学校法人に寄付をすると、税金が安くなると聞くことがあります。
たしかに、学校法人への寄付は、要件を満たせば所得税、個人住民税、法人税の負担を減らせる可能性があります。
ただし、「学校法人に寄付すれば必ず節税になる」という単純な制度ではありません。
個人が寄付するのか、法人が寄付するのかによって仕組みが大きく異なります。また、寄付先の学校法人が特定公益増進法人に該当するか、税額控除対象法人に該当するか、法人寄附であれば日本私立学校振興・共済事業団の受配者指定寄付金として扱われるかを確認する必要があります。
さらに、本人や子どもの入学に関係して行う寄付は、原則として寄附金控除の対象外になるため注意が必要です。
相談者
学校法人に寄付すると、税金は安くなりますか?
税理士
要件を満たせば、税負担を減らせる可能性があります。
ただし、「学校法人だから必ず節税になる」というわけではありません。
まず、寄付する人が個人なのか法人なのかで制度が違います。
個人であれば、所得控除、税額控除、個人住民税の寄附金税額控除を確認します。
法人であれば、受配者指定寄付金として全額損金算入できるか、それが難しければ特定公益増進法人への寄附として特別な損金算入限度額が使えるかを確認します。
相談者
個人が学校法人に寄付する場合は、どういう制度がありますか?
税理士
個人の場合、まず確認するのは、その学校法人が特定公益増進法人であるかどうかです。
特定公益増進法人である学校法人に対する一定の寄附であれば、所得税の寄附金控除、つまり所得控除の対象になる可能性があります。
計算は、原則として次の形です。
その年の対象寄附金の合計額と総所得金額等の40%のいずれか少ない金額から、2,000円を差し引いた金額を所得から控除します。
つまり、税金そのものがその金額だけ減るのではなく、所得を減らす制度です。
相談者
税額控除という言葉も聞いたことがあります。所得控除とは違うのですか?
税理士
違います。
所得控除は、課税対象となる所得を減らす制度です。
これに対して税額控除は、所得税額そのものから直接差し引く制度です。
学校法人が税額控除対象法人の証明を受けている場合、個人は所得控除と税額控除の有利な方を選べることがあります。
税額控除の計算は、原則として、
寄附金額から2,000円を差し引いた金額の40%
です。
ただし、税額控除額には、その年分の所得税額の25%までという上限があります。
相談者
たとえば10万円寄付したら、どれくらい税金が減りますか?
税理士
個人が税額控除対象法人である学校法人に10万円を現金寄附し、各種上限に当たらない場合、所得税の税額控除は次のようになります。
100,000円から2,000円を差し引いた98,000円に40%を掛けます。
この場合、所得税の税額控除額は39,200円です。
さらに、その学校法人への寄付が、寄付者の住所地の都道府県と市区町村の双方で条例指定されていれば、個人住民税でも控除を受けられる可能性があります。
その場合、住民税については、最大で98,000円の10%、つまり9,800円程度の税額控除が考えられます。
ただし、これはふるさと納税のように「10万円寄付して実質負担2,000円になる」という制度ではありません。そこは誤解しやすい点です。
相談者
税額控除対象法人なら、必ず税額控除を選んだ方が得ですか?
税理士
必ずではありません。
税額控除は税額から直接差し引けるため、中低所得から相応の所得水準の方では有利になりやすいです。
一方で、所得税率が高い方や、大口寄付によって税額控除の25%上限に当たる方は、所得控除の方が有利になることがあります。
したがって、税額控除対象法人への寄付であっても、所得控除と税額控除を両方試算して比較するのが安全です。
相談者
住民税も安くなるのですか?
税理士
安くなる可能性があります。
ただし、所得税の控除対象になる寄付だからといって、住民税でも自動的に控除されるわけではありません。
個人住民税では、寄付者本人の住所地の都道府県や市区町村が、その学校法人への寄付を条例で指定しているかを確認する必要があります。
都道府県と市区町村の双方が指定していれば、原則として合計10%相当の住民税控除が考えられます。
一方、どちらか一方しか指定していない場合や、どちらも指定していない場合は、住民税の控除額が変わります。
相談者
子どもが入学する学校から寄付の案内が来ています。これは控除できますか?
税理士
そこは特に注意が必要です。
所得税の寄附金控除では、学校の入学に関してする寄附は原則として対象外です。
しかも、寄付しなければ入学できない場合だけが対象外になるわけではありません。
入学と相当の因果関係がある寄付も、入学に関してする寄附に含まれます。
所得税基本通達では、原則として、入学願書の受付開始日から入学予定年の12月31日までに納入した寄付は、入学との相当因果関係があるものとして取り扱われます。
学校の案内に「任意寄付」と書いてあるだけで控除できると判断するのは危険です。
相談者
会社で学校法人に寄付する場合はどうなりますか?
