
経営者
特定の従業員だけ資格取得費を出すと問題ですか?
税理士
特定の従業員だけに支給すること自体で、直ちに給与課税になるわけではありません。
ただし、その従業員の職務に必要だから対象にしている、一定の職種や役職に必要だから対象にしている、会社の事業上必要だから取得させている、という合理的な説明が必要です。
特定の従業員にだけ、業務との関係が薄い高額な資格費用を負担している場合は、給与課税リスクが高くなります。
経営者
給与課税になると、会社側では何が問題になりますか?
税理士
給与に該当する場合は、従業員本人の給与所得になります。
そのため、会社には源泉徴収義務が生じます。給与課税すべきものを給与として処理していない場合、税務調査で源泉所得税の徴収漏れを指摘される可能性があります。
会社としては、研修費として処理するのか、給与として処理するのかを、支出時点で整理しておくことが重要です。
経営者
実務上は、どのような資料を残しておけばよいですか?
税理士
最低限、次のような資料を残しておくと安全です。
資格名や研修名、研修内容が分かる資料。
対象従業員の職務内容との関係が分かる資料。
会社が業務上必要と認めて承認した申請書や承認書。
受講料、受験料、教材費などの領収書や請求書。
合格後または受講後の報告書、修了証、資格証などです。
さらに、就業規則、研修規程、資格取得支援規程などで、会社が業務上必要と認めた資格・研修を対象とする旨を定めておくと、説明しやすくなります。
経営者
では、会社としては何を基準に判断すればよいですか?
税理士
判断の中心は、会社の業務上の必要性、従業員の職務との直接的な関係、金額の適正性の3つです。
この3つを説明できる資格取得費・研修費であれば、給与課税しない整理を検討できます。
逆に、この3つを説明できない場合は、従業員個人への経済的利益として給与課税を検討する必要があります。
会社負担にする前に、資格名、研修内容、対象者、金額、支払方法を確認しておくことが大切です。
町田・相模原で従業員の資格取得支援制度を整えたい方へ
従業員の資格取得費や研修費は、人材育成や採用力強化につながる一方で、税務上は給与課税・源泉徴収の判断が必要になることがあります。
特に、業務との関連性が弱い資格、高額な大学院・専門学校費用、特定従業員だけを対象とする補助制度は、事前に整理しておくことが重要です。
町田・相模原で、資格取得支援制度、研修費の税務処理、源泉所得税の判断に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、資格・研修の内容、従業員の職務、会社の業務上の必要性、対象者の範囲、金額、支払方法、社内規程の有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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