税理士
法人の場合は、個人の所得控除や税額控除とは別の制度です。
法人が学校法人に寄付する場合、まず確認すべきなのは、日本私立学校振興・共済事業団の受配者指定寄付金として扱えるかどうかです。
受配者指定寄付金として要件を満たす場合、その寄付金は原則として全額損金算入できます。
これは法人にとって非常に大きい制度です。
ただし、単に学校法人へ寄付しただけで自動的に受配者指定寄付金になるわけではありません。今回の募金案件そのものが制度対象として手続されているかを学校法人に確認する必要があります。
相談者
受配者指定寄付金ではない場合、会社では経費にならないのですか?
税理士
受配者指定寄付金でなくても、学校法人が特定公益増進法人であれば、一般寄附金とは別枠の特別損金算入限度額を使える可能性があります。
この場合、法人税法上、一定の計算式で特別損金算入限度額を計算します。
さらに、その特別限度額を超えた部分についても、一般寄附金の損金算入限度額の範囲で損金算入できる場合があります。
したがって、法人寄附では、
受配者指定寄付金として全額損金算入できるか。
それが難しい場合、特定公益増進法人への寄附として特別枠が使えるか。
それも難しい場合、一般寄附金の限度額内で処理するか。
この順番で確認します。
相談者
会社から寄付すれば、寄付額の全額分だけ税金が減りますか?
税理士
いいえ。ここも誤解しやすいところです。
法人で全額損金算入できるというのは、寄付額が法人税額からそのまま差し引かれるという意味ではありません。
寄付額が損金になり、法人の課税所得が減るという意味です。
たとえば100万円の寄付が全額損金になり、実効的な税負担率を仮に30%と考えると、税負担の軽減は概算30万円程度です。
残りの70万円程度は会社の実質的な経済負担として残ります。
赤字法人など、そもそも納税額が出ていない会社では、当期のキャッシュ税額がほとんど減らないこともあります。
相談者
社長の子どもが通う学校に、会社名義で寄付する場合はどうですか?
税理士
非常に注意が必要です。
法人税基本通達では、法人が支出した寄附金であっても、実質的には役員等が個人として負担すべきものと認められる場合には、その役員等に対する給与として取り扱うとされています。
たとえば、社長の子どもが入学する学校から保護者向けに寄付依頼があり、本来は社長個人が負担すべき性質の寄付を会社が支払った場合、単純に法人の寄附金として処理するのは危険です。
この場合は、役員給与認定や損金不算入の問題が生じる可能性があります。
相談者
土地や株式を学校法人に寄付する場合も同じですか?
税理士
現金寄付とは別に考える必要があります。
個人が土地、建物、株式など含み益のある財産を学校法人等へ寄付する場合、原則として、時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得課税が問題になることがあります。
一定の公益法人等への現物寄附については、租税特別措置法40条の承認を受けることで非課税となる制度があります。
ただし、公益増進への著しい寄与、原則2年以内の公益目的事業への直接供用などの要件があり、国税庁長官の承認も必要です。
現物寄附は、寄付を実行してから相談するのではなく、実行前に必ず確認してください。
相談者
学校法人に寄付するかどうかを判断するには、何を確認すればよいですか?
税理士
最低限、次の資料を確認してください。
個人が寄付する場合は、学校法人から、特定公益増進法人の証明書の写しと、税額控除対象法人の証明書の写しを取得します。
そのうえで、寄付額、本人の課税所得、所得税額、他の寄付金、住民税の条例指定の有無を確認し、所得控除と税額控除を比較します。
法人が寄付する場合は、今回の募金が日本私立学校振興・共済事業団の受配者指定寄付金として正式に扱われるのかを確認します。
また、決算日前後の寄付では、学校法人へ振り込んだ日だけでなく、私学事業団が寄付金を受領する日を確認する必要があります。
町田・相模原で学校法人への寄付や法人寄附の判断に迷った方へ
学校法人への寄付は、制度を正しく使えば税負担を減らせる可能性があります。
しかし、個人の所得控除と税額控除、住民税の条例指定、入学関連寄付、法人の受配者指定寄付金、特定公益増進法人への直接寄附、現物寄附の譲渡所得課税など、確認すべき論点が多い分野です。
特に、寄付額が大きい場合、法人決算前の寄付、役員やその家族の入学と関係する寄付、土地や株式の現物寄附は、寄付を実行する前に確認することが重要です。
町田・相模原で税理士をお探しの方、学校法人への寄付や会社からの寄附金処理に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、寄付者が個人か法人か、寄付先の学校法人の証明書、寄付額、寄付日、入学との関係、住所地の条例指定、法人決算期、受配者指定寄付金の手続状況、現物寄附の有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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